ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~   作:リィンP

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バベルでお買い物

 【ロキ・ファミリア】ホーム、黄昏の館の正門。

 ベル、アイズ、レフィーヤの順に正門へと到着し、予定の時間よりも早く全員が集合したのであった。

 

「お待たせしてすみません。皆さん揃いましたし早速買いに行こうと思うんですけど、アイズさんはどこのお店に行くつもりなんですか?」

 

「…【ゴブニュ・ファミリア】のお店に行こうと思うんだけど、どうかな?」

 

 【ゴブニュ・ファミリア】とは鍛冶系ファミリアであり、建築関連の依頼も請け負っている。

 また同業の【ヘファイストス・ファミリア】に規模では劣るものの、その鍛冶の腕は匹敵していると言われているのだ。

 ちなみにアイズやティオナなどが利用しているお店でもある。

 

 つまり何が言いたいのかというと、冒険者になったばかりの新人(ベル)が踏み入れてよい場所ではないのだ。

 

 レフィーヤにとってアイズさんの言葉を否定するのはとても心苦しいことであったが、やんわりと否定的な意見を返す。

 

「えっ、それはさすがに…。あそこはベルのような新人向きの武器や防具は取り扱っていないと思いますし、もしあったとしても値段は高いはずですよ…?」

 

「…お金の心配なら大丈夫。七百万ヴァリスも持ってきたから、何でも買える」

 

「へぇ~七百万ヴァリスですか…って、えぇっ!?なななっ、七百万ヴァリスですかっ!?そんな大金持ち歩いて、一体ベルにどんな一級品を買うつもりですかっ!?」

 

「…ダメ?」

 

「ダメに決まっているじゃないですかっ!?新人冒険者がそんな高価な装備品をしていたら問題になってしまいますよ!!」

 

「…むぅ、レフィーヤの意地悪」

 

「何を言っているのですかアイズさんっ!自分の実力とかけ離れた武器や防具を装備してはいけないのは、冒険者としての常識じゃないですかっ!?それにっ!それだと武器や防具の性能に頼ってしまい実力がつかなくなってしまうって、私が新人の頃アイズさんに言われましたよっ!」

 

「…そういえば、そうだった。ごめん、レフィーヤ…」

(…ベルに相応しいご褒美を考えるのに夢中になりすぎて、失念してた)

 

 「い、いえ!誰にでも間違いはありますから、アイズさんは気にしないで下さい!もとはと言えば、ベルが新人なのがいけないんですよ!だからアイズさんは悪くありません!まったく、ベルったら…って、ベル?そんな真っ青な顔をしてどうしたんですか?」

 

 憧れのアイズに思わず興奮してツッコミを入れてしまい、しかも謝られてしまったレフィーヤはというと、凄くテンパってしまった。

 そして自分のせいで心なしか落ち込んでしまったアイズさんを慰めるため、レフィーヤはベルに責任を転嫁してしまうのであった。

 

 一方レフィーヤに理不尽な責任転嫁をされたベルはというと、二人の会話を聞いて自分のご褒美を買いに来たのだと遅まきながら気が付き、レフィーヤと同じくテンパっていた。

 

(二人とも、自分の武器や防具にを新調するのかなって思っていたけど、僕のご褒美だったんだ!?た、確かに今朝の訓練でアイズさんから「頑張ったご褒美に、後でプレゼントあげるね」って言われてつい舞い上がっていたけど、まさか武器を買ってくれるなんて…)

 

 ベルは歩きながらも思わず頭を抱えてしまうのであった。

 

(てっきりもっと安価なものを想像していたから、応接間で話していた武器や防具が僕のご褒美だとはまったく気が付かなかった…。これで僕が連れて来られた理由も納得したよ…って、納得している場合じゃない!! 僕みたいな新人のために武器や防具を買ってもらうのはさすがにアイズさんに申し訳ない!!)

 

 ちなみにであるが、レフィーヤも防具をプレゼントしてくれることにベルはまだ気が付いていなかったりする。

 

「あ、あの、アイズさん!そのやっぱり、ご褒美の件はなかったことに…」

 

「…そうだよね。ベルも私みたいな常識がない人から、ご褒美なんてもらいたくないよね…」

 

 ベルのその言葉にもの凄くショックを受けたのか、いつも無表情なアイズが明らかに悲しそうな顔をしていた。

 アイズはガーンと効果音が聞こえてきそうなほど落ち込み、心の中では横殴りの大雨が降り、泣きたい気分になっていた。

 アイズが自分の言葉のせいでもの凄く落ち込んでいるのに気が付いたベルは、慌てて先程の言葉を撤回するのであった。

 

「ち、違うんです、アイズさんっ!僕なんかがアイズさんからご褒美をもらうなんて、図々しすぎるんじゃないかって思っただけなんです!だから、その、アイズさんからご褒美をもらえると聞いたとき…僕はとっても嬉しかったですっ!」

 

「ベル…」

 

 必死になって弁解するベルを見てアイズの心の中での雨は止み、次第に明るい気持ちへとなっていく。

 

「で、でも、さすがに武器や防具だと費用的にアイズさんに悪いです!それに今の僕には、アイズさんのその気持ちだけで十分嬉しかったです!だからご褒美の件は…」

 

「…ふんっ!」

 

「ごほぁッ!?」

 

 ベルとアイズの会話を黙って聞いていたレフィーヤだったが、突如ベルの腹を殴るという暴挙にでた。

 しかも、割りと強めの右ストレートパンチである。

 

「貴方は一体何様ですか?アイズさんが買ってあげると言っているのですから、ベルに拒否権なんてありません。いいから貴方は黙って私とアイズさんからご褒美をもらいなさいっ!」

 

「は、はいっ!!ってあれ、どうしてレフィーヤさんからもご褒美をもらえることになっているんですか?僕、レフィーヤさんにご褒美をもらえるようなことしましたっけ…?」

 

「…そんなの、私の単なる気まぐれに決まってますっ!それと、私とアイズさんから武器と防具を買ってもらえるからといって、あまり調子に乗らないで下さいね、ベル!」

 

「わ、わかりました!!」

 

(しまった…!?ベルに謝られなければならないのに、またしても有耶無耶にしてしまった。これじゃあロキ様の言った通りに…ッ!?)

 

 レフィーヤのパンチのおかげ?で、アイズとレフィーヤから武器と防具を買ってもらうことに納得したベル。

 そんなベルを見て、アイズの表情は心なしか柔らかくなる。

 

「それでですね、もし他にお店の候補がないのでしたら摩天楼(バベル)がいいのではないでしょうか?」

 

「……!確かに、あそこなら新人冒険者向きでも良品が置いてあるはず…」

 

「えっと、摩天楼(バベル)ですか…?」

 

「ベルも行けばすぐにわかりますよ。それじゃあベルの装備品はそこで揃えましょうか」

 

「…うん、そうしよう」

 

 こうして、ベルたち一向は、バベルを目指して中央広場へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 ダンジョンに蓋をするように築かれた超高層の白亜の巨塔、バベル。

 バベルの役割はダンジョンの監視と管理であるが、それ以外の役割を果たす様々な施設が存在している。

 

 例えば冒険者のための公共施設として簡易食堂や治療施設、換金所などがある。

 そして一部の空いているスペースを、色々な鍛冶や商業系ファミリアにテナントとして貸し出されているのだ。

 今回アイズたちは、バベルに出店している鍛冶系ファミリアの中でも最高峰である【ヘファイストス・ファミリア】の武具屋に向かっていた。

 

 【ヘファイストス・ファミリア】――――――。

 オラリオに来て日の浅いベルでも【ヘファイストス・ファミリア】の人気ぶりは知っていた。

 凄く質の良い武具を取り扱っており、【ヘファイストス・ファミリア】で買い物するとなると大金が必要となってくるのだ。

 しかも一番高い武具では、何億ヴァリスもするとか。

 

 バベルに向かう途中、レフィーヤからバベルの説明をされたベル。

 そしてベルの武具を【ヘファイストス・ファミリア】のテナントで買うと聞かされたベルは、大いに慌てるのであった。

 

「そんな有名なお店に、僕みたいな新人向けの武具なんてあるんですか…?」

 

「そこが【ヘファイストス・ファミリア】の、他の鍛冶系ファミリアと異なるところなんです。あそこは末端の職人にもどんどん作品を作らせて、それをお店に並べているんです」

 

「あれ?それっていいんですか…?」

 

「まぁ【ヘファイストス・ファミリア】は特別ですからね…。何でもあそこの主神のヘファイストス様が、未熟な鍛冶師たちに機会を与えるためにこのバベルで作品を出すことを推奨しているみたいです」

 

「…その未熟な鍛冶師が作る武具の中に、思わぬ掘り出し物があったりするの。ベルの武具も、今日はそこから探すつもり…」

 

「そうだったんですか…。このオラリオに来てロキ様にしか神様にお会いしたことないのですが、そんな素晴らしい神様なら一度はお会いしてみたいです」

 

「確かロキ様とも親交があるはずですし、いずれベルも会えると思いますよ」

 

 そんな会話をしているうちに、ベルたちはバベルの門の前までやって来るのであった。

 その門をくぐると、ベルたちの前に白と薄い青色を基調にした大広間が現れた。

 

「ここからはあそこにあるエレベーターに乗って、目的の【ヘファイストス・ファミリア】のお店がある八階に向かいます」

 

「エレベーターですか…?」

 

「…乗ってみれば分かるよ」

 

 いくつも存在している円形の台座、その一つにベルたちは乗り込む。

 レフィーヤが備え付けの装置を操作したかと思えば、台座は地面から離れ浮遊する。

 そのままベルたちを乗せた台座は上へと昇り始めた。

 

「ッ!?浮いてるっ!?」

 

「このエレベーターは、フロア間を行き来するための昇降設備…魔石製品の一種です」

 

「…私も初めて乗ったときは驚いた」

 

 ほどなくして、ベルたちを乗せた台座は八階に到着したのであった。

 

「四階から八階までのテナントは、すべて【ヘファイストス・ファミリア】のお店なんですよ。この八階には先程話した、未熟な鍛冶師の作品がメインに置いてあるんです」

 

「そ、そんなに広いんですか?」

 

「【ヘファイストス・ファミリア】は特別で、他のファミリアのお店はそこまで広くないんですけどね。しかしこれだけの広さがあると、私たち全員で見て回るのは非効率です。そうですね…一時間後にこの場所に集合ということで、それまで各自で探すということにしますか?」

 

「…うん、その方が効率的だね。私が武器を探すからレフィーヤは防具をお願いね?」

 

「あの~僕はどうすれば…?」

 

「…ベルは欲しい武具を見付けたら、それを持ってきていいよ。もし私が選んだ武器よりもベルが選んだ武器の方がよかったら、そっちを選ぶつもりだから」

 

「わ、わかりました」

 

「それじゃあ今から一時間後まで、ベルのために防具を選ぶとしましょうか」

 

「…期待しててね、ベル」

 

「お、お二人に負けないよう、僕も精一杯いい武具を選べるよう頑張りますっ!」

 

 こうしてベルたち三人はその場で別れた。

 アイズは武器が置いてある区画へ、

 レフィーヤは防具が置いてある区画へ、

 ベルは新人向きの武具を扱っている区画へと向かうのであった。

 

 

 

****

 

 

 

 それから一時間後。

 ベルたち三人は各々が厳選した武器や防具をその手に持ち、先程の場所に集まっていた。

 そして各々の選んだ武具を見せ合うのであった。

 

「…それじゃあ、私が選んだ武器から見せるね」

 

 アイズが選んだ武器は、片手剣であった。

 片手剣の中でも細かい分類で言えば、片手用直剣と呼ばれている剣である。刀身は雪のような白色であり、淡く輝いている。剣の柄は銀色をしており、刀身の色と近い。

 その片手剣の銘はその淡雪を思わせるような色合いから≪スノーライトソード≫と名付けられた。

 

 現在ベルが持っている短刀だけでは、大きなモンスター相手に致命傷を与えられない。そのためアイズはナイフ以外の武器もベルに装備してほしかった。

 アイズが選んだ片手剣は、ダンジョンの中層でも十分通用するほどの鋭さと頑丈さを持ち合わせていた。同時に新人冒険者が扱いやすい重さと長さの剣であった。

 そういう理由もあり、アイズはこの片手剣を選んだのであった。

 

「わぁ~、凄く綺麗な剣ですねっ!それに切れ味も鋭そうです!」

 

「さすがはアイズさんですね。新人でも扱える武器の中でも、ここまで高品質のものを選ぶとは…」

 

「偶然、見付けられただけ…」

 

 ベルとレフィーヤに絶賛されたアイズの頬は、少しだけ赤く染まっていた。

 

「でもこんなにいい剣だと値段もけっこう高いんじゃないですか…?」

 

「…うーん、十万ヴァリスくらいするみたい」

 

「意外ですね、この剣なら二十万ヴァリスはくだらないと思ったんですけど…」

 

「…この剣をつくった鍛冶職人が、私が購入すると聞いて値段を安くしてくれたの」

 

「さ、さすがアイズさんですね。ちなみにその職人はアイズさんに何と言って値段を下げてくれたんですか?」

 

「確か…『私の剣をあの剣姫様が買ってくれるなんて大変光栄なことです!もちろん値段もタダでいいです!』って最初に言われたんだけど、お金は全額払うから大丈夫って私が伝えたら…『それじゃあ半額でっ、半額でいいのでお願いします!これ以上は私の誇りにかけて譲れませんっ!!』って言われて、二十万ヴァリスした剣が半額の十万ヴァリスになったの…」

 

 もしこの場にロキがいたら「アイズたんマジパネェ!」と叫んでいたことだろう。

 

「…もしベルが気に入らないのなら、他の武器にするけど…」

 

「いえ、そんなことないですっ!!アイズさんが選んでくれたこの剣、凄く気に入りましたっ!僕、この≪スノーライトソード≫がいいです!」

 

「…そう、それはよかった」

 

 ベルが気に入ってくれたと聞き、アイズは心の底から安堵するのであった。

 

「アイズさんが選んでくれた武器ですので、くれぐれも大切に使って下さいね、ベル?…では、次にベルが自分で選んだ武器を見てみましょうか」

 

「えっ!?もう僕の武器はアイズさんが選んでくれたから、これ以上武器を見る必要はないんじゃ…」

 

「…扱える武器の種類は多いに越したことはない。だから、私に遠慮しないで、ベルが選んだ武器を見せてほしい…」

 

「アイズさん…。分かりました、これが僕の選んだ武器です」

 

 ベルが選んだ武器は、二本の短刀であった。

 その二本の短刀はそれぞれ紅色と蒼色に輝き、どちらの短刀も透明感のある鋭い刀身であり、長さは普通のナイフよりも少しだけ長いくらいだと思われる。柄はそれぞれの刀身の色に近く、刃が紅色の方は赤銅色で、蒼色の方は青紫色であった。

 赤色の短刀の銘は、その刀身の色から≪(くれない)≫と、青色の短刀の銘はその刀身の色から≪(あおい)≫と名付けられていた。

 

 実はこの武器、二本同時に装備しないと本来の切れ味を発揮しないという効果が付与(エンチャント)された短刀であると、店員に説明された。

 なんでもこの短刀を打った本人ですら、どうしてこのような負の効果が付いたのかわからないそうだ。二本装備時の切れ味は中層でも通用するほど抜群であるが、一本だけで使用するとその切れ味は格段に落ちるらしい。

 

 そのような裏事情があるため、今まで売れ残っていた訳ありの武器である。そのためか値段は二本で十万ヴァリスと、中層で通用する武器の中ではとても安かった。

 

―――以上のことをベルはアイズたちに説明した。

 

「確かに質の高いナイフですね。これなら中層でも十分戦えるはずです。…ですがそれは二本同時に装備している場合ですよね?ベルは二刀流でも目指しているのですか?」

 

「は、はい…実はアイズさんと訓練をしたときに、僕には二刀流のスタイルが合っているかもって言われたんです。それで両手で武器を扱えるように頑張ってみようかなって思ったんだけど、ダメだったかな…?」

 

「うーん…ベルには二刀流のスタイルが合っているのですか、アイズさん?」

 

「…うん。私が思うに、ベルに最適な戦闘スタイルは速度と手数にものをいわせた二刀流…相手に攻撃の機会を与えないほどの激しい猛攻(ラッシュ)だと思う。その戦闘スタイル――双刀装備(ダブルナイフ)を極めたら、第一級冒険者(わたしたち)に匹敵するほどの冒険者になるはず…。あくまで私の見立てだけど、どうかな…?」

 

「アイズさん…!ぼ、僕なんかに二刀流を極められるかわかりませんが、アイズさんの期待に応えられるよう精一杯頑張りますっ!!」

 

「ベル…」

(私好みの戦闘スタイルを目指してくれるなんて、凄く嬉しい…。他人の戦闘スタイルに口出しするのはよくないけど、姉弟なら他人じゃないし、別にいいよね…?)

 

「…それじゃあ、その双刀も買おうか」

 

「えっ!?いいんですか!?」

 

「…実は私、片手剣と双刀で最後まで悩んで結局片手剣を選んだの。だからベルが双刀を選んでくれたときは、凄く嬉しかった。…私が買いたいのだから、ベルには遠慮しないでほしいかな…?」

 

「ア、アイズさん…!!ほ、本当にありがとうございますっ!絶対に短刀での二刀流をマスターしてみせますから!」

 

「…うん、早速帰ったら訓練の続きをしようね」

 

「はいっ!!」

 

「…もう買い物は終了した雰囲気になっていますが、まだ私の選んだ防具がありますからね!!」

 

「ご、ごめんなさいっ!?そ、それで、どんな防具なんですか?」

 

「まったく…。私が選んだ防具はこれです。実際に着てみて下さい」

 

 レフィーヤが選んだ防具はロングコートであった。

 そのロングコートは、レフィーヤの故郷にあった森の葉のようなエメラルドグリーン色の生地であり、ベルが装備してみるとその丈は膝下まで達していた。

 ちなみにであるがエメラルドグリーンはエルフが好む色でもあった。

 そのロングコート、≪妖精の抱擁(フェアリー・クロス)≫は、防御力はあまり高くないため中層からのモンスター相手では心許ない防具であるが、実はこのコートには特別な効果が付与(エンチャント)されていた。それは致命的なダメージを受けたときに一度だけこのコートが身代わりとなり、装備者へのダメージを大幅に減らしてくれるというものである。

 

 その効果からもわかるように、何だかんだ言ってレフィーヤもベルのことが心配であったのだ。そのため少しでもベルの生存率が上がるよう、この防具を選んだのである。

 また致命的な攻撃を受けた際、身代わりの効果を発動した、≪妖精の抱擁(フェアリー・クロス)≫は光の粒子となり跡形もなく消えてしまうという欠点も存在した。

 しかしそのときは、また同じものをベルに買ってあげようと考えている、いつものツンツンした態度からからは想像できないほど弟想いの(レフィーヤ)であった。

 

「それで、実際に着てみてどうでしたか?」

 

「はい!僕の体にピッタリで、着心地も抜群…凄く気に入りましたっ!それじゃあ防具はこれにします。本当にありがとうございました、レフィーヤさん」

 

「…まぁこの私がベルのために選んだのですから、気に入るのも当然ですね!」

(ふふんっ、これでベルに年上(あね)としての威厳を示せたはず…!)

 

「ところで、このロングコートの値段はいくらなんですか?」

 

「この≪妖精の抱擁(フェアリー・クロス)≫は、一着三十万ヴァリスですよ」

 

「えっ、そんなに高いんですかっ!?ほ、本当に買ってもらっていいんですか、レフィーヤさん…?」

 

「まさかアイズさんからもらっといて、私からはもらわないということはもちろんありませんよね、ベル…?」

 

 レフィーヤからの重圧(プレッシャー)により、ベルは思わず汗を流した。

 

「ひぃっ!?…も、もちろんですっ!!」

 

「それならよろしい。まったく、ベルは謙虚すぎるんですよ。…それではベルの武器と防具も選び終わったことですし、会計に行きましょうか」

 

 

 こうしてベルは二人の姉からご褒美として、新しい武器と防具を手に入れたのであった。

 


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