気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮) 作:無闇
1.パンクハザード
“新世界”
それは偉大なる航路、グランドライン後半の海の事を指し、前半の海を生き抜いてきた猛者たちが集まる場所。必然的に実力が高くなる場所でもあり、弱い輩は逃げ出す場所でもある。
新世界へ意気揚々と旅立っても、すぐさま帰って来る者が大半だ。そんな彼らは口を揃ってこう言う。
---パラダイスにいる方がよっぽどいい。
パラダイスとは前半の海の事を言い、新世界という地獄を肌で感じた者達が言う言葉。
前半の海も普通の気候に比べれば、突然降り出す雹やら嵐やらが来るだけ可笑しいと思うが、どうやら新世界はそれの比ではないらしい。
そして新世界にはそんな破天荒な天気に加え、四皇という海賊達最強だと言われている四つの海賊団がいる。まさに地獄。
そんな新世界のとある島。
それは半分が炎に包まれた灼熱の地、半分が一面雪景色の極寒の地にわかれているという何とも奇妙な島だった。
パンクハザード。これがその島の名前であり、海の指針であるログポースが反応せず、地図からも抹消された関係者以外知らない場所。つまりはその者達以外は辿り着けない島だった。
だった、と言うのはついさっきこの島に辿り着いた海賊船が居たからだ。
先程言った関係者とは、所謂政府に属している者達、つまり海軍のことだ。海賊船など、論外中の論外。寧ろ敵対勢力。そんな彼らがこの島に行き着いたのは、偶然の連続であった。
前半の海から新世界へ行くには、海底を行かなければならず、それを越えれば事に出られる。彼らは普通に浮上していたはずだった。しかし、途中で強い海流に囚われ何とか生きて海上へ出たと思えば何処かもわからない場所。そしてその時海賊船の電伝虫に受けた緊急信号。助けてくれ、という言葉。優しい彼らがそれを放って置くわけもなく、導かれるままにパンクハザードへ行き着いたのだった。
海にまで炎が舞うその光景を見ながら、ギャーギャーと騒ぐ一味。
その者達を上空から眺めている人物がいた。
『あらあら、面白い事になりそうね』
クスクスと笑うその姿は見る者を惹きつけそうだが、生憎今の彼女を見る事は出来ない。
何故なら今、彼女は霊体であり、ある人物を除いて見る事も触れる事も感じる事も出来ない状態なのだから。
トラファルガー・ステラ。
かの王下七武海の一人であり、最悪の世代と言われた一人、トラファルガー・ローの妹であり、ハートの海賊団副船長だ。
ふよふよと浮いている彼女は自分の得物、妖刀“啾々”を撫でながらこれからどうするかを考える。彼女は見回りに来ていた。この島の実質の支配者、マスターに命令されて。
別にマスターの部下に成り下がった訳でもないのに命令されたのは癪だが、かのトラファルガー船長の為だ。副船長の彼女は大人しく従っていた。
その体質を活かし、人が好んで立ち入ることのない灼熱の地を見回っていた所だ。何もなしと終えた後で、この海賊船を見つけた。そのメインマストにデカデカと描かれた麦わら帽子を被ったジョリーロジャーを見て、ステラは心底楽しそうに、そして嬉しそうに笑う。
確かこの船の船長はローを好いていたはずだ。恩人だと感謝していた姿を思い出して微笑む。
彼がローのここ二年で増えた眉間の皺を取ってくれるとありがたいのだけれど、とステラは呟きながら今住んでいる場所へと戻る。マスターに報告するためだ。彼女は今日もクスクスと笑いながら言うだろう。問題ない、と。
だって、彼らが来ても自身にとっては何の問題もないのだから。
寧ろ大歓迎である。マスターが問題大有りだと言っても、絶対に言うものか。
これから騒がしくなるぞ、とステラは意気込む。彼らは何時も嵐の中心。それに巻き込まれれば戦闘は免れないだろう。
『ふふっ、協力関係も今日までね』
脳内で自身の半身へと彼らが来たことを伝えながら、ステラはその場を去っていった。
#####
自分の半身から受け取った連絡の内容にトラファルガー・ローはひっそりとため息を吐いた。
まさか、よりにもよってあの麦わら海賊団がこの島に辿り着くとは、面白い事があるもんだ。ローはクスリと笑う。
「何を笑ってるの?」
「……いや、何も」
目の前にいる大小様々な子供達がいる部屋で、まるで伝説上の生き物、ハーピィのような姿をした女性に話しかけられた。これは悟られてはいけないものだ。ローはゆっくりと首を振った。こういう演技は、この二年間の間で染み付いてしまった。二年前は結構やんちゃだったというのに、目的が明確化しているのはこんなにも人を変えるというのだろうか。
ハーピィの女性、モネはそう、と呟いて子供達の方へ振り返った。ローもつられてそちらを向く。
そこにはここの実質的な支配者、
ここにいる子供達の大きさは様々だ。通常サイズと言っていい、百センチ前後の者から、三メートルは優に超えるだろう者達まで。巨人の子供なのだろうか?どうしてここにいるのか。詳しい事を知っているのは、マスターとその秘書モネ、そして協力しているローだけである。
子供達に飴を渡し終えたシーザーは、シュロロロロと独特な笑い声を出しながら、モネとローに近づいていった。
「やっぱりというか、間隔が短くなってきてるわね、マスター」
「確かにな。だが、それはこの飴を渡した時から確定された事実だよ。今更さ。シュロロロロ」
「相変わらず、悪趣味だな」
「シュロロロロ!さすがの“死の外科医”もオレ様の研究は理解できないようだな!」
「あら?ローは理解できないんじゃなくて、しないんじゃないの?マスター」
「それもそうか!シュロロロロロ」
「ふん…………」
愉快そうに笑うシーザーと妖魅な笑みを浮かべるモネを、ローは鼻で笑う。やはり、こいつらとは馬が合わない。ローにとって最も嫌悪する対象だ。まぁ、彼奴と繋がっている時点で、良い連中ではないのは確実なのだが。
ローはもう用はないと踵を翻し、このドーム状の子供部屋から去ろうと足を動かした。シーザーに言われ、ちゃんと浸透しているかどうか確認しろと言われたが、問題なく確実に
ローの能力で、子達は救える。だが、それはローだけでは非力で、ステラの力を合わせてもゼロに等しい。もし、手術を成功させても、ここから逃げられるかどうか……。
〝ステラ〟
子供部屋から廊下へ出たローは、与えられた仮の自室へと向かう。もう少しお世話になるはずだった部屋は、来た当初から少しも変わっていない。
ロー自身、あまり本当に必要な物以外は取り寄せないようにしているため、机と椅子、そしてベットしかない。もう少し娯楽というものを取り入れてもいいのではないか、とステラが小言を漏らすぐらいだ。
そんな部屋へ向かう最中、ローは脳内で自身の妹の名を呼んだ。
麦わらの一味が消えた二年間。世界は二年で色々変わるものである。誰もが変化を遂げ、成長する。麦わらの一味もそうであるように、ロー達も成長していた。この二年で、技のバリエーションは増えたし、実力も増した。
一番の成果と言えば---
〝どうしたの?ロー〟
〝前に言った内容、覚えているか?〟
〝えぇ。覚えているわ〟
〝本日、決行だ。イレギュラーは麦わらの一味だが、ステラはそいつらを見張ってろ〟
〝了解。逐一報告するわ〟
〝頼む〟
こうやって脳内で会話ができるようになった事だろうか。
どういう原理かわからないが、いつの間にできていた。ステラ自体よくわからない存在なのに、これのせいで余計にわからなくなったとはロー談である。
ステラの事は色々調べた事がある。ハートの海賊団を結成して、暫くし落ち着いてきた頃に。ありとあらゆる医学書や、本を集めていたローだが、その中には勿論“悪魔の実”についての本もあった。ローはステラの霊体や実体化と言った体質が悪魔の実由来のものではないかと思ったのだ。似たようなのは見つけた。だが、それではステラが“オペオペの実”の能力を使う事には繋がってはおらず、思わず落胆したのはいい思い出だ。
「さて、作戦開始だ……!」
長年考えてきた作戦を決行する時が来た。
今回はその一歩。
待っていろよ……!ドフラミンゴ!
ローは決意を新たに、自室の扉を開けた。
#####
ローからの命令を了承したステラは、まずマスターの命によって島を見回りしているケンタウロス部隊にある事を頼む事にした。
ふよふよと浮いている自分と違って彼等はローが入れ替えた脚で雪道を歩いて捜索していた。
ちょん、と雪が積もる地に降り立ち実体化する。“ROOM”を発動させ、ケンタウロス達を包み込むように大きくさせると、ステラは彼らの先頭に出るよう、そこにある雪と自分の身体を交換した。
「うおっ!……ってステラの姐さんか。驚かさないでくださいよ、もう」
急に現れたステラに対し、羊の下半身を持つ男は咄嗟に銃を構え、そして解いた。見事な反応速度である。クスクスとステラは笑う。
彼は分隊長。元々一つの海賊団だった彼等は、ある理由で脚を失い、こうして獣の脚で代用している。異種族である動物達の脚を自分の物のように動かせるのは、ひとえにローとステラの能力のおかげであった。自分達を再び歩けるようにしてくれたロー達を恩人だと思っているし、そのローにその事を命じたマスターは彼等のヒーローであった。
分隊長の彼は、船長である茶髭から離れ、手分けして見回りをしていたらしい。彼等の仕事は見回りであり、何か怪しい者がいたら、排除するのが彼等の役目。まぁ、実力的にそれができるのかは、謎だが。
「ごめんなさいね。今日は貴方達にお願いがあって、来たの」
そうステラが告げると、全員がきょとんとしたような顔になる。
その表情を面白おかしく笑いながら、ステラは続けた。
「見回りの報告は一番に私に教えてくれないかしら?」
空から見渡せるのはステラの特権であるが、地の利はケンタウロス達に軍配が上がる。ステラは一人だ。だからこそ、その数ある目を使うのは合理的であった。
ステラの言葉を聞いたケンタウロス達は顔を見合わせた。一体どういう事なのだろうか?自分達はマスターに命令されて、こうして見回りをしているが、何故今この時にそれを言うのだろう。別に最初に会った時でも良かったのでは?
「別に良いですけど、何故なんです?」
皆の言葉を分隊長が代表して問う。その言葉に皆が皆、うんうんと頷いていた。その連携の良さにステラは苦笑しながらも、理由を考える。
正直、問われるとは思っていた。この時期にそう願い出るなんて怪しすぎるからだ。しかし、そうしなければケンタウロス達の誰かが麦わらの一味の誰かに出会えば、戦闘になってしまう。そうなれば、負けるのはケンタウロス達だ。
懸賞金イコール強さ。元海賊だったケンタウロス達の船長の懸賞金は、ルフィよりもかなり下だ。この者達はステラの目から見ても、いい奴らである。善良な海賊と言えよう。例え、一般市民から略奪などしていたとしても、それは昔の話。ステラの知るこの者達は、笑顔で仲間思いの奴らであった。
さて、理由もとい言い訳だが、こう答えよう。
「私は見回り役の実質的なリーダー。マスターへの報告は私から行おうと思うのよ」
勿論、貴方達が発見したって伝えるから。と続けたステラは啾々を担ぎ直す。
ちゃんと見なければ、ローと見間違うような容姿。ステラの方が一回り小さいとはいえ、遠目から見れば誰もが間違うほどである。双子だからだろうか?その仕草もどこか似ていた。
分隊長はステラの言葉に納得した。つまり、パイプ役をステラが担うと言っているのだろう。報告を何回もするわけではなく、ステラが一旦纏める。そうする事で余計な報告をマスターにしないでおける。マスターへの余計な不安を取り除ける。分隊長は、暫くしてわかったと頷いた。
「ありがとう。あ、あと侵入者とかでも私が先にお願いするわ。これでも適切な指示はできる自信があるから」
「わかりました。船長にも伝えておきます」
「お願い」
そう言ったステラは姿を消した。
うぉっ!と会った時と同じような反応をした分隊長は、軽く息を吐く。全く急に現れたり消えたり、この兄妹の力は本当に心臓に悪い。ドキドキと鳴る心臓に手を添えるように、左胸に右手を置いた。
驚く事があまり好きではない分隊長は、ハァと息を吐く。前に彼女に急に現れるのはやめて欲しいと言ったはずなのに。絶対彼女は俺を見て面白がってる!心の中でそうツッコミをした彼は、再び見回りをするために歩き出す。ぶつくさ言う彼は、後ろにいた部下たちの会話が聞こえなかったのだ。
「というかステラの姐さんの用事は、さっきのだけか?」
「そうみたいだなぁ……おれにはさっぱりなんだけど」
「まぁあの人は頭良いしな、医者だし。バカなおれたちにゃ、わかんねぇよ」
「それもそうだ!」
わははははは!と笑う部下の話に、分隊長だけは加わらず、虚空を見つめながら足を進める。ズボリと深くて柔らかい雪に当たってしまい、バランスを崩しかけるが、それすらも気にせず歩き続ける。笑いあっていた部下達は、そんな上司の姿にやれやれと首を振って、大人しくついて行った。
彼女に会った後で分隊長がボーッとなるのは、彼らにとって日常茶判事なのだから、何も気にする事もない。それより、この状況を楽しんでる説もある。
「にしても、ステラの姐さん……」
理由は分隊長が彼女、トラファルガー・ステラの事となると途端に大人しくなり、初恋をしている男子中学生の様になるからだ。
「今日も綺麗、だったなぁー……」
それのどこが面白くないというのだろうか。
部下達はニヤニヤしながら、分隊長を肘で小突き、彼が転けない様に見守りながら、一緒に見回りをするのだった。
彼らの上司茶髭から、侵入者が少し強いから応援を頼む、という連絡が来るのは、この時から数分後の出来事である。
前回の投稿から四ヶ月は経っているという恐ろしき事実。
少しスランプに陥ってたのがいけないのか、そうか、きっとそうだよ!(責任転嫁)
因みにワンピの中で私の好きなキャラは断トツでローとルフィですが、次点でシーザーとバルトロメオです。あの二人はギャグ路線の時が一番好きですね。
次も遅れます。済みません……。