ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~ 作:リィンP
プロローグ
「ほう、【アポロン・ファミリア】に入りたいだと…?はっ、笑わせてくれる。貴様のような田舎者を【アポロン・ファミリア】に入団させるわけがなかろう」
「っ!お、お願いします…!雑用でも何でもしますから、僕を【ファミリア】に入れてくだ―――」
「黙れ、貴様のような弱者はアポロン様に相応しくないと言っているだろう。身の程をわきまえろ、三下が」
「っ…」
「とっとこの場所から去れ。貴様のような者が【ファミリア】の門前にいるだけでアポロン様の名に傷がつく」
「す、すみませんでした…」
***
「どうしよう…あそこの【ファミリア】がエイナさんに紹介された最後の候補だったのに…」
僕、ベル・クラネルがダンジョンに出会いを求めて迷宮都市オラリオに訪れて三日経過した。
この三日間で何をしていたかというと、ダンジョン探索専門の【ファミリア】に所属しようとあちこちの【ファミリア】に訪れていたのだ。
オラリオに到着した初日。
すぐにでもダンジョンに潜ろうと張り切ってギルドに訪れた僕を待っていたのは呆れ顔をしたハーフエルフの受付嬢だった。
「いい?冒険者になるためには【ファミリア】に所属する必要があるの」
「えっ、冒険者登録をすればすぐにダンジョンに潜れるんじゃ…」
「はぁ…キミねぇ、本当に何も知らずに冒険者になるつもりだったの?」
「えっと、冒険者になるには何か必要なものがあるんですか?」
「あのねぇ…【ファミリア】に所属しないということは『恩恵』を授けられていないことなの。そして『神の恩恵』を授かっていない人がダンジョンに潜ることは許されていないわ」
「そ、そうだったんですか。じゃあ冒険者になるためにはまず、どこかの【ファミリア】に入ればいいんですね?」
「そういうこと。一応、私が知る限るのダンジョン探索を専門に行う【ファミリア】のリストを渡しておくね」
「あ、ありがとございます!でも、いいんですか…?」
「これも仕事だからね。それに冒険者が増えることはギルドにとって喜ばしいことだから。だから遠慮せずに受け取っていいからね」
「っ、はい!本当にありがとございます、チュールさん!」
「エイナでいいよ。私もキミのことはベル君って呼ばせてもらうね」
「はい、エイナさんっ!」
何も知らない僕に、親切に色々と教えてくれたエイナさん。
エイナさんはこれも仕事だからと言っていたけれど、それでも僕はこんな優しい人にこのオラリオで最初に出会えたことを感謝した。
それにエイナさんはその後、地理に疎い僕を心配してオラリオの地図を用意してくれたのだ。他にもオラリオに来たばかりの僕を心配して、色々と助言もしてくれた。
初対面でここまで優しく接してくれる人は初めてだったので、僕は凄く嬉しかった。
ここまで親身になってくれたエイナさんを心配させないためにも、彼女が安心できる【ファミリア】に所属しようと心に決めた。
そしてエイナさんから教えてもらったダンジョン探索専門の【ファミリア】に入ろうと、僕はこの三日間オラリオの街を駆け駆けずり回ったのである。
だけど、現実はそこまで甘くない。結果は五十戦五十敗。どこの【ファミリア】も僕の入団を認めてくれなかった。
出身や戦闘経験など聞かれ、全て答えた後に申し訳ないが入団は許可できないと伝えられたところもあった。
だけど、まだそこは全体を見てもいい方だ。中には見た目だけで判断され、ろくに面接もされないまま門前払いされたところもあった。
……正直、そのときは凄く悔しかった。だけど自分の姿を改めて鏡で見たときに、その気持ちもすぐに消えた。だって僕は、どこからどう見ても弱そうだったから。そう考えると、彼らの対応も仕方がないのかもしれない。
僕がどこの【ファミリア】にも入団できない原因はわかった。だけどその原因がわかったところで、どうしようもないのだ。強くなるためには【ファミリア】に入る必要がある。だけどその【ファミリア】に入るためには入団を許可してくれるだけの強さが必要なのだから。
今から身体を鍛えるとしても、誰もが冒険者として認めてくれるほどの実力や肉体を手に入れるためには具体的にどうすればいいのかわからない。
こういうとき熟練な戦士である人に師事するのが一番だと思うが、冒険者に何一つ伝手がない僕には無理だ。
一体どうすればいいのか。色々な考えが頭に浮かぶが、どれもピンと来ない。
「やっぱり、弱い僕なんかがダンジョンで出会いを求めるのは間違っていたのかな…」
視線は自然と下に落ち、無意識に弱音がこぼれてしまう。
鏡を見なくてもわかる。今の僕は凄く暗い表情をしているだろう。オラリオに足を踏み入れたときに想像していた希望に満ち溢れていた未来は、どこにも存在しなかった。
「……これから、どうしよう」
あれほどエイナさんにはお世話になったのに、こんな情けない結果では彼女に合わせる顔がない。
どんよりと沈んだ気分のまま、僕は惰性的に足を進めるのであった。
***
失意に沈み、当てもなくオラリオを歩くベル。そんな彼の存在に気付き、並々ならぬ興味を持った女神がいた。
彼女の名はロキ―――【ロキ・ファミリア】の主神であり、オラリオの頂点に君臨する女神の一人である。
彼女はときおり、気が向くままにオラリオを散策する癖がある。そして今日も団員達に黙ってブラブラしていたところ、ロキは一人の少年とすれ違った。
ベルにとって幸運だったのは、ロキとすれ違ったときに先程の言葉を呟いたことだ。
「やっぱり、弱い僕なんかがダンジョンで出会いを求めるのは間違っていたのかな…」
(ん?)
すれ違う瞬間にベルの呟きを聞いたロキは足を止め、おもむろに振り向いた。
(へぇ…生死を懸けて挑むダンジョンに『出会い』を求める子なんて初めて見たわ。これは久しぶりにおもろい子を見付けたかもしれへんな)
ダンジョンに出会いを求めるなんて、子どもの常識では考えられない。まるで自分達と同じ神々の価値観だ。それだけで十分にロキの興味の対象である。
(パッと見ただの気弱な子どもかと思ったけど、やっぱり人は見かけによらへんな。これやから下界の子は目が離せへん。フフ、この子がどう成長するのか今から楽しみや)
そこまで考えたロキはすぐに踵を返して、離れて行く少年の肩をポンポンと叩いて声を掛けた。
「なぁ自分。行く当てがないならうちの【ファミリア】に入らへんか?」
「え…?」
場違いなほど明るい女神の声に、ベルは素っ頓狂な声を上げるのであった。
***
つい先程まで途方に暮れていた僕であったが、あれからすぐに状況は一変した。
誰かに肩を叩かれて振り向いたら、自分の【ファミリア】に入らないかと勧誘されたのだ。
初めは言葉の意味がわからなかったけれど、時間が経つに連れて自分が勧誘された事実にようやく気付いた。その瞬間、特大の喜びと興奮が僕の心を支配した。
だけど待ちに待ったチャンスを前にしたのに、突然のことで混乱してしまい上手く思考が回らずにいた。
あたふたと慌てるそんな僕を面白そうに眺めていた女神様は、やがて自分に付いてくるように言うと歩き始めたのであった。
まだ状況を把握できない僕だったけれど、急いで女神様の後ろに付いていく。
迷いもなく歩いていく女神様にうっかり離れないように注意しながら、僕は彼女の背を追いかけた。
(朱色の髪をした女神様…そういえばエイナさんが説明してくれた【ファミリア】の主神にそんな神様がいたような…?)
女神様の朱に染まった髪を見て記憶を思い返した僕だったけれど、彼女がどこの【ファミリア】の主神なのか目的地に着くまで思い出すことはなかった。
「ん、見えてきたな。あれが今日から自分が住むところや」
つい最近見たばかりのある建物が周りに見えてきた頃、女神様はある建物を指差してそう言った。その建物は周囲一帯の建物より群を抜いて高く、僕も三日前に訪れたばかりの長大な館であった。
「え、あれってまさか…黄昏の館ですかっ!?」
「んん?なんや自分、いきなり驚いてどないしたんや?」
驚くなという方が無理だ。
黄昏の館―――その建物は僕が最初に訪れた【ファミリア】であり、三日前にエイナから教えられた都市最大派閥の一つ【ロキ・ファミリア】の本拠であるからだ。
「ここはあの有名な【ロキ・ファミリア】のホームではないですか!?えっ、まさか貴女は―――ッ!」
「なんや自分、うちが誰なのか気づいてなかったんかい」
ここでようやく女神様…いや、ロキ様は、僕に自己紹介をするのであった。
「うちは【ロキ・ファミリア】の主神を務めているロキというもんや。気軽にロキたんと呼んでいいで?」
「あぁ―――」
とうとう混乱が頂点に達した僕は、情けないことに意識を失うのであった。
*****
「いやぁ~、久しぶりに死ぬほど笑ったわ!まさか名乗っただけでぶっ倒れるとか、うちでも初めての経験や。流石はうちが見込んだ子や!ほな早速【ファミリア】入団の儀式をやろか!」
「やろうかではないよ、ロキ。いきなり意識のない少年を連れ込んで、一方的に説明された僕等の身にもなってほしい」
ロキは
ロキの奇行は今に始まったことではないが、それでも意識を失った少年を連れてきたことに、フィン達が頭を痛めたのは言うまでもない。
「諦めるしかあるまい、フィン。ロキを主神として契約した時点でこうなる運命は分かっていただろう」
「……ん、ここは…?」
ロキの他に小人族の青年とエルフの女性がそんな会話をする中、意識を失っていたベルは目を覚ますのであった。
「…ふむ、どうやら目を覚ましたようだな」
「おや、そのようだね」
「やっと起きたようやな。それやったら早速『恩恵』を刻むとするか~」
「えっと、あのっ、僕をロキ様の【ファミリア】に入れてください!雑用でも何でもしますから!」
「…ロキ、君は一体何て説明してこの少年を連れて来たんだ?」
「いやぁ、うちはただ普通に勧誘しただけやで?」
「普通に勧誘しただけでここまで下手に出る者はいないだろう」
「はぁ…どうにも君と彼の間で今の状況に齟齬があるようだ。ひとまず彼に話を聞いてみよう。すまないが君、名前は何と言うんだい?」
「ベ、ベル・クラネルです!」
「それじゃあベル、ここに来るまでの経緯を聞かせてくれるかい?」
「は、はい」
フィンにそう促されたベルは、ロキに勧誘されるまでの経緯を説明していった。
冒険者になるためにオラリオを訪れたこと。
『恩恵』を授かるために様々な【ファミリア】を訪問して入団しようとしたこと。 しかし、それら全て尽く断られてしまい途方にくれていたこと。
心が折れかけて目の前が真っ黒になったときに女神に声を掛けられ、勧誘されたこと。
そして黄昏の館を前にして、その女神の正体が都市最大派閥である【ロキ・ファミリア】の主神であると知って、あまりの衝撃でに気を失ってしまったこと。
全ての【ファミリア】から入団を断られたことも言うか迷ったが、ベルは包み隠さずフィン達に話した。
例えそれで自分の評価が地に墜ちようと、こんな自分を誘ってくれたロキに隠し事をしたくないと考えたからだ。
しかし、この場にはベルの話を聞いて彼を情けなく思う者はいない。
ベルの説明を全て聞き終え、場の雰囲気は真剣なものに変化していた。
「これは流石にあかんな。うちの子どもが迷惑かけてホンマにすまん、ベル」
「僕からも【ロキ・ファミリア】団長として団員の非礼を謝罪させてほしい。正規の入団試験も受けさせないで門前払いしてしまい、本当にすまなかった」
「その愚かな応対したい者をすぐに探し、君に謝罪させることを約束しよう。もちろん、それ相応の処罰を与えるつもりだ。本当に申し訳なかった」
自身の【ファミリア】の愚かな行為を聞いて、苦い表情をしたロキとフィン、そしてリヴェリアはベルに頭を下げた。
「あ、頭を上げてくださいっ!僕は全然気にしてないので大丈夫ですから!」
【ロキ・ファミリア】団長である【
【ロキ・ファミリア】副団長である【
第一級冒険者の中でも実力がずば抜けており、世界中に名を轟かしている二人とその主神から謝罪されたことで、ベルは酷く狼狽えてしまった。
「それに、元はと言えばひ弱な見た目をしている僕がいけなくて……えっと、その人は何も悪くなくて…!」
しどろもどろになりながらも、ベルは自分を門前払いした者を必死に庇う。
そんなベルの姿を見て、リヴェリアは思わず優しい笑みを浮かべる。
「そうか。では君の優しさに免じて、処罰を与えるのは止めるとしよう」
「ありがとうございます、アールヴさん!」
「リヴェリアでいい。ここにいる仲間は皆、私のことを下の名前で呼ぶからな」
「は、はい!よろしくお願いします、リヴェリアさん」
「あぁ、よろしく頼む」
フィン達を前にしてガチガチに緊張していたベルの顔に、徐々にだが笑顔が生まれてきた。
そんな彼の変化に気付いたリヴェリアは、何も言わずに優しく微笑むのであった。
「見てみぃフィン、あれが我が子を慈しむときに浮かべる表情や。ママと呼ばれるのも納得やな」
「誰がママだ、誰が」
そんなわけで、ひとまず話は一区切り付いた。そして、ここからがベルにとって
「さて、本題に入ろうベル・クラネル。確かに君はロキに勧誘されたが、それは強制ではない」
「えっ、それはどういう…?」
「君が自らの意思で入団するのなら、僕達は喜んで歓迎するつもりだ。だけど知っての通り、ダンジョンに潜るということは死の危険がある」
「死の、危険…」
「【ロキ・ファミリア】に入るということは、死と隣り合わせのダンジョンに潜り続ける必要がある。君に僕達と一緒に戦う覚悟はあるかい?僕達と一緒に死ぬ覚悟が君にはできているのかい?」
「ぼ、僕は……」
「自分の人生を無駄にしないためにも、今ここでよく考えてほしい」
第一級冒険者のオーラを身に纏ったフィン。彼の言葉はとても重く、ベルの心の深い所に突き刺さった。
(戦う覚悟なんて…死ぬ覚悟なんて本気で考えたこともなかった…)
本物の冒険者の存在を肌で感じたベルの思考は、より深いところに沈んでいく。
(どうして僕は、冒険者になろうと思ったんだ?)
今のベルの瞳には、フィン達の姿は映っていなかった。ベルが見つめる先にあるのは、己のみ。
意識は心の底へと沈んで、沈んで、沈んでいく。
『僕は何故、オラリアに来ようと思ったの?』
――――冒険者になってダンジョンに挑むためだ。
『僕は何故、冒険者になってダンジョンに潜りたいの?』
――――ダンジョンに出会いを、英雄の冒険譚みたいな出会いを求めたからだ。可愛い女の子や、綺麗な異種族の女性と仲良くなりたい。
『本当に?』
…本当に?
『それは祖父が僕に残した願望であって、僕の本当の願いではないだろう?』
――――お祖父ちゃん。両親がいなかった僕の、唯一の家族。
『男ならハーレム目指すのは浪漫だよなー』とか、『ツンデレやクーデレな女の子を助けて仲良くなりたいよなー』とか、たまに何のことだか分からないことを言っていたけれど、僕の憧れの人。
『そう、僕が初めて憧れたのはあの人だ。』
幼いとき、ゴブリンに殺されかけた僕を、颯爽と現れ、百戦錬磨の戦士のようにモンスター達を撃退してくれた。
手に持っていたのは剣ではなく鍬だったけれど、僕には祖父が戦士に見えた。いや、僕を助けてくれた祖父の姿は戦士ではなく、英雄のようだった。
今更ながら、僕が初めて憧れた英雄は、お祖父ちゃんだったんだ。
『それだけ?憧れだけで終わりなの?』
――――僕は…。
『それだけで【ロキ・ファミリア】に入るのかい?そんなちっぽけな思いでダンジョンに挑むつもり?憧れだけで、いつ死んでもおかしくないダンジョンに潜るなんて止めた方がいい』
―――それでも、僕は……。
『もう気づいているのだろう。僕がこのオラリアで本当に叶えたい願いを』
―――――叶うなら。
――――叶うなら!
―――叶うなら!!
僕は祖父のような、英雄譚に出てくるような、誰もが憧れる英雄に。
―――僕はなりたいっ!!
『我ながら子供っぽいなぁ。でも、それが僕の願望だ。さぁ、英雄になるための最初の一歩を今、踏み出そう!』
心の奥底に沈んでいたベルの意識が浮かび上がる。答えは出た。だから、もう迷うことはない。
「―――覚悟ならあります。だから僕を【ロキ・ファミリア】に入団させててください!」
先程まで弱々しかったベルの瞳に、強い意志が宿る。今のベルは無意識のうちに冒険者の顔つきになっていた。
そんなベルの変化にフィンは内心で驚いたが、それをおくびにも出さずに口を開いた。
「君の覚悟は確かに受け取った。しかし君は死を覚悟してまで、ダンジョンに何を求めるんだい?」
命を落とす可能性があるダンジョンに潜る理由は人それぞれだ。
名誉だったり、お金だったり、ただ純粋に強くなりたいなど、人の数だけ理由は存在する。
では、ベル・クラネルがダンジョンに潜る理由は何なのか?
フィンの問い掛けにリヴェリアとロキもベルの答えに注目する。
「…僕は、このオラリアで、ダンジョンに潜って、そしていつかは……」
「英雄になりたいんです!!」
ベルの心からの願いに、その場にいた全員が言葉を失った。
そして、次の瞬間に、三人は一斉に笑い出した。
「ははっ、あはははははははははぁっー!!いやぁ、最高やでベル~」
「こらロキ。あまり笑うのではない、ふふっ」
「あはは、そういうリヴェリアも笑っているよ」
この年になって英雄になりたいなんて、恥ずかしい願望を叫んでしまったベルは、三人が笑っているのを見て、すごく恥ずかしくなった。
あっという間に顔を真っ赤にさせたベルは、その場に崩れ落ちた。
(あぁ、僕は何て恥ずかしいことを…ッ!!うぅ、穴があったら今すぐ隠れたい…)
「いや、すまない。別に馬鹿にしているつもりはないんだ。ただ今までにない独特な答えだったもので…」
「誤解を与えてしまったのなら済まない。ただ私達は、君の答えに感服して笑みを浮かべただけなんだ」
「そ、そうなんですか…?」
「そうやでベル。いやぁしかし、自分を連れて来てホンマによかったわ。うんうん、うちの目に狂いはなかったんやな」
ロキ達は崩れ落ちたベルに―――新たな自分たちの家族に優しく声をかける。
「さぁ、入団試験の結果を伝えるから顔を上げて立ってくれ」
「えっ、今のが入団試験だったんですか…!?」
「その通り。いいかい、ベル?【ロキ・ファミリア】に所属するために必要なのは力でも速さでも頭脳でもない―――戦う覚悟だけだ」
「戦う覚悟…」
「そうだ。それさえあれば、誰でも【ロキ・ファミリア】に入団することは可能だ。例え周りよりいくら能力が劣っていようと、覚悟さえあれば関係ない」
「そして君には戦う覚悟があった。だから入団試験は合格だ」
「そ、それじゃあ僕は【ロキ・ファミリア】に入団できるんですか!?」
「あぁ、君は今日から正式に【ロキ・ファミリア】の一員だ。団長として歓迎するよ」
「もちろん私も歓迎する。おめでとう、ベル」
「ありがとうございます、フィンさん!リヴェリアさん!」
「ベルが無事に入団できてホンマよかったわ。ほな、早速『恩恵』を刻むとするか。ベル、うちに付いてきい」
「はい、分かりましたロキ様っ!」
こうしてベルは見事入団試験を通過し、晴れて都市最大派閥の一つである【ロキ・ファミリア】の一員になるのであった。