気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮) 作:無闇
『ロー、本当にやるの?』
ステラはローの周りをふよふよと浮かびながら、心配そうな雰囲気で話しかける。
ただそれは雰囲気なだけで、ホントは呆れていた。
ローがコクリと頷いたのを確認するとステラはハァとため息をついた。
『じゃぁ、そこにバッファローがいるから止めてくる』
「!」
ステラの発言に驚いて振り返ると、ステラはすぃーっと空中を移動して遠くへ行く。
バッファローがいたなんて…気づかなかった。
ローは自身の未熟さを実感し、そしてステラに感謝する。
「……」
海岸近くには黒い羽のコートを着た男が新聞紙を広げて一服している。
コラソン。
それがあの男の名前だ。ドンキホーテファミリーの幹部であるコラソンは大の子供嫌い。
出会い頭にローは頭を掴まれ、鉄山に落とされた事もある。その時はステラがわからない程度に実体化し受け止めてくれたので、そこまで怪我はなかったが…ステラが傷ついたことも、何もしていないのに放り投げられた事も含めて、コラソンが憎くなった。
実体化しているステラは他の人と同じように傷はつく。運動すれば呼吸も乱れるし、空中には浮いてはいられない。
自分のために実体化して守ってくれたステラに感謝しつつ、コラソンを睨んだ。
「(あんなクズが生きてていいはずがねぇ…!)」
父も母も妹も亡くし、あまつさえ自身の半身とも言っていいステラを傷つけた。
手に持った刀を両手で構える。そして鉄クズの山を蹴り、一気に加速。
その黒い羽のコートに迫ったところで、コラソンはローの存在に気づいたがもう遅い。
「……っ!!」
肉を突き抜ける嫌な感触と共に、コラソンの口から声にならない悲鳴があがる。
元々声がでないのが、幸いして誰も来ない。バッファローはステラが足止めしてくれている。
スッと勢い良く、刀を抜き逃走する。チラリと後ろを振り向けば、コラソンが脇腹を抑えて悶えている姿が目に入った。
刀は突き抜けたんだ、それぐらいは苦しんで貰わないと可笑しい。ローは内心そう思いながら、鉄山の上を駆けた。
『ロー!バッファロー足止めしてきた!』
遠くからそう声をあげて近づいてくる半身に少しホッとする。
ステラの向こうには頭から鉄山に突っ込んでいるバッファローの姿が。
「どうやったんだ?」
『んー?何かスキップしていたから、一瞬だけ実体化して転けさせたら鉄山に突っ込んだ』
つまりバッファローがバカだったと。
アイスを買えば何でも言うことを聞くバッファローは確かにバカだが、ここまでとは思わなかったとローは呆れる。
けれど、作戦は成功した。港町まで逃走してこの島から出ればいい。
元々フレバンスから脱走するためにこの一団へ着いてきたのだから。
『島から出るのか?』
コクリと頷く。
もう用はない。幹部にしてもらってたくさん人を殺すことが目的だったが…コラソンを殺そうとした時点でドンキホーテファミリーには居られない。
#####
息を少し切れさせながら、走る。
もうすぐ、もうすぐで港町だ。
『あ!ロー!』
ステラの叫び声が聞こえたと同時にヒョイと足が地面から遠ざかった。
つまりこれだけでわかることは、誰かに持ち上げられたこと。
ローは内心舌打ちしながら、持ち上げた本人を見ると絶句してしまった。
「まったく、何処に行く気だったんザマスか?」
「(ジョーラ…!!)」
最っ悪だ!!とローは心の中で叫んだ。
離せと叫んでも離してくれる気配もなく。手足も短い子供が首根っこ掴まれた時点で何もできない。
それでも諦めずに暴れると、ジョーラは手を離してしまった。
ラッキーだと思いつつ闇雲に走る。
『ロー!そっちはダメ!』
「え?」
途端に聞こえた叫び声に振り返ると前方で何かに当たり、尻餅をついてしまった。
何だと思いながらもローは上を見上げると、そこには大柄の男…マッハバイスが立っていた。
「ったく、世話の焼ける子供だイン」
そう言って、ローをひっ捕まえる。
今度は腕を掴まれたローは自身の体重で腕が引っ張られる痛みに顔を顰めながら、暴れた。
「くそっ!離せっ!!」
「マッハバイス、よくやったザマス」
「早く、若様のところへ行くイン」
若様。ドンキホーテファミリーがドフラミンゴを呼ぶ際に使用する呼び名。
それを指すところはつまり、ローをドフラミンゴの前に突き出すということだ。
まさか、まさかまさかまさか!とローは内心冷や汗をダラダラと流す。
『ドフラミンゴにバレたのかな』
ステラが呟いたその言葉に同意せざるえないローである。
そうなればローは消される。それはいいとする。だが、誰も見られて居ないということはコラソン自身がチクったということ。
コラソンは死なず、ローは死ぬ。これでは死に損だとローは歯ぎしりをした。
『私はローには死んで欲しくないけどねぇ』
ローの真上を浮かぶステラは少し悲しそうな顔でそう言った。
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「ロー、お前を正式にドンキホーテファミリーの一員とすることにした」
「!!」
ジョーラとマッハバイスに連れて来られたローはどんな刑が待ち受けているのかと思ったが、言われた言葉が予想していたのと違ったのに唖然とする。
「(どういうことだ?コラソンがチクったんじゃ…)」
『…ローを庇ったのかねぇ』
「(そんなバカなこと)」
思わずコラソンを睨む。
睨まれたコラソンは平然として煙草を吸っているが、暫くすると咳をしローが刺した傷口を押さえた。
そこにはハートが散りばめられたダサいシャツに赤い血が大きく染み込んでいた。一目で怪我をしているのだとわかる。
ドフラミンゴがそのことに追求するが、コラソンは元から字が書かれている紙を取り出し“敵にやられたが、倒した”と嘘をついた。
『ホントに庇ったみたい』
「………」
ローは無言ながらも驚いた顔でコラソンを見る。
その視線を受けながらもコラソンはただ煙草を優雅に吸っていた。
『意味わからない人』
ステラがポツリと呟いた言葉にローは全力で同意した。
ローはステラを半身と認定しているようです。まさにもう一人のボク!(他人)