うわメリー怖い。多分原作ではこんなに怖くないです。
「………え?」
私達が、龍と対峙してから数十分。結局、あれから郷少年である竜也にはダメージを与えられず、私達はギリギリまで追い込まれてしまった。
龍はそれぞれ、緑、赤、青の光線を放ち、よもやこれまでと思った、その時だった。
突如私達の後ろで、誰かが指を鳴らす音が聞こえた。すると目の前に透明な結界が現れ、その光線を全て取り込んだ。
次に、ドラゴン達の首に、結界の輪が出現し、その結界が閉じると、ドラゴン達は首を刎ねられたように首を切られ、ドラゴンの首からは大量の血が流れた。
「……メリー?」
そこには、見慣れた金髪の少女の姿があった。いや、彼女だけではない。鼓石の姿もある。
竜也は、まるで何が起きたか解らないような目でこちらを見ている。そりゃあそうだ。私達だって、まるで理解できない。
メリーは竜也に近づき、彼の喉元にナイフを突きつけ、聞きたいことがあると言い、彼に話しかけた。
「八雲…紫…?」
死の淵に立った彼は、誰かの名前を言い、メリーを見つめた。メリーがたまに見せる、冷酷な表情。彼女はそんな表情で彼を見つめ、私はそんな女ではないと彼の質問に答え、話を逸らすなと、彼の喉元を少しだけナイフで抉る。
「妖怪を殺すためのナイフよ、普通のナイフの何倍も切れる。あなたなんか、豆腐みたいにバラバラにできるわ。さて…答えて。あなた達と、メトロポリスの関係は?メトロポリスがあなた達にしたことは何?何故、あなた達の世界は滅んだの?」
「め…メトロポリス…慧音や阿求が言っていた、あの世界のことか。俺は直接見た訳じゃないが…メトロポリスって言う並行世界の人間が、博麗大結界を作り、幻想郷を管理しているって噂だ…あくまで噂だがな。あと、幻想郷は滅んでなんかねえ!」
彼は威勢よく話し、知っていることはそれだけだとメリーに伝えた。ここだけ切り取ると、メリーが一方的に彼を脅しているみたいだ。
メリーのことは、私もよく解らない。一体どこで何をしてきたのか。私が初めて会った時は、「教授」をやっていたとだけは言っていたが、一体それがどこなのかは教えてもらっていない。そのせいか、菫子からの愛称は、すっかり「教授」になっているが。
するとメリーは、再び冷たい目線を彼に落とし、今度は素手で彼の首を鷲掴みにし、とぼけるなと怒鳴った。
先ほどまで、威勢よく答えていた彼の表情は引きつり、完全にメリーの空気に飲まれているといった感じだ。
「……ふざけないで。あなた達の存在の為に、何年研究してきたと思ってるの!こんなんじゃあ、学会に報告できやしない!それならば、あなたの脳髄でも持ちかえって、学会の連中に突き出して…」
「ちょっと、やめてよメリー!」
物騒なことを言い出したので、メリーと彼の間に割って入る。メリーの、彼の首を掴む右腕を振り払おうとするが、握力が強く、なかなか払えない。
メリーは、私の顔を見て、邪魔しないでくれる、と光無き目で呟くが、そんなことは御構い無しに振り払う。やがてメリーは諦め、その手を離した。
竜也は意識をなくして倒れたが、ギリギリの所で生きていると言った感じだ。
「…もういいわ。帰りましょ。儚い夢だったわ…」
メリーは、身体の力を抜き、私達の周囲に結界を張った。せっかく捕らえた獲物にもかかわらず、重要な情報も得られなかった彼女の背中は、その寂しさを物語っている。
彼女が何十年、その研究に時間を費やしてきたかは知らない。ただ、あんな無理やりな方法で聞き出してまで、そんな研究をすることに意味はあるのだろうか。
もしかしなくても、私達と彼女の感覚は、構造自体が違うのかもしれない。
「…ところで、何でメリーさんがここに?」
「メリーさん?メリーさんならあそこに…」
「いや、そうじゃなくて…あなたのこと。名前は確か…古明地…」
「鼓石だよ!」
「うん、だよね…でも、えっと…」
濃くなる結界の中、鼓石を見つけ、彼女を見つめてスミは困惑する。鼓石はそんな彼女を前にして、首を傾げて彼女の様子を伺う。
スミは、どうやら人違いをしているらしい。私はその話を盗み聞き、彼女の間違いを正すと、彼女はひどく驚き、混乱した。
どうやら彼女、鼓石に似た少女をこの世界で発見し、また同姓同名であった為、混乱しているらしい。
まあ、同姓同名なんて、最近はあまり珍しい話ではない。姿まで似ているものはあまりいないが。
さらに、彼女が、あの問題のメトロポリスの人間であることを打ち明けると、彼女は驚き、更には身体を震わせた。
「えっ…じゃ…じゃあ、この娘、メトロポリスって世界の人間なの!?でも、メトロポリスって悪い奴らがいるとこじゃあ…だったらこの娘、悪い奴らの手先なの!?」
「こらスミ、そういうこと言わない。多分大丈夫だよ。何となく見てりゃ解る。」
「で、でも…」
「あはは!よくぞ見抜いた、勇者スミ!我こそは、悪の大魔王!勇者スミよ、かかってくるが良い!」
「ううっ、ほら!やっぱり!」
いや、ふざけてるだけだからと彼女を諌めているうちに、結界はその濃さを増し、神社の景色から、風景は時空の境へと変わる。
そういえば、鼓石はメトロポリスから来たと言った。いや、正確には、彼女の洋服を調べたメリーがそう言ったのだが。
メリーは、メトロポリスと郷少年の関係を知りたがっていた。郷少年と言う存在自体は知らないが、彼は確かに、普通の人間とは違う力を持ち、私達姉妹が超能力者ならば、彼は霊能力者とも取れる能力を持っている。
そしてメリーもまた、霊能力者である。ひょっとしたらメリーは、自分のルーツを知りたくて、メトロポリスと彼の関係性を知りたいのかもしれない。もしそうならば、あれだけのことをするのも納得はできる。
メトロポリスの住民である鼓石の服には、この世界ではありえないような構造でできている。となれば、彼女や彼の能力と、何か関係があるのかもしれない。そう踏んだメリーは、郷少年の秘密を調べ、メトロポリスと自分の関係性やルーツを知ろうとした?
本当に、その解釈で良いのかは分からないが、彼女の気持ちを解ってやるのが、私のせめてもの友情表現かもしれない。
気がつくと、私達は再び、神社に居た。しかし神社の前に竜也は居なかった。神社の神主らしい人に聞くと、彼はもう歳で死に、今は巫覡などおらず、幻想郷と言う場所とも、もう交信は途絶えたと言っていた。
帰ってきたのか、私達の時代に。
そんな私達の世界の、また別の平行世界。そこでは、世界の破滅に向けたカウントダウンが始まろうとしていた。
魔界都市ミラークロス。女王陛下の独裁によって成り立つこの世界では、彼女の言葉こそ至上のもの。それに逆らう人間など存在しない。
少女は、階級が非常に低い一兵卒であったが、そんな女王の命令を受け、度々異世界へ足を運んでいた。
「メトロポリスによる植民地、キサラギに置いて、再び異世界化が進み、その影響は我々の世界にも及んでおり、それを防ぐ為には、その主因である「人造の妖怪」を刑に処す必要がある。しかし、それの所在は未だ分からぬまま。ならばどのようにすれば良いか…長らく策を講じていた。さて、あっているかしら?魔界軍実戦部隊長ナカユキ曹長。」
「はい、間違いございません!ご報告致した通りであります!」
魔界の女王は、軍服を着た兵隊の律儀な敬礼をしばらく眺め、その後、彼に下がれと命じて下がらせ、代わりに、彼とは二段階下の軍服の少女を、その場に立たせた。
「さて…ナカユキ曹長の言う通り、我々は策を講じてきた。そしてそれがここ数日、進歩を遂げる。過去世界に置いて、緋封倶楽部なる連中が干渉したと言う資料が手に入り、彼らの目的は、「人造の妖怪」によって張り巡らせた結界によるものだと言うことも解った。そして彼らの今のリーダーは、宇佐見蓮子と言う女性。さて、魔界軍実戦部隊下等兵ルイズ二等、この結果に対する、あなたの考えは?」
少女は、自分の名前を呼ばれると、心臓が鳴り出し、身体中から血の気が引く感触を覚えた。大体、彼女がこのように解りきった内容を伝える時は、彼女の勅命が下る時であると解っていたからだ。
彼女は怯え、その質問に答える。
「はい…直接彼女を探し出し、尋問し、重要な参考人となり得るならば…」
「そういうこと。良く解ってるじゃない。かつて博麗の巫女がここへ現れたとき、サラ軍曹を除けば、第一発見者はあなたである。しかし軍曹は忙しく、とてもそんなことができる立場ではない。と言う訳で、汚れ仕事は全て下級兵に任せるのが鉄則。ルイズ二等兵に、宇佐見蓮子の探索を命ずる。」
彼女の命令に、少女ルイズは敬礼し、腕時計を使い、ミラークロスから離脱した。
何十年も生きていても、見た目が少女だからルイズさんは少女でいいはず。ちなみに、吸血精時代のルイズさんは見た目相応の年齢って設定で、あの後魔法使いになって今まで生きてるって感じです。