ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~ 作:リィンP
正式に【ロキ・ファミリア】へと入団したベルを、自室まで連れてきたロキ。
ロキの部屋に連れてこられたベルはというと、初めて入る女神の部屋に緊張しているようであった。
(ここはベルの緊張をほぐすためにも軽いジョークでも言っとくか!)
「むふふ、それじゃあ上はすべて脱いでそこのベッドにうつ伏せになってな~」
「は、はい!」
ロキに言われるがまま上衣を全て脱いで上半身裸になったベルは、ロキの指示通りにベッドにうつ伏せに寝て、ベルの上にロキはまたがるように座った。
「ロ、ロキ様っ!?ど、どうして僕の上に…!?」
「むふふ~実はなベル、これが【ロキ・ファミリア】入団の伝統儀式なんやで」
「そ、そうなんですか…」
すぐに耳を赤くして慌てだすベルに、これが【ロキ・ファミリア】入団の儀式だと説明(大嘘)したら、簡単に信じてしまった。
さすがのロキも自分の真っ赤な嘘を疑わないベルの純粋な姿に、軽く罪悪感を抱く。
(け、決してうちの心が汚れているわけじゃ…そうっ、ベルの心が純粋すぎるのがいけないんや!一体どんな環境で育ったらこんな純粋に育つんや…)
ロキは自分の人差し指に針をさし、血を浮かび上がらせた。その人差し指でベルの背中に触れ神の『恩恵』、つまり【ステイタス】を刻んでいく。
そしてベルの背中に【ステイタス】が浮かび上がった。
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ベル・クラネル
Lv.1
力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0
《魔法》【】
《スキル》【
・早熟する
・英雄を目指し続ける限り効果持続
・英雄の憧憬を燃やすことにより効果向上
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ロキはベルの背に刻んだ【ステイタス】を見て、今までにない以上に興奮した。
ベルのスキル、【
(スキルの入手自体稀であるのに、まさかまだ冒険をしていないベルがスキルを獲得するとは…)
しかも、今までに聞いたことのない名前から、レアスキルであるとロキは確信した。
レアスキルとはスキル効果が希少であり、総じて、他のスキルよりも一線を超えるスキルのことである。
第一級冒険者の中でも、ロキが知る限りレアスキルを持つものは五人といない。
そして、【
ロキ自身、成長速度を強化するスキルはこの下界で初めて見た。
自分の子にこのような規格外のレアスキルが発現したのなら素直に喜ぶところだが、そう楽観的にはいられない。
自分もそうだが、娯楽に飢えている神々は多い。
そんな神達にベルのレアスキルを知られると、アホのようにちょっかいをかけてくる暇人が絶対に出てくる。
そしていくら【ロキ・ファミリア】の力が強大でも、バカどもは全く気にしないで勧誘してくるのだ。
ロキは思わずため息をつく。
(もちろん、そんなアホにはその場で痛い目に合わせるんやけどな…。さて、どないしよう?)
「あの、ロキ様…?先程から黙っていますが、何か僕、まずいことでもしちゃったんでしょうか…?」
「ん~大丈夫や、もう少しで終わるで~」
兎のようにおびえた眷族の声が、ロキの下から聞こえた。
今のロキはベルの背に腰かけ、自分の神血を用いて【神聖文字】を刻み終わったところだった。
動きを長らく止めたロキを訝しんだのか、ベルが首をひねってロキを仰いできた。
そんな愛らしい眷族の姿を見て、このレアスキルはベルのためにも秘密にするべきだと思った。
ベルは純粋すぎる。今このスキルを本人に伝えても、周りの人たちに隠し通すことなど不可能に近い。
しかも、神々には嘘が通じない。
レアスキルを得たベルは、神々によってすぐに捕捉されてめんどうなことになるのは間違いないだろう。
(ベルが第二級冒険者になるまでレアスキルのことは秘密やな…)
自分の子どもの安全を考える眷族思いの
「ん、契約おしまい。これが記念すべき初めてのベルの【ステイタス】やで~」
「ありがとうございます、ロキ様」
僕はロキ様から渡された用紙を手に取る。そして、初めて見る自分の【ステイタス】に期待に胸を膨らませ、用紙に視線を落とす。
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ベル・クラネル
Lv.1
力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0
《魔法》【】
《スキル》【】
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これが僕の背に刻まれた【ステイタス】だった。
ロキ様の説明によると、【ステイタス】は大きく分けて五つの項目があるという。
自分の真名と契約した主神の名前。
現在の自分の器を表すLv。
五つの基本アビリティである、力、耐久、器用、敏捷、魔力。これらのアビリティには熟練度というものが存在し、上からS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iとなっている。
そして最後の項目は魔法とスキルだ。
正直、魔法というものに憧れていたため、僕も魔法を使えるかも…!とさっきまで思っていた。
しかし、現実は無情である。
僕の魔法のスロットは空欄であったのだ…。
(さっきまで期待していた自分を殴りたい…)
「ん、そない落ち込んでどうしたんや?」
「…ロキ様。僕、魔法の才能ってないのでしょうか?」
「なんや、そんなこと心配してたんかい。ダイジョブ、ダイジョブ。どんな子でも魔法は最低一つ使えるはずや。まぁ本とか読んで知識を蓄える必要があるけどな」
「ちなみに魔道書みたいな例外もあるけどなぁ~」と、答えてくれたロキ様。
(それなら魔法を使いたいという小さい頃からの夢が叶うかもしれないってことだよねっ!よし、今日から頑張るぞ!)
僕は今日から読書を習慣付けしようと心の中で決心した。
「あ、そういえばこのスキル欄のところなんですけど…」
「ん、何か気になることでもあったんか?」
「えっと、スキル欄も空白ですが…」
‘コンコン’
紙に写された自分の【ステイタス】を見て疑問に思ったことをロキ様に聞こうとしたが、唐突な来客を告げるノックの音により、僕の言おうとした言葉は遮られる。
「ん、誰だか知らんが、もう少し待っててくれへんか?」
「…うん、分かった。それなら出直してくる」
「うおっ、その声はアイズたん!?いやいや、アイズたんなら大歓迎や!今終わったから入っていいで!!」
「えっ、ロキ様!?まだ質問の途中じゃあ…」
「さっきの質問には後で答えるから安心してな!さぁ、入っていいでアイズ!!」
「…失礼します」
青い装備を身に付けた、金髪で金色の瞳をしたどこか神秘的な雰囲気をまとった少女が部屋に入室してきた。
その少女は最初にロキ様を見て、次にその横にいる僕を見て顔を止める。
僕の深紅の瞳と、彼女の金色の瞳。
見えない磁力が働いたようにお互いの目と目が合った瞬間、時間が止まった気がした。
こうしてベルは、【