とりあえず危機が去ったことを確認し、俺の口から大きなため息が一回でる。あたりを見渡してみると教室の中は椅子が散乱し、窓ガラスは割れ、壁には穴が開いており、本来の物として機能していなかった。が、そこで気づく。今教室には俺一人、この状況を他の人に見られでもしたら…俺は全力で目の前の穴に飛び込んだ。冷たい空気と下からの思い力が俺を包み、黒い絨毯へと案内してくれる。生憎俺には超人のように重力操作は出来ず、黒い絨毯は大きな轟音と共に砕け、俺の着地点を中心に大きな穴を開けた。次に鳥人間を探そうと思うが、一応怒られることも考えてコンクリートの破片を集めくっつけておいた。そして地面に一礼し街の方へと駆けだした。
全力で街を散策しても、鳥人間の姿はどこにも見当たらなかった。ビルや屋台には全く被害がなく人々も警察も全く騒いでおらずこの鳥人間破壊工作事件は発生から一分、手詰まりとなっていた…
名もよくわからないビルの前で突っ立っていると、俺のポケットから電子音声が鳴り響く。一瞬ビックリし身構えるが、すぐに正体が分かるとポケットから勢いよく形態を取り出し着信に応じた。
「圭…こっちはとりあえず皆避難ができたよ。みんな無事なんだけどさ…圭はいまどこにいんだ?」
「しっかり学校さぼってる。『今新東京都都庁前駅入り口三丁目のバス停』前まで走ったけど、鳥人間は逃がしてしまった。」
「そうか。休校になると思うし、このまま帰宅するな。」
「はぁ!お前それはちょっとz…」
電話を切りポケットにしまうと来た道を少し引き返し、ノイズ通りを歩いて戻っていった。
いつもより早く家に帰宅しソファーに体を預けようとするが、案の定鳴海がそこにいた…だが、鳴海の体は砂ぼこりで黒くなっており珍しく汚い。流石にそんな体で寝られるのも嫌なので鳴海の前に立ち、どくよう指示した。が、彼女はその指示を無視し、そっぽを向いて埃を浴びせてくる。女子だからと言って汚いぞ…!!
もうそれなら強硬手段だ。昔妹にやっていたように、腹から鳴海を抱え上げ畳の部屋に思い切り投げ捨てた。が、鳴海は空中で身を切り返し俺の顔を二度かぐってきた。顔を押さえるが血は全く出ていない…が、ひっかかれた部分がヒリヒリと燃え上がるように痛い。この場は俺が退却することで勝敗が決した。
退却後、自分の部屋の勉強机にひれ伏すが、負傷部分に机が当たる度痛さのあまり飛び上がる。
「まったく…あいつの家じゃなかろーが…風呂ぐらい…」
『そこは見逃して欲しいわァ…なんせあの子、昔から風呂が苦手なのよォ…』
「へぇ…いや、勇実とかに洗ってもらえばいいんじゃないのか…」
『いろいろ理由があるのよォ…』
ひれ伏しながら話を続けるが俺は途中で気づく、俺誰と話しているんだろ…ふと横を見てみると見たことあるような灰色の球体が重力に逆らい空中に浮いているじゃないか!その球体には全く目も鼻もないが、じっと顔を見られている気がしてその場から動けない。声からして、子の球体の性別は女性。球体をよく見ると中心にはζ(ゼータ)の紋章が彫ってある。
「お前は鳴海と契約している…!」
『ゼータよォ~よろしくするわ、デルタァ…』
デルタではないと忠告を入れながら、数え切れないほどの質問事項が頭の思考回路を埋め尽くす。この球体の出どころやギリシアの正体、鳴海の過去…こいつなら正直に答えてくれそうと信じどの質問をしようか絞った。が、相手から質問されてしまう。
『貴方は鳴海が好きかしらァ?』
「は、はえっ!?」
つい変な声が出てしまったが俺は彼女のことが決して好きではない。決して。いつも冷たく、何考えているかよく分からない奴のどこが好きになれるのか俺が質問したかった。速攻で首を振るとゼータは球体を光らせ黒い霧を放出した。戦闘態勢に入るが、霧が晴れ再び前を向くとさっきまでいなかったはずの…埃で汚いはずの成宮鳴海がそこに立っていた…が、足元を見ると下半身は典型的な幽霊のように細く蛇のようにうねっていた。
『今もドキッとしたわねェ?人間はやっぱり簡単ねェ…』
「いきなりそんなことされたら誰だって驚くだろうが!!心臓に悪いんだよ!」
『ふふ…まぁ鳴海は貴方に興味があるらしいわよォ?』
「は、はぁ…」
『そろそろ鳴海も起きるからァ…私は戻るわねェ?また話したくなったら呼んで欲しいわァ?』
呼ばねえよと返事して再び机に突っ伏した。ちらっとゼータを見てみるがそこには鳴海の実体もゼータの球体も残っていなかった。
その日の夜、愛からメールが来た。
『今日の鳥人間は警察に報告されていて、警察も都警総動員で捜索するらしい。第一発見者は榎間夏で、廊下を走っていたら窓から急に鳥人間が入ってきた。怖くてトイレに逃げたら来なくって…気が付けば勇実ちゃんと森山さんが助けに来てくれたって言っていた。埃で服がらしくて。』
まず第一に、俺は何故こんなメールを送信されているかまったく分からない。送れとも言った覚えがないし、どうゆうことかさっぱり理解できない。さらにこの案件に警察が介入してくるとは全く思っていなかったし、警察といえばいい思い出など一つもない。とりあえず『わかった参考にしておく。』とこちらも意味が分からない文面を送っておいた。今回もあいつらがかかわっているに違いない。俺は自分の胸を思い切り殴った。強すぎてせき込んでしまうが、それでも怒りが消えなかった。
学校は一週間の休校を発表し、俺は家で冬眠ならぬ暑眠をしようと思ったが。勇実の提案でショッピングモールへと足を運ぶこととなってしまった。俺は特に用事はないのだが、六人でゲームセンターやフードコートでの食事をするとのこと。正直、鳴海には悪いと思ったが秘密でショッピングモールへ向かった。先に向かった四人を追いかけ向かうとモールの前では私服に身を包んだ仲良しグループ四人が待っていた。清楚に見える白いワンピースを着た森山さん、夏なのに厚着した愛、チャラそうな格好の彩斗、カッターシャツを着こなした勇実、愛とは真逆のノースリーブシャツの夏が待っていた。正直、黒の無生地Tシャツを着ている俺は途端に恥ずかしくなった。
「圭君遅いよー?まったくー今日は楽しもう!」
「ほら赤田君!!」
夏に手を引っ張られ半ば強引にモール内へ引き込まれていった。
それからというものの、服や食品を買い、ゲームセンターではダンスゲームでメンバーに圧勝し、逆恨みで俺が荷物係になるなど、最初の予定とは違い何気楽しんでいた。勇実や四人の知らない一面を見たり俺の恥をさらしたり…ここ最近だと一番楽しんでいる気がした。
昼ごはんを食べた後、それぞれ交代でトイレに行くことになった。やっと今日俺が来た目的が果たせると思うと少し緊張し無意識に体が震える。順番で夏が荷物番の時、後ろから少し驚かしてみることにした。しかし、大きく振りかぶったところで見つかってしまったため、冷たい目線を飛ばされたことは言うまでもない。二人ベンチに座って他愛ない話を続ける。
「赤田君って面白いね!どうして友達になれなかったのかな?」
「俺があまり人と話さないからなぁ…あ、榎間さんに一つ質問したいんだけどな。」
「ん、答えられることならなんでも!」
機嫌よく対応してくれたし、他の人も空気を読んでいるのか何故か壁から俺たちをのぞいている。一応、自分の携帯をハッキングし、メールを送信しておく。
「言いにくかったらいいけど…榎間さんはあの時何をしていた?鳥の時。」
「私は…怖くなってトイレに入った。こないでって…そしたら勇美ちゃん達が来てくれて……」
「そっか…ん、その足の怪我は?」
「っ…これは……石で擦りむいちゃって。」
……無理やりだが全て繋がった。俺はある一言を彼女にかける…メールはしておいた。勇美達にはバレないことを祈るだけだ。
「…お前の欲望はなんだ?」
「俺ヲ愛スル者ガホシイ」
その瞬間目の前にあったガラスのショーケースは砕け散り、高級ブランドの鞄が千切れ、無残に地面に舞い散る。目の前を見ると鳥人間がすごいスピードで突っ込んできた。夏を庇い避けると割れたガラスの上に着地した。鳥人間は夏ではなかった。
鳥は腕を思い切り広げ風を作り出す。その風は俺を吹き飛ばすと同時に外へ繋がる窓ガラスを破壊した。むき出しになった鉄骨を掴みなんとか姿勢を整えるが…右腕に切り傷が入っており少し力が入らない。辺りを確認すると事態はさらに悪化していた。
逃げたはずの四人は何故か警官に囲まれている。人数は三人。その警官はあの日俺たちを襲った警官と同じ服装だ。が、ここであいつらを助けたらこの超音波攻撃でギリシアじゃない四人は切り裂かれ、上半身で生き続ける都市伝説となりかねない。迷っていたその時、黒い影が警官三人を吹き飛ばす。やがて影は人を形成し、警官の前に立ちはだかるように仁王立ちをしている鳴海に変化していった。
警官は怯まず鳴海に飛びかかって行くが、鳴海はどこからか鎖鎌を取り出し当たらない程度に振り回している。ここは鳴海に任せることにし、鳥人間を再び捉えた。が、鳥は俺から目を外し別の方向へ飛んで行く。空中じゃ俺は太刀打ちできないしこのままだと逃してしまう…と、ふと思いつく。
「ジジイの変なポーズ。」
周りに人がいないことを確認し、両腕を思い切り後ろに引き声を荒げ叫ぶ。腹…いや、心の奥底から何かを吐き出すように叫ぶ。
すると背中の関節が鳴りその後外の冷たい空気を感じるようになった。後ろを見ると、背中に悪魔のような羽が生えているではないか。俺は飛び立ち鳥の後を追う。
屋上まで追うと、車は吹き飛ばされており燃える炎の中男性が怯えている。愛かと思って見て見るが…それは夏の告った相手だった。ジリジリと追い込む中鳥を抑え俺と二人で地面に転がる。俺を蹴り飛ばし立ち上がった鳥は、空に向かって鳴き羽を羽ばたかせ飛び立つ。俺も後を追う。
空中で何度も超音波を飛ばされ無地のポロシャツは赤黒く染まって行く、刀で肉薄しようとするが空中でバランスが取れない。無我夢中で彼女を抱きしめそのまま地面に墜落して行く。
「お前!一体何のつもりだ!!」
「私の欲望が満たされなかった…それだけだ!!」
「バカみてえだな…あいつはお前の人形じゃねえんだ!!」
そして、俺を下にして墜落。腰を強打して少し体に痺れが走る。最後の力を振り絞り取りにけたぐりをかまし、思い切り胸を殴りつけた。中からは案の定透明な球体が出て、俺はそれを即刻破壊した。鳥人間の体にヒビが入り砕けると…それは夏の彼氏だった。
壊れた床から下の様子を覗くが、勇美の手に薙刀があり警官が二人倒されていることからあちらも大丈夫そうだ。が、警官三人は光の粒子となり姿を消した。二人は辺りを見渡すが警官の姿はどこにもなかった。
再び屋上を見ると男と人間に戻った夏が二人夕日を背に何かを話している。夏からは殺意を感じ、男からは恐怖に怯える子リスのようなオーラを感じる。
「貴方には…見損なった。というか、私の目が間違ってたかも。無理やり私が愛してごめんなさい。」
「そんな…気分で味わおうとして…俺も悪かっ……」
「はぁ!?こっちは本気で言ってたんだからね!二度と顔見ないし見せないで!」
ものすごい終わり方である。夏は言いたいだけいうと俺を連れて屋上を後にした。この後、愛達と合流しショッピングモールを後にした。
時間たち赤田家。警察に質問されることなく解散し、何事もなかったかのように日常に戻っていった。が、帰るときの夏の顔はいつもより笑顔だった、そんな気がする。
多忙な1日を振り返りながら味噌汁を飲み干すと玄関から誰か帰ってくる音がした。どうせ鳴海だろう。無視してご飯を食べていると、何か花のような匂いがしてきた。気になり見て見ると…誰だかよくわからない鳴海の格好をした美人な女性がそこに立っていた。そこて食事していたグザイですら吹いてしまう事態。女性は俺らを冷たい目で見た後すぐ二階へ駆け上がっていった。胸がドキドキするがこれが恋なのだろうか。が、なんとかもう一つの事実で収めようとする。
あいつは鳴海だ。あの冷たい目線でわかった。
「恋って結局わかんねーや…」
既に用意された夕ご飯に鮭を一匹足してラップをかけた。