緋弾のアリア―交錯する者達   作:孤独な白狼

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では、どうぞごゆっくりしていって下さい。

2017/10/09
1話と2話で何故か違ってしまっていた書き方を同じになるように変更しました。
1話の細部の表現を所々変更しましたが、1話の大筋には特に変更なし。


第2話 契約

朝日が昇り始めた頃。

色々あって、これからは行動を共にする事になった海斗とレキ。

2人はまず、活動拠点を得るため、大きな公園を抜け、隣町のまだ人気のない道を歩いていた。

 

(俺達の部屋は元々組織が用意した物だったから部屋に戻るのは論外…荷物は諦めるしかないな…ああ…俺のグラビア写真集、グッバイ)

 

海斗が意気消沈しつつも歩いていると、他の店はまだシャッターが下りているにも係わらず、喫茶店のような建物だけが開店しているのか明かりが付いており、そこのテラスには2人ほど人がいた。

1人はそこの喫茶店の店員なのか、長い黒髪の女性がフリルの多めな可愛らしいデザインの制服を着て、お盆を持って立っていた。

もう1人は英国紳士と言えるだろう顔つきのイケメンな男が椅子に座り、新聞を広げていた。

海斗とレキは自分達が持っているヘカートⅡやドラグノフなどの狙撃銃を見えないように持ち直しつつその喫茶店の横を通り過ぎた。

 

「もうそろそろ逢える頃だろうと推理してたよ、君達に話たい事があるんだ。聞いてもらえないかな?」

 

テーブルに新聞を置いた英国紳士は通り過ぎようとしていた2人に視線を向けそう言った。

 

「ハァ…」

 

海斗は呆れてため息を付きながらもゆっくりと英国紳士の方へと向き直り、レッグホルスターからM92Fを抜き銃口を向けた。

レキはこの時、海斗の瞳の色がいつの間にか元の黒色からルビーのような紅い色に変わっている事に気が付いたが、一先ずは事の成り行きを見守る事にした。

 

「ん?何のつもりかな?」

「バレないと思ったのか?」

 

海斗はそう言い放つと同時に警告もなしにM92Fを撃ち放った。

パンッという音と共に銃口から勢いよく撃ち出された銃弾に英国紳士は眉間を貫かれ、驚いた表情のまま椅子ごと倒れていった。

 

「俺達を試すつもりか知らんが、こんな人形で俺達と話をしようなんて思ってないんだろ?さっさと出て来い、中に居るのは分かってる」

 

海斗が店内に向かってそう声をかけると、パチパチと拍手をしながらさっき撃ち殺した筈の英国紳士とまったく同じ顔をした男が出てきた。

 

「いや、すまない。推理して分かっていたとはいえ、話す前に君達の力を直に見ておきたくてね。試すようなマネをして悪かった」

 

(こいつ…弱く見えるように振舞ってるけど…強いな。まったくスキがない)

 

海斗はその男から発せられる言葉の端々から、名状し難いカリスマ性のようなものを敏感に感じ取り、警戒レベルを大幅に引き上げていた。

 

「もう、それはいい。推理していた、というのは?」

「卓越した推理は自ずと予知に近付いていくものだ。僕はそれを『条理予知(コグニス)』と呼んでいるがね。つまり僕は君達があの組織を抜けてここを通ることを予め知っていたのだ。いきなり君に撃たれるところまで全て僕には推理できていたんだよ」

「なるほどね」

 

(にわかには信じられないが、嘘でもなさそうだ)

 

「そうだ、まだ自己紹介をしていなかった。僕は…」

「おっと、その前に…あんたの仲間、そこで店員の真似をしている女性以外にもいるだろ?店内に潜んでるのは分かってるんだ」

 

海斗がそう言うと、女性店員は僅かに驚きつつ、何故ばれたのか?といった視線を海斗に向け、店内に潜んでいる者の方からも僅かに驚いた気配が伝わってきた。

 

「ああ、そうだったね。パトラくんこっちに来てもらえるかな?」

 

英国紳士が店内に向かって声をかけると店内から、金銀財宝でその身を飾り、水着のように露出度の高い服を着た半裸同然の女性が現れた。

 

(うわぁ~…あれ、ただ布を巻いてるだけなのか、露出狂だな。あの格好をレキがしても…いや、アリだな)

 

レキにはこの時、海斗がパトラを見てにやけたように見え、ある事を考えていた。

 

(何故、こんなにも胸がモヤモヤするのでしょうか?)

 

レキには結局その答えが分からず、自分でも気が付かないうちにムッとした視線を海斗に向けていたが、向けられた本人(海斗)もまったく気が付いていなかった。

そして、パトラと呼ばれた少女は英国紳士の隣までやって来ると海斗に自分の格好が若干引かれて露出狂扱いされているとはいざ知らず、話し始めた。

 

教授(プロフェシオン)よ、こやつを本当に加えるのか?確かに私の造った砂人形や気配を消していた妾を一発で見破ったのは多少評価してやってもよいのぢゃが…こんなひょろい奴使えるのかのう?」

 

海斗はパトラと呼ばれた少女の言葉を聞き、さっき自分が撃った男が倒れているはずの場所を横目で確認すると、ちょうど体が砂に還っていく所だった。

 

(砂人形…あいつ、超能力者か)

 

「こう見えて、彼にはある能力があるかなね。彼が本気になれば、いくらパトラ君であっても苦戦するレベルだよ」

「それ程とは見えんのぢゃが…教授(プロフェシオン)がそう言うなら今は(・・)黙っておくかのう」

 

明らかに「今は」の部分だけ強調してパトラは不服そうに男の後ろに下がっていった。

 

「へぇー流石に俺の事は全て調べてるってわけか。でも、俺が能力を持ってるって情報は完全に抹消したはずなんだけど、どうやって調べた?それも推理か?」

「いや、これは推理ではないよ。簡単なことだ、抹消された記録を復元したまでさ、イ・ウーには優秀な人材がいるからね。例えば、子供の頃に特殊なウイルスを使うことで治癒力や運動能力など、さまざまな能力を付加させることで最強の兵士を作るという実験…その成功例が君だという事もね」

「……」

 

(どうやら、本当に俺の情報を調べてきてるみたいだな、それに今の所は俺に危害を加えるつもりもなさそうだし、こいつとは話せそうだ)

 

そう判断した海斗は警戒だけは怠らず、M92Fを一先ずレッグホルスターに戻した。

 

「それでは、仕切り直して自己紹介といこう、と言っても君は僕のことは知ってるだろう。こう思うことは決して傲慢ではないことを理解してほしい。なにせ、僕という男は、嫌というほど本や映画で取り上げられているのだからね。そっちには僕を紹介してくれそうな人が…いや、ウルス族との交渉に行った時にレキ君とは面識があったね。それでも改めて――初めまして。僕は、シャーロック・ホームズだ」

 

(シャーロック・ホームズだと?…なるほど、それで推理か)

 

海斗がレキに確認の意味を込めて視線を向けるとレキは小さくコクリと頷いた。

 

「はい。その人はシャーロック・ホームズ1世です」

「ありがとレキ。それで、そのホームズさんが俺達に何の用だ?」

 

視線の意味を悟ってくれたレキに礼を言いつつ、シャーロックには先程のように回りくどい言い方をされないよう海斗は直球で言った。

 

「ふむ、率直に言おう。君をイ・ウーにスカウトしたい」

「スカウト?あんたなら俺がどう答えるか推理で分かるんじゃないのか?」

「僕の『条理予知(コグニス)』にも例外があったようでね。未来が推理出来ないのは海斗君で2人目だ。だから、君の事が気になったんだ」

 

(未来予知も万能じゃないわけか。それに2人目?ということは俺以外にもいるわけか。そいつの事も気にはなるが今考えることじゃない…それにしても、意味は違うと分かっていても男に「君が気になる」とか言われると寒気がするな)

 

「イ・ウーの目的は?」

「特に組織としてこれといった目的はない。強いて言うなら自己の鍛錬や各自の目的の実現とかかな?イ・ウーは各自の自主性に委ねているんだ」

 

シャーロックは予想出来ない会話が段々楽しくなってきたのか饒舌になってきた。

 

「ただ…組織内は弱肉強食のようになっているがね」

「それは面白そうだが…条件がある。俺だけじゃなくレキも入れること、俺たちは2人で1つのチームだ。そして、俺は構わないが絶対にレキに人を殺させない、その二つが条件だ」

 

レキは海斗の人を殺させないという発言に対して「自分は覚悟が出来ている」と言おうとしたが、海斗に向けられた視線から、有無を感じさせないオーラを感じとり、言っても無駄だと判断し黙った。

 

「もちろん、その条件で構わないよ。レキ君に人を殺すような案件は絶対にまわさない事を約束しよう」

「契約成立だ。それで、まずは何をするんだ?」

「今は特にないんだ、準備していることはあるけどね。組織の中での君たち2人は僕の直属の部下の扱いになるから手伝って欲しい時はこちらから連絡する。指示がない時は2人とも自由にしてもらって構わないよ。ただ、最初に他の幹部メンバーとの挨拶の場を設けないといけないね」

 

(自由にしてもいいのは嬉しいが、幹部との挨拶か…ひと波乱ありそうだ)

 

「それと言い忘れてたんだが…俺たちは今、そっちが知っている通り、前の組織から抜けたばっかりで拠点がない。どうにか出来ないか?シャーロック・ホームズ」

「僕の事は表向き教授(プロフェシオン)と呼んでくれないかな?個人的な場であればシャーロックでも構わないのだが…一応僕は世間で例の滝で死んだ事になっているからね」

 

(そっか…普通に受け入れてたけど、こいつはジェイムズ・モリアーティと共に滝に落ちて死んだ事になってるんだったな)

 

海斗はその事を思い出し、これから何度も呼ぶ事になるであろう呼び方を決めた。

 

「分かったよ。これからよろしく。教授(プロフェシオン)

「…よろしくお願いします。教授(プロフェシオン)

「ああ、こちらこそよろしく。海斗、レキ君。そこで君たちの次の拠点なんだが…付いてきたまえ。君たちの次の拠点になる場所に案内しよう」

 

そう教授(プロフェシオン)が言うと同時に建物の影に隠れるように停められていた黒塗りのリムジンが動き出し、目の前に停車した。

 

「さぁ、3人共乗りたまえ。パトラ君、今回は手伝ってくれてありがとう。報酬は約束どおりの物を送っておいたから後で確認しておいてくれたまえ」

「うむ、礼は要らん。こちらにもメリットがあったから手伝ったのぢゃ気にするな。こちらは例の報酬さえ貰えればよいからのう」

 

リムジンから降りてきた運転手が後席座席のドアを開け、教授(プロフェシオン)に言われるがまま海斗とレキは、店員のフリをしている女性と共に乗り込んだ。

最後に運転手の人が乗り込むと、パトラは何処かに歩き去り、海斗たちの乗ったリムジンは殆ど揺れを感じさせることもなく動き出した。

 

「目的地に到着するまで、まだまだ時間に余裕があるから理子君、自己紹介してくれるかな?」

「はい。畏まりました教授(プロフェシオン)

 

まるでメイドのような言葉遣いと仕草で答えてから、理子という少女は自己紹介を始める前に自分の顔に手をかけた。

どうやら特殊メイクを施したマスクのような物を着けていたようでそれを顔からベリッと剥がしカラーコンタクトを外すと、金色の瞳に綺麗な金髪をツーサイドアップにした、先程までのキリっとした感じの女性の顔とはまったく雰囲気の違う童顔の美少女が現れた。

 

(なるほど、さっきの姿は変装だったわけか。歳は俺とレキと同じ位かもな)

 

「私の名前は峰・理子・リュパン4世でぇ~す♪4世って呼んだら殺すからな。私のことは理子って呼んでね♪カイ君、レキュ♪」

 

自己紹介の途中で軽い感じから一瞬キャラが変わって一般人なら気絶するレベルの殺気が漏れていたが、海斗もレキも相手が今の所は本当に殺すつもりはないのが分かっていた為、スルーした。

 

「分かったよ、理子。これからよろしく」

「理子さんよろしくお願いします」

 

それから1時間ほど経った頃、ようやく目的地に到着しリムジンから降りた。

 

「おい、教授(プロフェシオン)。これはどういう事だ?ここが拠点なのか?」

 

海斗が不思議に思うのも無理はなく、着いた場所は大きな港だった。

ただし、港に停泊している船は1隻もなく、付近には大量のコンテナがあるだけという、とても拠点になりそうな物が何もない場所だったのだ。

 

「いや、この港ではないよ。もう直ぐ到着するはずだ」

「到着?いったい何が…?!」

 

海斗は言い終わる前に海面に浮上してきた何かを見て、声には出さなかったが驚愕した。

 

「まさか、拠点て…潜水艦のことだったのか?!」

「その驚く顔が見たかったんだよ。そう、そのまさかさ!この原子力潜水艦ボストーク号!こそがイ・ウーの本拠地なんだ。君たちにも基本ここで生活してもらうことになるね」

「マジかよ…」

 

教授(プロフェシオン)の説明によると、このボストーク号と呼ばれる原子力潜水艦は何処からか強奪してきた物であること、船体に書かれた【伊・U】の文字は日本とドイツそれぞれの潜水艦の暗号名を転用していること、核武装もしており、いかなる軍事国家も手出しできないから本拠地には最適ということらしい。

 

「さぁ行こうか」

「あ、ああ。分かった」

 

そうして海斗とレキは教授の後に続いてゆっくり歩いていった。

 

「ようこそ、イ・ウーへ」

 

まるで子供のように教授(プロフェシオン)が楽しそうにそう言ったのを聞きながら、海斗とレキは原子力潜水艦ボストーク号に乗船した。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

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