ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~   作:リィンP

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太陽と黄昏の怪物祭—乱入—

 

 ベルとヒュアキントスが刃を交えた瞬間まで、少し遡る。

 

 観客席から二人の戦闘を見守るレフィーヤたちは、始まった決闘を食い入るように見つめていた。

 

「は、始まったばかりなのに凄い攻撃…!」

 

「惜しい!後少しで一撃入ったのに!」

 

 レフィーヤは初っ端から突っ込んでいたベルの攻撃の速さに驚きを隠せない様子であり、ティオナはもう少しヒュアキントスの反応が遅ければ先制の一撃が決まっていたことを本気で悔しがっていた。

 

「開始直後の急襲…まずは主導権を握ることができたようだ」

 

「へぇ、やるじゃないベル。動きが見違えたわ」

 

 リヴェリアはフィンの思惑通りに戦闘が進んでいることに安堵し、ティオネはベルのステイタスが想像以上に成長していることに感心していた。

 

 そして、ヒュアキントスが防戦一方の展開を興奮しながら見ていたレフィーヤは思わず声をあげる。

 

「このままいけば、ベルが勝つんじゃ…!」

 

「いや、まだ油断はできな状況だ。今はベルが押しているが、対人戦闘経験は奴の方に分がある。もしヒュアキントスがこの状況を乗り切ることができたら、勝負は分からなくなる」

 

 リヴェリアが戦況を冷静に分析する中、流れが大きく変わることが起きた。

 

「あっ!ベルが武器を斬った!」

 

「今までの攻撃で弱った部分を狙って斬るなんて本当に成長したわね、あの子」

 

 ヒュアキントスの長剣を真っ二つにしたことにティオナとティオネは嬉しそうに声をあげる。

 そしてレフィーヤは、これにより勝負が決まったと確信して喜色の表情を浮かべる。

 

「でも、これで…!」

 

「いや、まだだ」

 

 ヒュアキントスは後ろに跳躍し、折れた自身の武器を投擲することでベルの動きを止める。

 そして二人の距離は大きく開くことになり、戦闘は仕切り直しになった。

 

「距離は開きましたけど、相手は武器を失っているし、もうベルの勝ちでは…」

 

「いや、奴は短剣も携帯しているはず…だがあの動きは…」

 

「まさかヒュアキントスの奴、魔法を打つ気?」

 

「えぇ、この状況で魔法!?そんなの無謀じゃん!」

 

 リヴェリア達の予想通り、ヒュアキントスは魔法の詠唱を始める。

 ただし彼が懐から魔剣を取り出し、ベルに向けて発動したのは流石に彼女達にも予想外であった。

 

「ま、魔剣!?そんなの卑怯じゃないですか!」

 

「…いや、装備に関しては特に制限は設けられていない」

 

「つまりそれってどういうこと!?」

 

「この戦いで魔剣を使っても問題はないってことよ」

 

「そんなの…いくらルール上問題ないからといってもベルに不利過ぎますっ!」

 

「レフィーヤ、お前の気持ちは理解できる。しかし今は、ベルを信じて見守るしかない」

 

(今までフィンの読み通り進んでいた展開であったが、ここで外れるとはな…)

 

 実際、フィンはヒュアキントスがこの決闘に魔剣を持ち込む可能性を予測していた。

 ただ、実際に戦闘で魔剣を用いることは『ある例外』を除いてないと予想していたのだ。

 その例外とは、【ロキ・ファミリア】側がベルに魔剣を武装させた場合である。

 

 ベルが魔剣を使用した際へのカウンターとして魔剣を持ち込み、いざというときに使用する。

 しかし、こちらが魔剣を使わなければ彼の方から使うことはないとフィンは判断した。

 

(いや、こればかりは私もフィンと同じ見解だったな)

 

 自分よりLvが低い冒険者に対して多くの観客の前で魔剣を使うことはヒュアキントスにとって耐え難い恥辱である。

 もし魔剣を使ってベルに決闘に勝っても、観客の反応は冷めたものになるだろう。

 何よりも自身のプライドを大切にするヒュアキントスにとって、そのような屈辱的な視線に耐えられるわけがないと思っていた。

 

 しかし、フィン達はヒュアキントスがどれほど主神(アポロン)を想っているのかを読み違えた。

 確かに彼は尊大で高慢でもあるが、自身の誇りよりも主神の威光を何より大切にする。

 敬愛するアポロンのためなら、身を切る覚悟がヒュアキントスには備わっていたのだ。

 

「炎の魔剣…しかも範囲が広いっ!」

 

 ヒュアキントスから放たれた魔剣による攻撃に、レフィーヤは思わず悲鳴を上げる。

 しかし、隣にいるリヴェリア達は冷静であった。

 

「確かに回避は困難だが、ベルには速攻魔法(ウインドボルト)がある」

 

「そうね、見たところ魔剣の威力はそこまで強くないようだし、まだ勝機があるわ」

 

 リヴェリアとティオネの言葉通り、ベルから放たれた速攻魔法(ウインドボルト)により炎の壁は弱まっていく。

 

「よし、ベルの魔法で対抗できたっ!」 

 

「よ、よかった…」

 

「ウインドボルト三発で相殺か…厳しい状況だな」

 

「そうね」

 

 喜ぶティオナとレフィーヤとは対照的に、リヴェリアとティオネの表情は晴れなかった。

 

「えっと、ベルの魔法で魔剣の攻撃を消し去ることができるんですから、大丈夫では…?」

 

「確かにそうだが、相手の目的は魔剣でベルにダメージを与えることではない。魔剣はあくまで魔法を完成させるまでの時間稼ぎだ」

 

「あ…」

 

「ヒュアキントスの魔法が何なのか私も知らないけど、この状況でそれを選択するくらいだから切り札なのは確かよ。おそらく、魔法が完成してしまったら戦況は一気にアイツに傾く可能性が高いわ」

 

「じゃあ、ベルは魔法で魔剣の攻撃を打ち消しながらヒュアキントスに近づいてガツンと一撃を喰らわせればいいってことだ!」

 

「それができれば話は簡単だけどヒュアキントスの奴もここが正念場なのはわかっているはずよ。魔剣を連発してでも、ベルの足を止めてくるでしょうね」

 

 ティオネのその言葉通り、ヒュアキントスは何度も魔剣を振るって炎の攻撃を連発する。

 ベルは速攻魔法(ウインドボルト)で何とか相殺しているが、一向に彼との距離が縮まることはなかった。

 

「マズいな、このままでは…」

 

「相手の魔法が完成しちゃいます…ッ!ど、どうすれば…!?」

 

「まだアイツの魔法を止める方法はあるけど、それにベルが気付くかどうかね…」

 

「ベル…!」

 

 レフィーヤは泣きそうな表情で二人の戦闘を見つめる。

 そんな彼女に、ティオナは明るい笑顔で言葉を掛けた。

 

「大丈夫だよ、レフィーヤ!ベルは絶対に勝つよっ!」

 

「ティオナさん…」

 

「だからそんな表情しないで、明るい顔でベルを応援しようよ!その方がベルもきっと喜ぶよ!」

 

「…はい、わかりましたっ!すぅ…はぁ…頑張れっ、ベル~~~~ッ!!」

 

 レフィーヤの声援がベルに届いたのかは定かではないが、少年の顔つきが変わったことに一部の者達は気付いた。

 

「あの顔は…どうやら覚悟を決めたようだな」

 

「えぇ、それしかアイツの魔法を止める方法はないわベル。恐れずに突っ込むのよ」

 

「いっけぇぇ、ベルぅぅぅ~~~っ!!」

 

 ティオナの大声が闘技場に響いた瞬間、ベルは勢いよく前へと駆けていく。

 もちろん眼前には魔剣により生まれた炎の壁がいくつも存在していたが、それそれに一発ずつ速攻魔法(ウインドボルト)をぶつけ、炎が弱まった部分に身体を突っ込ませて強引に突破していく。

 

「ベル…!!」

 

 レフィーヤは少年の勝利を祈る。

 

 一個の炎の壁を乗り越える度にベルの身体は火に焼かれる。

 いくら炎が弱まった個所を抜けてきているとはいえ、完全にダメージを防ぐことはできない。

 それでもベルは、炎に身体が焼かれる痛みを恐れずに前へ前へと疾走していく。

 

「あと少しだ、ベル」

 

 リヴェリアは少年の勝利を信じる。

 

 残りの魔剣による炎の壁は一枚。

 そして自身が生み出した炎の壁によってヒュアキントスの視界は塞がれ、急接近するベルの存在に気付いていない。

 そして少年はすぐ目の前に迫った炎に風魔法をぶつけ、弱まった炎の隙間に足を止めず突っ込んでいく。

 

「決めなさい、ベル」

 

 ティオネは少年に発破を掛ける。

 

 炎の壁を破って現れたベルの速攻魔法(ウインドボルト)をもろに喰らい、片膝をついて動揺するヒュアキントス。

 しかし流石は上級冒険者であって、手に握っている魔剣を発動させてベルの身体を焼こうとする。

 しかし、あらかじめ読んでいたベルは前方へとスライディングすることで紙一重で避け、相手の懐まで潜り込んだ。

 

「いっちゃえ、ベルっ!!」

 

 ティオナは少年にとびっきりの声援を送る。

 

 咆哮をあげながら放たれたベルの右拳は正確に相手の顎を撃ち抜き、ヒュアキントスの身体を真上と吹き飛ばす。

 そして無防備な状態で宙に浮かぶヒュアキントスに向かってベルは跳躍し、全力の一撃を振り下ろした。

 

「「いっけええぇぇぇッ!!」」

 

 レフィーヤとティオナの叫びが重なる。

 そして、ベルの渾身の一撃によりヒュアキントスは戦闘不能になった。

 ヒュアキントスの意識が完全に失われているこを確認した審判が、決闘の勝敗を告げる。

 

『せ、戦闘終了~~~~!?決闘の勝者は【ロキ・ファミリア】の期待の新人、ベル・クラネルだ───!!』

 

『『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』』』

 

「や、やりました!ベルがやりましたよっ!」

 

「うん!やったねっ!」

 

「ふふ、本当にいい戦いだったわ」

 

「ふぅ…よくやったなベル。ん…?」

 

 ベルの勝利に観客達が歓声を上げて熱狂する中、ふと何か感じたリヴェリアが視線を空に向ける。

 彼女の視線の先…バベルの塔近くの空中に『何か』が見えた。

 

「あれは───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、リヴェリア達から離れた通路付近でウエイトレス衣装の上に灰色のケープを羽織った金髪のエルフの姿が見られた。

 

(…クラネルさん、よく頑張りましたね)

 

 ベルとヒュアキントスの激闘を最後まで見守っていたリューは、少年の勝利に安堵の表情を浮かべる。

 

 元々は怪物祭を見に行ったシルが財布を忘れていることに気付き、店主であるミアの了承を得てリューが届けに来たのだ。

 

(シルに財布を届けるために闘技場までやってきましたが、クラネルさんの決闘を見届けることができたのは僥倖でした。しかし、シルは一体どこに…)

 

 確かにリューはベルの戦闘に集中していたが、この決闘が始まる前まではシルのことをずっと探していた。

 しかし、どこを探しても彼女の姿が見付からず、そうこうしている間にベルとヒュアキントスとの決闘が始まってしまったのだ。

 

(途中で財布に忘れたことに気付き、酒場に戻って私と行き違いになってしまったのでしょうか…)

 

 それならシル本人かアーニャあたりがリューのことを呼び戻そうと闘技場に来ると思われるが、この時間になっても同僚の姿は見られなかった。

 

(クラネルさんの勝利は確認できましたし、ひとまず豊穣の女主人まで戻って……ん、あれは)

 

 踵を返そうとしたリューは、嫌な気配を感じて空を見上げる。

 彼女の見つめる視線の先に、『それ』がいた。

 

「馬鹿な、あれは──!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な、ヒュアキントスが負けた…だと…?ハハ、これは夢に違いない…」

 

 ヒュアキントスの敗北という衝撃的な結果に、アポロンは白い顔をして現実逃避する。

 しかし、もちろん隣にいるロキがそれを許すはずがない。

 

「現実を見ろボケ。お前の子はベルにボッコボコにやられて敗北したんや」

 

「だが、ヒュアキントスの方がレベルは上のはずだ…」

 

「ハッ、下界の可能性を忘れたんかアポロン」

 

「まさか…この短期間でヒュアキントスのステイタスに迫るほどベル君が成長したというのか…!?」

 

「そのまさかや」

 

「そんな…」

 

 ロキの言葉を聞いて、ガクッとアポロンは肩を落とす。

 そんな彼にロキは慈悲なく追撃をかけていく。

 

「あとなアポロン、自分にはこれから二つの選択肢を選んでもらう」

 

「は…?」

 

「うちのファミリアとの戦争遊戯(ウォーゲーム)で、一騎討ちならアイズとの勝負。攻城戦ならファミリア幹部が全員参戦。どちらか好きな方を選んでええで」

 

「な、何を言っているんだロキ…そんなのどちらも選べるわけないじゃないか!」

 

「あ、そう。自分が選べへんのならウチが選ぶな」

 

「お、横暴だ!あまりにも横暴ではないか、ロキ!」

 

「どの口が言ってるんやこのボケ」

 

「ひっ!?」

 

 ロキに鋭く睨まれたアポロンは思わず悲鳴を上げる。

 

「はぁ、今まで横暴な振る舞いをしてきた自分にそんなこと言われるなんてな~。気分悪くなってきたし、ベートにでもカチコミに行ってもらうか~」

 

「そんなの、許させるわけがない!」

 

「ほう、誰が許さないんや?」

 

「だ、誰って…民衆達やギルドに決まっているだろう!いくらお前のファミリアが強大でも、理不尽に他のファミリアへ攻撃したらペナルティが与えられるはずだ!」

 

「──残念だがアポロン、ギルドはロキの味方だ」

 

 いつの間にかアポロンの後ろに立っていたガネーシャが、真面目な声色で発言する。

 

「が、ガネーシャ?どうしてここに…いや、そもそも今の言葉はどういう意味だ」

 

「うむ、俺がガネーシャだ!そしてシャクティ、後の説明は頼む!」

 

 ガネーシャの斜め後ろに立っていた【ガネーシャ・ファミリア】団長シャクティがアポロンの前に進み、冷めた瞳を男神に向けながら口を開く。

 

「ギルドの上層部の一人に【アポロン・ファミリア】から賄賂を貰い、彼らの迷惑行動を隠蔽し、様々な便宜をはかっていた愚か者が存在することがつい先日明らかになった」

 

「なっ!?」

 

「神ウラノスとギルド長の協力もあって、その者は既に捕縛してあり自白も済んでいる。【アポロン・ファミリア】のありとあらゆる悪行も吐いてくれた」

 

「そ、それは…!」

 

「そして、この一件を重く見たギルドは【アポロン・ファミリア】の解散という重いペナルティをくだすことにした」

 

「か、解散ッ!?ま、待ってくれ、これには事情があって…!」

 

「どのような事情があろうとギルドの考えは変わらない」

 

「そ、そんな…!?」

 

「…ところが、そのギルドのペナルティ内容に意見する女神がいた」

 

「え…?」

 

「その女神は、神アポロンにチャンスを与えたいと言ってきて、ギルドはその提案を受理した」

 

 シャクティの口から飛び出す衝撃的な内容にアポロンはどんどん顔色を悪くしていったが、最後の言葉を聞いて一筋の希望が宿る。

 

「おぉ!(そうだ、私にはフレイヤがいた!彼女が庇ってくれたのか!)」

 

「──で、その救いの女神がウチってことや」

 

 しかし、その希望は一瞬で絶望に変わる。

 

「は…?ど、どういうことだっ!?」

 

「いや~、ファミリアの解体じゃウチの気も済まないし、一部の団員達も納得しないと思ってな。だからこそ、そのフラストレーションを発散するために戦争遊戯(ウォーゲーム)を提案したんや」

 

「…ち、ちなみに戦争遊戯(ウォーゲーム)でこちらが負けた場合は何を要求するつもりだ…?」

 

「もちろん主神の強制送還…と言いたいところやけど、ファミリアの解体に加えて都市(オラリオ)追放でギリギリ許してやるわ」

 

「そんなぁ…あまりに酷すぎる…!」

 

「あのなぁ、嘆いてないで早く一騎討ちか攻城戦か選んでくれへん?」

 

「あぁ…!!」

 

 ロキたちのやり取りを黙って見ていたアイズは、絶望して膝から崩れ落ちたアポロンを見て、自身の胸がすくのを感じた。

 

「…!」

 

 勝利を収めたベルのことを優しい表情で見つめるアイズであったが、彼の遥か頭上に現れた『それ』に瞠目する。

 

(あそこにいるのは、まさか──!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(危なかった…ヒュアキントスさんの魔法が発動する前に間に合ってよかった)

 

 倒れ尽くすヒュアキントスを見つめながら、安堵の息を吐いたベルは自身が受けたダメージを確認していた。

 

(いてて、やっぱりウインドボルト一発じゃ魔剣の炎は防げなかったか)

 

 身体の至る所に火傷を負っているが、耐久が高いこともあって見た目ほどダメージは受けていなかった。

 

(ポーションを飲んで回復を…いや、まずはここから退場しないといけないのかな?)

 

 ベルの勝利が告げられてから、辺り一面で歓声が沸いている。

 全て自分に向けての歓声であることにベルは変な気持ちになりながらも、ひとまず舞台から降りようと動こうとした。

 

 ───しかし、まだ舞台から降りることは許されない。

 なぜなら、怪物祭はまだ終わっていない。

 今から現れる『怪物』こそが少年にとっての本当の試練だからだ。

 

「───」

 

「えっ?」

 

 ベルは異質な気配を感じて、おもむろに空を見上げる。

 

 視線の先にいたのは翼を羽ばたかせ、こちらに向かって空を飛んでいる『何か』であった。

 

 歓声を上げていた観客もその宙に浮かぶ存在に気付き始める。

 

「おい、あれってまさかモンスターじゃ…」

 

「そんなわけないじゃない。だってここは地上よ?」

 

「あ、もしかしたら【ガネーシャ・ファミリア】が調教したモンスターとか?」

 

 観客達が疑問を口にしながらも、まだ大きな混乱は見られない。

 正直多くの者がこの状況を正確に理解できておらず、怪物祭の一環だと思い込んでいた。

 

 多くの注目を集める中、翼を羽ばたせ闘技場のど真ん中に降り立った『怪物』は、紫色の瞳をベルに向ける。

 

 ───ミツケタゾ!白イ髪ニ紅目ノニンゲン!

 

『ガアアアアアアァァァァ!!』

 

 目当ての人物を見付けたモンスターは、雄叫びを上げる。

 その咆哮が、ベルにとって新たな戦闘の合図であった。

 

 

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