気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮)   作:無闇

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7.コラさん

 

 

 

 

 

 

六ヶ月の月日が経った。

珀鉛病を治そうと、ひたすらコラソンに連れ回される日々。ローを前にした医者は全員、ローを怖がり軍を呼んだり、逃げ回った。珀鉛病は感染病ではないのに、だ。

コラソンは海岸で一人、ワインをボトルごと飲んでいた。その手には幾つもの地図。そこら中にバツ印がついており、そこは全て病院がある場所の位置だった。

その地図を全て海へ投げ捨てる。その行為を見ていたステラは環境汚染に繋がるぞ!とコラソンに怒鳴っているが、そもそも見えても聞こえてもないので意味がない。

一口、もう一口と酒を飲む。塩を含んだ夜風は熱を帯びた頬を優しく撫で、とても心地よい。

コラソンは今までのことを思い浮かべ、後ろを振り返る。そこには相変わらずのだらしない寝相で、グースカ寝ているローがいた。心なしか、涎も垂らしている。

立ち上がって側による。アルコールで体温が上がっているコラソンにはこの風は気持ちいいが、寝ているローには寒い。乱れた毛布を丁寧にかけてやり、その頬を撫でてやった。

 

「ごめんなぁ…」

 

小さくそう呟く。

その行為を見ていたステラは、コラソンの隣へと座った。霊体だが、物に座ることはできる。

 

「俺…同情してたみたいだ…。10歳そこらのガキが、もう自分が死ぬだなんて言って、可哀想で…っ」

 

ポツリポツリと滴が地面に滴る。

 

「あんとき…俺をお前は刺したけど痛くもなかった…寧ろ痛かったのはお前だよなぁ…ローっ…!」

 

泣いていた。グズグズと鼻をすすり、それでも溢れ出す涙と鼻水。

涙が数滴、眠っているローの帽子に落ちた。

止まらない涙を止めるため、コラソンは立ち上がりまた海岸へと戻っていく。その最中に転けたのはご愛嬌だ。

クスリとステラは笑った。その目は潤っている気がしたが、逆光で見えない。

 

『良かったね、ロー』

 

いい人で。

そっと帽子越しに頭を撫でる。ピクリと肩が震え、それを見たステラはまた笑みを作る。

 

コラソンは気づいていただろうか?

ローが起きていることに。

 

ローは気づいていただろうか?

ステラが泣いていることに。

 

ステラは気づいていただろうか?

コラソンが海へ落ちそうになっていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

#####

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、三人とも寝ていた。

泣き疲れて、目元が少し赤くなっている気がする。朝日が少し眩しい。

ローはもそもそと毛布から這い出る。隣にはステラが横たわっていた。

ローはこの光景に慣れたが、夜中に起きた時は心臓が飛び出るぐらいに怖かった。霊体だからか、暗いところだと仄かに光っているのだ。

考えても見て欲しい、夜中に起きると隣で同じ顔をした発光している幽霊もどきが寝ているのだ、軽くホラーである。

 

「はぁ…」

 

朝だからなのか、少し冷える。吐いた息が白い。

いつの間にか取れたのか、白いファーの帽子が転がっていた。それを拾い被る。しっくりくるように位置を調節してから、目が覚めるように背中を伸ばす。

乱れた毛布を拾い上げ、綺麗にたたむ。隣に寝ていたステラに掛ければいいかと思うが、何故か毛布や布団を掛けても通り抜けしまうのだ。地面や床には寝転がれるのに、どうしてなのかわからないが…ローはいつかその不思議を解明してみたいと常々思っている。

チャリン、と音が鳴る。音の発信源である右下を見る。そこには日に照らされ光るペンダントがあった。思わず胸に手をやる。ない。

 

「……あ、そうか」

 

昨日外して寝たんだった。とローは一人納得した。

ステラとの出会いのキッカケであるハートのペンダント。女物なためにベビー5とバッファローにはからかわれたこともあった。

深い海のような色をしたその宝石は今やローのお気に入りだった。ハートというのは男として少し気に入らないが、宝石はとても綺麗で好きだった。白い世界の中で光るそれは存在間を示していて、どこか世界が色付いた気がしたのだ。

宝石にふぅーっと息をかける。砂埃を被ったそれは、すぐに綺麗になった。服の裾で丁寧に拭き、それから首にかける。完璧。

 

「さて…朝飯だな」

 

この旅が始まった時、子供には任せられないとコラソンが料理担当だった。しかし、料理はできるのだがその料理を一度も口にしたことがない。どうしても、ドジが祟り途中で材料を落としたり、完成しても転けてダメになったりするのだ。

見兼ねたローが料理するようになったのはいつだろうか。このままではいつになっても食べれないのと、空腹だったのと、コラソンのドジっぷりに何かが切れた時だったはず。

ローは父の病院を手伝うのと同時に母の家事も手伝っていた。ローの母も医者であったが、ご飯時はいつも病院を抜けていた。

母の作るご飯には程遠いが、故郷の味…と言うべきなのか、ローが作る料理はどこかそれを再現していて、泣きそうになるとはステラが言っていたことだろうか?ローは首を傾げながらも、早速作ることにする。

作るのは比較的簡単なスープ。具材は釣り上げた魚と山菜。

山菜は少し歩けばある、雑草に見間違う事が多いナズナなどだ。

魚の鱗を取ってから切り分け、次に山菜類を均等に切る。グツグツと温度が上がってきた出汁スープにそれらを入れ、街で買った調味料で味付け。

ロー自身、雪国出身だからかいささか塩気が多い気がするが、ローは慣れた味なので気づくこともなく鼻歌交じりに煮込み始める。

コラソンにしょっぱい!でも美味い!と言われるのは毎度のことだ。

 

『ロー……」

 

その声に気づき、後ろを振り返る。

そこには眠たいのか目をこすりながら、こちらに歩いてくるステラがいた。

寝ぼけているのか、実体化したり霊体になったりしている。その様子を見たローはハァとため息をついて、鍋へと視線を戻した。

 

「寝ぼけてないで、そこに小川があったから顔を洗ってこい」

「うー…ん』

 

ステラは浮いたり歩いてり、おぼつかない足取りで向かう。

ローが指した先にある小川。海の近くなのに、溢れ出すそれはとても綺麗で飲み水にも問題はない。スープの素でもある水はそこから汲んだ。

 

「……コラソンは…まだ寝てるか」

 

チラリと後ろを見るが、そこには黒いモコモコが上下に揺れていた。寝ている証拠だ。

スープがぐつぐつと煮立ってきたところで、火を止める。一つの椀に鍋から具材をすくってからスープを入れた。湯気が鼻腔を擽る。とてもいい匂いだ。

顔を洗ってスッキリして帰ってきたステラに椀と箸を渡してから、ローは自分の分もすくって入れた。

 

「美味しい!」

「当たり前だ」

 

ふふっと笑いながら食事をするステラの言葉に頷くロー。

そのあと黙々と食べていた二人だが、沈黙に耐えられなくなったのか、ステラとローはまた話し始める。

最初に話しかけるのはいつもステラだ。話題作りは苦手だが、ローは話しかけないと喋らないことが多い。それは昔からで、最近笑顔を作っても心の底から笑った事がない今でも同じだ。

 

「そういやね、コラさんが昨日の夜崖から落ちかけそうな体勢で寝てた」

「…ドジにも程が有るな……って、え?」

「だよねー。その後、私が実体化して安全なところまで運んだんだから…大変だったよ」

「待てステラ…今、コラさんって」

 

生来のドジってやだねー。と深々とため息をつくステラ。相当苦労したのだろう、その目には生気が宿ってなかった。

しかし、ローにはそんなことはどうで良く、今し方ステラが口にした呼び方の方に問題があった。

思わず食事をやめ、ステラを見やる。あったかいスープに頬を緩めるステラはローの視線には気づいていない。しかし言葉は聞こえてたため、はふはふと白身魚を口に運びながら答える。

 

「コラさんって言ったね…あっつ」

「よく冷ましてから食べろよ……で、何でコラソンをコラさんって」

「何かね、あの人そう呼ばれたそうな顔してたし…偽名なのにね…それに」

「…それに?」

「コラ“ソン”よりコラ“さん”の方が語呂がいいと思わない?」

 

あとコラさんは子供好きだしねー。とスープを全て飲み終わったステラはお代わり!と椀を差し出してくる。

呆気に取られていたローだが、やがて苦笑し椀を受け取ってスープをすくった。

 

「それもそうだな…」

 

自分もコラさんって呼んでもいいかなと思っていたことを、ステラには絶対に言わないでおこう。

ローはステラに椀を渡し、自分の分も少し継ぎ足す。

昨日の夜の言葉、ローは嬉しかった。昨日のことでもなく、今まで自分のために病院を調べ、病気を治そうとしてくれたこと。その行動どれもが嬉しかったのだ。

 

「ロー、器洗ってくるけど?」

 

いつの間にか食べ終わったステラにそう言われ、ハッとする。

椀の底に残っていたのは少しだけで、一気に飲み干しステラにありがとう、と言い箸と共に渡す。

いえいえ、と笑顔で小川に洗いにいったステラを見送りながら、ローは冷めてしまった鍋を温めるために火を起こす。

 

「……コラソン、コラさん……コラさん…か……」

 

ふふっと笑う。あのドジっ子を敬うわけじゃないが、何だかいい響きだった。

温めている最中に帰ってきたステラから椀と箸を受け取り、タオルで水分を拭き取る。そしてまだ乾いているタオルの上に逆さまにして置く。

 

「そろそろコラさん、起こした方がよくない?」

「どんな寝相だよ!?」

 

また落ちそうになってる。とステラが差した先には崖に向けて、片腕だけをダランと垂らしているコラソンの姿が。思わず突っ込んだローは悪くない。

ハァと二人してため息をつく。そして笑あった。

 

「実体化したままなのか?」

「うーうん。霊体になるよ』

 

まだ完璧に信頼してないからねー、信用はしてるけどね。とニヒルな笑みを浮かべながら言ったステラは少し大人びていた。

ローは用心深いな、と苦笑いしながらコラソンの側に寄る。

 

「朝だぞ、起きろ!起きろって」

『起きてー!』

「いや、ステラのは聞こえないだろ」

『気分』

「…お前なぁー…」

 

自身の為に泣いてくれたこの人を信用しよう。信頼はまだできないかもしれないけど。

 

「(けど……)」

 

親しみを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

「『起きて!』」

 

 

 

 

 

 

 

こう呼ぼう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『コラさん!!』」

 

 

 

 

 

 

 




ローって実は料理できるんじゃね?な回。
え?ナズナは山菜なのかって?わからないです。
しかし七草粥ではナズナはタネツケバナという植物と間違えられるそうです。
因みに私は料理できません。せいぜいだし巻き卵ぐらいです。
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