東方七世界   作:tesorus

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革命の猫又「黒川明菜」

「なるほど、あの胡散臭い奴の知り合いか。」

 

メトロポリスによって隔離され、天邪鬼によって裂かれたこの世界達の住民達は表には暮らさない。彼らは街の外れや地下鉄の駅。それから地底に存在する城跡など、様々な場所に隠れて住む。

 

地底の城跡は、明かりを点けねば姿すら見えないほどの漆黒で閉ざされている。これでは今日も良い天気などと甘ったれた口を叩きながらお茶を飲むことすら叶わなそうだ。

 

城の中は蜘蛛の巣が張り、シャンデリアは地に伏し、もはや人の住める空間ではなさそうである。それにしても、地下に城を作るなど、この世界の人々は一体何を考えていたのだろうか。

 

「地下に城。城ってのは時の権力者が住まう場所なのに、地下にあるのはおかしいって言いたいんだろ?」

 

「ええ…私達には関係ないことだけれど。」

 

「ああそうだ、お前達には関係ないことだ。特に、幻想郷を支配しようなどという野望を抱いたお前達にはな。」

 

「いや、それは私じゃあ…」

 

あの程度で私の息の根を止められると思っていたから、こちらの理を知る敵ではないと思ったまでよと、彼女は水筒の植物性の油を飲む。

 

名前は黒川明菜。種族は人食いの猫又であるが、今は食えば人が居なくなると言って植物性の油で腹を満たしているらしい。

 

「化け猫は夜な夜な人の住む小屋に押し入り、明かりの油を飲むそうですね。化け猫娘のあなたが油を飲んでいるのは、それ故ですか?」

 

「さあね。あとその話、実は裏があることは知っているか?」

 

「はい。人買いに買われた卑しき女の足しの栄養。それが夜な夜な明かりを飲む者の正体ですよね。これだから穢れた地上の民は…」

 

「穢れてるのが生き物だろ。数万の生き物達が穢れた血で血を洗い、結果的に手にするのがさらなる穢れの塊だ。」

 

「ほう、わかってらっしゃる。」

 

「さあな。だが、その穢れには暖かみがある。どれだけ汚いものだろうと、それを仲間と手にした時の喜びは計り知れない。そう思わないか?」

 

「いえ?全然。」

 

だから地上は食わないのよね、とリネアも続けると、彼女は釣れねえ奴とため息をつき、そういえばあの稀神サグメもそんな奴だよと地下への階段を下っていく。

 

「この城は、城が建つそのまた遥か昔、ここは灼熱地獄と悪名高いゴミ処理場が存在したらしいと曰く付きの館だ。ゴミ処理場ではスクラップだけじゃねえ、妖怪だって万と焼かれてるんだ。巫女の独裁でな。」

 

妖怪には厳しい巫女でな、スペルカードのルールも、巫女が妖怪共を押さえつけるために使ったルールだ。彼女は城を照らすステンドグラスを見つめながら話した。

 

光すら届かぬ地底の底。しかし、ステンドグラスを照らす光だけは何故か途絶えない。

 

「そういえば、こことは違う幻想郷でですが、一度巫女と会ったことがあるのです。まったく、気にくわない巫女でしたよ。羽衣泥棒に、月への侵略。彼女だけではありません。十六夜咲夜と言う少女に、魔法使いの霧雨魔理沙、吸血鬼のレミリア・スカーレット。それから…」

 

「レミリア・スカーレットですって!?」

 

レイセンが不意に口にしたその名前に、リネアは彼女の言葉に反応して大声を出す。うるせえよと耳を塞ぐ明菜に、だってだってとリネアはレイセンに詰め寄る。

 

子供達が起きるでしょうが、その台詞と共に、地下から赤ん坊の鳴き声が聞こえる。やっぱり起こしちまったと先を急ぐ明菜を追おうとするが、彼女は来るなと言い、二階に昔住んで居た主人の部屋があるから、そこにでもいろとだけ吐き捨てた。

 

「…話を聞かせてもらうわよ。」

 

リネアはレイセンを引っ張り、一度降りた階段を登り直す。飛べばいいのにと彼女を見ると、そういえばと言って彼女はレイセンの首根っこを掴んで飛翔する。

 

二人の跡を追ってみるのも良いと思った。しかし、鼓石がじっくりこの城を見てみたいと誘うので、私はそれに乗じることにした。

 

「…ねえ。」

 

「何?」

 

「これ、全部私のご先祖様達のせいなのかな。」

 

「…違うと思う。てか、天邪鬼が荒らしたって言ってたじゃん。確かにメリーや鼓石のご先祖様は許されないことをやらかしたのかもしれないけど、直接は関係ないでしょ?」

 

「…本当にそうかな。」

 

天邪鬼、そう天邪鬼。この世界はメトロポリスによって異世界化された直後、吸血鬼の一味による侵略に犯されたと言う。彼らは人間や妖怪を喰らい、また道具とすることでその汁を吸う。異世界化によって土地が広がり、欲を求めた妖怪の果てらしい。隠れているのはその為であると彼女は教えてくれた。

 

リネアが言っていた、異世界化による天変地異の影響で蝕まれていた世界。蝕まれているのは、本当は世界だけではないのだと私はふと思う。

 

「…救ってくれってさ、これは魔界の贖罪にしては重すぎないかな。」

 

廃墟と化した城の中。この世界の巫女は吸血鬼に殺されたらしい。城にはいくつもの豪華な動物の部屋がある。飼い主はこの城の主人だった人であろうか。

 

「…穢れた地上の世界、ね。」

 

レイセンやリネアが幾度となくボヤく言葉を、今度は自分の口で吐いてみる。この違和感を持った言葉は自らの空洞に当てはまり、それは再び違和感と認識される。

 

自分の故郷が穢れてるか。確かに穢れているかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天邪鬼の城は、明菜の城から遥か南に存在する。彼らの城には幾千もの人柱。人質に警備をさせ、さらにそれを天邪鬼が監視している。

 

故に、人妖は彼らの城に近づくことすらできない。しかし、そんな脅しすら聞かない潔癖の反逆者が存在する。

 

「…もう終わりか、穢れた天邪鬼。」

 

「くそ!貴様、一体何者だ!」

 

「さあな。ふっ、追われるというのは気分がいい。自分が王者なのだと実感できる。」

 

「……?」

 

「別世界に君臨する王者の台詞だ。貴様には理解できまい。さあ、そろそろ終わりにしようか。」

 

「畜生、スペルカードルール適応!」

 

辺りに結界が張られ、二人を囲い込む。しかし、彼女の一言を前にし、一瞬にしてその結界は姿を消す。

 

「…ふむ、これで何回目かな。悪いが、私は貴様らのくだらないルールに縛られる気はない。「詠唱」する。「このルールは長引きそうだ。一秒くらいならば、結界によって力を阻害できるだろう。」」

 

一体何が起こったのかわからぬまま、その天邪鬼は命を落とす。彼女の刀の一振りは天邪鬼の首を狩り、その血を天に捧ぐ。

 

「…便利になったものだな。流石は臨在様の魔法具だ。」

 

片翼の翼、血色の瞳。革命など容易いと言うような力だが、彼女は城へは足を踏み入れない。このまま攻め落とした方が早いような気もするが、敵を常に撹乱しておくと言う作戦なのだから仕方ないか。そんなことを話しながら、彼女はその翼で飛び去ろうとした。

 

しかし、彼女の前に一人の天邪鬼が立ちはだかる。天邪鬼の少女は彼女の前にニヤっと笑い、裏切り者は成敗してやろうとトランプをかざす。

 

「私は鬼人馬才、マジックとルール違反が大好き!ルールが要らないなら、スペルカードなんか必要ないわよねぇ!行きなさい、トランプ達!」

 

ハート、スペード、ダイヤ、クローバー。四枚のカードが舞い散り、1から99までの札となって降り注ぐ。

 

「ひゃははは!トランプは13までだって?関係ないねえ!」

 

《逆符「ナインティナイン・カード」》

 

あ、99を4回出したらナインティナインじゃねえや。そんな声も聞かずに、片翼の少女は天邪鬼の猛攻を避け続ける。

 

そんな中で、彼女は一枚のカードに触れる。触れたカードはクローバーの56。その札からはゴム製の鞭と十字の刃物が彼女を襲う。

 

「あはははは!レディースアンドジェントルメーン!56はゴム!クローバーは十字の刃物!さあさあお楽しみ!ギミックが触れた札も反応するわ!」

 

ゴム製の鞭はハートの1、刃物はダイヤの80を突き刺す。ハートの1は彼女を鎖で捕らえ、地面に叩き落とし、心臓を狙う銃口も飛び出す。

 

「1で位置、ハートは心臓。くだらない。」

 

「ひゃははは!くだらないのが面白いのよ!さあ、ダイヤはガラスの破片!80は覇王!華麗なるマジックの始まりよ!」

 

80の札から、ガラスの破片と黒い獣が現れる。獣は彼女目がけて走る。しかし、そこに彼女はすでに居なくなっていた。

 

「あら、残念。私のマジックを途中退席だなんて。」

 

片翼の少女、稀神サグメは彼女のスペルカードの弱点を悟っていた。その弱点は、派手すぎるが為に相手の撹乱を自ら許していることにある。

 

やはり頭が足りないな。ため息をつきながら、サグメは天邪鬼の城を後にした。

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