気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮) 作:無闇
「エースッ…………ゆめ……い"っ!?」
エースが、おれの兄ちゃんが赤犬のおっさんからおれを守るところで、おれは飛び起きた。
どうやら夢だったようだ。それに安心するおれだったけど、全身に痛みが走った。激痛が襲い、眠気は吹っ飛んでしまった。
うずくまるのも痛むので、暫く同じ体勢のまま動かないでいると、少しずつ痛みは引いていく。そして、ふと“ここはどこなのだろうか?”と疑問が湧いてきた。
さっきまでおれはマリンフォードにいたはず……あれ、エースは助かったのだろうか?記憶が途中からぶっ飛んでいて、よく思い出せない。もし死んだんだったら……。サァアと血の気が引いたのがわかった。
「安心しろ、お前の兄は無事だ」
ふと、耳に心地よい低い声が聞こえてきた。こういうの、なんて言うんだっけ?確かブルックが……あぁ!そうだ、テノール!そう、テノールだ。
顔を向けると、そこにはおれより高い背の奴が立っていた。黄色と黒のパーカーに、斑模様のジーパン、同じ斑模様の帽子を被ったそいつは藍色の髪をしていた。けれどおれはその一風変わった格好よりも、少し暗いこの部屋で映える金色の瞳に目がいってしまった。
「(綺麗だなぁ……)」
まるで夜空に浮かぶ星のようだ。素直にそう思った。
ジッと見つめるおれを不思議がったそいつは首を少し傾げてから、こっちに歩んできた。
「おい、麦わら屋」
麦わら屋とはおれの事か?首を傾げる。
この呼び方どっかで聞いた事あるような……?記憶の片隅にどこか引っかかる、その言葉。さらに首を傾げるけど、少し痛かったのでやめた。
なんとか記憶を引っ張り出して、出てきたのは白い喋る熊とその隣にいた奴。チューリップ頭と一緒に海軍と戦った気がする。名前は……なんだっけ?
「まだ傷は癒えてねぇから、安静にしてろ。最悪一週間はな。お前の事だ、無茶しそうだ」
その言葉にムッとする。
「無茶しねぇよ!」
「嘘をつくな。してねぇなら、何故そんなに傷ついている?」
「ゔっ……」
正論を言われて言葉に詰まる。
子供に言いつけるようなその言葉に頬を膨らますが、相手はため息を吐くだけだった。
そして何を思ったのか、右手を上げてから何かを呟き、そこになかった椅子を置いた。一瞬何をしたのかわからなかったけど、不思議力を使ったのだろう。じゃないと、椅子が一瞬で現れるなんて可笑しい。
「すげぇな!今のどうやったんだ!?」
「……別に能力を使っただけだ」
「はー、お前の能力すげぇな!」
おれとは全然違うな!と笑えば、そりゃそうだろうと苦笑いされて返される。そりゃそうか。
椅子に座り、脚を組む。その動作は何回もしているのか、ぎこちなさは無く自然だった。
それを見ていたおれは、あれ?と首を傾げる。そういえば最初に聞き逃した事があるような気が……………………ってあ!エース!
「なぁ!エースが無事って本当か!?」
思わずそいつの肩を掴んで揺らす。少し身体が痛むが、兄ちゃんの命には代えられない。無事って言ってたけど、本当かどうかもわからない今、おれは必死にそいつを揺らした。
そいつは驚いた顔をしてから、おれを止める。気持ち悪そうな顔をしていたので、少し悪かったかなとは思ったけれど、悪気はないので別にいいかと思う。
「はぁ……さっきも言ったが無事だ」
「本当か!?」
「本当だ。今頃白ひげの船で治療を受けているだろう」
「そっ、か……ははっ、よかった……」
肩から手を離す。
エースが無事。命がある。
最後の記憶はエースが赤犬のおっさんに殴られそうになるところだった。本能的に殺されると思った。けれど、無事……エースは生きてるんだ。
何度も、何度も願った。思った。インペルダウンに入ったときも、エースが処刑台の上にいたときも、何度も、生きててほしいと願った。何度も、絶対助けると意気込んだ。
無事。無事なんだ……おれの願いは、思いは、届いたんだ。
「うぐっ……ひぐっ…………え"ーすぅ、よ"がったぁ、よ"がったぁ」
ポトポトと、シーツに透明なシミが作られる。それがおれの流している涙からできているとわかったのは、頬に使う冷たい感触からだ。
垂れそうになる鼻水を啜り、溢れてくる涙を腕で拭う。それでも、収まる気配は無く、湧き出す地下水のように、大量に溢れ出てくる。
暫くして、涙は止まった。少しまだ鼻水は出てくるが、先ほどよりマシだと思う。
ズズッと鼻を啜り、ずっと頭を撫でたり背中を撫でたりしてくれてたそいつにおれは笑った。
「ありがとな!ずっと撫でててくれて」
「いや、別に思ったことをしたまでだ」
ふいっと顔を逸らすそいつに、苦笑する。捻くれてるんだなぁと思う。
それでもおれにはありがたかったことだ。
「でも、ありがとう。えーと…………なんだっけ?」
「こいつッ…………はぁ、トラファルガー・ローだ」
一瞬呆れられたが、ニヤリと笑ってそいつは名前を言ってくれた。そっか、トラファルガー・ローか。そんな名前なんだなぁ……長ぇなぁ。
「おれはモンキー・D・ルフィだ!」
「あぁ、知っている」
「そっか!よろしくな!とら、とらふぉ、とらふぁ…………トラ男!」
ニカッと笑うおれに、そいつ、トラ男ははぁとまたため息を吐いて、口を開いた。
さっきからため息ばっか吐いてるけど、ため息を吐くと幸せが逃げるって知らないのか?
「……トラファルガーだ」
そう訂正するトラ男におれはまた笑い、そうか!じゃぁトラ男!と答えると、トラ男はまた呆れて、もういいと言ってきた。勝った。
暫く、ニヤニヤと笑うトラ男におれはニコニコと笑いながら話していると、一人の女がこの部屋に入ってきた。ん?誰だ?
「随分と仲良くなってるのね?ロー?」
見るとトラ男と全く同じ格好のした女がいた。
同じ帽子、同じパーカー、同じズボン。そして同じような大太刀。
ニヤリと笑うその姿も、その服装と相まってとても似ていて、まるでトラ男を女にしたような感じだった。
「なんだ、ステラ。傷はもういいのか?」
「ふふっ。貴方、私が普通の人より治りが早いって知ってるでしょ?」
クスクス笑う姿は、まるでロビンのよう。
おれが惚けてそいつのことを見ていると、そいつがおれの視線に気づいたのか、こっちを向いて笑った。どこかで見たような笑顔だ。
「一度会ってるけど、初めましてかな?麦わら屋さん」
「おう!お前!シャボンディでトラ男と一緒にいた奴だろ!」
「えぇ。よく覚えてるわね……」
そいつはトラ男をチラリと見て、トラ男とそいつは同時に息を吐いた。なんだ?
「(記憶力がいいのか、悪いのか……)……じゃ久しぶりにしておくわ。久しぶりね、麦わら屋さん。私はトラファルガー・ステラ。よろしく」
「おう、よろしくな!けど、お前トラ男にそっくりだなー!トラ男を女にしたみてぇだ!」
おれがそう問いかけると、トラ子(トラ男の女版みたいなもの!)は、不機嫌そうにそっぽを向いた。
「……一応、ローとは兄妹だから……妹なのは複雑だけれど」
「何言ってるんだ、ステラ。世間がそう決めたから諦めろ」
「そう言って、本当は嬉しいのでしょう?ローニイサマ?」
「…………棒読みほど悲しいものはないな……」
がっくしと肩を落とすトラ男に、それを見て笑うトラ子。トラ子はナミにも似てるんだなぁ……。
トラ子はこっちに歩いてくるとおれの体をまじまじと見て、机の上にあった板を取りそれをまたまじまじと見ていた。何が書いてあんだ?
こてん、と首を傾げるとトラ男の苦笑した声が聞こえた。そっちを向くと、呆れたような表情をして、あの板について説明してくれた。
「あれはカルテという、患者の状態が書かれた紙だ」
「患者……おれのことか?」
「そうだな。今この艦に患者はお前しかいない」
ふーん。と返して再びトラ子を見る。何やら真剣に悩んでいるようで、たまに首を捻ったりしていた。そして弾かれるように顔を上げるとトラ男の方を向いて、そのカルテってやつをトラ男に向けて、ある場所を指した。
「これ、本当なの?」
「あぁ、本当だ。俺は内科医ではないが、そんな俺ですらわかる事実だからな」
「…………そう」
ん?なんだ?おれに何かあるのか?
首を傾げたが、肝心のトラ男とトラ子は苦笑するだけで教えてはくれなかった。なにかが引っかかる。
けど、別におれは知らなくて良い事なんだろう。気にしないでおく事にした。
その後、一時間か二時間、もっとずっとだったかも知れないけど、トラ男とトラ子と話すのは楽しくてあっという間に時間が過ぎていった。仲間以外にこんな事は初めてで、おれは嬉しくてずっとニコニコしてたかもしれねぇ。
けど、それぐらい楽しかったんだ。
エースも無事だと分かったし、今夜は良い夢見れそうな気がした。
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眼が覚めると隣にトラ男がいた。
最初に見た顔がその隈が濃い顔で、なんだか嬉しくなって、笑ってしまった。トラ男はなんか怪しい奴を見るような顔をしてこっちを見てたけど。
「おはよう!トラ男」
「あぁ、おはよう」
おはようの挨拶をすると、ニヤリと笑いながらもそう返してくれた。それも何だか嬉しくて、ニコニコとしてしまう。なんか、おれ変だ。
おれが起きたのを確認したトラ男は設置してある電伝虫で何処かに電話をした。相手はすこしテンションの高い男の声。船長!という声が聞こえたから、この艦のクルーなんだろうか。
しばらくすると、白いツナギを着た奴が入ってきた。その手にはお盆がある。
トラ男にはコーヒーとおにぎり。おれにはトロピカルジュースと同じくおにぎりだ。
何でこの組み合わせなんだろう?サンジがこのジュースを出すときは大抵はゼリーとか、これだけなのに。不思議に思うが、多分おにぎりはトラ男と合わせたんだな。また嬉しくなる。
「いっただきまーす!」
トラ男のおにぎりより三倍ぐらいデカイおにぎりは一口で食べれる大きさだ。
それが三つ。三口で食べれるが、二、三回はちゃんと齧って噛もう。サンジに怒られるもんな。
そんなおれを見てトラ男は苦笑し、二つしかないおにぎりの内一つを頬張る。何処からか取り出したのか、新聞を広げていた。朝刊だろう。いつもナミが読んでいるのと同じものだ。
黙々と新聞を読んでいたトラ男だけど、視線はそのままにふと話しかけてきた。
「……お前はこれからどうする?」
意味がわからない言葉だった。
だけど、これからどうすると聞かれてもおれのやる事は決まってる。
「そりゃエースも助けられたし、仲間たちとまた集まって冒険に……-----」
また集まる?シャボンディ諸島に?
脳に蘇るのはあの光景。
大将に文字通り手も足も出せず、あのクマに助けてもらわなければ死んでいた。
レイリーのおっさんはあの大将と互角だったけど、少なくともあれぐらいじゃないと海賊王にならないとわかった。
誰にも囚われない、誰にも負けない、世界一自由なのが海賊王なんだから。
海軍に捕まってしまったら意味がないのだから。
「どうする?三日後に集まる約束は果たせそうにないが?」
なんでトラ男がそんなことを知ってるのかわからないけど、トラ男の言う通りだ。
もう既に三日は過ぎている。ここがどこかわからないけど今から行こうとも、間に合わないのはわかってる。気づかないうちに約束を破ってしまった。
けど、おれは。
「おれは……強くなりたい!みんなを守れるぐらいに、つよく」
そうだ。強くなりたい。
もう、あんな思いはたくさんだ。
クマみたいな奴がおれたちを助けてくれたのはわかってる。彼奴がいなかったら、今頃おれたち全員死んでいたかも知れないこともわかってる。
だけど、悔しかったんだ。
なす術もなく、消え行く仲間を見て、おれは。
悲しかったんだ。
トラ男がフッと笑った。静かな部屋に響くそれはおれの耳に入ってきた。
下げていた顔を上げてトラ男を見ると、いつものニヤリとした顔でこっちを見据えていた。
「くくっ、そうだ。外にレイリー屋がいるが」
「え!レイリーのおっさんが!?」
「あぁ」
ニヤニヤと笑いながらもトラ男が告げた言葉におれは驚いた。レイリーのおっさんが来ている。
おれの船のコーティング?だっけ、それを任せてそのまま帰らなかったから怒っているだろうか?
「俺たちがここにいるとどうやってわかったのか知らねぇが、まぁ会っといて損はないだろう?」
そうニヤリと嗤うトラ男を見て、おれはまた嬉しくなってニカリと笑った。
トラ男はおれが何をしたいのかわかるのかな?でないとこんな事聞かないし。
何故か顔を赤くしたトラ男が、歩いたりご飯食べたりするぐらいなら動いても大丈夫と言った。つまり動いてもいいってことだ。
ベットから起き上がり、トラ男の案内で甲板まで出る。丁度昼時なのか、知ってる奴らがトラ男のクルーらしき奴らに飯を配ってた。
「おはよう!ルフィ!」
「おはようの巻ねー!」
「おはよ〜う」
「おう!お前ら久しぶりだなぁー」
本当に久しぶりに感じる。
たった数日前の話なのに。ドタバタし過ぎて、あっという間だった。
というか、マーガレットたちがいるって事は、ここアマゾン・リリーか!。
「るっふぃ〜〜!!」
「おわっ!」
トラ男たちの船から陸に上がったおれが辺りを見回していると、後ろから抱きつかれた。
この声やこの態度で誰なのかはもうわかる。
「ハンコック!久しぶりだな」
「はぅうっ!い、今妾の名前をッ!?これが結婚!?」
「違うわいッ!!」
「ゔっ!」
「あ、婆さん!」
婆さんもいたのか。
相変わらずの杖叩きだな。おれも何回やられたか。
「小僧、レイリーの奴が会いたがっていたぞ」
「ルフィ、妾、ルフィの為にたっくさん食事を用意したのじゃ、だから、その…………」
「おう!ありがとう、ハンコック!」
「はぅわっ!」
何故か胸を押さえて倒れたハンコックに首を傾げながらも、おれは用意されてる飯の所へ行った。ハンコックの妹たちが案内してくれて、ついて行ったらそこに見たことのあるおっさんが。レイリーのおっさんだ。
その隣には、青い体のデカイ魚のようなおっさん……って。
「ジンベイもいたのか!」
「おぉ!ルフィ君、元気になったのか!よかったよかった」
おれと同じように包帯が巻かれているジンベイにおれは疑問に思ったけど、トラ男が説明してくれた。
曰く、おれと共に任せられたらしい。
誰が運んでくれたのだろうか。途中から記憶が飛んでるからわからない。けれど、トラ男が上半身しかない赤っ鼻だったと言ったから、多分バギーだと思う。あいつ嫌な奴だけどいい奴だもんなー!
うんうんと頷き今度お礼言おうと思いながら、地面に座って目の前にある肉や果物の山盛りに手をつけていく。さっきおにぎり食べたけど、正直足りないと思っていた。やっぱり、ハンコックっていい奴だな。
「ルフィ君」
「ん?」
レイリーのおっさんに声をかけられたので、一回飯を飲み込んでレイリーのおっさんの方に向いた。
出会った時から同じような笑顔でこっちを見るそれは、少し真剣さを感じた。自然とおれの背筋も伸びる。
「まずは……生きていてよかった」
「心配かけて、ごめん」
ここのみんなにも言えることだ。
後でお礼言おう。
「あぁ、良いんだ。ルフィ君のことだ、生きて帰ってくると思っていたよ。それにいい医者もいたしね」
パチリとウインクをする。
「さて、私がここに来たのはある提案をするためだ」
「提案?」
手を止めてたけど、やっぱり我慢できず食事を再開したおれにレイリーのおっさんはクスリと笑って、話の続きをした。
「あぁ。ルフィ君、私と修行でもしてみないか?」
ふと、手が止まった。
今、なんて。
「君と君の仲間が約束した時間はとうに過ぎている。それにどうやらそれぞれ遠くに飛ばされているらしいしね……」
なんでそれを知ってるんだろう。
そんな疑問がふと浮かぶけど、“修行”という言葉と“約束”という言葉におれは目を伏せた。
約束を守れなかった。そんな罪悪感で。
仲間も守れないし、約束も守れない。船長失格じゃないだろうか。
「して、ここからが本題なのだが-----」
それから二日後の朝刊。
その新聞の見出しの写真にはおれの後ろ姿が載っていた。
ごめんな、みんな。約束を守れなかった。
けど、今度は守るから。強くなるから。
それまで…………待っててくれないか?
二年後に、また会おう!!
ここのレイリーさんはちょっとお茶目。
ローとステラが意味深に話してたけど、別にそんな意味深くはないです。ほら、十年分の寿命使うって奴、それ。ホルモンに関係するし、それなりの変化が数値にあるのではと。医学シラネ。
次、待ちに待った二年後です。結構遅くなります、すみません……。