東方七世界   作:tesorus

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ブラッド・ワールド編までの繋ぎ的な話なので、今回は若干短めです。すみません。


科学で凌駕する

「で、結局ルイズは何者だったの?」

 

駅の近くの、趣のある居酒屋。鼓石と約束したこともあり、私達はそこで夕食を取ることにした。

 

この店は肉料理の店で有名でもあり、こんな週末にもなると予約でいっぱいになる。

 

メリーも来てくれて、みんな揃っての夕食を食べることができて嬉しい。ただ、明日にはここをたつと思うと、あまり飲みすぎないように注意せねば。

 

「適当に頼んじゃって良い?」

 

「…良いけど、私の質問に答えてよ。」

 

私が彼女の話を逸らして適当に流すと、スミは怒って私を睨みつけた。

 

どうやら初代部長様は、少しでも謎をほったらかしにするのがお嫌いなようだ。私はできれば話したくはないが、初代部長様の命令なら仕方ない。

 

私はスミに、夕方あったことを全て話した。ルイズに拷問を受けたことや、鼓石の底知れぬパワー。そして、ミラークロスと呼ばれる異世界にも、人造の妖怪のことが流れているということ。

 

「…そんなことがあったんだ。じゃあ、鼓石をあの時連れてこれば、竜也も楽勝だったかもね!」

 

「うん…確かに、竜也も強かったけど、ルイズの強さはそれの比じゃない。単なる予想だけど、多分あれで手加減してると思う。」

 

タッチパネルを動かして、食べ物を注文する。一応は、これを最後にこの世界で食う飯は当分ない訳だから、それなりの物を頼む。

 

それにしても、彼女のような子供が兵士となっている国とは、一体どのような国なのだろうか。ひょっとすると、まだ徴兵令が根強く残り、国民が国に縛りつけられているような世界なのかもしれない。

 

言論や行動の自由すら主張できぬ、国民底なしの闇に縛りつける法律。彼女もまた、それに縛りつけられている一人なのかもしれない。

 

そして、私達はそんな世界にも行かねばならない。そして、それはミラークロスだけではない。異世界では、自分達の常識は全く通じない。そう思うと、なんだか無性に異世界に行く気が失せていく。

 

いやいや、これも幻想郷と言う世界の為。そこは自分に鞭をうち、意地でも行かねばならない。

 

とりあえず運ばれてきたビールでも頼んで、今日は楽しもう。

 

「そうそう。異世界と言えば、明日私達が行く場所は、ブラッド・ワールドと呼ばれる場所よ。」

 

「えっ…ブラッドって…そんな血みどろの世界なの?」

 

「さあ。私も行ったことはないもの。」

 

「………。」

 

メリーが私に耳打ちした後に、急に食欲が失せた。流石に、食事中に血とかブラッドとか言うもんじゃないだろう。

 

もし時空を飛んで、辺り一面が赤かったらどうしよう。そんなことを考えるだけで、未来への希望がなくなる。

 

しかし頼んでしまったものは仕方ない。それに、黙っていてもお腹はすく。運ばれてきた唐揚げに箸を伸ばし、口の中に放り込む。油のサクサクな食感と肉のジューシーな口当たりが口の中を包む。

 

まあ、絶望していても仕方がない。先ほども同じようなことを言った気がするが、今日のところは遊んで食べよう。

 

そんな気持ちで食べたり飲んだりしていると、ひたすらに時間は過ぎて、もう夜の闇はすっかり辺りを覆っていた。

 

結局、私はあまり酒が飲めずに酔ってしまった。メリーは酒が強く、私にも酒を勧めてくるのだが、私はもうこれで満身創痍だ。これ以上飲めば吐いてしまう。

 

スミや鼓石は酒が飲めないので、食事だけをして随分と元気だ。今日は彼らにタクシーでも呼んでもらい、さっさと帰ろうか。そんなことまで考える。

 

会計を済ませて店を出ると、スミはコンビニ寄っていい?と寄り道を誘った。しかし私はもう限界だ。スミ達はメリーに任せ、私はさっさとタクシーで家に帰ることにした。

 

行き先をボタン操作して、タクシーを自動で動かす。今月はお金がまだ余っているので、いつもならば、メーターが上がる直前の家から数十メートル前で降ろしてもらうのだが、今回はお金は気にせず、家の目の前で降ろしてもらう。

 

料金は六百円。たった二百円だけの違いだ。大した金額ではない。指紋認証でドアを開け、リビングの電気をつける。

 

リビングの机の上には、置き手紙がしてあった。送り主はルイズで、内容は、ブラッド・ワールドに関するものであった。

 

ブラッド・ワールドは、レンガ造りの家が立ち並ぶ帝国のような国が目立つ世界で、天使や悪魔が戦争をする世界ですと書いてあった。

 

まるで、先ほどの居酒屋の一部始終を全て見ていたような回答。一体彼女は何者なのだろうか。

 

ひょっとして、鼓石と出会うきっかけとなったあの妙な手紙の主は彼女なのだろうか。そんなことも考え、1人で悩む。

 

もしかすると、私は今までの行動の全てを彼女に見られていたのかもしれない。あの行動も、あの行動も、みんな彼女に?

 

いや、そんなことはない。でなければ、彼女は私を拷問にかけたりはしないはずだ。

 

でも、ならば何故こんな場所まで彼女は入ってこれたのか?考えていると泥沼にはまりそうで、先ほどの酒とも合わせて気分が悪くなってくる。

 

まあいい。スミ達には合鍵を渡してある。今日はもう寝よう。

 

布団をしき、目を閉じてしばらくすると、私の意識は完全に落ち、深い心の底まで意識は沈んでいった。

 

目を覚ましたのは、朝の6時。早く寝たせいか、目を覚ますのが早かったようで、スミ達は隣で深い眠りに落ちていた。

 

「…まだ頭が痛い。」

 

机には、今度はスミからの置き手紙があった。まだ酔っているといけないと思い水を買ってきたが、もう寝てしまったので冷蔵庫に買って置いてあると言う内容だった。

 

冷蔵庫を開けると、確かに水が買ってあった。私はそれを取り、1人ベランダに出た。

 

日は徐々に短くなり、6時でもまだ空は暗い。

 

私達が生きてきたこの世界。地面があり、空があり、宇宙がある。宇宙人はいるかもしれないが、平行世界など、都合がいいおとぎ話の設定と笑っていた。

 

しかし、それは実在した。そう考えると、まだまだ世の中には科学で説明できないことがたくさんある。ひょっとすると、我々の知る世界など、この世界の何兆の一でしかないのかもしれない。

 

それを科学で凌駕する。それが、私達若者に託された使命なのかもしれないと、ベランダから見える星々を眺めながら考える。

星や月で時や場所を読み、念力やバリアーで身を守る。私達が使う超能力も、考えてみれば、そのうちの一つ。いや、にとりの刀に宿る力や、メリーの霊能力。鼓石に秘められた無限の力だってそうだ。

 

そんな使命は、目の前にもたくさんある。重要なのは、それに気づくか気づかないか。それなのかもしれない。

 

そんなことを考えながらベランダでたそがれていると、部屋のチャイムが鳴った。扉を開けると、メリーがキャリーバッグを持って立っていた。

 

「…まだ寝てた?」

 

「私以外はね。」

 

「そう。まあ、こんなこと言うのもあれだけど、このまま目覚めるまで放っておきましょう。これから、そんな寝顔ができるかなんてわからないから…」

 

「…うん。」

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