ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~ 作:リィンP
「「「―――!」」」
遠方から木々をへし折る破裂音が聞こえた。
その音はまるで、巨大な何かが森を壊しながらこちらに近づいているように感じた。
「こ、この音って…」
誰もがその音に何かを感じ取ったのか、それぞれ武器を装備し直して臨戦態勢へと移る。
油断なく音がする方角を見つめていたフィン達の視界に、
「何よ、あれ…」
「…ひ、人型のモンスター?」
姿を現した新たな『新種』を見て、ティオネとティオナは目を見開いて思わず呟く。
先程まで戦っていた芋虫型のモンスターも巨大であったが、目の前に現れたそれは、比較にならないほど巨体である。
黄緑色の皮膚という点では芋虫型のモンスターと類似しているが、その作りは芋虫型ではなく人型であった。
「先程の『新種』の上位種かッ!?」
下半身は芋虫型と変わりないが、上半身は人の姿を模していた。
ただし腕は人間とは違い四本存在し、頭の後ろからは管のような器官が何本も垂れ下がっている。
その顔にあたる部分は目も鼻も口もないが、何故か女性の顔であるのが連想できた。
そして真に注目すべきは、あまりにも醜悪に膨れ上がった敵の腹部である。
先程の芋虫型のモンスターの上位種だとしたら、絶命時に身体を破裂させて腐食液を撒き散らすのは当然予測できる。
(あれほどの巨体が爆発したら、ここまで腐食液が届く可能性は高い。…いや、腹にあれほどの体液を溜め込んでいるのなら、確実に僕達は巻き添えを喰らうだろう。なら、ここで取るべき選択は―――)
「おい、フィン!奴の後ろを見ろッ!!」
「ッ!あれは…!!」
フィン達の視界の先に映ったのは、人型のモンスターの後方から現れる芋虫型のモンスターの大群であった。
その数はおよそ五十。数で言えば先程殲滅した群れの半分であるが、今回は芋虫型のモンスターだけではなく、見るからに強敵そうな『新種』が存在する。
(人型の『新種』だけならまだしも、芋虫型の『新種』が多すぎる。これで先程考えた作戦は使えないな…。さて、どうする―――?)
フィンは頭脳をフルに働かせてあのモンスター達を打倒し、かつ被害を最小限に抑える方法を模索する。
「リヴェリア、魔力は残っているか?」
「…すまない、先程と同じ威力を放てるほどの魔力はもう残っていない」
運が悪いことに、リヴェリアは四十九階層での戦闘で魔法を連発したため、この戦闘が始まった時点で魔力は半分も…実際は四分の一も残っていなかった。
そして先の広範囲殲滅魔法で魔力を大きく消費してしまったため、もう一度あれほどの攻撃魔法を放つ魔力は残っていなかったのだ。
「そうか。…レフィーヤ!」
「は、はいっ!」
遠くにいたレフィーヤを呼び寄せたフィンは、早口で質問する。
「魔力はまだ残っているか?」
「はい、九割以上残っています!」
レフィーヤの力強い言葉を聞いて、フィンはこの状況を打破する最良の策を考えた。
そして即座にその作戦を実行する。
「そうか。―――総員聞けッ!!」
全ての団員達はフィンの指示に耳を傾ける。
「アイズは人型のモンスターを抑えろ!ティオネ、ティオナ、ベートの三人は芋虫型のモンスターの足止めに徹しろ!レフィーヤは僕と一緒にここに残れ!他の者は速やかにキャンプを破棄し、最小限の物資を持って撤退しろッ!総員、行動開始ッ!!」
「「「了解ッ!!」」」
フィンの指示が届いた瞬間、即座に行動を開始する。
アイズは人型の、ティオネ達三人は芋虫型のモンスターへと突っ込んで行く。
そして撤退を命令された団員達は、速やかに離脱の準備に入った。
「あ、あの団長…、私は何をしたら…?」
場に取り残されたレフィーヤは、不安そうにフィンを見つめる。
「レフィーヤにはベート達が足止めしている間に、最大威力を誇る魔法を召喚してもらう。それで人型を除く全てのモンスターを仕留めてくれ」
「そ、それは…」
「君の実力ならやれるはずだ、レフィーヤ」
フィンが考えた、被害を最小限に抑えながらも敵に勝利する方法―――その要となる存在はアイズとレフィーヤであった。
もちろんモンスターの群れを足止めするベート達も重要であるが、実力が未知数な人型のモンスターをある時点まで抑え、かつ最後には打倒しなければならないアイズの役目は重大である。
同じく五十を超える芋虫型モンスターを魔法一発で殲滅しなくてはならないレフィーヤの役割も重大である。
先程のように多くの魔導士達で一斉砲撃したいところだが、今回仲間の被害を最小限に抑えるためには必要最低限の人数で殲滅する必要があった。
そして全団員の実力を把握しているフィンは、人型を除く全てのモンスターを殲滅するにはレフィーヤ一人で十分だと判断したのだ。
「わ、私は…」
「―――それとも、君が召喚できる魔法ではあのモンスター達を倒せないと言うのかい?」
「ッ!!」
レフィーヤが有する召喚魔法【エルフ・リング】は、詠唱及び効果を完全把握したエルフの魔法に限り使用することができる―――つまり、オラリオ最強の魔導士であるリヴェリアの魔法を使用することができるのだ。
私が最も尊敬する魔導士の魔法では、五十を超えるモンスターの群れを倒せない―――?
―――否、そんなことがあるはずがない!
(
「―――そんなことはありません!絶対に倒してみせますッ!!」
「よし、どうやら覚悟はできたようだね。敵がこちらを狙って来ても、必ず僕がその攻撃を防ぐ。だからレフィーヤは詠唱を完成させることだけに集中してくれ」
「はい、わかりましたっ!―――【ウィーシェの名のもとに願う】」
覚悟を決めた顔になったレフィーヤは、眼下に群がるモンスター達を見据え、詠唱を開始する。
そんな彼女を守るよう側に立つフィンは、眼下の戦闘をじっと見つめるのであった。
*****
「【目覚めよ、エアリアル】」
再び風を纏い直したアイズは、人型のモンスターへと突っ込んで行く。
自分に向かって来るアイズに気付いたそのモンスターは、顔面部に横一線の亀裂を走らせ、口のようなものを形成する。
そして不気味に開かれた口から、腐食液がまるで弾丸のように撃ち出された。
「―――ッ!」
その放出された腐食液のあまりの速度に驚いたアイズであったが、即座に行動へと移す。
自分に向かって飛んでくる腐食液に対して、風を纏わせた愛剣を一閃する。
風の壁が召喚され、迫り来る腐食液の弾丸を吹き飛ばした。
(―――今度は、こっちの番)
腐食液を防いだアイズは、風を纏わせた細剣を人型のモンスターに向かって振り抜く。
『―――!』
突風が生まれ、人型のモンスターだけを吹き飛ばす。
あまりの巨体にたったの三十メートルしか吹き飛ばすことができなかったが、それでも他のモンスター達から引き離すことはできた。
「流石ね、アイズ!」
「雑魚どもは俺らに任せておけ」
「それじゃっ、行っくよおぉぉ!!」
ティオネ達は芋虫型のモンスターあの群れに突撃し、先程と同じように敵の無力化のみを念頭に置いた戦い方を始める。
(このまま敵を誘導しなくちゃ)
芋虫型のモンスター達と戦うティオナ達から少しでもこのモンスターを引き離すために、アイズはそのまま遠くへと誘い出そうとする。
しかし、アイズの思惑通りに動くほど目の前の敵は甘くなかった。
『―――』
人型のモンスター、その四本の腕がアイズめがけて勢いよく振られる。
しかし振られた腕は射程圏外にいるアイズに届かず、むなしく空を切った。
(ただの空振り…?いや、何かが舞っている…?)
振られた四本の腕からおびただしい量の鱗粉が舞い、辺り一帯を漂う。
極彩色に輝く粒子群が自分を中心に降りそそいだ瞬間、アイズの背筋に悪寒が走る。
直感に従い即座にその場から逃げるアイズ。
拡散する鱗粉の範囲から抜け出す一歩手前で、宙に舞う無数の鱗粉が爆発するのであった。
「なッ!?」
「爆発しただと!?」
「アイズっ!?」
人型のモンスターから放たれた光る粒子群が爆発し、その凄まじい熱気に身体を焼かれるベート達。
彼らは足止めに徹しながらも、爆発に呑み込まれたアイズを心配する。
次の瞬間、ベート達の視界の先に映る煙が突風により吹き飛ばされ、そこから全身に風を纏ったアイズが現れるのであった。
(―――風を纏っていなかったら、今のは危なかった)
アイズは内心で冷や汗を流しながら、再び人型のモンスターへと突っ込んで行く。
『!』
剣を構え接近するアイズに対し、モンスターは四本の腕で迎え撃つ。
まずは足を狙おうと右側の多脚に向かって剣を振り抜くアイズであったが、モンスターは一本の腕を伸ばしアイズの攻撃を防御する。
それなら反対側の足を狙うのみとばかりに即座に斬りかかったが、別の腕が伸ばされ防がれる。
(―――それなら、背後を狙うのみ)
敵に攻撃を防がれても流れるような動きで敵の背後に回り、その背中へと斬りかかる。
しかし一本の腕がアイズの一閃を完全に防御し、残る一本の腕がアイズを攻撃する。
「…っ!」
迫り来る腕に対し持ち前の反射速度で防御するも、ほっと一息つく暇はない。
なぜなら防御に回していた三本の敵の腕が、アイズめがけて振り抜かれたからだ。
「ッ!?」
驚異的な反射速度で二本の腕を剣で防ぐも、最後の一本が間に合わなかった。
咄嗟に【エアリアル】の威力を上げて風の鎧の強度を上げるも、その横薙ぎの攻撃に思いっきり弾き飛ばされる。
風の加護のおかげでダメージはほとんどなかったが、それでも敵との距離は大きく開いてしまう。
(―――しまったっ!?私の考えが正しければ、この敵から距離を空けちゃいけないのに!)
アイズの懸念通り、モンスターは大量の腐食液と鱗粉を放つ。
アイズめがけて一直線に放たれた腐食液を何とか回避するも、先程よりも大量に舞う鱗粉の射程範囲から逃れることはできなかった。
敵に向かって走りながらも身に纏う風の気流を強くし、爆発の衝撃に備えるアイズ。
そして、無数の光粒群は炸裂した。
「―――ッ!!」
幾重もの風の壁を展開したことで直撃こそ免れたものの、決して少なくないダメージを負う。
しかしアイズは受けたダメージを完全に無視し、敵へと斬りかかった。
『!』
人型のモンスターはすぐに二本の腕を伸ばし、アイズの攻撃を防ぐ。
それでもアイズは何度も何度も敵に斬りかかる。
時折迫り来る敵の攻撃をきっちり打ち払い、先程のように弾き飛ばされることはなかった。
(やっぱり…この近距離だと爆粉を使おうとしない)
―――敵の懐に潜り込めば爆発する鱗粉はもちろん、腐食液も自滅を恐れて放てなくなるはず。
そのアイズの予想は見事的中し、モンスターは四本の腕でしか攻撃して来なかった。
ただし流石のアイズであっても、縦横無尽に駆け回る四本の腕を捌くだけで精一杯だった。
こうしてアイズと人型の『新種』との戦闘は、しばらく拮抗状態に陥るのであった。
*****
アイズ達が『新種』の群れと戦っている一方、一枚岩の上にいるレフィーヤは詠唱を紡いでいた。
「【―――至れ、妖精の輪。どうか、力を貸し与えてほしい】」
レフィーヤの足元には山吹色に輝く
そして、その魔法名が紡がれた。
「【エルフ・リング】」
魔法名を唱えた瞬間、魔法円の色が山吹色から翡翠色へと変化する。
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け】」
二つ分の詠唱時間と精神力を犠牲にしてレフィーヤが召喚するのは、彼女が知る限り最強の攻撃魔法―――。
呼び起こすのは全ての存在を凍てつかし、敵の命を刈り取る無慈悲な吹雪―――。
「【閉ざされる光、凍てつく大地―――】」
詠唱の完成が近付くにつれ、翡翠色の魔法円はよりいっそう強い輝きを放ち出す。
爆発的に魔力が高まるレフィーヤ…そんな彼女に危機感を抱いたのか、アイズと戦闘中であるモンスターが動きを見せた。
『―――』
後頭部から生える無数の管が蠢き、一枚岩の上にいるレフィーヤめがけて鱗粉を弾丸のように撃ち出したのだ。
「っ!!」
無数の管が意志を持ったように動いた瞬間、アイズは即座に敵の狙いを看過し、阻止しようと動き出していた。
しかし四本の腕がそうはさせまいとアイズを果敢に攻撃し、アイズをその場に縫い付ける。
「!?」
放たれた極彩色に光る粒子群が、詠唱中であるレフィーヤを狙って勢いよく飛んでいく。
本能的に自分が狙われていることに気付いたレフィーヤは、先程の爆発を思い出して顔を青くする。
―――だが、レフィーヤの側には頼もしい
「大丈夫だ、レフィーヤ。そのまま詠唱を続けて」
フィンは気負いなくレフィーヤに告げ、一歩前に出る。
目を疑うようなおびただしい粒子が目の前に迫っているのを尻目に、フィンは予備の槍を握りしめ、そして―――
―――その槍を全力で投げた。
渾身の力で放たれた槍は恐るべき威力を秘めながら宙を一瞬で駆け、その風圧で眼前に広がっていた鱗粉の壁を押し返す。
そのまま槍は一条の閃光となって、アイズを攻撃していた腕の一本を貫くのであった。
『!?!?!?』
突然腕の真ん中辺りが穿たれ、その痛みで思わず混乱するモンスター。
一方、投擲された槍の風圧で押し返された極彩色の粒子群はというと、誰もいないところで爆発するのであった。
「―――あまり
三.〇六秒。その数字は、本体から放たれた光の粒子が爆発するまでの時間である。
アイズとの戦闘において見せた鱗粉による爆撃、フィンはその攻撃を二回見ただけである法則を看破した。
それは極彩色の粒子群が爆発するのは一定の時間…具体的には放出されてから三.〇六秒かかるということ―――。
そして、一度放たれた鱗粉は敵によって制御されているわけではないということだ。
恐るべき洞察力でそのことに気が付いたフィンは、三.〇六秒以内に何らかの手段で放たれた鱗粉を吹き飛ばせば、爆発に巻き込まれることはないと見抜いていたのだ。
【ロキ・ファミリア】団長、フィン・ディムナ―――
「【吹雪け、三度の厳冬―――我が名はアールヴ】!」
そしてフィンに守れながら、詠唱を完成させたレフィーヤ。
「三秒後に魔法を放つ!ティオネ達は一旦下がれッ!!」
レフィーヤが詠唱を終わらせた一瞬後には、フィンはモンスターの群れを足止めしているティオネ達に下がるよう指示を出していた。
離れた位置で人型のモンスターと戦うアイズを除き、ティオネ達は敵との戦闘を切り上げ、即座に離脱した。
「―――今だ、レフィーヤッ!!」
フィンの号令を聞いて、レフィーヤは『魔法』を発動させた。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
三条の吹雪がモンスターの群れめがけて襲い掛かった。
蒼と白の砲撃が前方のモンスターから次々と凍結させ、辺りは蒼氷の世界と化す。
そしてアイズと戦う人型のモンスターを除き、全てのモンスターは凍り付き、氷像と化すのであった。
「や、やった…?」
「うん、流石はレフィーヤだ。モンスターの群れは全滅だよ。―――残すは、あの上位種だけだ」
フィンがそう告げた瞬間、ドンッと上空に閃光が打ち上げられた。
それは仲間達の撤退完了の合図―――そして、目標撃破の許可でもある。
「それじゃあ僕等も撤退しよう、レフィーヤ」
「は、はいッ!」
「ティオネ、ティオナ、ベートの三人も撤退しろッ!そしてアイズ―――敵の撃破を許可するッ!!」
フィンの言葉を聞いて、アイズは今以上に風の出力を上げる。
そして一条の風となり敵に突っ込んだ。
『―――』
突然速さが増したアイズに、モンスターの反応は遅れる。
今までの速度とは一線を画す加速力で敵の真横を通過したアイズ。
彼女が通り過ぎた一瞬後、片側半分の全ての足が断ち斬られた。
『!?』
何が起こったのか分からないまま、バランスを崩すモンスター。
咄嗟に二本の腕を足代わりにしてバランスを保ったモンスターであったが、アイズの攻撃は止まらない。
通り過ぎた瞬間即座に方向転換し、怯むモンスターに向かって疾走する。
そして一瞬の間に後頭部から生える管をすれ違いざま切断し、四本の腕をその肩口から斬り落とした。
本体から斬り落とされた無数の管と四本の腕は、重力に従い地に落ちる。
地面に落ちた衝撃でふわっと極彩色の鱗粉が宙を舞う。
―――そして三.〇六秒後、爆発が連続して起こった。
『―――ァァァァッ!?』
爆発の連鎖に巻き込まれたモンスターは、その痛みから思わず絶叫した。
一方遠く離れた一枚岩の壁に着地したアイズは、爆破の渦から逃れることができずに悶え苦しむモンスターを見下ろす。
アイズは眼下の敵をその金の瞳で見据え、壁に足をつけた体勢で必殺の構えをとる。
最大出力の風を纏い、最大限まで力を溜めるアイズ。
今から彼女が繰り出すのは、どんな敵でも一撃で打ち破ってきた必殺技―――。
(―――そういえば、まだあの子にこの技を見せていなかったな…)
―――この必殺技を見せたら、ベルは一体どのような反応を見せてくれるだろう。
―――前に魔法を披露したときは失敗してしまったけど、今度は喜んでくれるかな?
今もどこかで戦っているはずの少年の姿が脳裏に浮かび上がり、強敵との戦闘で硬くなっていたアイズの表情も思わず柔らかくなる。
そしてアイズは、主神命名である一撃必殺の技名を静かに唱えた。
「―――リル・ラファーガ」
次の瞬間、金色に輝く大風の螺旋矢が誕生した。
神風と化したアイズが一直線に敵へと飛んでいく。
傷付いたモンスターはアイズの攻撃に直前のところで気付き防御しようとしたが、すでに勝負は決していた。
『―――!!』
特大の風を纏い突き出された銀の細剣は敵を容易く貫き、その胴体に風穴を開ける。
致命傷を喰らった人型のモンスターは、瞬く間に全身を膨張させ一気に破裂させる。
その爆発は、今までの『新種』の自爆とは比較にならないほどの大爆発であった。
―――次の瞬間、世界は灼熱に包まれた。
「アイズっ!」
「アイズさんっ!?」
「…アイズ」
撤退した【ロキ・ファミリア】の団員達の視界が赤く染まる。
先程までアイズとモンスターが戦っていた場所は炎の海と化し、その炎の壁のせいで彼女の姿が確認できなかった。
「…!あれは…」
炎で顔を焼かれながら爆心地を見つめていたフィンの目が見開かれる。
一部の炎が不自然にうなりを上げ、炎の壁が左右に割れた。
燃え盛る炎の海から出て来たのは、金色に輝く瞳と髪を持つ一人の女剣士―――。
一振りの剣で強敵を打ち倒し、灼熱の世界から堂々と帰還するその姿は、まさに【剣姫】―――。
そして彼女の無事を確認できた瞬間、辺りは大歓声に包まれるのであった。
こうして、五十階層の激闘は【ロキ・ファミリア】の完全勝利で幕を閉じた。
これにて一旦、アイズ達の冒険は終了です。
次回からは遂に、ベルの冒険が始まります。