気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮)   作:無闇

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Chapter.2 二年前
1.シャボンディ諸島


 

 

 

 

 

“偉大なる航路”前半の海、最終地点…シャボンディ諸島。

巨大なマングローブでできたこの島は、後半の海…新世界へ渡るために人々が羽根を休める場所。

世界を分断する“赤い土の大陸”を超えて新世界に入る方法は二つ。

 

聖地“マリージョア”の横を通過するか、魚人や人魚が住まう魚人島を通過するか。

 

まず一つ目、聖地“マリージョア”とは、この世で最高権力者あり、世界政府を立ち上げた者たちの子孫達である“天竜人”が住まう土地。

“赤い土の大陸”の上にあると言われるその地を通るには世界政府の許可が必要である。

次に二つ目、魚人島とは、人の十倍の筋力を持つと言われる魚人族や水中では世界最速の人魚族が住まう土地。深海一万メートルという人の身では到底潜ることのできない場所にある。潜ってもいいが、水圧によって圧死してしまうだろう。そもそも息が続かない。潜水艦でも耐えられない。

 

この説明を受けて何方を選ぶか…そう聞かれた人物が海賊か否かで決まる。

もし海賊な場合。海賊である時点では前者はアウト。政府の許可が降りるわけがない。つまり後者しか選択肢がないのだ。

シャボンディ諸島にはコーティング士という技術士がいる。

それはシャボンディ諸島にあるマングローブから発せられるシャボンを応用して作られた技術。因みにシャボンディ諸島の名前の由来はここからである。

船体をシャボンで包み込み深海でも潜行可能にするその技術は、まさに新世界に渡る海賊達に必須のモノだ。

 

そんなシャボンディ諸島に今、前半の海を航海し終えた猛者達が集っていた。

その中でも“超新星”と言われる海賊団船長は、この一、二年間で現れ、名を上げて賞金が億越えをしたルーキー。

その12人の超新星の中の三人の船長が今、集結しようとしていた。

 

「ここみたいね」

 

シャボンディ諸島、1番グローブ。72個ある島の中で無法地帯でもあるこのグローブには一つの会場があった。

 

「ん?私が一番?」

 

うーん、と首を傾げる大きな太刀を持ったその女性はここに集う貴族達の目線を集めていた。特に男性から。

ここ1番グローブにはヒューマンオークション専用の会場がある。

毎月開催されるこのオークションは、世界貴族天竜人御用達でもあり、多くの貴族達が奴隷を求めて集まる場所だ。

 

「あの女、美女ですな…商品なら絶対に買うのに」

「美人だが、目の下の隈がなぁ」

「いえいえ、そこが良いのではないですか」

 

ヒソヒソと話す貴族達だが、全部聞こえている。

現にその女性も少し顔を顰めた。やはり周りで小声で話されると気分が悪いようだ。

カチャリと愛刀を定位置である肩に置くように持った彼女は、このヒューマンオークションに参加するのか受付に歩いて行った。

 

「ねぇ」

「は、はい!」

 

この受付もまたこの女性に見惚れていたようで、話しかけられると緊張してかカチコチに固まってしまっている。

その様子をふふっと笑いながら、彼女は一つのことを聞いた。

 

「私と同じ格好の男性…見なかったかしら?」

「同じ格好…」

 

受付は女性の服装を見る。

黄色と黒のパーカーに斑点模様のジーパン、ハート型のペンダント…手には大きな太刀を持っており、ファー状の帽子を被っている。

現代風な格好の彼女は珍しく、受付も最初に見た時から既読感はあった。デジャヴと言われればそれで終わりだが、何とか記憶の片隅から引っ張り出して思い出す。

 

「あぁ、今さっき会場に入って行きましたよ」

「ありがと」

 

一言そう礼を述べてから、カツカツとヒールを鳴らして会場へと歩いていく。

大きな扉を開けるとまだ始まっていないからか、会場内は明るかった。

女性は一通り見回して、目当ての人物を見つける。そう彼女と一緒の格好をした男だ。

客席が中心のステージを全ての人が見れるように雛壇になっている。その中心より、ステージから見て右斜め上にその男は座っていた。

一段上に自身の部下を座らせながら。

 

「何、恰好つけてるのかしら?」

 

ヒールを鳴らしながら階段を降りたその女性はクスクスと笑いながら、その男性の前に立つ。

 

「ロー?」

 

12人の超新星が一人。ハートの海賊団船長、“死の外科医”トラファルガー・ロー。賞金、2億ベリー。それがその男性の正体である。

彼女は意味ありげに笑ってから、ローの隣に座って足を組む。

その動作を見ていたローはハッと鼻で笑って、口を開けた。

 

「お前に言われたくはないな、ステラ」

 

12人の超新星が一人。ハートの海賊団副船長、“解体姫”トラファルガー・ステラ。賞金、1億5000万ベリー。それがこの女性の正体。

ステラは自身の愛刀を後ろにいる、クルーの一人に渡した。キャスケット帽を被った彼は慣れた動作でそれを受け取る。

 

「で?本当なの?ここが」

「あぁ彼奴の店だ」

 

ステラの言葉にコクリと頷くロー。

ローとステラの目的は人身売買では無い。確かに人身売買は許されざる行為だ…だが、そういう類は嫌と言うほど見てきた彼等にはどうでも良い事だった。

彼等の目的はこの店のオーナーである。言えばオーナー自身の命を取ることが目的だが、まぁその下見と言うもの。

別にここで手を出すわけじゃない、とローは笑う。

 

「まぁ元々ヒューマンオークションにも興味あったしな」

「きゃーローのえっちー(棒」

「そんな目的で買わねぇよ!ってか金ねぇからな!?」

 

ハートの海賊団の船は珍しい潜水艦だ。

海賊なら敵襲してきた奴らを倒して、金銀財宝を盗めば良いのだが…そもそも潜水艦なので、浮上していなければ見つからない。

ハートの海賊団は、わざわざ見つけた船を沈め金銀財宝を盗んで、変装し賞金首を海軍に突き出したりして儲けている。

しかし、殆どが潜水艦の整備や燃料に消えている。潜水艦は海を潜って進むもの、整備を怠れば海の藻屑となってしまう。

生活費なら余裕にあるが、オークションに参加するほどの金はない。

 

「その前に参加もしない、ただの見物だ」

「そう」

 

つまらなそうに返事をしてから前を向く。結構人が集まってきた、そろそろオークションが始まるのだろう。

その反応にローはため息を付いてから、同じようにステージの方を向いた。幼い頃からからかわれるのは慣れている。いつか十円禿げが出来そうなくらいには。

 

その時、オークション会場の巨大な扉が開き、特徴的な服装をした男女が入ってきた。

同じ空気を吸いたくないと頭にシャボンを被った彼等は世界貴族である天竜人。

一人は杖をついた老人、もう一人は若い女性。どうやら親子のようだ。

天竜人の姿を見た途端、客達の声で騒がしかった会場はシンっと静かになり、天竜人から目を逸らした。

天竜人に楯突くと殺されるか、海軍に捕まる。誰も死にたくはないようだ。

天竜人も天竜人で、此処まで避けられると嫌われてるもわかっているだろうに、ヒューマンオークションが楽しみなのか女性の方は微笑んでいる。まぁ彼等は人々を下地民と言って見下し、嫌っているのでどっちもどっちだが。

VIP席に案内された彼等を見届けた、主催者は一旦会場を暗くし、ステージにスポットライトを浴びせた。

 

「お待たせしました!毎月恒例、1番グローブでのヒューマンオークションを始めたいと思います!」

 

高らかにそう宣言し、今オークションが始まった。

司会は星型のサングラスを掛けた長髪の男性。その名をディスコといい、オーナーからこの店を任されている責任者でもある。

派手なおっさんだな、とステラは思った。ステージに立つ人間は全員あんな風に派手になるのか。まるで自分の居場所を主張してるかのように。

人は誰だって目立ちたがり屋なのだ。

 

「(うちの船長だって、そう)」

 

チラリと横を見る。

わざわざ海賊と同じ椅子に座る貴族もいないからか、この席はローとステラで占領している。

広いこの席で足を組み、背凭れに腕を乗せながら楽に座っているローの顔は笑っていた。ニヤリ、という効果音が相応しいぐらいに。

いつからこんな黒歴史真っ盛りな子になっちゃったんだろ、とステラは嘆いた。

 

「(いや、私もだけど)」

 

ローの側に殆ど毎日いるせいか、ローの性格が感染って来ている気がする。性格も姿形もクルーに瓜二つとはいつも言われる事だ。

船長を二人相手してるみたい、と言われたのは何時だったか。

ステラ自身でもわかってはいるが、何故か人に感化されやすい性格のようだ。

いつか聞いたことのある、“好きな人の癖は感染る”とはこのことか。

ローは勿論大事な家族として好きだから…感染るのは仕方ない、と無理矢理結論づける。

ステラは考える事を放棄した。

 

「ん?」

 

後ろの方にある巨大な扉が少しだけ開き、誰かが入ってきた。

ステージ以外暗い会場では少し確認し辛いが、誰なのかは辛うじてわかった。

ステラの原作知識は廃れて来ている。十年以上前の事なのだからしょうがないのだが。

しかしステラは、記憶が完璧になくなる前にメモを取っていた。確かに忘れないようにメモするのは誰だってしそうなことだ。

懐に閉まっているメモ帳を取り出し捲り、目当てのページを見つける。

因みに閉まっている場所は豊満な胸の間だ。クルー達に目の毒だと言われたこともある。失礼な、とステラはいつも思っていた。

 

「(…やっぱり)」

 

これからの事も書いているメモ帳。

それからこの世界の世界観、様々な事象の説明。海軍や、海賊王の事なども色々書いている。

このメモ帳が人の手に渡れば大変な事になるので、片時も離さず持ち歩いている。

不思議な事にステラが持った物は、ステラが霊体になると同時に同じ霊体になるようだ。よくわからない仕組みだが、ステラは有難く感じていた。理由は奇襲攻撃できるからだ。

何とも考えることが物騒である。

メモを見たステラは確信して、隣にいるローに話しかける。

 

「ロー」

「あぁ、わかっている」

 

既に気づいていたようだ。

確かに扉が開いた時に見ればわかること。ステラがメモを確認している時間は約十秒だったのだが…相変わらず早いこと。

ステラは珍しくローの事を感心した。いつもは弄られ馬鹿だとステラは思っている。

話を戻すが、先程入って来たのは麦わらの一味である。

人道的な彼等がここに来るなど場違いにも程が有るが、まぁ彼等にも事情があるのだろう。例えば、友達が攫われたとか。

麦わらの一味はこの世界の主人公に当たる。つまりは一騒動来るのだ。そうメモにも書いている。

骨が折れるな、とため息をステラはついた。

 

その後連続して出てくる女性達が次々と落札された後、何処かの海賊の船長をしていた男が舌を噛んで倒れるという騒動が起きた。

しかしそれを極度の緊張で鼻血を出して倒れたと嘘を付き、場を和ませた司会、ディスコは今日大一番の目玉商品を紹介した。

ドラムにスモッグ、カラフルなライトと派手な演出に続き、布を被せた物が運ばれてくる。どうやらその中に商品が入っているようだ。

 

「おまたせしました!今日一番の目玉商品!お探し求めている方も多いでしょう…ではご紹介致します!魚人島からやってきたー!人魚のケイミぃー!!」

 

ディスコのノリッノリな前振り共に、白い布が外されその姿を現す。

巨大な金魚鉢に入っているのは人魚の娘。

途端に客席からの歓喜が上がる。司会ディスコはニヤリと微笑んだ。

形の良い尾鰭をしたその少女は不安気に会場内を見渡す。やがて一点を見つめた後、安心したように笑った。自分の恩人で友達でもある麦わらの一味とハチ達を見つけたからだ。

 

「ケイミーちゃんか、可愛いな」

「俺はもう少し大人の方がいいかなぁ」

「おれは雌クマの方がいいな」

「「お前は黙ってろ」」

「すみません…」

「「打たれ弱っ!?」」

 

ローとステラの後ろで話し合う二人と一匹。ハートの海賊団のクルー達である。

上から順に、ペンギン、シャチ、ベポ。

シャチはキャスケット帽を被った青年であり、現在ステラの愛刀を預かっている。

ペンギンは“PENGUIN”と書かれた帽子を被った青年。

この二人は一貫して白い繋ぎを着ており、白熊であるベポは二人とは違ってオレンジの繋ぎを着ている。因みに航海士でもある。

 

「人魚か」

「何?ローも興味あるの?」

「いや…ただ、人魚は水中で世界最速と聞く。あの小さな尾鰭でどうやって速く進めるのかって思ってな」

 

確かにあのヒラヒラと漂う小さな尾鰭で、どうやって水を掻き進んでいるのかはステラも気になっていた。

ただ、何故今その事を話に出してきたのか。そう疑問に思ったが、ローの顔を見るとそれは吹き飛んだ。

 

「(あ、解剖したいのね)」

 

その無表情ながらも顔の周りをキラキラと輝かせているローを見て苦笑する。彼の頭は何処までも医者なのだと、ステラは再認識した。

 

「久しぶりの人魚とあって、皆さん興味津々とお見受け致しました」

 

そう司会者が告げて、辺りを見渡す。

ステラは天竜人もいるし、高く売れるだろうな…と漠然と思う。後で助かるのを知っている為、気も楽だ。相手は此方のことを知らないと思うが。

 

「さぁ!幾らから参りましょうか?」

 

誰もが欲しがる人魚。

高値が付くのは必然である。しかも天竜人もいる。だが、欲しい。

全財産を叩いてでも欲しい、珍しい人魚を。

 

誰かが強く歯を噛んだ。

 

誰かがゴクリと唾を飲んだ。

 

誰かが自身の番号札を握った。

 

誰かが絶対奪い返すと意気込んだ。

 

 

「それでは始めましょう!!まずは…」

 

今、この時会場中が敵だ。

予算がある者は絶対に競り落としてやると意気込む。

ただ、その中で世界貴族である天竜人の懐は計り知れないという事を誰もが忘れていた。

だから、目の前の餌に惑わされ後ろからの攻撃に気づかなかったのかも知れない。

 

「5億ぅ!!」

 

その聞こえてきた声が告げた値段に、まるで急な信号に戸惑いフリーズしたパソコンのように会場中が固まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みにステラの愛刀の名前は“啾々(しゅうしゅう)”。鬼哭とは兄弟刀で既に折れた存在。因みに後に作られたので弟です。
名前の由来は“鬼哭啾啾”から。そのまんまですね!!
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