東方七世界   作:tesorus

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かっこいい蓮子ちゃんの話。


蓮の花、死の香り

生まれた場所も知らない、どうやって育ったのかも、親の顔すら。

 

気味が悪いと感じたことはない。居場所は結衣がくれた。彼女やTKGの仲間だって、普通の人間ではない。私一人くらい居たところで、誰も私を責めたり咎めたりしない。

 

しかし、私はそんな中で、私に関係があると思われる一人の少女に接触した。

 

「…解ってます、あなたが幽々子様じゃないことも。幽々子様が人間な訳ありません。」

 

「うん、ありがとう…」

 

彼女が支えていた、私の名前を名乗るもう一人のユユコ。妖夢という名を持つ少女が語った、もう一人の私。

 

しばらくすると、もう身体に異常はないので、もう結衣さんのところへ行きましょうと私を誘った。私が彼女の思いに応えようとして手を取ると、触らないでくださいと私の腕を振り払った。

 

「…ごめん。」

 

「いえ、大丈夫です。ただ…何もかも思い出してしまいそうで辛いのです。あなたの姿、感触、死の香り。何もかも、あのお方にそっくりなのです。」

 

彼女は病室を後にして、退院しようとナースセンターへと向かっていった。恐らく、彼女はあまり私に関わりたくないのだろう。

 

死の香りか。そういえば、結衣にも少し前に「あなたをずっと見ていると、自分や仲間が老いて死ぬことばかり考えてしまう」と言われたことがある。

 

メメント・モリ、いつか訪れる結末。私にはびこる死の香り。私は閻魔などの転生体とでも言うのだろうか。

 

いや、そうではない。それに、妖夢は死の香りによって、もう一人の私を思い出すと言っていた。気になる話はこれだろう。

 

知りたい。もっと彼女のことを。もしかすると、私のルーツになるようなことを知っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、じゃあ殺ったのね。レミリア・スカーレットを。」

 

「いえ。流石の依姫様も、そこまで人の命に冷酷なお方ではありません。月から撃退し、元の世界に…」

 

「…なんだ。」

 

「まあ大丈夫ですよ。あの穢れた大地ならば、あの吸血鬼もあなた達に再び牙を剥くことはないでしょう。」

 

「そういうことじゃあないの。吸血鬼の姫たるフランドールの姉を生かしておくこと自体が、世界の狂乱に繋がる。平和ボケしているのならば、叩くなら今しかない。フランドールの場所を聞き出し、フランドールを殺めた上で吸血鬼軍を殲滅して…」

 

「やれやれ、また物騒な話してる。そのレミリアって兵隊さんも大変だね。」

 

殲滅だの殺めただの、物騒な話をしている二人の潜む主人の間まで足を運ぶ。

 

身体中に張り巡らせた緑色のオーラ。普段とは違い、スミのようにアメーバ状にして身体に張り巡らせてある。

 

オーラで全身を包む。これは歴史上や神話に名を連ねた超能力者達が行っていた超能力の基礎的な使い方。

 

物体に憑依させればサイコキネシス、磁石に変えれば高速移動、熱を加えればパイロキネシス、電気を起こせば発電。電気信号を加えて飛ばせば、それが理解できる超能力者同士ならば念力による会話も可能だ。

 

ここまでのことは、全て超能力者ならばできて当たり前。どれか一つでもできなければ、そいつはインチキか相当な馬鹿であろう。

 

「できる?」

 

「うん、なんとか…」

 

鼓石の辺りに黒いオーラが流れ、両腕の間からわずかだが電流が流れる。他にも、持たせておいたコインの形をしたチョコレートを腕の間で浮かせたり、そのチョコレートを溶かしたり。

 

「何をなさっているのですか?」

 

「超能力のトレーニング。見て解らない?」

 

「解りませんよ。私達はあなたのように超能力者ではありませんからね。」

 

「あ、そっか。まあ超能力ってのは、誰でも使える訳ではないしね。というか、こんなクソみたいな力…無い方が良いんだ。って言って、よくスミと喧嘩になるんだけど。」

 

「…菫子さんと、ですか。」

 

そうなんだよ、彼女に少しだけ笑ってみせ、この城の主人が座っていたであろう高そうな椅子に腰掛ける。

 

本来、オーラは誰もが持っている。この人と居ると不快だ、とか、生理的に受け付けない。人差し指を額に指せば不快になる。これらは全てオーラによって引き起こされるものであろう。

 

そして、それを操ることができる人間が超能力者と呼ばれる。逆に言うと、それによって説明できないものは全てリネアやルイズの使うような「魔力」によるものである。

 

事実、スミの瞬間移動や透視は魔力を使っている。まあ私は魔力など使えないので、これ以上のことは解らない。

 

「ねえリネア、私と一回やらない?」

 

私の呼びかけに、リネアは私の方向を向く。ブラッド・ワールドの地上でロクに歯が立たなかった癖に、よくもまあ強がりを言えるものねとリネアは答え、私を嘲笑う。

 

「まあ、あの時は私は戦ってなかったからね。それに、無駄に争うなんてしたくなかったしさ。手合わせってことで。」

 

「…ふん、解ったわ。穢れた地上人。死んでも知らないわよ?」

 

「死なないよ。まあ、あなたが死ぬかは別にしてだけど。」

 

主人の間でリネアと向かい合い、彼女と私は見つめ合う。その直後、二人は一瞬にして姿を消した。

 

しかし、彼女の居場所はまだ私には解る。恐らく、相手も同じ力量であろう。彼女は私に弓矢を引き、私を仕留めようとする。

 

「さて、鈴仙の時は臨在の君さんのせいで能力使わせてもらえなかったし、明菜も同じだったね。久しぶりにこの超能力…枯れるまで使ってやる!」

 

翡翠のように透き通った緑色のオーラはアメーバ状に広がり、しばらくすると植物の鞭のように部屋に生い茂る。

 

駆け回る白い翼。そして、その翼をもぐことなど容易であると言わんばかりの鞭達はリネアを捕獲し、主人の机や椅子を持ち上げ、机を粉砕し、高温の炎を抱かせて火炎弾とする。

 

「くたばれ!テレキネシス 不法投棄!」

 

火炎弾は彼女の元へ降りかかり、彼女はなんとかして脱出しようと手足を動かして抜け出そうとするが、鞭に囚われて身動きができない。

 

それもそのはず。超能力者以外に念力のオーラが見える訳がない。彼女からしたら、不思議な力で空中に固定されているとしか思えないような状況だ。

 

「くっ…随分ネーミングセンスのない攻撃ね。でも、これは食らったらヤバい…!」

 

仕方ない、彼女は右手を上げ、その手で私を指差し、その指は次第に光を帯びていく。

 

「光臨、ウリエルの閃光!」

 

細長く、破壊力を持つ光。光は机の破片を貫き、一つ、また一つと撃ち落とされていく。

 

光は小さい割に、巨大なメテオを次々と地面に落としていく。流石、神の光と呼ばれるウリエルの力だ…模造だけど。

 

「じゃあさ、その手折ったら使えないんじゃない?って思ってさ!」

 

鞭を彼女の腕に巻きつけ、両腕をメテオの前から遠ざける。彼女はこの能力を出し入れできるのか、光はメテオから遠ざけると発射されなくなった。

 

他に避ける手段がある訳でもなく、リネアはメテオを生身で受け止める。彼女の身体はうっすら火傷を負い、彼女は地に落ちる。

 

今度は高速移動。身に纏うオーラをS極、リネアにこびりついたオーラをN極の磁石に変化させ、彼女目がけて急降下した。

 

「冗談でしょ…超能力ってのはなんでもありなのね。」

 

しかし、向こうも馬鹿ではない。というか、私が馬鹿なだけかもしれない。リネアは迫り来る一縷の時で、私の腹を目がけて拳を突き出し、その拳だけを頼りにして私の腹をえぐる。

 

「………っ!ああ…」

 

「…あなた馬鹿でしょ。」

 

私は慌ててオーラの磁力を解除するが、私は反動で壁まで吹き飛ぶ。部屋の絵画はその衝撃で焼け落ち、メテオの残骸と共に焼け落ちた。

 

血の味がする。別に手を抜いている訳ではない。もし分かりあおうとせず、ブラッド・ワールドで単純に殴り合っていたのならば、彼女は相当な脅威となっていたはずだ。

 

「どうする?元はと言えば単なるお遊び。死なれても困るから、サレンダーならサレンダーって言ってくれると助かるわ。」

 

「…言うと思う?」

 

「いや、全然。」

 

人から恐れられ、傷つけられたこの力。これだけ存分に振るうのは、ひょっとすると今が初めてかもしれない。

 

《ふうん、じゃあ宇佐見ちゃんはその力が嫌いなわけだ。でも超能力者じゃなきゃ、オーラを鞭状にして人を遠ざけたり、身体中掻きむしったりもできないよ?》

 

《超能力者でないなら、人を遠ざけたりなんてしなくてもいいじゃないですか。》

 

《どうかな?超能力で嫌われたのは、あくまできっかけ。妹さんやお父さんだって同じ能力を持っているのでしょう?でも、この牢屋に居るのはあなただけ。今もなお嫌われているのは、あなた自身に問題があるんじゃないの?》

 

うるせえよ、血郷結衣。私は誰かの言葉を思い出し、またその人を煽って返した。

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