ネタが浮かんでも、なかなか執筆までには行けませんでした
「ア・・・アーシ・・・や・・・アーシアや、起き・・・い・・・起きなさい」
その声は、慈愛に満ちていた。
まるで可愛がっている孫を起こそうとする老人のような、泣いている赤子をあやす父親のような、そんな優しさと温もりに包まれていた。
声は繰り返す。
「アーシアや、起きなさい」
今まで多くの人と接してきたが、アーシア自身に対して、このように声を掛けてくれる存在が何れだけいただろうか。
聖女として、否一聖職者として生きてきたアーシアにとって、声とは“掛けるもの”である。
傷つき苦しむ者たちに、
迷い悩む者たちに、
疲れ項垂れる者たちに、
彼女は、声を掛け、嘆きを聞き、疲れや傷を癒やしてきた。
だからだろうか、彼女は感謝はされてきたことは多けれど、気遣われたり、親愛の情を向けられることが少なかった。
徐々にはっきりしてくる意識のなか、アーシアは、その事が少し寂しいな、と思う。
そして、この声の主はどんな人なんだろう、と思考を巡らせて、あることに気が付いた。
声の主は男性だ。
それも、聞いていて解るほどに成熟した男性が声。
そんな
“とてもはしたないんじゃないんでしょうか!?”
男女のアレコレ、特に性に関する事には疎いアーシアではあるけれど、羞恥心がないわけではない。
人前で横になっているという失礼な状態に、僅かに働いた女としての認識からくる羞恥が加わり、アーシアは急いで飛び起きた。
今まで横になっていた為、少し身体に倦怠感があるものの、意志の力でねじ伏せた。だが、そこまで力をいれる必要はなかっただろう。
「ふぁ!お、おはようございます!・・・ふえぇぇぇぇっ!!!」
他人の容姿に関して、偏見を持つことのないアーシアから見ても、その男はただ者ではなかった。
男は
身長は2mを越すだろう巨躯、それを包み込む分厚い筋肉の山、筋肉質なんてなま易しいものではない。筋肉の鎧なんて言葉がある、アーシアは実際に見たことがある訳ではないが、それでも目の前の男性よりは引き締まっているだろうと思う。
服装もまた尋常ではなかった、拘束具である。
しかし、その筋肉の塊を締め上げる拘束服も役割を果たしきれないのだろう、彼が身動ぎする度に悲しげに鎖たちが悲鳴をあげている。辛うじて服の体裁を保っている程度のものだ。
肌は、病的までに灰。
見るもの全てに畏怖を与えてしまう姿をしていた。
だが、その表情は、とても穏やかで、爽やかな微笑みを浮かべているではないか。
アーシアが驚き、少し怯えながらも声を掛ける事ができたのは、彼の表情に悪意の類いが感じられなかったからだろう。
「あ、ああ、あなたは、だっ、だれぇ、誰ですか!?」
噛んだり、詰まったりするのは仕方ないと思って欲しい。
男性は、震えるアーシアに微笑みながら
「私は、天上におわします神より与えられた奇跡、貴女の神器“
と宣った。
アーシアは、一瞬何を言われたのか解らなかった。・・・・・・・・理解したくなかった。
「ふ、ふえええぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇーーー!!!」
「ああっ!!お待ちなさい!待って!逃げないで!っていうか引かないでっ!!!」
「きゃあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
アーシアはこんらんしている。
アーシアはこんらんしている。
アーシアは逃げ出した!しかし回り込まれてしまった!
アーシアは逃げ出した!しかし回り込まれてしまった!
アーシアは、・・・・・・以下略。
「それで精霊さま、いったいどうして私の前に現れたのですか?」
精霊(自称)が呼びだしたヒトデのような冒涜的存在の触手に捕まり、精霊の嘲笑う声に震えてしまい、正気に戻るまで随分時間がかかったが、アーシアは発狂状態から回復できた。
しかし、今だに触手に捕まったままの姿である。目の前のマッスルの手に現れたおぞましいオーラを放つ本より召喚されたソレは、アーシアの身体を労るようにマッサージしている。自分の状態に恐怖や嫌悪を抱かないでいるのは、自分の神器が呼び出したものだからか、それとも素質があるからなのか。
「私が、この場にいるのは貴女に聞きたいことが、教えたい事があるからです」
精霊はアーシアの質問に満足そうに応える。
もともと、話をするために出てきたのだ、やっと本題に入れる。
「き・・・聞きたい・・はぅ・・・こと・・・ぁん・・・ですか」
どうやら触手が悪戯しているようだ。精霊は、ヒトデに帰還を命じた。
「アーシア・・・アーシア・アルジェント。貴女はどうしてそこまで神の愛を、加護を、存在を信じていられるのですか?神への怨みや怒りはないのですか?私はアーシアの神器、貴女に何があったかは全て見聞きています。貴女が、何を感じ、何を想っているかも同様に。しかし、それ故に私は解らない」
いくら目に見える奇跡、神器を宿していると言ってもソレは神自体の愛だの加護だのの証明にはならないのだ。
確かに、神器は聖書の神が創った人間の為の道具である。神器は、自身と本質的、魂の相性のよい人間に宿るのだがそれだけである。
神の加護も、そもそも聖書の神に対しての信仰がなくても神器は宿るし、力を与えるのだ。
今の時代、天使クラスを目にした人間はそこそこいるが、神への目通りが叶った者はいない。神器である精霊も神がいた事は聞いてはいるが、その程度である。
そんな精霊にすらあやふやな存在を、ただの人間であるアーシアが強く信仰出来ることが不思議であったのだ。優しいだけの小娘とまでは言わないが、恐らく神器を宿していない状態で今と同じようになったとしても、彼女の神への信仰は揺らがないだろう。今まで多くの人に宿り、また接してきたからこその疑問だった。アーシアに宿っているのだ、答えは分かっている。だか、どうしてその答えなのかが解らない。まさしくそんな心境なのだ。
“もし、私を納得させる答えならば、彼女になら”
己の禁手を教えてもいいかもしれない。
癒してきた傷に応じて己を強化し、魔力を爆発させるあの獣の咆哮を・・・・・・。
中の人ネタですね。
宝具の漢字を変換出来なかったため、やむを得ず
続きはまた今度