ロキ・ファミリアに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~リメイク版~   作:リィンP

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兎と狼とアマゾネス

 アイズさんとの訓練終えた僕は、さすがに汚れた服装のまま朝食に出るわけにはいかないため、一度自分の部屋に戻ることにした。

 ボロボロの自分とは対照的に汗一つかいていないアイズさんに「一旦着替えてから食堂に向かうので、アイズさんは先に行っていて大丈夫です」と伝えた。

 

 しかし僕の言葉にアイズさんは首を横に振った。

 

 何でも昨日入ったばかりの僕では食堂の場所が分からないのではないかと心配したようである。

 さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないと思い、僕はやんわりと断り続けた。

 正直アイズさんの申し出はありがたかったけれど、実は昨夜ロキ様に食堂の場所を教えられていたのだ。

 そのことをアイズさんに伝えたら渋々だが納得してくれたようだった。

 

 そして、アイズさんと別れた僕は急いで自分の部屋に戻り、すぐに汚れた服を着替え、食堂へと足早に急ぐのであった。

 

(…僕が断ったときに心なしかアイズさん、落ち込んでいるような気がしたけどきっと気のせいだよね?)

 

 実はベルの気のせいではなく、アイズは自分の申し出を断られて落ち込んでいた。

 というのもアイズは姉として弟の役に立ちたいという気持ちが、先程の訓練でよりいっそう強まったからであった。

 

 初めは純粋な瞳に目を惹かれ、次に膝枕で心を癒された。

 不器用だと自覚しているアイズの指導に嫌な顔せず真剣に取り組むその姿。

 しかも自分の教えをどんどん吸収して強くなっていくのが実感できるのだから、姉としてこれほど可愛げのある弟はいないだろう。

 

 そんなこともあり、今のアイズはベルのために何かしてあげたい気持ちでいっぱいであったのである。

 

 アイズがどれだけベルを想っているか…自己評価が低いベルがそれを正しく認識するのは、残念ながらまだまだ先のことである。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 黄昏の館の通路にて。

 ベルが食堂に向かっている途中、突然ベルの耳に鐘の音が聞こえた。

 

「この鐘って何の合図だろう…?」

 

「これはね、朝食を知らせる合図の鐘だよ」

 

「えっ、フ、フィンさん!?」

 

「おはよう、ベル。今までアイズと訓練していたようだね。あの訓練に関しては色々と言いたいことはあるけれど、まぁとりあえずはお疲れ様と言っておくね」

 

「は、はい!ありがとうございます!でも、どうしてここに?」

 

「君と同じく僕も食堂へ向かっている途中だよ。ベルは昨日入団したばかりで知らないと思うから説明しとくね。【ロキ・ファミリア】の朝食はね、館にいるメンバー全員で一緒に食べるっていうロキが定めた規則があるんだ。だから大体、みんなこの時間には食堂へと向かっているんだ」

 

「そうだったんですか。でも食堂に集まってみんなで食べたら賑やかそうで楽しそうですね。僕も今から楽しみです!」

 

「…アイズが君を弟にしたのもなんとなくわかる気がするよ」

 

「えっ?それはどういう…」

 

「その意味は後で考えてみるといいよ。それじゃあ僕たちも食堂まで急ごうか、ベル」

 

「は、はい!わかりました、フィンさん!」

 

 こうしてフィンと合流したベルは、そのまま一緒に食堂へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「みんな、朝食の前に少し時間をもらいたい!知っている者も多いと思うが、昨日我ら【ロキ・ファミリア】の入団試験を受け、見事合格した新人がいる。それが今僕の横に立っているヒューマン…ベル・クラネルだ。まだ冒険者に成り立ての新人だが、彼のダンジョンに挑む覚悟は僕等と同じく本物だ。みんなには同じファミリアの先輩として、ベルが困っているときはぜひ助言などをしてもらいたい。では新たに【ロキ・ファミリア】の一員となったベルから一言もらおう」

 

「べ、ベル・クラネルです!今まで碌に戦ったことがないので【ロキ・ファミリア】の皆様には迷惑をかけてしまうと思いますが、ファミリアの名を汚さない立派な冒険者になれるよう努力していくつもりです!!えっと、そんな不甲斐ない僕ですがこれからよろしくお願いしますっ!!」

 

「よろしくな、新人!」

「こちらこそよろしくね、ベルくん!」

「困ったことがあったら何でも俺に相談しろよ!」

 

 

 黄昏の館の食堂にて。

 【ロキ・ファミリア】メンバーは朝食を食べるために全員集まっていた。

 朝食の前に団長であるフィンからベルの紹介が行われたのである。

 

 首領のフィンがベルの入団を率先して認めたこともあって、ベルの入団に否定的な人はいなかった。

 というのも【ロキ・ファミリア】のメンバーはロキが認めた者だけが入団できるので、基本的に悪人はいないからである。

 そのため多くの人たちが素直にベルの入団を歓迎してくれのであった。

 

 ただし神ロキの名を汚す可能性がある者には敏感に目を光らせており、中にはその行為が行き過ぎる者たちもいた。

 以前ベルがひ弱そうな見た目だけで門前払いされてしまった背景には大規模ファミリアならではの困った事情があるのだ。

 これにはさすがのロキも困っており、フィンやリヴェリアなどはそんな団員を見つけ次第に説教をしていたりする。

 

 ちなみにベルを門前払いにしてしまった人はというと、ベルの紹介が終わった後にベルのもとに赴いて謝ったのであった。

 新人の自分に対してきちんと頭を下げて非礼を詫びる先輩冒険者。

 ベルはそんな先輩に自分は全然気にしていないことを伝え、互いに握手をして和解したのであった。

 

 こうしてベルは【ロキ・ファミリア】の一員としてみんなに認められたのであった。

 

 

 

***

 

 

 

 ベルの件が一段落した後。

 団員たちは各々の席で朝食を食べ始めた。

 

 つい先程団員たちに認められたベルはというと、ファミリアの先輩方一人ひとりに挨拶しに行っていた。

 

 歴戦の冒険者には子供のように表情を輝かせ憧れの存在を見るような瞳で挨拶をし、美人の冒険者には恥ずかしさで顔を赤らめ緊張でたじたじとなりながら挨拶をし、同じ新人冒険者には率先して握手を求められ照れくさそうに握手しながら挨拶をした。

 そんなベルの純粋さに団員の大半が好印象を抱き、多くの励ましの言葉をベルにかけるのであった。

 

 

 そして現在のベルは、褐色の肌をした二人の女性に挨拶していた。

 

「あぁー!ネル・クラベルくんだ!」

 

「馬鹿ティオナ。団長がベル・クラネルって紹介したでしょう。もう忘れたの?」

 

「あぁ!そうだった、ベル・クラネルだよねっ!よし、今度こそ覚えた!それじゃあベルって呼んでもいい?」

 

「は、はい、大丈夫です」

 

「よし!それじゃあこれからはベルって呼ぶね!あっ、そういえばまだ名乗ってなかったね。あたしの名前はティオナ・ヒリュテだよ。みんなからはティオナって呼ばれているから、ベルもそう呼んでねっ!」

 

「それじゃあ私も名乗らせてもらうわ。私の名前はティオネ・ヒリュテ…そこにいるティオナとは双子で私が姉よ。ティオナと同じように私のこともティオネと呼んでくれて結構よ。私もベルって呼ばせてもらうから」

 

「わ、わかりました」

 

(ティオナさんとティオネさん、二人とも凄く似ているからまさかとは思っていたけど、双子の姉妹だったんだ…)

 

 ちなみに漆黒の半短髪で明るい雰囲気の人がティオナさんで、漆黒の長髪で落ち着いた雰囲気な人がティオネさんである。

 二人の身長はほぼ同じで、胸の大きさに違いはあるが、顔立ちは瓜二つだ。

 目のやり場に困る露出の多い服装と褐色の肌から種族はアマゾネスだとわかった。

 

(ほ、本当に目のやり場に困るっ!?どこ見て話せばいいんだろう…)

 

「わ、わかりました、ティオナさん、ティオネさん。まだまだわからないことばかりで、お二人にも迷惑をかけてしまうと思いますがよろしくお願いします!」

 

「よろしくね~!それと遠慮なくあたしを頼ってくれていいからねっ!ここ最近ずっと新人に頼られたことないから、誰かに頼られたい気分なの!」

 

「はぁ、ティオナに相談しても脳筋な回答しか得られないとみんなわかっているから貴女を頼らないのでしょう…。ティオナを頼るのは危ないから気を付けなさい。もし何かに困ったら私を頼っていいからね、ベル?」

 

「むぅ!何でベルの前でそういうこと言うのさ!ティオネの馬鹿っ!」

 

「馬鹿なのはティオナの方でしょう。私は本当のことをベルに伝えただけよ」

 

 言い争いをしているアマゾネスの姉妹を見て、ベルはどうしていいかわからずあたふたしてしまう。

 

 そんな三人に近づいて来る人物がいた。

 

「おい邪魔だ、デコボコ姉妹」

 

 頭に獣耳、腰から尻尾を生やし、灰色の鋭い毛並みを持つ、不機嫌そうな狼人(ウェアウルフ)の青年がベルたちの前に現れたのであった。

 

(こ、この人…僕のことを凄く睨んでいるような)

 

狼人の青年が悪態をついて現れた瞬間、ティオナさんとティオナさんは同時に言い争いを止めその青年に注目した。

 

「むぅ!何よベート?今はあたしたちがベルと話しているんだけど!」

 

「けっ、どこがだよ!てめえら姉妹が仲良く漫才やっているようにしか見えなかったぞ。うるせぇし目障りだ、漫才やるなら余所でやってろ。…俺はコイツに用があるんだ」

 

 ベートとティオナさんに呼ばれた狼人の男性が、鋭い目つきで僕のことを睨んできた。

 

(やっぱり凄く睨まれてるっ!?…ぼ、僕が何か失礼なことをしてしちゃったのかな? う~ん、でもベートさんとは初めて会うはずだけど…?)

 

「あら、ベートが入団したばかりの新人に自分から出向くなんて珍しいわね」

 

「えー!絶対いつもの新人いじめだよ!ほら、いつもお前らは雑魚だカスだって偉そうに言って蔑んでいるじゃん!あたし、ベートのそういうところが嫌いっ!!」

 

「ごちゃごちゃうるせぇぞ!てめえらに用はねぇんだから少し黙ってろ。…おい、新人!名前は何て言った?」

 

「は、はい!ベル・クラネルです!」

 

「けっ…てめぇみてぇなガキの名前なんていちいち覚えてられっかよ!てめぇは兎野郎で十分だ」

 

「いやなら何で聞いたし」

 

「ティオナ、私も同感だけど今は黙って聞いてあげなさい」

 

「うるせぇぞ、外野!おい兎野郎…」

 

「は、はい!何でしょうか…?」

 

 ベートさんは左手で僕の胸ぐらを勢いよく掴んで僕のことを引き寄せた。

 そのまま顔を寄せられ、ベートさんの琥珀色をした鋭い瞳が僕の顔の目の前に映る。

 

「…調子に乗ってんじゃねぇぞ」

 

 あまりのベートさんの迫力に僕は何も言えなかった。

 ベートさんはすぐに僕の胸ぐらから手を放し、僕を解放する。

 そして最後にもう一度僕を一睨みして、ベートさんは背を向け食堂から出て行ってしまうんであった。

 

「あの、僕…ベートさんに何か失礼なことをしてしまったのでしょうか?」

 

「ベルのせいじゃないから気にしなくて大丈夫だよ!ベートはね、いっつも自分より弱い人のことを蔑んでる嫌なヤツなの!もしまたあいつに酷いことを言われたらすぐにあたしに言ってね!一発ぶん殴ってやるんだから!!」

 

「…でも、いつものベートにしてはおかしくなかったかしら?確かにベルに暴言を吐いていたけれど、いつもみたいに雑魚やカスとは言わなかったし…。それに、何だかベートのベルを見る目が、いつもみたいに蔑むような目ではなかったわ。あの目は弱者を見下す目ではなく…」

 

「相手の実力を認めた目をしていた、と言いたいのだな、ティオネ?」

 

 翡翠色の長髪と同色の瞳をした見目麗しいエルフの女性―――昨夜入団試験のときに会ったリヴェリアさんがティオネさんの後ろから現れた。

 

「あっ、リヴェリアだ!それでそうなのティオネ?」

 

「ええ、リヴェリアの言う通りよ。でもリヴェリア、その様子だとベートがいつもと違う理由も知っているのね?」

 

「そうだな、大方の予測はついている。きっとベートはアイズとベルの訓練でも見ていたのだろう」

 

「えぇー!?ベルってもうアイズと一緒に訓練するほど仲良かったんだ!」

 

「確かにそこも驚いたけど、私が一番驚いたのはアイズが他人の鍛錬を手伝っているってことよ。今まで自分の力を磨き上げることしか考えていなかったアイズが、ベルに指導をつけているなんて意外だわ」

 

「それもそうだね~、ベルからアイズに頼んだの?」

 

「い、いえ、ロキ様がアイズさんに僕への指導を提案してくれたおかげなんです。僕なんかがアイズさんに直接頼めませんよ!…でもやっぱり、アイズさんに指導してもらうのはまずかったのでしょうか…?」

 

「いや、アイズにとってもベルとの訓練は己の実力を磨くことにつながるからな。他人を指導するということは、自分の技術を今一度振り返るいい機会になる。いくら第一級冒険者であっても…いや第一級冒険者だからこそ、冒険者としての原点を顧みることが必要なのだ」

 

「へぇ~何だかよく分からなかったけど、つまりあたしもベルと訓練すれば今よりも力がつくってことだね!」

 

「はぁ…せっかくリヴェリアが説明してくれたのに、半分も理解してないじゃない」

 

「そう溜め息をつくこともないぞ、ティオネ。ティオナはしっかりと大切なことを理解している」

 

「さすがリヴェリアはティオネと違ってあたしのことをわかってるね!」

 

「調子に乗るな、馬鹿ティオナ。…まぁ新人との訓練で新たに学べることがあるのは私も理解してるわ。第一級冒険者っていう肩書のせいで頼みづらそうにしている新人もいるけど、同じファミリアなのだし遠慮する必要はないわって優しく言ったら、みんな指導を頼んでくるわよ」

 

「あたしは頼まれたことないのにな~。でもアイズはベルに指導しているんだよねっ!?ちょっと羨ましいなぁ~。アイズとはどんな感じに訓練したの?」

 

「えっ~と、模擬戦形式でアイズさんと戦いました」

 

「えぇっー!!あのアイズと戦ったの!?それで、どうだったのっ?」

 

ティオナさんに質問されて、僕は今朝のアイズさんとの模擬戦を思い返した。

 

「あはは…それが情けなくなるくらい、手も足も出ませんでした…。模擬戦が終了したとき僕は全身ボロボロなのに、アイズさんはかすり傷一つありませんでしたから」

 

「あはは、そっか!でもそれはしょうがないよ!アイズの強さは次元が違うからね~」

 

「でもアイズの攻撃を何度も食らっても、最後まで模擬戦をやりきったのでしょう?それはけっこう凄いことよ。大抵の新人は痛みに慣れていないから、アイズの攻撃を一撃でも食らったらすぐに音を上げるわ。最後まで耐え抜いた自分を誇っていいと思うわ。…だからもっと自分に自信を持って堂々としなさい、ベル」

 

「で、でもアイズさんは鞘での攻撃で、しかも手加減をしていましたし…」

 

「いいや、それは違うぞベル。確かにアイズの攻撃は手加減をしていたが、それでもあの一撃は私が受けても痛みを感じるぞ。そんな攻撃を何度も喰らったにも関わらず、最後まで諦めずに食らいついていたベルは立派だった。…ベートもそんなベルの勇姿を見たからこそ、君を認めたのだろうな」

 

(ベートさんが僕のことを認めてくれていた…?さっきは全然そんな風には見えなかかったけど、あれがベートさんなりの認め方なのかな…?)

 

「あっ!?そういえばベートに何があったかについて話してたんだった!すっかり忘れてたよ~」

 

「馬鹿ティオナは放っておくとして、これでベートの様子がいつもと違うのには納得したわ。相変わらずアイツもめんどくさい性格してるわね~。どうして嫌われるような発言しかできないのかしら?」

 

「まぁベートなりに第一級冒険者としての誇りと矜持を持っているからな。誤解されやすい性格だが、根は真面目な奴だぞ」

 

「えぇー!?あんなに性格悪いのに根は真面目とかありえないよ!」

 

「まぁベートの真意もそのうち分かるはずさ。…というわけで期待しているぞ、ベル」

 

「えっ、僕がですかっ!?」

 

 リヴェリアさんの突然の無茶ぶりに、僕は思わず驚いてしてしまった。

 そんな僕を見て、リヴェリアさんはふふっと軽く微笑む。

 いつも凛々しい雰囲気を身に纏う、絶世の美貌を持つリヴェリアの微笑みに、僕は思わず見惚れてしまった。

 

(改めて思ったけどこのファミリアって、アイズさんやリヴェリアさんを含め女性陣はみんな美人だよな…。うぅ、男としては誰もが羨むファミリアなんだろうけど、女性に慣れていない僕にはキツいものがあるな…。せめて顔を赤くしないように頑張らなければっ!)

 

 そんなことを心の中で考えていた僕であったが、リヴェリアさんの言葉に何か引っ掛かりを感じるのであった。

 

(そういえばリヴェリアさんのあの発言…ちょっとおかしくないかな?)

 

「あの、リヴェリアさんって僕たちが模擬戦を始める前にロキ様たちを連れて、他の場所で鍛錬していたのですよね?それなのにどうしてそんなに僕たちの訓練風景を詳しく知っているんですか?まるでずっと見ていたような話し方だったんですけど…?」

 

 リヴェリアさんのあの話し方は、僕たちの訓練を直接目にしていなければできないはずだ。

 でもそれはありえない。

 なぜならそのとき、リヴェリアさんはロキ様たちと別の場所でいたのだから。

   

「ふふっ、それは秘密だ。でもそうだな…ベルがアイズに一撃入れることができたのなら、そのときに教えよう」

 

「そ、そんなぁ…」

 

(あのアイズさんに一撃…そんなの何年経っても僕なんかじゃあ不可能だよね…。遠回しに僕には教えることができないって言ってるのかな?)

 

 僕の疑問に対し、リヴェリアさんは微笑んだまま片目を閉じてどこか面白がるように答えるのであった。

 

 

 このときベルはリヴェリアが無理難題を課したのはその秘密を教えるつもりがないと思い込んだが、実際のリヴェリアの考えは違ったのである。

 リヴェリアはベルならアイズに一撃を入れられるくらいに成長できると思い、そのような発言をしたのだ。

 ちなみにリヴェリアの予想では数年も経てばそのレベルに到達し、ベルも立派な冒険者になっていることだろうと考えていた。

 

 要するに今のベルには秘密を教えるつもりはなく、ある程度の実力を付けた何年後かに改めて秘密を明かそうとリヴェリアは考えていたのであった。

 

 

 ――――しかしこのリヴェリアの予想は大きく外れることになる。

 

 だがそれも仕方がないことだろう。

 

 まさか一週間という短い期間で、アイズに一撃入れる新人が現れるとは誰にも…たとえ神であっても予想できるわけがなかった。

 

 ――――――ベル・クラネル。

 

 彼が冒険者として頭角を現す未来(とき)は近い。

 


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