東方七世界   作:tesorus

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2016年編
旧東京と河童少女


2016年、東京。

 

私達が生きている時代とは違い、ケータイは石板状になっていて、車のカーナビも立体ではないし、オート操縦もついていない。

 

今となっては当たり前になった3Dプリンターなども高価なものになっていて、持っている人は少ない。医療などのサービスも、完全に私達の世界に劣る。

 

そんな街に来た理由、それは、三人目の郷少年を見つけ出すこと。別に、見つけたからと言ってどうする訳ではないが。

 

「ねえ…ねえってば!」

 

タイムスリップにおいて、重要なことが二つある。一つは、過去人との接触を最小限に控えること。そして二つ目は、 あまり世界の異変に関わらないこと。

 

「ねえスミ!無視なんてやめてよ!」

 

この二つさえ守れば、時を超えようが、快適なタイムスリップライフを送ることができる。別にラーメンを食べようが、コーラを飲もうが、歴史に干渉は…

 

「ねえ!」

 

目の前に、突然青髪の少女が現れ、私を殴り飛ばす。私は旧式の自動販売機に叩きつけられ、その場に倒れる。

 

タイムスリップした先を、裏路地にしたらこの始末である。この時代の自動販売機は脆く、これくらいの衝撃で壊れ、中からジュースがジャラジャラ出てくる。

 

メリーと鼓石が、驚いて私を見る。少しは助けろやと思っている隙もなく、彼女はひどいよ、無視するなんてと泣き、私を殴り続ける。

 

ダメだ、話してしまったら歴史に干渉してしまう。ここは黙ってやり過ごし、隙をうかがって逃げ出す…

 

「あれ?もしかしてスミじゃない…ヤバ、過去人と話したら、歴史に干渉しちゃうかもしれない!いや、前者だったらまだギリギリセーフなんだったっけ…」

 

必要はないようだ。恐らく彼女も、他の時代から来た時空旅行者。剣を持ち、着物を着ているのでそうは見えないが、鼓石のように異世界から来たか、単に時代に干渉しないように着替えて、その来る時代を間違えたか。と言うことだろう。

 

私達の世界には、まだメリー以外はタイムスリップの技術を持っていないので、前者で確定だろう。あるいは、私達より遥か先の未来人…

 

考えるのはやめだ。とにかく話しかけてみよう。この時代では、あんな格好では銃刀法違反で捕まってしまう。この時代の人間ではないことは確定だろう。

 

「ねえ、君も未来から来たの?」

 

「うわああああ!だめえええ!歴史がぁ…妹紅に何て言い訳すれば…え?君も?」

 

「……うん。」

 

それから、私は立ち上がり、彼女に名前と出身地を聞いた。

 

名前は河城にとり。出身地は、2079年の幻想郷。目的は、いずれ幻想郷に起こるであろう最大の異変の首謀者、「人造の妖怪」を探すこと。

 

ところが、ここで一つの問題が発生する。その人造の妖怪の外見や声、名前を彼女は知らない。つまり、「人造の妖怪」とは何たるかを、完全に自分の手で突き止めねばならないこと。

 

その為に、時空の歪みが生じていた2016年に来てみたが、その手がかりは得られず、私の妹であるスミ、宇佐見菫子が自分と同じタイムトラベラーと知り、行動を共にしていたと言う訳らしい。

 

スミは、自分が出会った先祖の元へ下宿していて、飯もある。学校にも行ける。などの最上の空間を持っている。ここまで自由度の高いタイムトラベラーは他にはいないだろう。故に、彼女のせいで作り変わった歴史がボンボン出てくる。

 

時間の壁は強固だとは言ったが、流石にそれを信じすぎるのもどうかとは思うが。

 

「で、今はスミといるの?あんたは。」

 

「うん…私、凄くスミには悪いことをしてしまったから…その償いに…」

 

「悪いこと?」

 

「いや、ああ!何でもないんだ!何でも…それよりさ、あなた達何者?特にあんたなんか、スミそっくり!」

 

いやまあ、姉妹だからね。と返すと、さらに驚かれた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、私達は単にメリーの好奇心から来ただけなので、そちらの方がよほど緋封倶楽部の活動にふさわしいと、彼女の目的にしばらく付き合うことにした。

 

妹は、私達の先祖が暮らす東京の家の、元は家にいた、死んだお婆ちゃんの部屋を使わせてもらって生活をしているらしい。まあ、この家の住民は、全てが私達のお爺ちゃんとお婆ちゃんに当たるのだが。

 

スミは、相変わらずであった。楽観的な奴で、私の悩みなんか全部吹っ飛ばしてくれる。

 

「あれ?お姉ちゃん。お姉ちゃんって、こんな昔の人だったの?」

 

「ちゃうわ。それよりスミ、郷少年の件、まだ解らない?」

 

彼女の気の利いた冗談に、ツッコミを入れる日常的な会話。郷少年に関しては、大方探りを入れてあるらしい。彼女は、例のプレート型の携帯を取り出し、色々な写真を見せてくれた。

 

どうやら彼女、一年前から探索をしてからは、ロクなことがなかったらしい。未来から共に来たにとりの頼みで、幻想郷に張り巡らされた結界を破壊しようとするが、失敗。しばらく過去の幻想郷に幽閉され、もう大概の人は彼女を知っていると言う始末。

 

何故そんなことをしたかは、にとりの口から明らかになった。どうやら、史上最大規模の異変の首謀者と言われる「人造の妖怪」と、その結界こそが、異変の原因と言われているらしい。

 

そこで、その一つである結界を、まだそれが古く脆い2016年に破壊しようとしたが、やはりそこは時空の原理であり、そんな大規模なタイムパラドックスは起こせない。巫女などに見つかり、阻止されてしまった。

 

その為にスミは、この時代に緋封倶楽部を作ったと言う話も聞いた。何故だかこの頭の中に、彼女の姿と、「存在するはずがない」初代緋封倶楽部の部長がダブるのはそのせいだろう。

 

と言うか、元々緋封倶楽部は京都の大学のサークルだ。東京、それも高校のサークルが、そんな場所に受け継がれている訳がない。

 

まあいい。今晩は晩酌でもしながら、彼女の話を聞くことにしよう。

 

「スミ、未来帰ったら金返すから、私達に酒買ってきてよ。」

 

「…ねえお姉ちゃん、私未成年。あと、この時代じゃあ、お姉ちゃん達も酒は飲めないんだけど…」

 

彼女の返答に、まあいいじゃないと彼女に話すと、そもそも身分証出されると言われ、結局拒否されてしまった。

 

それに彼女、最近妙な人間につけられ、度々決闘を振りかけられると言う。彼女曰く、それが探りを入れた、最後の「郷少年」らしい。彼の名前は、裂郷竜也。この近くの神社にある龍国神社の巫覡をしていて、幻想郷のことを知り、博麗霊夢と手を組む少年でもある。

 

博麗神社の霊夢が幻想郷、内の世界の守護者ならば、龍国神社の竜也は外の世界の守護者。そうして彼ら二人は、外と内から幻想郷を守ってきた。そんな彼にとって、外からの侵入者である宇佐見菫子は、幻想郷を荒らす危険分子と判断されたのだろう。

 

当然、私達はそんなことは知りえない。ここまで全て、彼女が彼に狙いをつけられてから、今に至るまで、にとりと二人で突き止めた情報である。流石にこれは、妹と言えど尊敬に値する。

 

私はそれを聞いて、スミを讃え、酒はメリーに買いに行かせることにした。メリーなら、もう成人しているだろうし、余裕で酒を買えるだろう。

 

「オーケー。スミ、ミッションコンプリートよ。流石は緋封倶楽部の初代会長ね。」

 

「ちょ…ちょっと!やめてよそういうの…とにかくさ、多分あいつ、私がこのまま帰ったら、私達のご先祖様、みんな殺めるつもりよ!もう、教授が過去に放った私の影。みんな殺されちゃったんだから!」

 

「そうだね…。確かにその話を聞く限り、あまりそいつは放置できないね。少し懲らしめておこうか。場所は…明日の朝6時。龍国神社で決行しよう。」

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