緋弾のアリア―交錯する者達   作:孤独な白狼

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では、どうぞごゆっくりしていって下さい。

2017/10/09
1話と2話で何故か違ってしまっていた書き方を同じになるように変更しました。
1話の細部の表現を所々変更しましたが、1話の大筋には特に変更なし。


第1話 出会い、そして始まり

もうすぐ日が明けようかという頃。

あるニュータウン計画で建設中ビルの立ち並ぶまだ人気の無い町。

その中でも大きな企業が入る予定の10階建てのビルの5階。

まだ壁の出来ていない場所で、外を見ながら膝立ちの姿勢でバイポットを立てた狙撃銃を構え、スコープを覗いている黒髪の少年がいた。

 

「…ターゲット確認」

 

少年は無意識の内にそう小さく呟き、銃を持つ手に僅かに力が入る。

ターゲットというのは、この地域で極秘裏に行われるという武器の密輸現場に現れる、あるマフィアの幹部の1人のことだ。

今回はそいつ(ターゲット)を暗殺するのが少年の受けた依頼だ。

依頼者に貰った情報通りであれば恐らく後数分で予測する位置に顔を出すであろうターゲットを少年は狙撃する予定だ。

ちなみに少年が構えている銃は、アンチマテリアルライフルである、ヘカートⅡだ。

ヘカートⅡは遠くからでも戦車などの装甲版を貫通出来るだけの破壊力を備えている。

更に少年が特殊な違法改造を施している為、通常のヘカートⅡよりも最大射程が長くなっている。

 

(そういえば、今回の依頼もいつもと同じような内容だったけど…依頼者がいつもと違って詳しい情報をくれなかったな、どうしてだろうか?)

 

そんな余計な事を考えつつもトリガーガードにかけた指をトントンと動かしリズムをとり、狙撃タイミングを計る。

 

(ここから狙撃ポイントまでの距離は約2000mあるかないか…こんなの大した距離じゃない、ヘカートⅡが無改造だったとしても当てられる距離だ。こんなの丸めたゴミをゴミ箱に投げるのと大差ない)

 

「……フッ!…チッ!!」

 

少年はターゲットを確認したのと同時に息を一瞬止めトリガーを引いた…。

いや、少年は悪寒を感じトリガーを引かずに舌打ちをしながらも両手でヘカートⅡを持ち上げ、その方向に銃口をすばやく向け、勘で狙いをつけトリガーを引き…撃ち放った。

すると、パァン!と凄まじい音や反動と共にヘカートⅡから12.7×99mm NATO弾が銃口から吐き出されたが、途中で何かに当たり少年の直ぐ横にそれが着弾した。

少年はそれを碌に確認もせず、ヘカートⅡのボルトを引き、すぐさま排莢させ次弾を薬室に装填し更に発砲する。

それがまた何かに当たり近くに着弾する。

 

「クソッ!あの狸爺、俺はもう用済みってか?!次会ったら絶対殺してやる!!」

 

少年は咄嗟に理解した…今回の依頼は少年を消す為に仕組まれた罠だと。

そして今の状況は恐らく少年の殺害を依頼された同業者のスナイパーから攻撃を受けているという事。

 

「こんな所で殺られてたまるかよ!」

 

少年は相手が撃ってきた銃弾に銃弾で弾く銃弾撃ち(ビリヤード)という技を使い着弾点を6・7回逸らし防いでいると、とうとうヘカートⅡの弾が切れてしまった。

 

「くっ!」

 

少年は直ぐに右手でレッグホルスターからM92Fという拳銃を取り出しつつ安全装置を解除し発砲、また銃弾撃ち(ビリヤード)で逸らしていると敵はそれをも利用した上でこちらに当たるように撃ってきた。

 

跳弾射撃(エル・スナイプ)だと?!意外に高度な技を使ってくるな)

 

そんな事を考えつつも直撃しそうな銃弾は全てもう一度銃弾撃ち(ビリヤード)をして逸らす。

 

(弾の消費がやばいな…)

 

そんな事を思いながらも撃ちつつ、ヘカートⅡの空マガジンを左手で抜き新しいマガジンを装備する。

それが終わると同時にM92Fが弾切れを起こしホールドオープン状態になり致命的な隙が出来てしまった。

だが、絶好のチャンスだったにも係わらず相手からの銃弾が飛んで来なかった。

それは相手も弾切れを起こしたのだろう。

 

(このチャンスを逃すわけにはいかない!)

 

少年はM92Fをレッグホルスターへ仕舞い、ヘカートⅡを肩から提げ、建設中ビルから身を投げ出した。

途中で他の建設中ビルへと両腕に仕込んでいた特殊ワイヤーを交互に発射して引っ掛け、高速で巻き取るを何度も繰り返す事で空中を高速移動しつつ、再び飛んでくる銃弾を何とか紙一重でかわしながら敵狙撃手がいるであろう建設中ビルの5階に突入する。

 

「フゥ…たどり着いた…敵は7階…2つ上か…」

 

少年は息を軽く整えてから階段を登る。

 

(こりゃあ階段から出た瞬間に狙われるな)

 

まず腰のポーチからスモークグレネードを取出し安全ピンを抜き、敵がいる階に放り込むと同時に狙撃され何処かに弾かれてしまった。

実はそれも想定していた為、発砲と共に一気に飛び出しコンクリートが剥きだしの柱にもたれるように身を隠すと、敵からは死角な筈なのに再び発砲音が響いた。

またも悪寒を感じて直感を信じ、遮蔽物になりそうな別の柱に飛び込むと、先ほどまで少年の胴体があった位置を寸分違わず跳弾した銃弾が通り過ぎた。

 

(…あぶねぇ、まさか二重跳弾狙撃(エル・エル)まで出来るとは思わなかった。完全に見えてない筈なのに正確に狙ってきやがった。無理やりでも前に進んでホールドアップしないと。今はこいつを殺すわけにはいかない、誰に雇われたか聞くまでは…どうせあの爺だろうけどな)

 

少年はそこまで考えると同時に、遮蔽物から飛び出しつつヘカートⅡの銃口を向け発砲する…ようなフェイントをかける。

 

「…あ」

 

敵がそれを見て反射的に撃った銃弾は銃口から放たれるよりも前に最低限の動きだけで射線から逃れることで避け、一気に距離を詰め敵の後ろに回り込み、袖に隠していたナイフを首に当て拘束する。

 

「誰に雇われた…」

依頼主(クライアント)の情報は言えません」

「ほう」

 

(この状況で言わないか。それにしても暗くて分かりにくいが…こいつ女か?そして、あれ程の狙撃技術があるのに致命傷になる所には1発も撃ってこなかった。もしかして、こいつ…人を殺した事がないんじゃないか?解放して話を訊いてみるか)

 

少年が拘束を解き、ナイフを仕舞うと少女が戸惑いつつポツリと呟いた。

 

「殺さないんですか?」

 

どうやら殺されずに解放された事に驚いているようだ。

 

「何故殺す必要がある?」

「私はあなたを殺そうとした」

「お前の腕では俺を殺せないし、今のお前なら拘束しなくても話が聞けそうと判断した」

「…ッ!……」

 

少年が笑顔でそう言うとその少女は無表情なのに何故か少年には照れているようにも見えた。

 

「そうだ…俺の名前は里見 海斗(さとみ かいと)だ、お前の名前は?」

「………レキです」

「レキか良い名前だな」

 

海斗達が自己紹介していると雰囲気を読めないやつらの足音が聞こえてきた。

 

「…ん?」

 

(この足音は…1階に何人か来たな)

 

「お前の仲間か?」

「違います」

「どうやらお前も依頼主(クライアント)に裏切られたみたいだな、これからどうするんだ?」

「それでも私は依頼主(クライアント)の元に戻るだけです」

「何?…俺を始末出来なかったんだ、お前殺されるぞ?それでも戻るのか?」

「はい」

「ふざけんな!お前はそれでも良いのかよ!」

「良いも悪いもありません。全ては風の導きです」

「そう言うなら俺がここでお前を殺してやる!」

 

海斗はレッグホルスターからM92Fを抜き、レキに銃口を向け撃ち放つ。

 

「ッ!…何故、外したのですか?あなたの腕ならこの距離で外すはずがありません」

 

そう、海斗が撃った銃弾はレキには当たらず、直ぐ横を通りその後ろの壁にめり込んでいた。

 

「ここでお前はターゲットだった俺に撃たれて死んだ。今のお前は自由だ、後は好きに生きろ」

「自由、と言われても私にはよく分かりません…」

「分からないって……クソッ!」

 

海斗は咄嗟にレキを抱え遮蔽物に向かって飛び込み、身を隠すとパパパパッ!と銃弾の嵐が階段の方から二人のいる階に殺到した。

海斗は会話に夢中で忘れていたが階段から上がって来ていたやつらがこの階に到達すると同時に発砲してきたのだ。

 

(ここにはレキも居るのが分かっている筈なのに撃ってきたという事は…やはりレキも俺と同じように罠に嵌められたって推測は当たりみたいだな)

 

「どうするのですか?」

「そっち残弾は?俺はメインもサブも残り1マガジンずつだな」

「残弾はありません」

「そっか…なら一先ずこれ持っとけ」

 

海斗はレッグホルスターから弾切れだったM92Fを抜きマガジンを交換して、レキへ手渡す。

 

「なぜ、私に渡すのですか?」

「ん?この状況を生き延びる為には必要だろ?」

「そう言う事ではありません。この状況では逃げきれませんよ?」

「それはどうかな?まぁ俺に任せろって、この程度の状況なら何とか出来る。もうちょっと寄ってくれ」

 

そう言いつつ海斗はレキが近寄ってきた所を予備の特殊ワイヤーで自分と繋ぎ、左手でレキの細い腰に手を回し脇に抱える。

 

(おっと、…軽いな。ちゃんと食べてるのか?)

「ツ!?!?!?」

(えらく可愛い反応するな~。……まぁ今は変に動かれるよりはいいか)

 

抱える際何故かレキは抵抗せず…というか咄嗟のことでレキは思考が追いつかず、追いついてもこれまで異性とかかわる事自体少なかったレキは異性(海斗)との接触に無意識のうちにドキドキしたことで体に力が入ってしまい動ける状態ではなかっただけなのだが。

 

(さて、あ~言ったけどどう逃げるか…弾がもっとあれば全員皆殺しにして逃げれば良かったんだけど…これ以上逃げ方を迷っている暇はない!)

 

その考えに至ると同時、腰のポーチから攻撃型手榴弾を取り出しそれの安全ピンを抜き、まだ敵が潜んでいるであろう階段の踊り場の方へと投げる。

そしてレキを脇に抱えた状態で壁がなく外が見えている場所まで走り…そこから飛び降りる瞬間、向かいのビルの屋上で何かが光った。

 

「マズッ!」

 

反射的にレキを庇うように体を反らしかわすが、7階から飛び降りるつもりだった為、体勢を崩した状態で一気に外へと飛び出した。

背中を冷汗がドッと流れるがすぐさま右手から特殊ワイヤーを飛ばしそれを別のビルに引っ掛ける。

もう片方の手が使えない為、それを支点に振り子の要領で別のビルへと飛び移ろうとするが、ビルに飛び込む寸前でまた光った。

この時海斗は両手が塞がっており回避は不可能だったが、いつの間にか復活したレキがM92Fで銃弾撃ち(ビリヤード)をして防いでくれ、何とか無事に別のビルへとたどり着けた。

 

「ナイス、レキ」

「……」

 

(どうも褒められ慣れてないみたいだな、一見無表情に見えるけど何となく照れているようにも見える。ほんとこの子一々すごく可愛い反応するな~弄りがいがある)。

 

そんな余計な事を考えている間もワイヤーを使いビルからビルへと渡っていき、大きな森のような公園にたどり着く頃には全ての追手を振り切っていた。

 

「ここまで来ればもう大丈夫だな」

 

海斗は周りを確認し追手がいないのを確認出来たのでさっさと二人を繋いでいるワイヤーを解き離れる。

その時に普段から無表情なレキには珍しく極僅かに残念そうな表情をしていたのだが海斗はちょうど死角になっていて気がつかなかった。

 

「な?逃げ切れたろ?」

「こんな方法で本当に逃げ切れるとは思ってもみませんでした」

 

レキが呆れ顔でそう言ってくるが無視する。

 

「ここまでくればお前も大丈夫だろ?お前はもう自由だ、後は好きに生きな、じゃあな」

 

そう言い海斗はその場を去ろうと歩き出したが…何故か自分以外の足音がもう一つ聞こえた。

その足音の正体はテトテトと何故か自分の後をついてくるレキだった。

 

「…何で付いてくる?」

「私はこれから、あなたに仕えます。あなたは私の銃をあなたの武力として、私の身体はあなたの所有物として、自由にお使い下さい」

「……ちょっと待て!付いてくるって話からどうしてそうなる?!」

「ウルス族には強い力を持った人を婿に入れるという掟があり、あなたが私との戦いで勝利したからです。それに風は、あなただと言っている」

 

(マジか…ウルス族的には私に勝ったんだから責任とって結婚してってことかよ…)

 

「それは、ウルス族流にのっとて私と結婚してってことであってるか?」

 

レキがコクコクと小さく頷き肯定する。

 

「はい。それに異性とは話し合いで手に入れるものではなく、奪うものですから」

「理由は分かった。悪いが…行き成り結婚だけは止めてくれ」

 

海斗が結婚だけは何としてでも断ろうとするとレキはドラグノフ狙撃銃の銃口を海斗に向けた。

 

「ちょっと待て!お互い今日知り合ったばかりなんだ、せめて恋人から始めさせてくれってことだ」

「……」

 

海斗の妥協案を聞き、納得したレキは無言でドラグノフを下ろした。

 

「俺もレキみたいに可愛い子となら嫌ではないけど、順を追ってまずは恋人としてお互いの事を知っていこうよ。所有物とかじゃなくてさ」

「………」

 

レキの顔をが少し紅くなっているような気がしつつも海斗は続きを話す。

 

「まぁその時には俺よりもいいやつがいるかもしれないし、そっちの気が変わるかもしれないしな」

 

海斗が言った事を考えているのか少し俯き、結論が出たのか顔を上げた。

 

「…分かりました。それでは結婚を前提にまずは恋人になるということで」

「それじゃあ、これからよろしく。レキ」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。里見さん」

 

こうして俺達2人は組織を抜けたその日、恋人同士となった。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

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