気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮) 作:無闇
ガキィ----ンッ。
金属がぶつかり合う音が何度も響く。それはこの戦場の至る場所からか、それとも一際目立つこの二人からなのか。
「フフフフフッ、やるなァ」
「貴方にっ、褒めてもらうなんてっ!光栄ねッ!!」
人の大きさ程ある大太刀を振り回すのは一人の女性。少しだけ癖っ毛のあるサラリとした髪を風になびかせながら、険しい表情で相手を睨んでいた。
やはり、実力差が大きいと息を荒くしながらその女性、トラファルガー・ステラは相手であるドフラミンゴから目を離さず背後を取られないように立ち回る。
やがて二人は攻撃の手を止め、距離を取る。ドフラミンゴは未だ微笑んだままで、フフフフフッと嗤っている。
「その剣技、俺のファミリーの幹部のモノだが……何処で習った?」
「あら、貴方なら検討はついているんでしょ?頭はいいものね」
「えらく俺を買っているんだなァ?フフフフフッ、その気になっちまうじゃねぇか」
「私、おっさんは嫌いなの。結構よ」
「まだ何も言ってねぇぞ」
「それも貴方の戦術でしょう?女相手にその笑顔は怖いものねぇ」
昔から得意でしょ?戦術。とステラは微笑む。
その笑顔を見たドフラミンゴは眉間にしわを寄せ、血管を浮かび上がらせる。何処か癪に触ったらしい。
ドフラミンゴの様子にステラは小首を傾げた。
「“パラサイト”」
ドフラミンゴがそう呟いた瞬間、周りの海兵や海賊たちが一斉に戦うのはやめてステラに襲いかかってきた。
チッと舌打ちをしてから、ステラは見えない糸を斬るように心がけながらも敵味方関係なく、その細い脚で操られた者たちを蹴り倒していった。
「体ガッ!」
「体が勝手に動ゴッ!」
「容赦ないッチャブルね!!」
その容赦のない姿を見ていたイワンコフは思わず突っ込んでしまう。
ハラリと透明な糸が太陽の光で反射して光る。それはドフラミンゴに操られた者たちから舞い降りてきていた。
ステラにとってドフラミンゴのその技はよく知っている技であり、対処法もわかっていた。この妖刀啾々では斬れるものはない。
プツンと糸が切れ、ステラに蹴られた者たちはもう勝手に動かない体に喜びあった。
それを見ていたドフラミンゴは笑みを崩さないまま、静かに眺めていた。
「イワさん、麦わら屋さんは?」
「その事で来たッチャブルよ!道化ボーイに麦わらボーイを預けてきたわ。ジンベェもね」
道化ボーイ?とステラは首を傾げたが、すぐに思い当たる人物を思い出した。
この世界で“道化”と言えば、“道化のバギー”である。インペルダウンから一緒に脱獄してきたのだろう。ならほど、彼は現金だが、何かと優しい奴である。信用はできる。
ありがとう、とステラはイワンコフに礼を告げた。
もうすぐすれば、自身の半身が来るだろう。彼は慎重派でもあるので、ここでステラがドフラミンゴを食い止めなくてはならない。
ステラはそう決意をして、目の前へと向きなおる。騒がしいこの戦況の中、静かに睨み合う二人は異様だった。
先に動き出したのは、ステラだった。薄い膜を張り、刀を構える。そして何回も空を斬り続ける。一見して無駄なことをしている様にしか見えないが、意味はある。手術室の中では、何もかもが医者の思うがまま。その空を斬ったのだって見えない刃となり飛んでいく。
それを本能的に察知したドフラミンゴは、糸を作り出し全て受け止めた。武装色を使ったのだろう。でなければ、あの斬撃を受け止めることなぞできないからだ。
斬撃を受け止めたドフラミンゴが、糸を飛ばした。思わずステラは刀を盾にして受け止めてしまった。啾々に白い糸が絡みついた。
「フフフフフッ、逃しゃしねぇよ……」
これはこれは、どうやら気に入られたらしい。悪い意味で。ステラはため息を溢した。
ステラ自身、自分の体質でいつでも逃げ出せる事ができる。しかし、それを見せる事を少し戸惑わさせた。ギリィ、と歯嚙みする。
するとヒィイハァア!という声が聞こえ、ドフラミンゴに巨体が突っ込んでいく。イワンコフだ。
ドフラミンゴは舌打ちをし、啾々を縛っていた糸を離し避けた。しかし、イワンコフの巨体から出る衝撃は尋常じゃなく、氷を砕きドフラミンゴを襲った。思わず顔を腕で隠す。
それを機にステラは“ROOM”と呟き、イワンコフと入れ替わる。啾々で力の限り斬りかかるが、すんでの所でドフラミンゴの糸に止められる。
「イワさん!先に行って!ちゃんと火拳屋さんが逃げれたかどうかの最後の確認を!もし大丈夫なら貴方も逃げて!」
ギリギリと糸と金属の摩擦音がする。
ステラはドフラミンゴから目を離さずにイワンコフに叫んだ。
イワンコフはしかし、とステラを心配するがチラリと此方を向いたステラの眼差しが大丈夫だと語っていた。イワンコフは力強く頷き、その場を去る。
「フッフッフ、珍しいなァ。イワンコフがあぁも容易く引き下がるなど」
「それほど、麦わら屋さんの事が気に入ったんだわ。貴方には関係のないこと」
「フフフフフフッ。関係あるさ、俺は“D”が嫌いなんでね」
「そう」
そんな会話をしながら凄まじい攻防をする二人。均等と思われる実力だが、実のところドフラミンゴの方が圧倒的に上である。それだけ年月で培われた力は強く、まだ若いとも言えるステラには厳しい相手であった。七武海はやはり、一筋縄ではいかない。
ドフラミンゴは笑い、ステラは息を荒くする。ここでも実力の差がはっきりとわかる。
ステラが呼吸を整えるために一旦距離を取り、軽く深呼吸する。もちろん、戦いの最中であるため相手からは目線を外さない。
二、三回深呼吸を繰り返した後、機械的な着信音を人の声で言ったような音が聞こえてきた。随分の弱々しいのか、途中でゲホゲホという風でも引いているような音も混じる。ステラにはこの声に記憶があった。というよら今持っているものだ。サッと懐から取り出す。
蝸牛の形をした通話機器。伝電虫だ。
機器と言っても生物であり、生きている。同じ伝電虫内での通信が可能で、どうやら電波のようなものを発しているらしいが細かくはわかっていない。
ステラが取り出したのはその小型バージョン。小伝電虫だ。携帯のように何時でもどこでも通話できるという優れものだが、範囲が通常の伝電虫より劣り数十キロぐらいしか電波が届かない。
甲羅にあるボタンを押すと、子伝電虫はガチャと声を発した。
《繋がった……っ!姐さん聞こえますか?》
聞こえてきたのはクルーの声。数時間だけなのに、酷く懐かしく思う。思ったより絆されてるわね、とステラは苦笑した。
この声はシャチか、とステラは判断して返事をする。
「ええ、聞こえているわ」
《よかった!それで、姐さん船長が帰ってこいと言ってるんで、早く帰って来てもらえるとおれも嬉しいというか》
「そう。麦わら屋さんは無事?」
《無事というか、精神的に余裕なのか少し安定してんすけど、状態はやばいっす》
「それ、結局どっちなの」
シャチの証言に苦笑するステラだが、何かを察知したようにその場を離れた。すると、氷の床が弾け飛ぶ。細かく砕けた氷がステラの頬を切った。つーッと垂れてきた血を拭いながら、その事象を起こした人物を睨んだ。
ふわりと舞うそのコートが忌々しく思ってきたステラだが、冷静を保つ。冷静を欠いては、この策士相手には負ける。
「俺と戦闘中だろう?」
ニヤリとしてそう言ってきた三十路にステラは笑い返した。
「……嫉妬深いのね」
「フフフフッ、悪かったなァ」
「ええ、悪いわ。嫉妬深くて、粘着質、嫌われる類のものね。因みに私はさっきも言ったけど、そんなおっさんは大嫌い。死んでほしいぐらいだわ」
「言うなァ、小娘が」
“
コンクリートでも容易く斬り裂いてしまうその糸を、ステラは啾々を上手く扱いながら受け流す。
《姐さん!?今のはっ!?》
「ちょっと、しつこい、七武海さんとっ戦闘中でっ!!」
カラフルな糸を避けたり受け流しながら、子伝電虫から聞こえてきた心配の声にそう返す。
身体を動かしながら、喋っているせいか途切れ途切れにしか話せないが、これでも十分に伝わるだろう。
《大丈夫なんすか!?》
「ええっ、なん、とか!シャチ、ローにすぐ帰るって、伝えて!」
《わ、わかりました!》
「喋るのも一苦労だなァ、フッフッフ」
《!?その声っ----》
ステラが子伝電虫のスイッチを押したため、シャチの声は途中から聞こえなくなった。
これでいい、とステラは眠った子伝電虫を懐へとしまう。
「フッフッフッ、仲間との別れはもういいのか?」
「私は死なないし。それにその台詞、三流海賊のように聞こえるからやめておいた方が、身のためよ」
それに、とステラは続け、一瞬ドフラミンゴから目線を外してある方向を見る。
そこには燃えるように赤い髪を持った黒いマントを着た者がいた。ドフラミンゴはその者を見た瞬間、目を見開き驚いた。まさか、こいつまで出てくるとは。
「赤髪……ッ!?」
誰かがそう叫んだ。
新世界にいる四皇の一角でもある赤髪海賊団。その船長、通称“赤髪のシャンクス”がそこにいた。
思わぬ大物に皆が震える。ステラはドフラミンゴとの戦闘で分からなかったが、つい先ほど四皇の一人“白ひげ”もいて、そして死んだ。そこに黒ひげが現れ、白ひげの能力を手にしたのだがこの際は割愛させていただ、え?物語の重要な部分だろう?割愛するな?……生憎様、この物語には然程重要ではないのだ。なので、割愛させて頂く。
「赤髪、何しに来た---ッ!」
海軍の代表として、海軍元帥“仏のセンゴク”がシャンクスにそう問う。その声はよく通り、ビリビリと空気を震撼させた。少しばかり怒っているのか、表情は固い。
そんなセンゴクを見て、シャンクスは何が面白いのかクスリと笑うと、側にいた桃色の髪を持つ少年の頭を撫で、やがて顔を強張らせ口を開いた。
「戦争を終わらせに来た」
叫んでもいないのに力強いその言葉に戦場にいた者たち全員が、息を飲む。
サァアッと赤い髪が風に靡く。誰もがその堂々とした姿に釘付けになってしまった。
そんな中ステラは微笑む。あぁ、赤髪が来たならばもう大丈夫だ。ドフラミンゴやその他がシャンクスに意識を取られている間、ステラはスゥッと姿を消す。
「ッ!?」
目の前にあった気配が消えたことで、ドフラミンゴは振り返った。そこには先程まで戦っていたステラの姿が何処にもなく、思わず辺りを見渡したりしても見つからない。いつの間に、と呟く。そのサングラスの奥の瞳は動揺で揺れていた。
少しでも動けばわかっていた。というのにどうやって。能力を発動したとしてもわかるはずなのに。ドフラミンゴは歯噛みするが、もう過ぎたこと。獲物を逃したことに怒りを覚えるが、それ以上に笑みが零れる。
「トラファルガー・ステラ…………随分と面白れぇじゃねぇか」
フフフフフフッと笑うその姿は誰も見ていない。顔を片手で押さえ、震える肩を押さえる。
いい、実にいい。フフフフッ。内側から何かが溢れだしてくる。
それは何だろう。あいつを手に入れたいという願望か?そうか、そうだな、欲しい。実に欲しい人材だ。適度に俺をイラつかせ、本気ではないとはいえあしらった。
「(ローを取り戻すついでに勧誘するか。ローの妹……フレバンスで生き別れたか、いやしかし)」
あいつは俺を知っていた。
それは王下七武海としてではなく、元から旧知の仲のようにドフラミンゴの本性を見透かしていた感じがした。
もし、フレバンスで生き別れていて、奇跡的に再会したとしてもドフラミンゴを知っているなどと……。ローが話したという可能性もあるが、ローの性格上、それはないだろう。
謎に包まれた存在。それがトラファルガー・ステラというモノだった。
ドフラミンゴは思う。あれが欲しいと。
彼は一度思ったことは実行する質だ。それはもう、コラソンの後継者としてドンキホーテ・ファミリーを抜けたローをまだ諦めていないように。執念深い彼は実に面倒くさい人種であった。
ドフラミンゴは笑う。踵を翻し、そう言えば頼まれていた事を思い出しながらも笑った。
コツン、と氷上に小さく響き渡る音は、戦争が終わる知らせと共に消えた。
あァ。
-----アレガ欲シイ。
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女ヶ島アマゾン・リリー。その島は男子禁制の島であり、王下七武海の一角“海賊女帝”ボア・ハンコックが治める土地でもある。
その島の端、軽く凹んだ絶壁にある黄色い潜水艦が止まっていた。島の上には九蛇海賊団のジョリーロジャーが記された布がはためいていた。まるで、外界と遮断するようだ。
潜水艦に設置されている広い甲板。そこに一人の女性が現れた。気配もなく降り立った彼女に、見張りをしていたジャンバールは酷く驚く。
「あら、ジャンバール」
「遅かったな、副船長」
「えぇ。結構長く捕まってたみたいね」
もうあんなしつこい男はこりごりだわ。と息を吐くその姿にジャンバールは安心する。
見た感じ、頬にある傷以外は何もないようだ。
ジャンバールはステラとの通信の後オロオロしていたシャチを思い出してクスリと笑う。その姿を目にしたステラは首を傾げたが、気にすることでもないと啾々を抱え直す。
「そう言えば、さっきのは何だ?何処からともなく現れたが」
ジャンバールの言葉にステラはすぐに答える事ができなかった。
彼の言っている事は、実体化の事だろう。霊体の自分が実体を持つようになるもの。正直、ハートの海賊団の船員たちには話しておいた方がいいだろうとは思う事が多々あった。しかし、やはりというか、こういうオカルトチックなこと信用して貰えるとは思えず言い出せずにいた。“悪魔の実”やら幻獣やらいる世界で何を、という事だがステラにとっては結構重要なことだ。何を馬鹿な事を言っている、と鼻で笑われるのが少し怖い。
「……知っても理解はできないわ」
それより、麦わら屋さんの治療はもう終わったの?と明らさまに話題を逸らしたステラにジャンバールは違和感のようなものを覚えるが、それを表に出さず、まだと答える。
「中で手術中のはずだ」
「そう、ありがと」
ステラはジャンバールに礼を言い、鋼鉄の扉を開けて中に入った。陽の光が丸い枠の窓から注ぐ、鉄でできた廊下は酷く静かであった。
おそらく、まだ手術中だろう。ローが
シャチの通信から既に半刻は経っている。無限に近い体力を持つステラとは違い、ローは人間だ。鍛えているとは言え耐久力はもとい、手術はその正確さや緻密性故に精神力もいる。そろそろ疲労が溜まっている頃だろう。
「あ、姐さん!帰ったんすね!おれもう殺られたのかとッ」
悲痛な顔をしてそういう仲間に、ステラは微笑む。
「私が殺られると思うの?それだけはないわね」
ステラは一度死んだ身。もう一度死んだ事はないのでわからないが、幽霊が死ぬのは成仏したときだろう。この世界に祈祷師や霊媒師などはいないだろうし。
ふふっと笑い、キャスケット帽の上からシャチを撫でた。それは所謂、泣き止まない幼なき者を励ましているかのようで、シャチは少し頬を赤く染めて、何するんすか!と叫ぶ。しかし、その手を退けない事から、嫌ではないのだろう。
やがて撫で終わったステラは、シャチに啾々を預け、手術室へ新しく除菌されたと思われる手術道具を持ったペンギンと手術室へ向かった。
身体の消毒をし、しっかりと専用の石鹸で手を洗ってからゴム手袋をはめる。よし、と気合を入れた。
扉を開け、青く薄い膜を潜る。同じ能力者だからこそわかる
忙しなく動いていた手を一時的に止め此方を一瞥したローは、また手術を再開した。
「手伝いに来たわ」
「何時もながらに丁度いい時間だな」
「褒めてくれてるのかしらね」
クスクスクスと笑ったステラは、“ROOM”と呟いた。二重に重なる膜。新たに出現した膜が既存のものと同じ大きさになると、片方の膜が消えた。ローが能力を消したのだ。
彼らは同じ能力を持ち、繋がっているが故に、協調できる。一人が“ROOM”を張れば、もう一人がその中で能力を行使できるように。例えるならば、一人がバイクを用意し、もう一人がそのバイクを乗り回すような……。語学能力が低いため意味がわからない例えになったが、まぁそういうことである。
「“ROOM”と助手は任せなさい」
「あぁ、いつもすまないな」
そう謝るローだが、手はまだ動いまま。
ステラはチラリと患者を見る。黒い髪はサラリと動き、本来覗くはずの漆黒の瞳は閉じられていた。人工呼吸器のチューブは白くなったり透明に戻ったりと、忙しなく色を変化させていた。
絶対に助かる。わかっている結末だが、惨状を見るとどうしても痛々しい気持ちが湧き上がってくる。
絶対に助かるんじゃなく、助ける。この者には生きてもらわねば困るのだから。世界はこの者を中心に回っていると言って過言ではない。
じゃぁ、どうするか。そんなものはもうとっくに決まっている。
「(この
半身から来る指示をコンマ数秒で応えながら、ステラはそう決意した。
と言いながら助手を務めるステラちゃん。
マリンフォードの戦況って曖昧にしか覚えてないので、色々と割愛させて頂きました。え?大将?コビー?黒ひげ?知らない子だなぁ。
次は、IFを挟んでの二年後編です。