ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~   作:リィンP

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祖父への手紙

 拝啓、お祖父ちゃんへ

 あの日からもう一年。

 この一年…いえ、この数日の間に僕は色々なことを経験しました。僕の今現在についてお祖父ちゃんに伝えたいと思い、この手紙を書きました。

 貴方がいなくなってから毎日泣いてばかりだった僕。

 

 そんな日々が続いたある日の夜、僕は不思議な夢を見ました。

 

 

『男なら泣くな、ベル。お前がいつまでも泣いていたらワシは安心して天国に行けないのだ』

 

『泣いちゃいけないことはわかってるっ!でもっ、僕は泣き虫だからっ、お祖父ちゃんみたく強くないからっ!』

 

『ベル…。お前は今の自分を変えたいか?』

 

『変えたいに決まってるっ!こんな弱い自分なんて嫌だ…!僕は、僕はお祖父ちゃんみたいな英雄になりたいっ!』

 

『…そうか。それならベル、オラリオに行くのだ』

 

『オラリオって、お祖父ちゃんがよく話してくれたダンジョンがある所だよね…?そこに行けば強くなれるの…?』

 

『そこで強くなれるかはお前次第だ、ベル』

 

『僕次第…』

 

『…お前には冒険者としての才能はないのかもしれない。それでもワシはお前が望むのならオラリオに行って欲しいのだ』

 

『お祖父ちゃん…うん、わかった!僕、オラリオに行ってみるよ。そこで冒険者になって強くなってみせるっ!』

 

『うむ、さすがはワシの自慢の孫じゃ。その心意気なら可愛い女の子たちとも出会えるはずよ!』

 

『え、お祖父ちゃん…?』

 

『そして我が孫よ、男の浪漫であるハーレムを目指すのだ!!』

 

『お祖父ちゃんッ!?』

 

 夢の中で祖父とそんなやり取りをした翌日。

 僕は覚悟を決めて初めて村を出て、迷宮都市オラリオへと旅立ちました。

 そしてオラリオ到着後。

 まだダンジョンには潜っていませんが、素敵な人達と出会うことができました。

 ―――――どこの【ファミリア】にも入れてもらえず、路頭に迷っていた僕に救いの手を差し伸べてくれたロキ様。

 ―――――世間知らずだった僕に対し、優しく接してくれたリヴェリアさん。

 ―――――ひ弱で頭もあまり良くなく、覚悟だけしかなかった僕の【ファミリア】入団を許可してくれたフィンさん。

 ―――――そしてオラリオの中でも最強と謳われる、【剣姫】アイズさん。

 【ロキ・ファミリア】に所属することになった僕は、そんな素敵な方々と同じ【ファミリア】になれました!

 今でも昨日起きたことは夢なんかじゃないのかと疑っているくらいです。

 特にアイズさんとの出会いは衝撃的でした。

 

 

***

 

 

 昨夜、ロキ様の部屋にて。

 ロキ様に『恩恵』を刻んでいただいた僕は、部屋に訪れたアイズさんと初めて会いました。

 アイズさんのあまりの神秘的な美しさに、しどろもどろな挨拶になってしまった僕を見かねたロキ様。

 そんなロキ様が僕にお手本を見せていただいたのが、アイズさんが姉になったそもそもの原因でした。

 ロキ様の言葉を聞いた後、固まっている僕をよそにアイズさんは僕の姉になると宣言しました。

 ものすごい美少女から初対面でいきなり姉弟になると言われて、混乱せずにはいられません。

 僕は声を上げて驚きその後しばらく混乱し、あわあわと戸惑ってしまいました。

 

 場の空気は一時混沌と化しましたがすぐにロキ様がまとめました。

 

「そ、それじゃあ、今日からベルが弟でアイズがお姉ちゃんやで!お互い初めは姉弟という関係に慣れへんとは思うが、ベルはアイズのことを弟として頼り、アイズはベルのことを姉として優しく支えてあげてな~」

 

「よ、よろしくお願いします、ヴァレンシュタインさん」

 

「…アイズでいいよ、ベル」

 

「いいんですか…?」

 

「もちろん…姉弟なら名前で呼んで当然だから」

 

「わ、わかりましたっ…ア、ア、アイズさん!」

 

「うん…これからよろしくね、ベル」

 あまりの恥ずかしさにしどろもどろになってしまった僕をアイズさんはじっと見つめ、その端麗な相貌がほのかに微笑みました。

 その微笑を直視して真っ赤になっている僕を不思議そうに見たアイズさんは視線をロキ様に向け、質問しました。

「…ロキ。姉として弟に―――ベルに、何をしてあげたらいい?」

「おっ?なんや、ホンマに今日はやけに積極的やな。これなら、いい姉弟になれそうや」

 

「そうかな…?」

「いつもの自分と比べてみぃ…まぁそれは置いといて、ベルは戦い方を知らんみたいやし、姉として冒険者の戦い方を教えてあげるのはどうや?まぁその期間中はダンジョンに深くは潜れなくなるから、やっぱアイズには無理…」

「うん、わかった。ベルに戦い方を教えればいいんだね?」

「えっ!?あぁ、うん、そうやけど…。 でも本気かアイズ?ダンジョンで戦えるレベルにするためには、最短でも一週間はかかるで?その間ろくにダンジョンには潜れへんのはわかってるんか?」

「うん。自分のことよりも弟や妹を優先するのがいい姉である…ってティオネに聞いたことがあるから。私もベルにとっていい姉になれるよう、できるだけ頑張りたい」

「…ホンマ変わったな、アイズ。これもベルのおかげかも知れへんな。よしっ、それなら明日から早速『ベル・クラネル育成計画』を始めようかっ!!それじゃあ、明日は朝の五時に中庭に集合な!それでええか、ベル、アイズ?」

「わ、わかりました!!」

「…うん、わかった」

「それじゃあ今からベルを新しい部屋に連れていくわ。ちょっと狭い一人部屋だけど、勘弁してな」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 以上のような出来事があり、僕とアイズさんは姉弟になりました。

 そして僕は今日、アイズさんから冒険者としての戦い方を教えてもらえるのです!!

 こんな光栄なことはありません。

 お祖父ちゃん、今まで僕を育ててくれて本当にありがとうございました。

 ベル・クラネルは冒険者としての一歩を今、踏み出していきます!!

 ―――――それじゃあバイバイ、お祖父ちゃん。

 

 

ベルは手紙の最後をそう締めくくり、アイズが待つ中庭へと向かうのであった。

 

 

 

********

 

 

 

 

 その後中庭にて。

 アイズに回し蹴りにより派手に吹き飛ばされ、気を失いかけるベルの姿があった。

(痛いっ、体中がすごく痛いっ!?ダメだ、意識が飛ぶ…。あぁ、【ロキ・ファミリア】に出会いを求めるのは間違っていたのかも、お祖父ちゃん……)

 

『我が孫よ、それは我々の業界ではご褒美だぞ!』

 ベルの意識がなくなる直前、どこからともなく祖父の言葉が聴こえた気がした。

 

(い、意味がわからないよ、お祖父ちゃん…)

 

 こうして訓練を開始して数秒で、アイズにノックアウトされたベルは気絶したのであった。

 

 


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