気がついたらONEPIECE世界で霊体になっていたんですがこれは(仮)   作:無闇

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8.ステラ

 

 

 

 

 

 

 

《“オペオペの実”の情報が手に入った》

 

そう告げたドフラミンゴの声は相変わらず自信ありげで、喉の奥で笑っているのは通話越しからでもわかった。

“オペオペの実”と言う言葉への反応の仕方は三者三様。

コラソンは絶句し、ローは首を傾げ、ステラはへぇと声を漏らしている。

ドフラミンゴはその実の能力の性質上、一番信頼のあるコラソンに食べるよう命じた。普通の部下なら“一番の信頼”と言うことで歓喜するのだが、生憎コラソンは裏切り者。しかもその言葉の裏に気づいていたため、終始顰めっ面だ。

 

“オペオペの実”

 

人体改造能力。その名の通り、自由自在に改造できる能力。

さらに医者が食えば、その医者が施す医療は奇跡の手術(オペ)となり、どんな難病奇病でも治すことができたと言う。まさに今のローに必要な実であった。

コラソンは喜んだ。この実があればローの病気を治せる!それに医療の知識があるローが食えば適任だと。

コラソンはもう“ナギナギの実”を食べているため、悪魔の実はもう食べることができない。だが、目の前にいる小さな子供にはその素質が十分あった。

それには海軍をドフラミンゴをぶつけ、その最中“オペオペの実”を奪う事が出来ないといけない。

危ない駆け引きだが、コラソンはローの為にすぐさまセンゴクへと連絡を取った。もうすでに彼の中にはオペオペの実を奪う算段がついている。無駄にドンキホーテファミリーの幹部&海軍のスパイをしていない。彼はドジっ子だが、実力は高いのだ。

 

『ロー?大丈夫?』

 

ふよふよと浮かんでいたステラだが、ローの様子が可笑しいのでそう声をかけた。

正直、電話の内容が気になるがそれよりもローだ。彼女の中ではローが最優先。ローの調子が悪ければ治さないと、そう意気込む。

 

「いや、何だかめまっ…い…ぁ」

 

大丈夫だとそう伝えたかったのにも関わらず、ローは急に頭に来た鈍痛によって横に倒れる。

 

『ローっ!?』

 

倒れたローに近寄って、様子を伺う。だらしなく垂れた唾液や鼻水は放って置いて、元々白く珀鉛病により白くなりすぎた肌が青白くなっていた。

額に手をやる。酷い熱。この身体では体温は伝わらないが、何故かそう思った。

チラリとコラソンを見る。彼はまだ電話中だ。ならば、と実体化をして水でタオルを冷やしローの額や首筋に置く。さらには少し水で喉を潤してやり、荷物を枕にして寝かせる。

準備はもう終えていたので、枕にしても問題はない。

珀鉛病の進行が早いとローと二人して話していたので、こうなる事は近々思っていた。だが急すぎる。対処できた、とは言えないが…珀鉛病は取り除くまでは進行を止められない。薬などはない為、こんなのはただの気休めにしかならないのだ。

ふぅーと息を吐いて、また霊体に戻る。そんなに体力を使っていないはずなのに疲れた。なれない筋肉を使ったからなのか?とステラは首を傾げた。

 

「ローぉおお!?!?」

 

今更気づいたか、ドジっ子め。とステラは悪態を吐いた。

コラソンは慌てて立ち上がり近寄る。その顔には焦りが見えており、やはり優しい人だとステラは改めて思った。

今までの旅からも彼の性格が滲み出ており、コラソンはどこまでもお人好しなのだとそう思わされた。ドジっ子でボケ要員だが。

 

「みっ水を!」

 

あ、水ならもうやったのに。とステラは言おうとしたがそもそも霊体だ。伝わらない。

それなら実体化すればいいと思うが、冷静なステラだ。コラソンがこの後どうなるかなんて想像がついていた。彼はドジっ子だ。そんな彼が慌てれば?

 

「どぉわぁっ!!」

 

勿論転ける。そりゃもう盛大に、海に落ちそうなぐらいに。どれだけドジなんだ、とため息を付かざるおえない。

崖から生還した彼はコップを投げ捨てローに近寄って抱き上げる。

 

「あ、れ…?」

 

コラソンのドジっぷりに頭を抱えていたステラは、コラソンが呟いた言葉に気づかなかった。

コラソンはローの額と頭に置かれた濡れタオルの存在に気づき、目を見開く。いつの間に?そう首を傾げた。

ローが倒れた事しか頭になかったコラソンだが、よくよく考えれば荷物を枕代わりにされていることや濡れタオルはいつ、どうやって、誰によって置かれたのか…コラソンは只々首を傾げる。

コラソンがローが倒れているのに気づいたのは、センゴクとの通話を終えた後。荷物がまとめられていた後。この状況を考えるに、ローはまとめた後に…そしてコラソンが通話を終える前に倒れたということだ。その間、その間に誰かがローの世話をしたことになる。背筋が凍った。

何かがいるのか?得体の知れない何かが。

 

「……もしかして“ステラ”?」

『っ!?』

 

いきなり名前を呼ばれ、バッとコラソンの方を振り向いた。

コラソンは相変わらずローを抱きしめたままで、ステラは一抹の不安を覚える。確かにコラソンは優しい、しかも強い。しかし弱い。だから信頼はできない。

 

……本当に?

 

ステラの目の前が暗くなる。

そうじゃない、それはただの言い訳。

 

「いるんだろ!?ステラ!何処だ!?」

 

コラソンは叫ぶ。ローがたまに寝言で呟く名前。そしてローがたまに何もいない場所へと話しかけること。“ステラ”という謎の生命体は見えないことはもうわかっている。幽霊ではないかと言うことも。

会って話がしたい。そして礼を言いたい。それだけで呼びかける。それがステラを苦しめているとは気づかずに。

 

「ローを見てくれてありがとう!少し話がしたいし、ちゃんと礼も言いたい!出てきてくれねぇか!?」

 

何故自分を呼ぶのかわからなかった。ステラは耳を抑えた。抑えたにも関わらず脳内に響く呼ぶ声。

もうやめて、呼ばないで。そう叫んでも彼には聞こえない。

ステラはコラソンが叫び終わるまで、只々無我夢中で耳を抑えうずくまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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人が怖くなったのはいつからだろう?

 

そう首を捻っても、出てくる答えはいつも一つ。

 

“昔から”。

 

昔から?昔からっていつから?

 

そう問われても、小さい時からとか物心ついた時からとかしか言えなかった。

 

物心つく前から、理不尽な暴力にあい、体中に無数の後を作った。顔だけはバレるから、と傷ついた時はなかったけれど、それでも心が痛かった。

二つ下の弟は所謂天才で、私は凡才だった。物を覚えるのにも何回も復習しなくちゃいけないのに、弟は一度で覚える。理不尽な親は当然弟を選ぶわけで。

父からの暴力は日に日に増して行った。身体が出来上がっていくのを待っていたのだろう。小さいまだ非力な子供に大人が暴力を振るえば死ぬ確率があったからだ。殺人者には誰もなりたくはない。自分が第一だから。

唯一与えられた自身の部屋。家から離れた物置部屋。毎日家族がご飯時を終えてから食べ物を取りに行ったが料理は残りカス、冷蔵庫のを取れば殴られる。徐々に私の身体は痩せこけていった。

家に居場所のない私は学校に居場所を求めた。けれど、力の暴力や言葉の暴力に責められた私の心はもう磨り減って行き、教師の優しい声さえ皮肉に聞こえ嫌だった。学食は金がないから食えない。クラスメイトの食べ残しを貰ってもやはり人が補うべき栄養を摂取できなかった。

そんな私の唯一の楽しみはONE PIECEだった。金がないのに何故読めるのかと言われても、近くの書店が新刊は立ち読みOKというわけわからない制度を設けていたからだ。貧乏人には有難かった。

あれはいつだったか?ONE PIECEの新刊が出たからと朝早くから本屋に寄り読み終えたはいいが、遅刻しそうになって自転車を走らせ電車に撥ねられたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の性格は明るい。周囲にはそう思われている。

しかしそれは間違いだ。私がそう“演じている”だけなのだから。

 

死後の世界だと思って辺りを見渡した。だって一面白い世界なんて天国か何かだと思うでしょ?自分の体も霊体になってたのだから。

私は喜んだね、凄いテンションでどうなってんすかぁ!?って叫んだ。それだけ嬉しかったのだ。あの世界から解放された。これからは自由だと。

だからだろうか。話しかけられるまで目の前にいた男の子に気づかなかったのは。

 

トラファルガー・ローと名乗った子供は確かにこの前見た絵の子供バージョンで、ここがONE PIECEの世界だとわかった。

死後の世界じゃないと落胆した。もしかしたら夢かもしれないと。

 

 

 

 

彼の家族は暖かかった。直接は触れられなかったけれど、とても暖かい家庭だった。私の家族にはなかったモノだ。

いつからだろう。実体化できて、ローに改めてとローの母親を紹介させられたのは。

 

“あら?ローのお友達?”

“帰る家がないの?なら一緒に暮らさない?”

 

そう優しい声音で言われた時は、思わず泣いてしまった。

 

“少し消毒液の臭いが酷いけど、そこまで不自由じゃ…どっどうしたの!?何で泣いてっ、ロー!何かしたの!?”

 

ぽろぽろと流れる涙は止められず、夢の中でも涙が流れるなんてと少し笑ったりもした。

消毒液の臭いがするのは生きている自身が病院にいるからだろう。

 

“ステラ、今日はシチューだって。好物じゃなかったっけ?”

 

ローのその言葉に何度も頷いた。

初めて一緒に暮らしていいと言われ、初めてのちゃんとした食事が大好きなクリームシチューで。

涙脆くなってしまうのは仕方が無い事だろう。私は少なくともそう思う。

 

夢なら覚めないで欲しい。

 

切実にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けれど、彼の家族が殺された時嫌でも現実だと思い知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「泣かないで、ステラ。泣くな」

 

そう片頬に感じた温かみでステラは顔を上げた。

目の前には自身と同じ顔の少年がいた。この世界で初めて会った彼。この世界で家族となってくれた人たちの子供。

 

『泣いてない…』

「嘘だろ、泣きそうな顔してんじゃねぇか」

 

泣いてなんかいない。だってつよくなったから。泣くことなんて…!

ステラは両膝を抱える。私は霊体、もう死んでいる。だから、霊体が泣くことなんてない。そう自分に言い聞かせながら、頭を振った。

嫌なことを思い出した。この世界に来る前のこと。もう5年くらい前の事なのに。忘れていたのに。

もう一度頭を振る。脳内から記憶を追い出すように。

しかし、それはローによって邪魔をされた。ステラはハッとして、自身を抱きしめてきたローを見やる。

機から見ればローは可笑しな体制だ。周りに人はいないかと辺りを見回すが、黒いコートを着た大男しかいなかった。自然に身体が強張る。

 

「大丈夫だ、俺がいる」

 

背中を撫でる手が暖かく気持ちが良かった。強張っていた身体も自然と緩んで行く。

ステラは安心して微笑み、そのまま眠った。

 

「コラさん」

 

名前を呼ばれた大男は煙草を思わず落としそうになる。

自分でもわからないぐらいに動揺していたようで、落ち着かせるために一服してからローに返事をした。

 

「何だ?」

「もうステラを呼ばないであげて欲しい」

 

それは…ステラとは関わるな、ということか?

とコラソンは言えなかった。何故か言葉が出なかったのだ。

 

「ステラはこう見えて臆病なんだ、人が怖い。それも大の大人が」

 

こう見えて、と言われてもコラソンにはステラの存在が見えない。

ローが今、ステラの頭を撫でているからそこにいるとわかるのであって、普段はそうもいかない。

 

「そりゃまた、どうして」

「昔、ここに来る前に親に暴力を振るわれたらしいんだ…」

「………」

「普段はこうして、周りから見えないってわかっているから強気なんだけどな…っ!」

「ロー!!?」

 

ステラが寝て安心したのか、ローの身体はグラリと傾く。

熱もまだ引いていないのにも関わらず、こうして動いたからだろう。

コラソンは駆け寄りローを受け止める。

 

「こ、らさん」

「もう喋るな!寝ろ!」

 

小さく首を振る。

 

「ステラが、歩み寄るまで待って欲しい………」

 

そうしたら、多分礼は言えるよ。

 

暫くしてすぅーという可愛らしい寝息が聞こえてくる。

コラソンはローに冷えるからと毛布をかけながらも、終始顰めっ面だった。

 

 

 

 

 

 





\(^o^)/なんだこれ
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