東方七世界   作:tesorus

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狂気の真紅眼

「すみません、食堂で寝落ちしてたら寮から閉め出されたので泊めてくれませんか?」

 

「帰れ。」

 

玄関でもの騒ぎがするので何事かと玄関まで向かうと、玄関の目の前にいるルイズを前にして赤眼の兎が彼女を睨んでいた。

 

そういえばこいつら月でドンパチやってたんだっけと思い出し、まあまあと鈴仙をなだめるも彼女からはそっぽを向かれてしまう。結局、颯斗の母親が割って入って彼女を家に入れた。

 

鈴仙さんもお堅いことを言わずにと諭されるが、彼女は何故仲間の仇と同じ床で寝なければならないのかと言ってふててしまう。

 

彼女は部屋に入るなり風呂に入ると、誰の布団かもいざ知らず、さっさと布団の中に入ってしまった。というか、そこ私の布団なのですがね。

 

たまにこういう時があるのよ、と翼は彼女に聞こえないように呟く。彼女の家はどうしたと聞くと、両親は既に死んでしまい、姉とは仲も悪いのであまり帰らないと聞いた。

 

仕方がないので、私は鈴仙と共に寝ることにした。彼女の為に貸してもらった部屋に入ると、彼女のうさ耳はクシャクシャになって畳の間に落ちていた。

 

あれ、これ生えてる訳じゃないんだ…

 

「…まあいいです。もう今日は寝ましょう。」

 

鈴仙は太刀を枕元に置くと、布団の中に身体を忍び込ませた。私ももう休もうかと思って鈴仙と同じ布団に入ると、彼女の体温で既に布団は暖かかった。

 

夜にはこうして置かないと、ストレスが耳に伝いすぎて大変なことになるのです。彼女は畳に落ちていたうさ耳を布団の中から手繰り寄せ、拾い上げて枕元に置いた。

 

そういえば彼女には人間体の耳もあるから、生えているとなると彼女には四つ耳があることになるのかと納得するが、ならば何の為につけているのかと疑問に感じる。

 

それを聞くと、これは城からの命令を受注する為に身体とリンクする携帯のようなものであり、つけている間は血管もその場所を伝うので斬られれば痛いし、触られるとくすぐったいと言ったものらしい。

 

そして、集中力を高める為に身体に感じるストレスは全てこの耳が抱え込むので、ストレスを抱え込んだ日には干しておかないと次の日には大変なことになるという。

 

私は彼女の温もりの中で寝息を立て始めた。気づきもしなかったが、やはり兵隊なだけあってかなりゴツい筋肉のつきかたをしている。ということは、ルイズやレイクロクも同じような身体をしているのだろうか。

 

そういえば、リネアもブラッド・ワールドのキューピッド。彼女も身体の構造が人間とよく似ているのなら、同じような身体になっているかもしれない。

 

そういえば意識していなかったが、軍人である彼らの仕事とはすなわち人を殺すこと。それは自身も例外ではなく、時には生きることよりも死ぬことのほうが名誉とされることもある。

 

しかし、最も生きることの大切さを知っているのもまた彼ら。一歩先を間違えれば死が彼らを襲う。戦場へ遠征した次の日に、頭数が揃っていることなどあり得ない。

 

最も死の瀬戸際を知っている彼らの一人の前で、私は死にたいなどと口にしてしまった。今私の布団で寝ている彼女は私を励ましてくれたが、

 

彼女はもう夢の中なのだろう。私が話しかけても返答はなく、私はもう彼女に話しかけることをやめて自らも意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰かいる。」

 

不意に耳元で呟く彼女の声に目を覚ます。見渡しても誰一人として人の影を見つけることはないが、私は彼女の声の前に家の外部を含めた全域に蔓を伸ばす。

 

…見つけた。家の屋根の上に二人、電柱に三人。私は目を開けて布団から上がり、寝巻きのまま外へ出る。しかし、凡人の足での一秒は玄人の十秒。天上には血の雨が降り、鈴仙は返り血を浴びて電柱に立つ。

 

「あらあら、ちょっと遅かったみたいですね。のんびり着替えでもと思っていたら遅くなってしまいました。」

 

着替え!?こんな時間で!?と感じた頃には既に時遅し。ルイズの姿はそこにはなく、天上の人だった者は彼女に捕らわれ、もう居ませんかねと彼女は辺りを見渡す。

 

「ダメですよ。殺してしまったら拷問できないじゃないですか。さてと…」

 

彼女が残党に目をやると、彼らはこの民家に兵隊が三人も潜んでいるなんて聞いていないと捨て台詞を吐いて怖じ気づく。まあ私は兵隊ではないのだが、考えてみれば私の仲間には戦闘員が多すぎる気もする。

 

さてと、ならこいつの処理は私がしますか。背後から忍び寄る敵兵の影を捕らえ、電流を帯びた鞭で殴ると彼はまたたく間に失神して倒れた。

 

「ちょっと!殺したら駄目って、私は何本も腕がある訳じゃ…くそっ!」

 

彼女の語りかけなど聞く耳持たず。反社会軍と思われる武装した人間達は鈴仙に斬りかかる。

 

しかし、向こうもまさか戦闘員が潜んでいたとは思っていなかったのだろう。彼らの武器は鈴仙の強靭な身体にダメージを与えるには遠く叶わない武器ばかりだ。彼女にとって、多少の痛みで悶絶しているほど心に余裕はない。刀は彼らの貧弱な肉を貫く。

 

しかし、痒み以上辛み未満たる痛みほど熟練者を痛めつけるものはない。煩わしい弱き痛みは鈴仙を傷つけ、貼りつく毛虫の如く重苦しいものと化して彼女を苛む。

 

その痛みは彼女を次第に苦しめる。だが、その傷から生じる深紅の血液。その一滴一滴を見つめることで彼女は自身に眠る緋色の力を思い出すことにもなる。

 

「…そっか。そういえば、稽古ではほとんど使わせてもらえなかったからすっかり忘れていたわ。」

 

彼女は敵の刃を許し、その刃は再び煩わしい痛みを彼女に載せる。しかしその時、彼女は既にその眼に温度を載せている。彼女の異変にいち早く気づいたのは魔界兵の少女。私に目を瞑ってと言い聞かせて自らも目を瞑る。

 

それに気づかぬ反社会軍達は彼女に傷をつけようと、彼女の気すら感じ取れずに襲いかかる。彼女はその眼を開き、一瞬にして辺りに血色の光を放つ。

 

「…バジリスクって知ってます?バジリスクを見た者は、毒によってその命を落とすそうですよ?」

 

オーラのざわめきから感じる、彼女を覆ういくつもの白い蛇。彼女の血よりも赤き眼を前にして人々は固まり、魂を抜かれたように倒れる。

 

「幻朧月睨、ルナティック・レッドアイズ!」

 

彼女と怪物達から放たれる、狂気の赤いオーラ。長い間使っていなかったせいか、その真紅に光るオーラはさらなる命を奪おうとミラークロスの上空全域を伝い、それは一瞬ではあるが上空を真っ赤に染めた。

 

本当に彼女はバジリスクなのか。いや、再び眼を開いた私の前に映る彼女は確かに私の知る鈴仙・優曇華院・イナバである。ならば、オーラが危険と認知したあの怪物達は一体何者…?

 

「ちょっと、何してるの!これ私が眠ると溶けちゃうのよ、早くしょっぴきなさいよ!」

 

「はいはい。言われなくても増援は要請してありますよ。」

 

その答えを聞いて、鈴仙は一瞬であるが肩の力を抜いた。もう動くことのできる敵はいない。彼女はそう確信している。

 

そして、そんな不意をつくことは戦場では当たり前ということさえ彼女は思い出さない。敵の一人は私達の身振りを一瞬で見抜いて眼を塞ぎ、未だ彼女の近くに身を潜めていた。彼は彼女や私達が気を抜くその一瞬を狙って飛び出し、彼女の懐めがけて飛びかかった。

 

私はその彼のオーラを一瞬で見抜き彼女への声を放とうとするが、変な動揺は怪我の素と思い、その声を抑える。

 

「……!しまっ…」

 

彼女の動揺と共に、私は目を背ける。彼女の身はさらなる鮮血に染まり、彼女は傷口を確かめてひたすらに慌てる。

 

しかし、そこに彼女の傷口はない。代わりに男の身体は首だけが失われ、その首は空からの隕石のごとく道に落ちた。

 

よく見ると、綺麗な銀色の髪を持ち、月軍の桃色の制服に身を染めた兵隊が刀で彼を斬り裂いていた。彼女は片目を眼帯で隠し、鈴仙と同じようなうさ耳を生やす。

 

「まったく、初心者ですか?不意打ちに弱いなんて、あなたらしくないですよ?」

 

彼女が詰め寄ると、鈴仙はごめんなさいと頭を下げた。

 

彼女の名前は、と鈴仙に聞くと彼女は自らと同じ名を答えた。私は質問を彼女が聞き間違えたと早とちりをして口を開こうとするが、そこに修羅場ができることを私の勘が察知し、私はその口を閉じる。

 

彼女の後に続くように響く無数の下駄の音。そして、それに重なる無数の靴の音。数日前に見たビジョン、しかし見る目を疑うような光景に息を飲み、私は目が離せぬうちにいた。

 

「I…I can't change the world. but, the world can change my feel…soul…brad…and…our life.」

 

小さい声で呟く。鈴仙の眼が彼らの信号弾になっていたのだ。今日何人死ぬか分からないと言ったような気持ちにまでなってくる。

 

「oh…what a terrible day today is…」




依姫様「良かれと思って援軍に来ました。」

蓮子「やめて!」

スペルとか文法とか間違えてたらすみません。
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