その名はδ   作:かえー

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βな授業:下っ端からのお願い

あの決意をしてから数日、警察に逮捕もされることもなく大学で学校生活を送っていた。というのも体育館一つが大破したことよりも今の社会は社会現象のノイズをどうにかすることが優先らしく、警察も彼の事情徴収だけで終わらせた。かもしくは社会現象のせいではなく、事が収まったのかもしれない。

 

「はい、授業始めるぞー」

 

担任の星先生が号令をかける。長身で髪が長く、右目のモノクルを着けた男性の教師である。理数系でどんな生徒でも屈さず常に見下した態度をとり、抜け目がない。要するに天才なのだ。が、この男のおかげで俺はここに存在できる。そして、この学校で唯一俺の秘密を知っている男。

 

「この式解けるか?はい園田。」

 

このクラス、モブナンバーワンの園田さんが問題を頬を赤らめながら解く。話を戻すが、何故なら、彼もギリシア族の男だからだ。

どのような経緯でギリシア族になったのは知らないが、俺の変化にいち早く気づきなんだかんだで隠してくれている、うざいがかなり頼りになる先生だ。が、一度もギリシアの姿を見せたことがない。

 

「あの先生、なぜか私良く当ててくるよねー腹立つんだけどー」

「気に入られているんじゃないの?」

「えーマジ受けるんですけどww」

 

他愛もない女子のトークを横目にそんなことを思いながら、三限四限と時間がたっていき、いつの間にか放課後になっていた。授業もわざとか何か知らないが、成績優秀者にはあててこないので非常に暇。俺は授業中にテストで出そうなところをまとめているが、勇美に関しては暇すぎて早弁しながら、薙刀の手入れをする始末だ。

いつも通り帰りの支度をしていると、珍しく星先生が教室の扉に立っており、こちらに手招きしている。恐らく彼のことだから多分大きな声では話せないことだろう。俺は先生のもとへ行き、そこから相談室へ向かった。

 

相談室は予約優先で、防音壁とプライバシー保護でカメラも盗聴器もない完全密室、水道やキッチンもなく一枚の横引き戸と机を挟み横に長いソファーが二つある。そのために電子化される前は殺人事件も起きていたらしい。一部の生徒からは大好評だそうだ。さて俺はそこに連れて行かれ、何をされるか。考えてみれば、過去に殺人事件が起きていて、俺の正体に気付いている星先生は…俺を殺してもおかしくはない。記録名簿は筆記式で、簡単に偽造もできる。先生がギリシアなら方法ならたくさんあるはずだ。しかも俺は刀を部室においてきているために強襲されてもそのまま喰らい、死を待つしかない。

 

先生は俺をソファーに案内するとドアを閉めた、この時点で完全密室になる。先生と共にソファーに腰掛け俺は先生の行動を様子見した。先生が口を開く。

 

「あのさ…お前をギリシアと見込んで少し頼み事があるんだが…うちの生徒のことで…」

「…は?」

いきなりのことで返す言葉が見つかるはずもない。むしろどう返せばいいか教えてほしい。

 

「あのさ、生徒のことならあんたが解決してやればいいだろう?もしかして、俺がギリシアってことを警察にでもリークするつもりですか?」

「違う、俺もギリシアだがこの人間の残したものを傷つけてしまうからな。ここで生徒たちに正体がばれてしまえばあの人類…いや、生徒たちの未来は汚れてしまうかもしれない。」

「えっ、あの…」

「あぁ、私はβ(ベータ)。私がもらったこの体の名前は星という男だ。私はこの男の思考ロジック、思考回路を読み取って人類の動きを学ばせてもらっている。君を星の視点から見せてもらったが…君は完璧そうに物事をこなすが、意外に不器用だな。」

 

彼は今までにないほどにやける。今までに見せたことのない笑みは今にも口元が裂けそうだ。そしてこの笑みを見た後背中に悪寒が走ったのは言うまでもない。

 

「で話ってなんですか…」

「実は…」

 

先生との会談から数時間後、次の日になり何も変わりなく学校に通っていた。昨日先生からは二つの情報だけをもらった。それはこの中にギリシアと契約した人間がいることと、守ってほしい女子生徒がいるという。一つだけ質問に答えてくれたが、それは住池勇実ではないというらしい。俺は彼女に決して恋愛感情がないのだが、気になったそれだけである。それなのだけである。普通に授業を受けながらただ、教室の様子を眺めているのだった。

結局何もなく一週間が過ぎ、そろそろ俺の忍耐も限界を迎えてきたが、俺は俺で秘密を握られているために逃げることができない。くそぅ第二の使者のくせに生意気だ。

 

 

というわけでそこから一か月が過ぎた。もしかするとこれは罠ではないのだろうか…そう思った五限目の科学の授業、先生は担当ではなく普通に授業を受けていた。いままで、俺はギリシアの一員となってから授業を聞き流していても勝手に授業内容を理解してしまう。そのため手を抜いても大丈夫だったのだ。とてつもなく暇な空間で無駄な時間をかみ殺す。

 

「この数式を解いてくれるかー?」

 

ベータの仕切る授業もこれで何度目か。その時、一人の生徒が手を挙げた。この声も何度目か…

 

「はい、住池やってみろ。」

 

手を挙げたのは、おっと園田じゃない勇実だったのだ。いやよく見たら園田も手を挙げているではないか。やはり、スーパースターには誰にも逆らえない。恐らく勇実本人はそんな自覚全くないし、むしろスーパースターなんて思ってすらいないだろう。今回の話では初登場の彼女は立てば綽綽座れば牡丹、歩く姿はバラの花。学園最強の薙刀使いとして君臨している天然女王である。先生は全く察していないが、今の園田を見ると確実におかしい。今当てられなかっただけで泣いているし、顔真っ赤だし、先生に飛び掛かっていくし。

 

ちょっと待て、聞いてた話が違う。元々守れと聞いていたのは園田を守れと言われたのである。それが今の状況では、先生を園田から守れの構図。園田の皮膚が割れはじめたと思うと、あの日と同じように全身が砕け散り砕け散った園田は黒い影のような、全身に棘の着いた化け物へと変貌していた。そしてベータに飛びかかった。俺は完全に傍観者、ほかの生徒は恐怖のあまり授業を忘れて逃走を図り始めた。園田さんもとい、怪物sは教室内を破壊する勢いで暴れて叫んで大暴走。襲われてからベータは無抵抗のまま倒れてしまった。おそらく自身の正体を隠ぺいするためだろう。血だらけで倒れていて、一部はとてもじゃないが人間の形をしていなかった。

流石に暴れまわる彼女を見るのも飽きてきたので、刀を手に彼女の破壊工作を静止してみた。が、もちろん弾かれ逆に鋭い爪での攻撃を食らう羽目になってしまった。彼女の手の先には俺のかぐった際に出た血と鋭くとがった鳥類が持っていそうな爪がある。とりあえず攻撃を防ぐ。俺はいつもの構えになり相手の行動を予想する。今の行動を見る限り、あまり考えて行動しているとは思えないし、完全にただ本能のままで暴れまわっているだけだ。だったら次に彼女は何をするだろうか。そう、答えは大体予想がつく。目を開けると怪物sの鋭い爪が俺の華奢な腹を思い切り貫通していた。痛くもないものの、感触はとっても最悪だった。

 

俺は刀の鞘でsの脳天を一突き。sはいきなり動きを止め倒れてしまった。これぞ、不殺流「脳痛打点」だ。敵の脳天に力を込めた一撃を与え、一時的に気絶させる不殺流の基本的な技だ。この技は切ることを必要としないため練習すれば誰でも使えそうな技なのである。俺はsをその場に放置しベータを教室から避難させた。

 

とりあえず、今教室には彼女しかいない。学校は休校を宣言したがこのままだと、sが教室の外に飛び出し、一般生徒どころか一般市民まで被害が及ぶ…そんな時、俺の後ろに何か気配を感じた。普段とても嫌味ったらしく物を言い、俺のじいちゃんを乗っ取り、モテない変態メカニッカーが眼鏡のレンズの奥から俺を見つめていた。

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