旧理想郷からのサルベージ作品群   作:VISP

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ACFA 9~12

 

 

 世界の大半を支配し、管理する企業。 

 この日、ある知らせが入った事により、彼らの間に大きな衝撃が走った。

 

 スピリット・オブ・マザーウィル陥落。

 

 それもたった一人の傭兵の手によって。 

 多くの者がこぞってこの新しい『山猫』に注目し始めた。 

 また、それは未だ水面下にいる『シャチの群れ』も例外ではなく、世界は新たな局面に移ろうとしていた。

 

 

 

 

 で、その頃のGA所属ネクスト用ガレージ

 

 「ラン、ランララランランラン、ラン、ランラララン~♪」

 

 自身の機体の周りで小躍りするペットの姿が見られた。

 先日、マダムと侍女長に骨の髄まで搾り取られた筈だったが、マダムからのプレゼントが原因でなんとか起き上がってきたのだった。

 

 プレゼントは2つ、メモリー60、そしてSALINE05だった。

 

 SALINE05、MSAC製の最新型高性能分裂ミサイルであるこのパーツは、かのホワイトグリントが愛用している事で高い知名度を誇っており、その鬼の様な追尾性能から対ネクスト戦でも非常に有効なため、MSACの傑作とも言える優良パーツである。 

 敬愛(と書いて畏怖と読む)するマダムからの突然のビッグプレゼントにペットは浮かれまくっていた。

 これで苦手だったネクスト戦もバッチリ!!と、先日ネクスト戦で苦い敗北に会った事をそれなりに気にしていたらしい。 

 メモリーの方は直ぐにEN出力、EN容量、KP出力に回され、ハウンド・ドッグの調整は完了した。 

 後、今日はやる事も無いなー、と辺りを見回してみると何やら慌しい雰囲気がする。

 はて?と頭を傾げていると、(比較的)若手の整備員さんが教えてくれた。

 

 曰く、スピリット・オブ・マザーウィルが陥落した。

 

 それで、脱出した生き残りの受け入れ先として、そこそこ近場にあるこの基地が担当する事になったらしく、現在、受け入れ準備中との事だった。

 その脱出した人達の護衛にチャンプスさんも同行しているらしく(無論PAは切ってある)、その他にも結構な数の部隊が来るらしい。

 手間をかけさせてしまった整備員に礼を述べ、仕事に戻ってもらってから、今後の事を考えてみる。

 

 この時期に母ちゃんが陥落したと言う事は……やっぱり主人公だろうなぁ。

 

 母ちゃんを選んだって事は企業連ルートになる可能性もある訳だけど……多分、そうもいかないんだろうなぁ…。 

 まぁ、現時点では考えても仕方ないし、今日は買い物でもして過ごすかな。

 

 で、屋敷の近場にある市街地に到着したんですけど…。

 

 「何でいるんですか、マダム?」

 「あら、いけない?」

 

 何故かこの人が待ち構えていました。

 しかも白いセーターにジーンズ、茶色のロングコートにサングラス、長髪をポニーテイルに縛った、かなりラフな格好だった。

 普段屋敷内ではバスローブか裸、又は動き易い装飾とか控えめなドレスだし、後は仕事着のスーツや社交界に行く時のドレスしか見た事が無いので、ボクにとってこの様なマダムの格好はかなり新鮮だった。

 

 「別に構いませんけど、侍女長はどうしたんですか?護衛の一人は付けないと危ないですよ?」

 「この都市は元々私の御膝元よ、危険なんて事故位しかあり得ないわ。それに私とあなたには常時SSが付いているか心配無用よ。それに……。」

 

 マダムはボクが赤面して硬直するにも構わずに耳元に顔を近づけると、耳に息を吹き掛け、首筋をそのたおやかな指で撫でながら話し掛けてきた。

 

 「頼りにしているわよ、私の可愛いペット。」

 

 そんなこんなで、ボクとマダムの買い物は始まった。

 

 「こういう小物も似合うかしら?」

 「うーん、マダムならもう少し派手な方が…。」

 「そう?じゃぁ、こっちで。」

 

 現在は市街地中心部に当たるショッピングモールで小物やアクセサリーを物色中です。

 どうもマダムはこういった一般人的な買い物も好きらしい……普段は逸般人なのに。

 だがまぁ、楽しんでくれているならこちらも平和だし、悪い気はしないので素直に楽しんでおく。

 

 で、数点の小物を購入し(商品は後で届けさせる、勿論別料金、なお支払いはブラックカードでした)、次は隣の書店に進んでいく。

 

 「マダムも本とか買うんですね?」

 「文学的な教養も社交界では大事よ、それに服飾関係の雑誌は普段から定期的に購入しているしね。」

 

 その割にカートに入れている小説の中に恋愛ものが混ざっているのは何故?しかもBLものまで……怖い想像になるから考えるのは止めよう。

 で、次に来店したのが今日の本命である衣服量販店『米国屋』……この世界にもあったのな。

 

 「随分買い込むけど、どうかしたの?」

 「マダムから贈られたコスチュームは皆女性用ですからね、ここらで普段着を増やしておきたかったんですよ。」

 

 メイドやチャイナ、セーラーは浪漫だけど、楽しめるのは見ている側だからこそです。

 それを普段着にする程堕ちてはいません。

 

 「ふーん……。」

 

 この時、後ろで眼を怪しげに輝かせていたマダムに気付けなかったのが今日一番の失敗だったと思う。

 

 で、自分の買い物も終わり(マダム程ではないにしろリンクスなので結構な収入持ち、後で届けてもらう)、いい加減に昼時も過ぎる頃になり後は飯でも食べて帰るかという段階で、マダムが行き付けの飲食店を紹介するとの事で、案内してもらった。

 着いた先はやや古めかしいものの、極普通の喫茶店だった。

 

 「お邪魔するわよー。」 

 

 慣れた感じでマダムが店に入っていく。 

 行き着けと言うのは本当らしく、ウェイターも慣れた感じでいらっしゃいませー、と返してくる。

 店の内装も落ち着いたもので、厭に華美でもなければ、奇抜でもない。

 純粋に客が落ち着けるためにこの様な内装にしたのだろうか、昼時の終わり頃だからか、店内はまったりとした空気が漂っている。 

 マダムはやや奥にあるカウンター席で、マスターと親しげに会話していた。

 ボクがその隣のカウンター席に着くと、老紳士といった感じのマスターがこちらを人好きのする様な表情で眺めてくる。

 

 「おぉ、例の新人のペット君かい?噂は聞いているよ。」

 「どうせ碌なものじゃないでしょう?」

 

 注文リストを眺めつつ、ボクはマスターの言葉に返事をする。

 むぅ、メニューも極一般的なものばかりで、何処がマダムの琴線に触れたんだろ?

 

 「いやいや、初のネクスト戦であのランク3を撤退させたのは凄まじいものだよ、2対1と言えどもね。」

 

 何処まで知ってるんだろう?と思う反面、まぁマダムの知り合いならそれ位ありだなとも思う。

 

 「…じゃぁ、ぺペロンチーノとサラダで。2対1で奇襲して漸くですよ、次に会ったら確実に殺されますって。」

 

 値段も通常より心なしか高い位で、然したる違いは見受けられないが、マダムの行き着けと言うからには何かある筈なのだが…。

 

 「私は日替わりでお願いするわ、それとフルーツヨーグルトをお願い。」

 「畏まりました、直ぐに出来上がりますので少々お待ちくださいませ。」

 

 マスターが奥にあるキッチンに向かってから、頭を捻っているボクを見てニヤニヤしているマダムに声を掛けてみた。

 

 「ここってどの辺りがマダムのお気に入りの理由なんですか?ボクには極一般的な喫茶店にしかみえないんですけど。」

 「今種明かししたら面白くないでしょう?料理が届くまで待ってなさいな。」

 「むぅ…。」

 

 やはりそう来たか、まぁここは素直にマダムの言う事に従うとしよう。

 やや無言のままに時間が過ぎ、凡そ10分程で料理を持ったマスターが奥から出てきた。

 

 「お待ちどうさま、はいどうぞ。」

 

 目の前に出てきたのは極普通のぺペロンチーノとサラダ、マダムの方も日替わりランチ(鮭のホイル焼きとパン、コーンスープ、サラダのセット)とフルーツヨーグルトが渡された。

 はて、何がマダムの気を引いたのだろうかと、早速ペペロンチーノを一口食べてみた。

 

 (特に変わり映えは無い、でも何か食感に違和感が……あっ!)

 

 「どうやら気付いたみたいね。」

 

 マダムがサラダを口に運びながら、ニンマリとこちらを見て笑っている。

 どうやら驚きが顔に出ていたらしいが、そんな事よりも料理の事である。

 

 「これ、合成素材使ってるのに味がほとんど本物と変わってない。」

 

 通常、この世界の食料は合成素材か栄養サプリ、そして一部の富裕層のみが食べられる天然物に分けられる。

 栄養サプリは言うに及ばず、合成素材では天然物の風味を出す事は出来ず、更に年々汚染が広まり生産量が減少していく為、天然物はクレイドル住民や企業関係者位しか手に入らないとされている。

 だというのに、この店では天然物を再現しているにも関わらず、それを普通の合成素材の料理と殆ど変わらない値段で出しているのだ。

 

 「どう、ここの料理は?」

 

 夢中になって食べ始めるボクを眺めながら、マダムはあくまで優雅に食事を続けながら話しかける。

 ボクもある程度食事マナーを身に付けているが、マダムの様に上手くいっていない。

 というより、これ程の料理をそんな事を気にしつつ食べていたら冷えてしまうだろう、それはこの料理への冒涜に他ならない。

 この世界に来てからずっと合成素材か栄養剤を食べていた身には、故郷のもの程ではないもののそれに近い料理は格別に美味しく感じられ、マダムに返事をする余裕も無く、ボクは夢中でその料理に食らい付いていった。

 

 漸く落ち着いた時には皿の中は完全に空になっており、ボクは食後の満足感を感じていた。

 

 「どうやらお気に召して頂いた様ですね。」

 

 マスターがまるで孫でも見るかの様にこちらを眺めている……どうやら先程の食いっぷりが気に入った様だった。

 

 「まぁ、ここの料理を食べて我を忘れるのは仕方ないわね。」

 

 マダムが苦笑しながら、口元をナプキンで優雅に拭いている。

 マダムの方も食べ終わった様で、今は寛いだ雰囲気が感じられる。

 

 「マダムがお気に入りと言った理由がよく解りました、でもこの腕前ならもっと良い働き口もあると思うんですけど?」

 

 このマスターの腕前ならクレイドルに居たっておかしくは無い、そう思わせるだけの技術と情熱が感じられた。

 

 「確かにそれもありですが、私の作った料理を見て喜んでくれる人を見たいのですよ。」

 

 ちょうど貴方みたいにね、と笑いかけてくるマスターに、ボクはプロとしての誇りを感じられ、思わず頭が下がりそうになった。

 なるほど、マダムが気に入る筈だ。

 

 その後、ボク達はマスターと暫く雑談を楽しんだ後、喫茶店を後にした。

 

 「来て良かったでしょう?」

 「はい!」

 

 久しぶりに充実した一日だった。

 また今度、あの店に行こう。

 そう思いながら、ボクはマダムと共に帰路に着…

 

 …く筈だった。

 

 「マダム、ボク達帰るんですよね?」

 「あら、そんな事一言も言ってないわよ。」

 

 で向かった先は、女性衣類専門店でした。

 

 「帰らせていた「だめよ。」ですよねー……。」

 

 あぁ、毎度の事ながらどうしてこうなるのかなぁ…?

 

 結局、下着から上着まで5セット程(勿論女性用、スカート等もあり)を買って、その内1セット(薄桃色のセーターに紺のロングスカート、茶色のコート)に着替えて帰宅しました。

 …今日位は何もないと思ったのに。

 

 

 

 

 ………………………………………………………………

 

 

 

 

 GA上層部の依頼により、ロロ砂漠に展開中のインテリオル陸上AF部隊の撃破に参加する事になった。

 

 陸上AF部隊はノーマル戦力の他に、鹵獲したランドクラブに掃討戦用の多連装レーザー砲を装備した改修型を配備している。

 目標のAF部隊はGA輸送部隊を追跡中であり、早急に撃破しなければ輸送部隊は簡単に壊滅されてしまうだろう。

 そのため、ネクスト戦力を用い、早急にこれを撃破しなければならない。

 また、未確認情報であるが、付近に増援のインテリオル部隊も確認されたという情報もあるため、警戒した方が良いだろう。

 

 それが今回、ボクの受けた依頼の概要だった。

 

 「それにしても、メイさんと共同任務につくのは初めてですね。」

 『そういえばそうね。』

 

 今回の僚機はメリーゲートこと、No.18メイ・グリンフィールドさんです。

 何気に組むのは初めてだが、機体構成はほぼ同じでよく訓練しているので、互いの動き方はよく分かっている。

 

 「まぁ、AFを確認したらノーマルを蹴散らしつつ撃破するだけですからね。」

 『油断しちゃ駄目よ?そういう考えが命取りのなるんだから。』

 『おい、そろそろ作戦領域に到達するぞ。2人とも準備しておけ。』

 

 オペレーターの声に、慣れた様に機体チェックを済ませていく。

 今回、ボクの機体には右肩にレーダーではなく、 OGOTOを装備している。

 対AF戦かつノーマル戦力もいるとの事なので、グレネードを持っていけばかなり楽になるだろう。

 チェックも終了し、作戦領域も間も無くなので、ネクストを巡航モードから戦闘モードに切り替える。

 

 『既に敵AFは防衛ラインに接近している、とっとと形をつけてこい。』

 

 そして、二匹の山猫が地を駆けた。

 

 

 『味方の支援砲撃に紛れて接近していけ。敵のレーザーは強力だ、当たるなよ。』

 

 オペレーターの報告から、直ぐに展開していた味方部隊の砲撃が開始される。

 GAEM-QUASAR、既に旧式化して久しいGAE製の大型兵器だが、その三連装大型砲と垂直ミサイルから来る高火力と厚い装甲から今もなお現役で活躍している。

 簡易AFとも言えるそれは、その能力を生かして迫り来るノーマル部隊とランドクラブに向けて砲撃を続けていく。

 ノーマルは直撃したら確実に木っ端になる砲弾を必死に避けるが、ランドクラブはまだ射程外だからか特に行動は起こしていない。

 ボクとメイさんはその砲火の中を潜り抜ける様に、OBで進んでいく。

 そして、ボクらがある程度まで接近すると、遂にランドクラブが砲撃を開始した。

 拡散型ハイレーザーとでも言おうか、強力なハイレーザーがまるで散弾の様にこちらを狙ってくる。

 ボクとメイさんは必死にそれを避け、レーザー砲の死角に潜り込んで行く。

 

 「メイさんはでかい方を!」

 『OK、任されたわ!』

 

 一体目のランドクラブの足元に到着したボクらは、すぐさま攻撃を開始する。

 ランドクラブも両脇のミサイルで必死に反撃し、護衛のノーマルもこちらを狙ってくるが、ボクはノーマルをグレネードで纏めて吹き飛ばし、メイさんがミサイルでランドクラブを攻撃していく。

 それぞれの兵装(グレネード持ちと大量のミサイル持ち)の関係上、この担当になったが、その御陰で然したる手間は掛からなかった。

 そして20秒と持たなかった一体目とノーマルから、次の獲物に目を向け、またOBを発動する。

 今度は距離が近く支援砲撃も無いためか、先程よりもレーザーの照準が正確だった。

 QBを吹かすと、機体の横を光速で青い光が過ぎ去っていく。

 幸いにもメリーゲートは多少被弾したが、問題無くランドクラブに接近したが、こちらは回避のためにOB中に横QBも併用してしまったため、ランドクラブのやや手前に着陸してしまう。

 そこは辛うじてランドクラブのレーザーの死角だったが、護衛のノーマル部隊の真正面だった。

 

 「チッ…!」

 

 連射されるレーザーに答える形で、こちらもグレネードをお見舞いする。

 ノーマル部隊も更なるレーザーライフルの射撃で応戦してくるが、こちらとの火力差は絶望的であり、グレネードを一発撃つ毎に2機以上が撃破されていく。

 PAを貫通したレーザーが装甲を焼くが、この程度で落ちる程ネクストは脆弱じゃない……それでも、あまり食らいたいとは思わないが。

 グレネードの4発目を撃った所で最後のノーマルが撃破された。

 残りのランドクラブもこちらが手を出す前にメイさんに撃破された様で、目標は達成された。

 

 『お疲れ様。』

 「メイさんこそお疲れ様です。」

 『それにしても、結構食らっちゃったわね。』

 「仕方ないですよ、相性の問題ですし。」

 

 メリーゲートは多連装レーザーに、ボクはレーザーライフルをそれぞれ被弾したため、機体がそれなりに損傷していた。

 幸いにも戦闘機動に支障は出ない程度だが、相応の修理費が掛かるだろう。 

 そして、さぁ帰還するかと機体を輸送機の方に向かせようとした所、オペレーターが通信を入れてきた。

 

 『追加注文だ。今確認したが、増援部隊がこっちに向かってる。数は2機と少ないが、相手はフェルミだ。ハイレーザーには用心しろよ。』

 

 見れば、領域外から緑の浮き舟らしき物が2機近づいてくる所だった。

 

 FF130-FERMI、通称飛行要塞フェルミと呼ばれる旧メリエス製の大型兵器であり、高威力のハイレーザーとASミサイルにより、時にはネクストすら撃破する事から、既に旧式に分類されるものの、今なお現役で活躍している。

 ある意味、インテリオル版GAEM-QUASARとも言える。

 

 『厄介なのが来たわね…。』

 

 ウンザリといった様子でメイさんが言うが、その点は大いに賛成だ。

 

 「まぁ、やるしかないですね。護衛部隊の方達じゃ部が悪いでしょうし。」

 

 動きは遅いと言えど、空中から天敵のハイレーザーを撃ってくるフェルミが相手では、クエーサーでは不利だろう。

 

 「1人1機でいきましょう、あまり時間を掛けたらこっちの方が不利です。」

 『OK、しくじらないようにね。』

 

 そして、ボク達はフェルミに向け、接近を開始した。 

 無論、相手もそれを黙って見過ごす訳も無く、こちらの射程外からほぼ一方的にハイレーザーとASミサイルが飛んでくる。

 ハイレーザーはタイミングを合わせて横にQBを吹かせば避けれるが、ASミサイルはが厄介だった。

 無駄弾は嫌だが仕方ないので、垂直ミサイルをロックせずに発射する。

 ASミサイルはノーロックで発射、自動的に近場の目標に向かっていくという一風変わった機能を持つ。

 その性質上、目標やチャフの他に敵のミサイルやロケットにも反応し、追尾してしまう。

 フェルミのASミサイルも例外ではなく、こちらの発射した垂直ミサイルを追尾していく。

 見れば、並走するメリーゲートもミサイルを発射し、ASミサイルを撹乱している。

 それを見たフェルミは慌てたのか、攻撃をハイレーザーに絞り、密集する事でリロードを補ってくる。

 距離をつめる毎に精度を増していくハイレーザーを、連続してQBを吹かす事で辛うじて直撃を避けながら、何とか相手を射程範囲内に入れる。

 そして、先程の鬱憤を晴らす様に、ハウンド・ドッグとメリーゲートから大量のミサイルがフェルミに向けて飛翔した。

 フェルミもASミサイルで迎撃を試みるが、しかしこちらの2機は多量の発射数で知られる連動ミサイル「MUSKINGUM02」を装備している。

 如何に2機で弾幕を張ろうとも、ASミサイルやハイレーザーでは有効に迎撃できず、圧倒的物量差で押し流されていく。

 更にダメ押しに次々と背中のミサイルも発射し続けると、最後には2機のフェルミは仲良く煙を噴きながら墜落した。

 

 

 

 「疲れた…。」

 

 こちらを一撃で破壊しかねないハイレーザーを掻い潜り、フェルミを撃破するのは結構疲れるものだ。

 依頼達成後、屋敷に帰る気力も無いボクは、珍しく社内の食堂で食事する事にした。

 ハンバーガーやホットドッグ等のジャンクフードしか出ないが、偶にはそういうものが食べたくなる時があるのだ。

 

 「はい、ハンバーガーセットです。」

 「どうも~。」

 

 ハンバーガー、フライドポテト、コーラLをそれぞれ1個ずつ受け取り、手ごろな席に着き、遅めの昼食を始める。

 今では天然食料は高級品だが、それなりに工夫してあるのか、合成食材のハンバーガーでもそれなりに美味い。

 黙々と食事を続けると気配がしたので目を上げると、メイさんが丁度ボクの正面の席に座った所だった。

 

 「お邪魔するわね。」

 「それ、する前に言いませんか?」

 

 まぁいいですけど、と流し、メイさんのトレイの中に目を向ける。

 ハンバーガー、チーズバーガー2個ずつにサラダ、500mmビール缶(ア○ヒ)3個。

 真昼間から飲む気満々であった。

 

 「いやーお腹空いちゃってねー。」

 

 そう言うと、結構な勢いで食べ始めるメイさん……成程、食べた分はその巨乳に行く訳ですね。

 ボクが何とも無しにメイさんの食事風景を眺めているのが気になったのか、メイさんがこちらを見る。

 

 「欲しいの?」

 

 興味が有るとでも思ったのか、メイさんが手を出していないビール缶を掲げてくる。

 

 「いえ、そう言う訳じゃ…。」

 

 あなたの食いっぷりに呆気に取られてただけです、と言った日には何が起こるか解らない。

 

 「遠慮しないの、今日は頑張ったんだから私の奢りよ。」

 

 言ってズズイと缶を押し付けてくる。

 

 「じゃぁ一杯だけですからね。」

 

 酒は飲めない訳ではないが、昔から苦手なのだ。

 しかし、メイさんの手前飲まない訳には行かない。

 意を決してプルタブを起こし、ビールを飲み始める。

 ビール特有の苦味とアルコールの熱さが喉を流れていく。

 やはり飲み慣れないものを飲むべきではなかったと、一旦缶を置こうとして……

 

 ……メイさんに缶を固定された。

 

 「ブグッ!!?」

 

 危うく噴出す所だったが、何とか堪える。

 見れば、缶を抑えるメイさんは既に顔が赤く、目の焦点も合っておらず、典型的な酔っ払いだった。

 …成程、ドンさんもこうやって酔い潰されたんだ、と悟ってしまった。

 振り解くわけにもいかず、仕方なくボクは缶の中身を少しずつ飲んでいく。

 幸い口当たりは軽いもので、ボクにも問題無く飲む事はできた。

 しかし、この時のボクは、そのビールがかなりの度数を持った、ここでは実質メイさん専用ビールである事を知らなかったのだ。  

 ビールを飲むにつれ、どんどん体が熱くなり、視界が歪んでいく。

 ヤバイと感じた時にはもう遅く、ボクの意識は闇に沈んでいった。

 

 最後に視界に移ったのは、こっちを見て何故かサムズアップするメイさんの姿だった。

 

 …この飲んだ暮れめ、と思ったボクは悪くないと思う。

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 「…きぼぢわるぃ……。」

 

 現在、二日酔い中です。

 

 目覚めた途端、激しい頭痛、吐き気、目眩の三重苦に襲われてしまい、侍女長の持ってきた酔い覚ましを飲むまでまともに頭が働かなかった。

 そして、先日の一件を漸く思い出し、今更ながら後悔していた。

 今思えば、成人のドンさんですら酔い潰すメイさんから、酒を貰う事自体が失敗だった。

 しかし、既に後の祭り状態だ。

 

 現在は屋敷のベッドで顔色悪く、臥せっている。

 訓練と仕事、私生活で薬物には耐性があるものの(主にAMSの調整剤、鎮痛剤や媚薬等)、14歳の身ではアルコールへの耐性が無かった様だ。

 幸いにも依頼は入っていないので、酔いが覚めるまではゆっくりと養生することにしよう。

 そう決めると、頭痛を堪えながらボクはさっさと暖かい毛布に潜り込んだ。

 

 

 Side  Don Colonel

 

 汚染された霧が吹き荒ぶPA-N51エリア、そこでオレは僚機である有澤社長と共にアルゼブラの新資源プラント破壊作戦に参加していた。

 目標はアルゼブラの新資源プラントとそれを防衛するアルゼブラのノーマル部隊だ。

 こんな作戦でネクストを2機も運用するのかと思っていたが、戦闘開始後にそんな考えは直ぐに吹き飛んだ。

 

 視界を塞ぐ濃霧とアルゼブラの精鋭たるバーラット部隊の独特の三次元機動を前に、レーダーも無く、カメラ性能の低いオレ達はかなりの苦戦を強いられた。

 

 しかも、バーラットは射突ブレードを装備している為、気を抜いて接近を許すと、ネクストでも一撃で破壊されかねないと来ては、油断は出来ない。

 そこで一旦二手に分かれて依頼の達成を優先した。

 バーラットは距離を置けば然程怖くは無いが故に出来た事だが、もしこれがBFFのサイレントアバランチ部隊だったら下策中の下策だったろう。

 幸いにも敵は戦力を分散し、対応する事を選択したらしく、こちらに向かってくる数は減っており、依頼の達成を予感させた。

 

 しかし、そうは問屋が卸さないのが世の常だ。

 

 「ちッ…!」

 

 上から降り注ぐ様に迫る散布ミサイルを、ビルを盾代わりに回避しつつ、オレは舌打ちする。

 

 『所詮は下衆だな…。』 

 

 濃霧に紛れ、上空から一方的にこちらを攻撃してくる白い軽量逆関節機から、態々通信が発せられる。

 癪だが、そんな事を出来るだけの実力の差と相性の悪さが確かに存在していた。

 

 アルゼブラ所属リンクス、No.14イルビス・オーンスタインとその乗機『マロース』。

 

 上位リンクス並の実力を持つ、元バーラット部隊所属のリンクスが来たのだ。

 

 

 

 直ぐに散布ミサイルの発射元に振り向き、ライフルを構え反撃するが、瞬時に上空に退避され、ロックオンを外されてしまう。

 その機動はバーラットのそれによく似ていたが、ネクストの性能であの独特の機動をされると、運動性が低く、三次元機動の苦手なGA製ネクストでは捕らえ切れない事も多く、殆ど一方的に攻撃され、やり辛い事この上ない。

 しかも上空は濃霧に包まれ、白い塗装の『マロース』は視認し辛いと来れば、もう笑ってしまう程の不利だ。

 撃ち降ろされるグレネードをQBを吹かし、左に避ける。

 お返しとばかりに拡散バズーカとライフルを撃つが、空中でひらりと避けられた。

 背中のミサイルにしても上下の機動についていけていないので、然したるダメージにはならない。

 

 苛立ちが募る中、冷静に現状を分析し、今後の作戦を立てていく。

 プラント破壊の方は社長に任せているから、こっちに専念できる。

 バーラット部隊と言えど、社長の乗機『雷電』ならロックし辛い以外は然したる問題も無いだろう。

 また、相性こそ悪いものの、この状況でも社長との2人掛かりであれば、それなりの確立で勝てる。

 当面は社長が駆け付けてくれるまでの時間稼ぎに終始し、それが出来無ければ、可能な限り粘ってから戦域離脱する。

 戦闘プランは一瞬で決まり、行動に移していく。

 

 

 これ以上被弾しない内に、急いでビル街に紛れ込み、上空からの攻撃を距離を取って避ける。

 無論相手が逃がす筈も無く、距離を詰め、攻撃を続けてくる。

 直撃こそ無いものの、グレネードと拡散ミサイルの攻撃で、少なからずPAが削られ、機体にダメージが蓄積していくが、頑丈な機体のお陰でまだ問題らしい問題は出ていない。

 途中、偶然ロックオンできた時は、多少の無駄弾でも反撃していく。

 攻撃の殆どが避けられるが、少しでもダメージを負ってくれればそれで良い。 

 距離を取ってたまに攻撃、距離を詰めて上から攻撃。

 お互いがそれを繰り返し、いい加減周囲が流れ弾により寂しくなってきた頃、こっちよりも先に相手の忍耐の方が切れたらしい……まぁ、時間が経過していくにつれ、どんどん友軍と防衛対象が危険に晒されるだけなんだから当然と言えば当然だが。

 

 マロースがOBを発動し、上空から接近、ライフルとマシンガンをばら撒いてきた。

 やはりとっとと決着を付けたいのか、その挙動にはやや焦りが見える様だった。

 しかし、こちらにはその焦りは奇貨になる。

 そして、遂にマロースがこちらの上空に到達した時、オレは背中兵装をパージ、ライフルと拡散バズーカを構えながら、垂直にブースターを吹かし、マロースへと接近し始めた。

 しかし、このまま空中戦をした所で、ブースターの消費ENが高いこちらが先に地に落ちて、狙い撃ちされるだけだろうが、それで良い。

 狙ってもらわねば、失敗なのだから。

 

 『バラバラにして、肥溜めにぶち込んでやる……。』

 

 勝利を確信した声で、既に近距離とも言える間合いからマロースがライフルを撃ちつつ、身軽な機体を生かして、素早くこちらに向かってくる。 

 迎撃として辛うじて付けたロックを頼りにして撃った拡散バズーカとライフルは、あえなく誰もいない空間を穿ったのみで終わった。

 そして背後に回ったマロースが止めを刺そうと、グレネード、散布ミサイルを構えたのが辛うじて確認できた。

 引き離そうとQBを吹かすが、ピッタリと引き付かれて離せない。

 そしてオレに向けてグレネードと散布ミサイルが放たれ……

 

 ……その直後、その砲弾はワンダフルボディから放たれた緑の閃光に飲まれた。

 

 こちらが直前に展開したAAで敵機の攻撃を相殺したのだ。

 タイミングが発砲音を聞いてからだったので、完全に防げるかは微妙な所だったが、上手くいったらしく損害らしい損害は出なかった。

 展開されたAAは期待通り砲弾を飲み尽くし、更にはその余波で近距離にいたマロースのPAを急激に蝕んでいく。 

 以前の作戦から搭載する様になったAA搭載型OBが、此処に来て効果を発揮した結果だった。

 

 そして近距離にいたマロースは即座に後退、距離を取ろうとするが、ある程度の距離が広がった所で着地してしまう。

 OBからの接近と滞空し続けながらのQBを混ぜた敵機への張り付き、如何にEN効率の高い軽量逆間接機でもENを消費し尽していた。

 それでもマロースなら直ぐに回復し復帰できる筈だった。

 しかし、その好機を見逃さなかった者がいた。

 イルビス・オーンスタインがレーダーに映る反応に気付いた時、彼は不幸にも自らの視界一面に迫り来る巨大な砲弾への驚愕で、対処が遅れてしまった。

 そして轟音が響き渡り、同時に、巨大な爆発がマロースのいた空間を嘗め尽くした 

 

 「遅いですよ、社長。」

 『すまん、予想以上に手間取った。』

 

 損傷した機体を立て直しながら、オレは遅れてきた社長に文句を言う……まぁ、こうしていれるのも社長のお陰なのだが。

 社長の乗る雷電は先程使用したOIGAMIを展開しており、その巨大な砲口からは未だに硝煙が立ち上っている。

 

 『それにしても、随分と被弾したものだな。』

 「まぁ、こればっかりは仕方ないですよ。まともにやってたら、もっと酷い事になってたでしょうから。」

 

 種を明かせば簡単な事で、要は社長と合流する為に領域内をあちこち飛び回っていたのだ。

 そして社長を発見後も、社長の施設破壊とバーラット部隊の排除完了を見計らって再度社長の下に近づき、援護可能な位置まで来た時に、逃げずにこちらから攻撃を仕掛けたのだ。

 そうすれば、手の空いた社長が援護してくれるし、最悪、撤退時の盾にもなってくれる。

 ……尤も、マロースが先に仕掛けてきた時は流石に焦ったが。

 そして目論見通り、社長が放った一撃がPAの減衰したマロースを吹き飛ばした。

 正直ここまで上手く決まるとは思っていなかったが……まぁ、結果オーライとしよう。

 無論、最初から真っ向勝負するのもありだったが、上位リンクスにも匹敵するマロース相手では最低でもかなりの被害を覚悟しなければならない上に、未だネクスト戦の経験が薄いオレでは撃破されかねない。

 そこで時間稼ぎで損傷を減らそうと試みたのだが……この分では然して変わらない修理費が掛かりそうだ。

 

 「ま、仕事は終わりましたし、帰還しましょう。」

 『あぁ、私も本社での仕事があるのでな。』

 

 そして、霧に包まれた街から二匹の山猫が姿を消し、一匹の山猫が眠りに就いた。

 これが、粗製と言われる彼の日常の1コマであった。

 

 

 

 

 …………………………………………………………………

 

 

 

 

 BFF所属第8艦隊に向けてインテリオル製の最新型AFが侵攻中との情報が入った。

 

 当艦隊はBFF所属と言えど、GAグループの海上航路の防衛上貴重な戦力であり、これを失う事は今後の経済活動に大きな支障をきたす事になるだろう。

 そこで現在急行可能なネクスト戦力を目標の侵攻予測ルート上に配置、これを撃破する。

 また、本作戦にはその性質上制限時間が設けられている。

 制限時間が過ぎた場合、作戦は失敗となるため、その点は留意されたし。

 以上がGA上層部からの毎度偉そうな通信内容を要約したものだった。

 

 で、現在ボクは輸送機内にいます。

 二日酔いも完治し、ネクストの調子でも見ようと思った所でこの依頼が来たのが、何とか最終調整を終える事は出来た。

 今は輸送機内で目標に関する情報を貰っている。

 …それにしてもスティグロって、現実的にはどう攻略するんだろう?

 正面からぶつかって物理ブレードで秒殺という訳にもいかないし……はてさて。

 

 『…うおぃ、聞いてんのか?』

 「おっとと、ごめんなさい。」

 『たく、そんなので大丈夫かよ。』

 

 呆れた様にオペレーターが溜息を着く…すんません。

 

 『全く…で、スティグロの攻略法は思いついたのか?』

 「うーん…まぁ、ぶっつけ本番ですけど、それなりに有効そうなのは思いつきましたよ?」

 『なんで疑問形なんだよ…まぁ、気張れや。』

 

 そんなこんなしている内に作戦領域に到達、いつも通り大空から飛び立ちました。

 

 

 海面か多数のビルが突き立つ旧チャイニーズ・上海エリア。

 そこには派手な水飛沫を上げながら海上をひた走る流線的なデザインのAFの姿があった。

 

 「おおぉ、案外と素敵なデザイン。」

 

 AFスティグロ、その水上を走る姿はまるでジ〇―ズに見える。

 こちらに気付いたのか、スティグロがこちらに向かって突進してきた。

 

 「ほいきた。」

 

 待ってましたとばかりに、機体をビルの密集地点に移動させる。

 ビルを砕きながら進むため、スティグロの動きが鈍り、そのサイズもあってか攻撃は当て易くなる。

 ボクは引き撃ちの要領で向かってくるスティグロに両腕の拡散バズーカとガトリングを見舞った。

 しかし、量産型と言えどAF、その程度では装甲を多少剥がすだけだった。

 その直後、ビル群が完全に破壊されると躊躇い無くスティグロがこちらに突進してきた。

 巨大なレーザーブレードを展開して迫って来る姿はかなりの迫力を感じるが、元々対艦船用の装備、上空に退避すれば難無く回避できる。

 自機の真下を通り過ぎるAFに最後まで銃弾を加えたが、大きく旋回し、垂直ミサイルを発射しながら再度こちらに向かってくる様子には然したる損傷は見受けられない。

 迫り来る大量のミサイルをガトリングで迎撃し、ビルを盾にやり過ごしていく。 

 今の攻防で解ったが、格闘戦に特化しているだけあってスティグロの装甲はかなりの防御力を持っている。

 それこそこちらの攻撃が通じない程のものであり、通じるとしたらAAとミサイルの一世射撃位だろう。

 しかしミサイルは弾速が遅いために振り切られるし、AAはリスクが大きいのであまり積極的に使いたくは無い。 

 そこまで考えた時点で、ピカリと脳裏に電球が点いた。

 そのアイディアに基づいて、作戦を立案、シュミレートする。

 結果、やや難しくはあるが、現状の装備なら問題無く実行可能と判断できた。

 

 ならば話は早いと、即座にレーダーでスティグロの位置を把握、自身に有利な位置に陣取ろうと再度ビルの密集地へと移動する。

 そして再度ブレードを展開、接近してきたスティグロに対し、今度は特に反撃もせずに上空に逃れ、やり過ごす。

 そしてスティグロをやり過ごし、その無防備な背面が晒され、遠ざかろうとする所で行動を開始した。

 スティグロを追跡する様にOBを発動、その背後に喰らい付いていく。

 自機のOBは持久力が高いとは言えないが、それでもジワジワとスティグロの後背から近づき、目的の背部にある大型ブースター郡に拡散バズーカとガトリングのの砲口を向けた。

 距離は縮まり、射程内にスティグロが収まった。

 だが、まだ早いまだ早いと自分に言い聞かせ、好機を待つ。

 そしてスティグロが大きく旋回し始めた時、即ち一時的に減速してしまう時、煌々と光を吐き出すブースターに向けて拡散バズーカとガトリングを斉射した。

 

 相手の装甲が厚いなら、装甲を貫く攻撃をするか、装甲の薄い部位を攻撃する。

 これは防御力の高いAF相手の戦闘には常識とも言えるものだ。

 しかし自機の装備では前者はあまり有効ではない、ならばと選んだ策が装甲の無い部位、即ち背後のブースター群への攻撃だった。

 他の比較的装甲の薄い部位、ミサイル発射口への攻撃も考えたが、高速で動く相手の一点を正確に狙い撃つには自機は全く向いていないし、そもそも狙撃は得意ではない。

 そのため的の大きいブースターに焦点を絞り、タイミングを計り攻撃したのだった。

 

 「おーおー、煙吹いてるよ。」

 

 白煙を噴き上げながらも必死に海面に浮かぼうとする様は、サイズが段違いであるものの水面に浮いた死掛けの魚を思わせた。

 

 「でも、ちょっと足りなかったかな?」

 

 しかし策は成功した様だが、どうやらまだ仕留めるには至らなかったらしく、未だにスティグロは停止していなかった。

 その証拠に上部のハッチからこちらを近づかせまいと、必死にミサイルを発射し始めた。

 それを順次ガトリングで潰していきながら、確実に止めを刺そうと、スティグロの接近していく。 

 ある程度距離を縮めると、迎撃だけではなく発射口から吐き出されるミサイルを、顔を覗かせた直後に拡散バズーカで攻撃、自爆させ、発射口を破壊していく。

 そして全ての発射口が沈黙し殆ど動きを停止した所で、白煙を上げるスティグロの背に乗った。

 

 「じゃぁ、さようなら。」

 

 直後、機体の周囲を緑の閃光が包みこんだ。

 

 

 地平線の彼方まで広がる大海原、そこでたった今、黒煙を噴きながら一隻の戦艦が撃沈されていた。

 見る者が見れば、大型のキャノン砲と特徴的な三胴構造からその戦艦がBFF所属大型艦である事が解っただろう。

 周囲を見渡せば、黒煙を噴いているのはその一隻だけではない事が解っただろう。

 視界に映るだけでも二十隻近いBFF所属艦艇が先の大型艦の様に黒煙を上げるか、海の藻屑となっていた。

 脱出艇らしきものも見えるが、その数は極少数であり、人員の多くは自身の搭乗艦艇と運命を共にしたのだろう事が窺えた。

 地獄絵図とも言える惨状が広がる中で、たった一機、海と空の青に同調する様にこの地獄絵図を作り出した犯人が浮かんでいた。

 

 一切の損傷無く、滞空する青い旧レイレナード製のネクスト、03-AALIYAH。

 

 その兵装は左背中には047ANR、左腕にはEB-O600、右腕にはEB-O305を装備した接近戦仕様だった。

 先程までは左腕には047ANNRを装備し、汎用性もあったのだが、弾切れと共にパージし、格納していたEB-O600を装備する様になったのだ。

 高速で接近、ブレードで破壊する。

 近接攻撃手段の無い艦艇側には、迫り来るネクストが悪魔の様に見えた事だろう。

 

 『よくやったな…まぁ、通常戦力だけなのだから当然と言えば当然だが。』

 「…今回の依頼はインテリオルとの共同との筈だが?」

 

 オペレーターからの通信に無愛想な声を返す。

 彼らのいつも通りの遣り取りだが、今回は無口の『彼』から珍しく疑問の形で返答があった。

 彼が今回望んだ依頼であるBFF第8艦隊撃破は本来、依頼主であるインテリオル側の最新型AFスティグロが僚機として同行する筈だった。

 しかし作戦開始時刻になってもスティグロは作戦領域に現れず、結果スティグロ抜きで作戦を開始した。

 

 『その事だがな、今さっき入った通信によると、どうやら移動中にネクストの奇襲を受けて撃破されたらしい。』

 「……。」

 

 …まぁ、そんな所だろう。

 最新型とは言え、撃破できないものでもない。

 結果だけ見れば、報酬が大量に貰えたので悪くないが、気分の良いものではなかった。

 

 『…裏切ったのなら、相応の報いを与えていたのだが、な…。』

 「…今回は違うぞ。」

 『解っているさ。』

 

 ボソリと、オペレーターが呟いた言葉にちょっと冷や汗が出た。

 彼のオペレーターはヤると言ったらヤる女なのだと、それなりに長い付き合いになる彼はよく解っていた。

 最新型AFも破壊された上に、『彼女』に襲われてしまうと来れば、普段無感動な彼をしても、インテリオルがあまりにも哀れに思えた。

 …まぁ、今回はそんな事にはならない様だが。

 

 『戦果も良好だ、帰還するぞ。』

 「…了解。」

 

 機体を輸送機の待機する地点に向けてOBを発動、帰還を始める。

 一時の休息のため、青い山猫は巣に戻るのだった。

 

 これは『彼』と『彼女』の生活の1コマ、繰り返される日常の1つである。

 

 

 

 

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