ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~ 作:リィンP
「おはようさん二人とも~!どうや、ベルの指導は順調に進んでいるんか?…って、何でベルは気絶してんねんッ!?おまけに体もボロボロやし…。ま、まさかアイズの指導がここまで苛烈だとは思わへんかったわ。親は子に似るって言うが、気絶させるほどのスパルタっぷりはリヴェリアに似たんやろうか…」
「こ、これは違うのロキ。実は…」
朝っぱらからの中庭での惨状を見てドン引きするロキ。
そんなロキの誤解を解くためにアイズは慌てて今までの出来事を説明するのであった。
「ふむふむ、話をまとめるとやな…アイズはベルに体術を教えようとしたが力加減を間違えて強く蹴ってしまい、そのまま吹き飛ばせて気絶させたわけか」
「…うん、ベルのことを気絶させるつもりなんてなかったの。ただ誰かをこういう風に指導するのは初めてだったから、どのくらい手加減したらいいかわからなくて…」
「ん~この状況は理解したけど、さすがに初手で回し蹴りはやりすぎやろ…。一応ベルは気を失っているだけで特に怪我はしてへんみたいやけど、次からは気を付けるんやで?」
苦笑いしているロキの言葉がアイズの心にグサッと突き刺さる。
「しかしなぁ…これはけっこうヤバい状況やで、アイズ」
「………?」
苦笑いを止めて真剣な表情になったロキの言わんとしていることがよくわからず、アイズは思わず首をかしげる。
「いくら温厚なベルでも、いきなり気絶されるほどの威力で蹴られたことには怒るやろうな…」
グサグサッ!と、またしてもアイズの心にロキの言葉が突き刺さる。
ロキは次第に顔色を暗くするアイズに気付かないまま言葉を続ける。
「ベルがこのせいでアイズのことを嫌いになっちゃたりしてな~。そうやな…ベルが目を覚ました後に『アイズお姉ちゃんなんて大っ嫌い!!もう僕に話し掛けないで』なぁ~んてことを言われるかもしれへんな…」
グサグサグサグサッ!!!
ベルの声真似をしたロキの言葉を聞いた瞬間、アイズの目の前は真っ黒になった。
(は、初めてできた弟だったのに…。ベルに昨夜から何を教えようか考えるのにずっと夢中だったのに…。何より私は、純粋な白兎との触れ合いにより癒されていたのに…)
アイズの心の中では今、子供姿に戻った自分が泣きそうな顔をして体育座りをしているのであった。
(それなのに私の失敗のせいでベルに嫌われてしまったら、この久しぶりに感じた温かい時間が終わってしまう…!!そんなの、絶対に嫌だっ!)
「っていうのは全部冗談やから安心せいアイズ!…って、アイズ?聞いてるんか、アイズ?」
(どうしよう、どうしよう…。一体どうすれば、ベルに嫌われないで済むかな?)
心の中で子供姿に戻っているアイズは膝を抱えて必死に考え込んだ。
そんな珍しく混乱しているアイズに、ロキの冗談だという言葉は届いていないのであった。
「おーい、アイズ。アイズた~ん。…ダメや、全然聞こえてへんわ。これはちょっとからかいすぎたかなぁ…?」
ロキの呼び掛けにも反応せず、しばらくの間考え込んでいたアイズであったが結局いいアイデアは浮かんでこなかった。
「…ロキ!」
「な、なんや突然…?」
今まで俯いて黙っていたアイズが突然顔を上げて、ロキの名を呼んだ。
有無言わせないアイズのあまりの迫力に、ロキは思わず半歩後ずさってしまった。
「どうすれば…ベルは私のことを許してくれると思う?」
「そ、そうやな…」
(ベルならアイズが謝ればすぐ許してくれそうやし、このことでアイズを嫌いになるとは到底考えられへん…。ここでアイズにこの事実を伝えてもええが、それでは面白味に欠けるな~。…んっ、いいこと思いついたわ!)
「よしっ、それならうちが知っている中でもとっておきの方法を教えたるわ!いいか、アイズ。その方法とはずばり…」
「ずばり…?」
「ひ・ざ・ま・く・ら…や!!」
「…膝枕?」
「そうや!膝枕――つまり自分の膝を使ってベルを寝かせてあげれば、絶対許してくれるはずやで!」
「…そんなことでいいの?」
「もちのろんや!いつの時代も男にとって美少女の膝枕は憧れなんやでっ!!そして男であるベルも美少女であるアイズに膝枕されたら例に漏れず喜ぶやろうな~」
「…そうかな?こんな私なんかに膝枕されたら、ベルは迷惑じゃない…?」
「アイズはもっと自分の魅力に気づくべきや!それに膝枕は古来から伝わる由緒正しい謝罪方法(大嘘)なんやで!」
「…わかった。それでベルが許してくれるのならやってみる」
「ほな、ベルが起きる前に早くやろうか!(むふふ、アイズの膝枕とかレア物すぎる!しっかり堪能するんやで、ベル!)」
こうして天然な
***
今も意識を失い続けているベルへと近づき、アイズはベルの傍に腰を下ろす。
そして、細い腿にベルの頭を乗せ、アイズにとって初めてである膝枕をするのであった。
自分の腿にかかるベルの頭の重さに、どこか新鮮なものを感じるアイズ。
いざロキに言われるがまま膝枕をしてみたが、思っていたよりもその行為が恥ずかしく感じてきたのか、アイズの顔がほんのりと赤みを帯びてくる。
ベルの穏やかな寝顔を眺めていたアイズだったが、思わずその兎のような白い髪を撫でたくなった。
(…少しくらいなら撫でても平気だよね?)
アイズはベルを起こさないように白兎の髪に手を伸ばし、その頭を優しく撫でる。
(…何だか、すごく癒される。でもあまり撫で続けたら悪いかも…。でも、もうちょっとだけなら撫でてもいいよね…?)
幸せそうな顔をしてベルのことを撫で続けるアイズ。
そんな温かな光景を眩しそうに眺めるロキの瞳は、とても優しい目をしていた。
(今のアイズとベル…まるでずっと一緒に過ごしてきた姉弟みたいやな。しかもアイズのあんな幸せそうな顔、随分と久しぶりに見た気がするわ。…アイズを笑顔にさせてくれてホンマにありがとな。これからも期待してるで、ベル)
ロキは心の中でベルに感謝を伝え、アイズたちから静かに離れるのであった。
****************
その後。
アイズはベルが目を覚ますまで膝枕をしたまま髪を撫で続け、幸せな時間を堪能していたのであった。