その名はδ   作:かえー

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δな始まり:襲撃

立ち直れなかった。俺は彼女に存在を完全に否定されたのだ。これは心に来る。いくら本心じゃなくても誰だって誰かに言われたら落ち込む。また、食事がのどを通らない。が、今回は前と違うところが。お腹が減っていない。その変化ですら気持ちが悪かった。さらに幻聴まで聞こえてくる。(…前…願い…な…だ…)そんなもの…今の俺に欲も願いもクソも、残ったものがなかった。眠れないまま、一日が経って行く。

 

あれから自分が寝れることもなく、疲れが溜まることもなかった。朝もご飯を食べなくても、お腹は空かないし、熱を計ってみても平熱を示している。脈も正常だった。気味が悪い。あの日以来、俺の体はすっかり変わってしまった。願いと言えば一つ「死」にたいと思うこともあった。が、口には出せない。もう、限界だった。心が病みそうだった。隠してあった電子機銃で自分の胸に一発。ビリリと銃口から電撃が俺の体全体を駆け巡る。が、死ねない。頭に当てて放つ。が、やはり死ねない。この現実がさらに自分を追い込んだ。「なんなんだ…この体は…!!」しかも驚くことに傷口は塞がっていて撃ったのが嘘みたいになっていた。

 

そんな中、時間は容赦ない。学校に登校し、今日も普通に授業を受ける。普段寝ている授業も目が覚めてしまい、普通に受けてしまう。とてもつまらなくなり、もう周りも見たくなかった。その中、何か変な動きをする集団が廊下に見えた気がした。

 

放課後、教室から動けなかった。周りの人の声が意識しなくても頭に入ってくる。目を開ければ、心が見えてしまう。もう、叫びたかった。ただ、叫びたかった。そこに、勇美が入ってくる。どうやら忘れ物をしたようだ。お互い目を合わせることもなく事は進んでいった。そこへ。

黒い服の集団が教室に入ってくる。

「私たちは警察だ。君たち、学校内で武器を持つのは銃逃亡違反ではないですか?」「い、いや、これは部活で使うので、政府から許可が出ているんですよ?」事実だ。だが、それは警察も承知済みのはず…

「ちょっと話がある、ついてきてくれないか?」警察の一人が勇美の腕をつかむ。嫌と言わんばかりに、勇美はそれを振り払う。

「こ、公務執行妨害!捕まえろ!!」明らかにこいつらは警察じゃない。薙刀を忘れていた勇美には隙しかなかった。警察が電子機銃を出す。ぱしん。乾いた音が一つ。警察は腕をはたかれ、その反動で機銃を落としていた。が、勇美が動いたわけではない、そう、俺の体が勝手に動いていた。そんな石なんて全くなかったのに、動いた。そのあとも体が自然に動く。腕と胸ぐらをつかみ一本背負い。その一人は気絶した。

 

「おらよっ。」勇美に薙刀を投げてやる。勇美はそれを持った瞬間から水を得た魚のように動き回る。その動きはやっぱり、妖精のようだった。俺も参戦し着々と無力化していく中、残り少なくなってきたと思う。勇美が一人の警察を無力化した時、隠れていた一人が飛び出す。一人の持っていた刀の矛先は俺じゃなく、勇美に向いていた。防ぐことができたはずだった。殺しちゃだめだ。あの時誓った言葉が頭に響く。刃が振り下ろされる。そして、切り裂き突き刺さる。が、勇美の体ではなかった。俺の体に突き刺さっていた。刺さった部分からは大量の血液…が出るはずだった。出たのは少量で、痛みを感じることがなかった。感覚と言えば…何かが腹を通り抜けている感覚だった。素早く、俺は相手の肩を持ち回し蹴りをかましスタンに。勇美の安全を確保した。

 

「勇美…しっかりしろよ、もう警察いないぞ?」あの後、光に包まれ警察は姿なく消えた。最近の警察はよくわからない。心から思った。「圭君…なんで守ったの」「へ?」「なんであんなこと言ったのに私を守ったの」勇美は今にも泣きだしそう。「そりゃ…なんだろ、体が勝手に動いたというか…あれじゃん、勇美は俺からもみんなからも大切にされてるし…大切だからだよ…どんなこと言われても友達は助けるだろ?」勇美は黙り込んだ。そして、一分の沈黙の後、泣いた。「圭ぐん…ごめんなざいぃぃ…!!」泣いて、抱きついてくる。昔から、彼女はすぐ抱き着く。「俺も…なんか変わってしまってごめんな?」「謝らないでぇ…!!」俺の胸元で勇美が泣く。が、急に泣き止んだ。「あのさ、圭くんさ…一つ聞いてもいい?」頷く。「あのさ…その背中から刺さってる剣は…大丈夫なの?」え?剣なんて刺さってたっけ…確認する。腹に刃の感覚。背中には棒のようなものが刺さっている。…気持ち悪い。気を失った。

 

俺はどうやら病院に運ばれたらしい。でも、勇美はケータイを持たないから多分通報したのは他の人だろう。病院での検査結果は異常なしだったが、大袈裟に手術までして剣一本を体から取り出した。が、手術の際麻酔は全く効かなかった。手術代は俺が払うことになった。酷い、警察に払わせたかったが、その警察達は今この場におらず、本当の警察(?)が、カメラの鑑定を進めているらしい。お金には困らないからまぁいいのだけれど。血の量も正常で医師に驚かれた。三日で退院し久しぶりに家に戻るも、祖父は戻って来ていなかった。俺の身体からあの変な球体が出てくることがなく、体に入ったままだった。でも…この球体のお陰で勇美を守れた…少しだけ感謝した。この球体の正体がわかるのは三年後のことになる。

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