「あれはな…まぁ…教えてやろう…あれの正体はな…契約体なんだ。」
…いきなりの言葉に全く意味が分からず頭の思考機能も働かない。まず、今まで俺が知ったことを俺なりに纏めてみる。
まず、ギリシア族はとある歴史の一ページに刻まれていた実在する生物。昔は体を持っていたが、今は昔みたいに体を持てず、球体を維持するのが精いっぱいらしい。一時的に死んだ人間の体を借りて生活しているが、その生態維持も少ししか持たない。そのために次の能力を使う。
そしてギリシア族最大の特徴、それは願いを叶える能力。人類の欲望を引出し、その人類の願ったことを叶えてしまう。グザイが言うには金や富、世界や一人の人間、選ばれなかったお茶やこの世にないものまで手に入れることをできる。と聞けば誰だって欲しがってもおかしくない。が、そんな都合の良い話があるわけがない。ギリシア族はその欲望をかなえた後、その人間の体を奪い取ってしまうという。そこまでは学校の図書やグザイから聞き手に入れた情報である。
そこまでを何とかまとめたうえで話を聞こうと思い、耳を傾ける。
「ギリシアが契約するというところまで知っているじゃろ?契約した人間はギリシアから水晶を渡されてその水晶にはその欲望が叶うための力が秘められている。それは肉体や精神を変えてしまうだけではなく、時空や時、空間ですら変えてしまうことだってある。契約した人類のことをそのまま契約者と言おう。まぁ今回のこいつの欲望はお前を倒したい、みたいなとこじゃろ…多分な。」
その話を聞きぞっとする。つまり、ギリシア族はただ欲望を叶える手伝いをしているだけだ。欲望を開放すると一人だけで体育館を破壊できる力を得ている。一人でこの騒動なら、ほかの人間の欲望が解放されてしまったら…騒動どころか、街、いや日本、いやいや世界が崩壊してしまう。
「そして、さっきやったみたいに契約者や憑依された人類は胸を叩くと一時的に水晶が解放される。何故か知らんがな…基本的に水晶のままでは自立行動ができない。その水晶を砕いたり、外に出ないよう隔離すると完全に身動きできなくなるな…」
「そういえば、ギリシア族の命の源はさ水晶だろ?水晶砕かれたギリシア族はどうなるんだよ?」
「あ?そりゃ、息の根経たれるのと同じだよ。死ぬさ。契約者の持つ水晶は壊されても契約者は死なない。水晶の持つ人格が死ぬんだ。」
なるほど…傷つけずに救う方法があると知り少し安心。
「が、もし欲望がかなえられてしまった場合、契約は成立し報酬としてギリシアは契約者の体を奪う権利を得ることができる。乗っ取られた人間の意識は途絶え、死んだのか生きているのかすらわからない。が、その契約者の情報をそのまま引き継ぎ生きていくことになる。」
「その人間は…水晶を取り除いたら死ぬんだろうか…?」
「さぁ、どうだろうな…お前まさかな…」
もちろん、さっきからなぜこのような質問を続けるのか、それは…欲望で世界を崩壊するのを阻止するために考えているから。欲望はいいものだ。持つだけでやる気を持てたり人をつなげたり、時に世界そのものを変えてしまう、すべての人間に備わる物。その欲望はすべてが実現、解放されるわけではなく体が抑制するおかげで、何とか世界は維持し続けることができている。が、その欲望は実現されないから、それに向かって進むことだってできる。欲望をかなえることは大切だけど…その人の特別なものを失ってしまうかもしれない。止めることができるなら、俺が止めたい。わがままかもしれないが、ともにやり直す道を作る手伝いをしたい。
俺はその場から立ち上がる。そしてグザイを向く。普段は見たくもないし、見てもろくな話をしない…そんなおっさんの目をしっかり見て宣言する。
「俺が…止めるよ…世界を救いたいわけでもないし…世界が壊れないかもしれないけど…俺に…この力が手に入ったということは…このことから目を背けることができないし。ギリシア族を見つけ出す。」
おっさんは意外そうに驚いた顔を見せたが、その後笑い始めなれなれしく肩を叩いてきた。そして、いきなりトーンを下げ「その覚悟…本物だな?」と言い手を差し出す。俺は一つ返事で手を握った。
この日から、ギリシアを探す旅が始まった。
後日、相手は病院で入院をした後無事退院し今は警察署で事情徴収参加にしているそうだ。が、俺は呼ばれることなく元の大学生活に戻っている。勇美も特に気にかけず、普通に俺と学校へ登校している。が、勇美はギリシアのことを知らない。俺は道を作ると言ったが、本当は彼女を守るためだったのかもしれない。俺は今日も鞄を持って誰も通らない通学路へ向かった。