東方七世界   作:tesorus

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初期設定では、また場所をワンダーシティやら何やらにしようと思ったのですが、それだと流石に飽きるので、今回は「天使」と「悪魔」の話にしてみました。もちろん、今回はこれだけではないので、展開早めで行きますがね。


ブラッド・ワールド編
血戦世界と冷酷な天使


血戦世界ブラッド・ワールドと呼ばれる世界は、夕焼け空に包まれていた。

 

頭上を飛び交う何か。私にはよく見えないが、何かが互いを攻撃しあい、共に傷ついている。

 

まるで蚊の大群のようだ。しかし、よく見ると彼らは人間の姿をしている。

 

それからしばらくすると、いくつかの死体が空から降ってきた。死体にはいくつもの火傷などが見られ、中には原型を留めていないほどにぐちゃぐちゃに焼き尽くされた死体もいる。その死体をよく見ると、白や黒の翼を生やしている。

 

「お姉ちゃん…これって…」

 

「うん…ルイズの言っていた通りだ。ブラッド・ワールドは、中世のような世界。そしてこれは、天使と悪魔による戦争。神話の挿絵とかで見たときには綺麗だと思ったけど…やっぱり本物を見ると…」

 

空はどんどんその色を赤く染め、地に伏した天使や悪魔と同じ色に染まっていく。流石にここに居てはまずいと、メリーやスミ達を連れ、私達が着地した広間から、街の外へと走り出した。

 

朝食を食べていないせいか、喉が渇き、腹が減る。オシャレに彩られた通路などには目もくれず、ひたすら走る。しかしどこへ行っても、この陽の光や悪魔と天使の戦争から逃れることはできない。

 

そしてその陽の光から逃れようとする私達を塞ぐように、目の前に天使が地上へ降り立ち立ち塞がる。

 

金色の長髪に、白いスーツ姿に身を包む天使は、冷たい眼差しで私達を見て、死ぬ前に言い残すことはと腕組みをする。

 

後ずさりをすると、彼女は無駄よと冷たく笑い、私達の背後の木柱を弓で打ち、背後を火の海にする。

 

もう戦うしかない。私が身構えると、スミは真っ青な顔で私を押しのけ、一縷の希望を抱いて彼女に話しかけた。

 

「ちょ…ちょっと待ってください!私達は悪魔じゃありません!人間です!」

 

「…ロクでもない嘘をつくのね。我々が戦っている間、人間は全て眠っている。この世界で眠らずにいられるのは、天使と悪魔のみ。さあ、早く観念なさい。」

 

「う…で、でも!」

 

「さもなくば、せいぜい足掻く事ね!」

 

天使はオーラによって弓を出し、矢を引く。矢は白い光に満ち、また周囲には陽炎が立っている。

 

そうか、あの多量な火傷の跡は、この矢が原因か。となると、あの矢に一発でも当たれば終わりかもしれない。即座に判断し、私達は彼女目掛けて走り出す。

 

すると彼女は翼を広げ、空の彼方に飛翔していく。尻尾を巻いて逃げた訳ではないと言う訳ではないことはすぐに解った。彼女は上空から矢を数本放ち、私達を攻撃してくる。

 

しかし、そんな一瞬の迷いはすぐに消えることになる。

 

鼓石はそれを見ると、足に力を溜め、その力でジャンプした。とても子供とは思えぬ脚力。鼓石は空高く吹っ飛び、高熱の弓矢を一瞬で粉々にする。

 

これは流石に天使も予想外であったのか、目の前の彼女に驚き、その動きを止め、必死でバリアや翼で身を守る。

 

しかし、鼓石にはそんなものは通用しない。彼女のバリアを素手で破壊し、翼すらも彼女に力負けする。

 

彼女は息を殺し、鼓石に向かう。ただものではないと感じた彼女は、鼓石に意識を集中させ、弓をいる。

 

「………!うっ……」

 

しかし、鼓石と彼女が対面した、その時であった。彼女は背後から、何者かの襲撃を受けた。その攻撃を前に彼女は敗れ、バリアも全て消え失せた。

 

鼓石はその一撃に倒れた彼女を抱き抱え、大丈夫?と声をかけるが、彼女は意識こそしっかりしているものの、口から血を流し、痛みで彼女の服を握り締める。

 

背後を見ると、黒いスーツを着た、二人の悪魔が、黒い弓を持って飛んでいた。内一人はトドメの一撃を誘うと、弓を射て追撃した。

 

鼓石は、彼女を抱えながら、重力に従い落ちていくが、それでも悪魔達の追撃は止まらない。

 

「ちょっと!そんなの卑怯じゃないの!?」

 

私は彼らに届くような声で叫ぶが、彼らは知らんな、と笑い、更に黒い矢を放つ。

 

「鼓石!天使をこっちに!」

 

「うん、分かった!」

 

私の合図に、鼓石は天使を空中から放り投げる。私はそれを受け取り、悪魔達が入れない場所、近くに見える教会まで走る。先ほど彼女から逃れてきたせいで、喉は渇き、足の裏には痛みが伝う。そして、それを潤さんとする吐き気が口の中へ攻め込む。

 

悪魔の弓矢は止まらず、黒く高熱の矢は私達のすぐ後を追ってくる。そんな修羅場の中、やっとのことで悪魔から逃れ、教会の扉までたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開け、静かで暗い教会の中に入る。

 

教会の中は、ずっしりと思い雰囲気に包まれていた。中には誰もおらず、ただステンドグラスの優しい光が、長椅子を優しく照らしていた。

 

天使を長椅子に寝かせ、とりあえずはここにいるしかないとため息をつく。外ではまだ戦争が続いているのか、教会の屋根を焼くような音が聞こえる。

 

大丈夫だ。悪魔ならば、教会には入れないはず。つまり、彼女にはもう命の心配は要らない。私は彼女の頭を撫で、寝ている彼女の側に腰掛けた。

 

「大丈夫よ。しばらくしていれば、また元気になるわ。」

 

メリーは、彼女の体温を測り、聴診器を当てて彼女の看病をしている。一体どこで学んだかも分からない医療技術。メリーは医学部ではないはずだが、何故これほどにまで医療技術があるのだろうか。

 

まあ、私は彼女が助かるならばそれで良いが。

 

「しかし、あんなことを毎日やっていたら、天使も悪魔もみんな死んじゃうのにね。この世界には、そんな物を解決する巫女さんとかは居ないのかね?」

 

にとりは、彼女を見ながらため息をつき、教会の机に身を委ねた。彼女の発言に対してスミは、霊夢さんのことね、と答えた。

 

しかし彼女は、今は霊夢なんて居ないよ。とスミの発言を否定して、懐の写真を手にした。

 

写真には、にとりと、茶髪の、巫女服を着た少女が映っていた。私ははじめ、この人が霊夢かと思ったが、スミの表情を見て、霊夢ではないと解った。

 

にとりは写真を見ると、ため息をついて、その写真を私に手渡した。

 

「博麗深月。今の幻想郷の巫女だよ。とは言っても、普段は神社には居ないんだ。外の世界の高校に通ってるからね。そもそも彼女自体が外の世界の人間だから、私達がとやかく言える問題じゃないしね。それに彼女、巫女としてこっちに居る時でも、時々いなくなるんだ。彼女に聞いても、昔からのこんな変な体質だって言って、それ以上は何も教えてくれない。」

 

こっちは心配してやってるのに。にとりは彼女への文句を垂らし、その後は寝息を立てて意識をなくした。

 

私は、霊夢と言う少女を知らない。彼女と、にとりやスミが、何をしてきたのかも。けれど、彼女達がどれほど親しい仲であったかを悟ることはできる。

 

スミも知っている、でも、もう居ない。つまり彼女は2016年の人間。つまり、もうこの世界には…

 

私は、彼女のことはしばらく放っておこうと思い、再び天使に目をやった。

 

そして、私の知らないところで悲劇は加速する。ブラッド・ワールドに忍び寄る、軍服のブロンド。彼女はこの街とは別の、遠く離れた無法地帯「ギャラクティス」。遥か数十年前に郷少年が旅した街。

 

しかし、数十年前に郷少年が訪れた時とは違い、街には規則ができ、そこには何人ものボス猿が富と権力を牛耳り、住民はそれにすがろうと、彼らに雇われ、ゲームの駒として殺し合いをしていた。

 

「…なるほど。あなたを倒せば、あのティアと言う人から情報と報酬をもらえる訳ですか。しかし、生きる為とはいえ、殺し合いを好き好んでするとは…信じられません。」

 

「黙れ!これが俺たちの生き方だ!これは、生きる道をかけた戦争だ!」

 

「戦争…ですか。」

 

夕焼け空で、向き合う二人。ルイズと向き合う男は、いくつもの賞金を稼いできた人間であり、それに見合うだけの人殺しをしてきた。故に、ボス猿を除けば、この街で最も有名な人間でもある。

 

もちろん、彼女はそんなことは知らない。故に、彼への情けなどもない。彼がそのようにほざいている間に、彼の首は真っ二つに折り、彼女は呆れ顔で彼を見下す。

 

「本当の戦場へ行ったことがない連中がほざく、強がりの「十八番」ですね。本当の戦場ならば、そんな文句をつけている間に、すぐこれですよ。よく、「俺、この戦争が終わったら結婚する」と言う兵士は死ぬと言う話を聞いたことがあるでしょう?つまり、そういうことです……もう聞こえませんか。」

 

くだらない、彼女は両手をはたき、ため息をついた。この街で一番強かった男が敗れた瞬間、街の人間はガヤガヤと騒ぎ出し、本当にあの男かと確認する人間まで現れた。

 

彼女がティアと呼ばれる男の元へ帰ると、男はよくぞあの男をと彼女を褒め称えた。

 

「おお…お前!金はいくらでもやる!だから私に刃向かう奴らを全てを…」

 

「ティアさん、残念ですが、それはできません。これでも働いている身なので。時間が惜しいので、先ほどの質問に早くお答えを。報酬はそれで結構です。」

 

ルイズが、彼の儲け話を、冷たい目で断ると、彼は残念そうな顔をして、そうかいとだけ答え、彼女の元に酒を注いだ。

 

その酒は、血のように赤く、嗅ぐと淡い砂糖の匂いがした。しかし、単に赤い酒と言う訳でもなく、所々に白い不純物が散りばめられていた。

 

「これは…?」

 

「ネクロの酒だ。不純の未来、だとよ。今から大体数十年前に、死亡説まで噂されたネクロの妃様が帰ってきたんだとよ。だが、すぐに仲間とどこかに行っちまったらしい。それで作られたのがこの酒って訳だ。」

 

彼女がそれを聞いて、酒を口にすると、苦い赤い酒の味に、甘い味が混じっていた。恐らくそれは、絶望の中の淡い期待の味。彼女はそう悟った。

 

しかし、これが一体何の情報になるのだろう。彼女が疑問に思っていると、彼は、過去に吸血鬼と戦い、妃と共に消えた、彼女もよく知るあの少女の、彼女が知らなかったある話を口から吐いた。

 

実は彼女、とあるキーワードを吐いた瞬間、頭が破裂するなどという症状を訴え、頭を抱えて倒れたと言う。

 

そしてその後、彼女は誰かの声を聞いたとも供述していたと言うことを、妖精のメイドから聞いたと彼はルイズに伝えた。

 

最も、それとは関係なく、たまたま彼女が過労で倒れたと言う説が濃厚だが、と彼は付け加えた。しかし彼女はそれを聞いて微笑み、ありがとうございますと一礼し、彼の元を後にした。

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