透が惨殺死体を発見してから1ヶ月がたった。最初、中学のクラスメイト達は面白がって透に話を聞きに来たが、今では話題にすらのぼらない。透はガッカリしてはいたが、普通の学校生活に戻った事にホッとしてもいた。 あの事件は、謎のバラバラ殺人として報道された。透の母親が警察から聞いたという、「獣に食いちぎられた」という話もどこにも出てこない。どこか腑に落ちない部分があったが、透は次第に事件の事についても考えないようになっていた。
―ある日の夕方・・時刻は6時をまわっていた・・透は学校を終えると、自宅に帰った。家の玄関を開けると、何か異様な雰囲気がした。
いつもなら仕事を終えた母親が帰っていて、夕飯を作っている頃である。 寂しがりやの母親は、テレビをつけっぱなしで料理をする為、母親がいる間の自宅は常にテレビの音がしている。
だが、今日はテレビの音もしなければ、夕飯の匂いもしない。それどころか、灯りが全く点いていないのだ。 「ただいまー。母さん、いないのー?」
・・・返事がない・・・ 玄関には靴が2つ、1つは母親のハイヒール。もう1つは男物の革靴だ。この革靴の持ち主の事は知っている。母親と交際している人だろう。透の父親は数年前に事故で他界している。母親は最近、職場の同僚と交際していると聞かされている。まさか、その交際相手を家に連れ込んだのだろうか・・?
しかし、家の灯りが点いてないのが気にかかる・・
透はリビングに行った・・誰もおらず、静かだ・・テーブルには中身が空になったコーヒーカップが2つ・・
次に台所へ向かう、やはり誰もいない。
次に2階にある母親の寝室へ向かい、そのドアを軽くノックする。
「母さん、いないの?」 声をかけてから、静かにドアを開けた。
「!!!」
母親の寝室のベッド・・そこに血まみれの男が横たわっている。全裸で腹部が破かれ、そこから赤黒い血がドクドクと流れている! 男はまだ息があるらしく、ビクンビクンと痙攣している。
生臭いような凄まじい臭気・・・
透は恐怖と混乱で動けずにいる。
「透、帰ってたの・・」 ふいに後ろから声をかけられ、透は我に返った。振り向くと、母親がいた。
母親は全裸であった。いつもなら目を背けるところだが、透は母親から視線を外せなかった! なぜなら、母親の口許に血が大量についていたからだ!! しかも、怪我をして着いた血じゃない事は明らかだった。 つまり・・・この血はベッドで今にも息も絶え絶えになっている男のものなのだ!
母親は裸の姿のまま、透の前を通りすぎ、男が横たわるベッドに近づいていく・・・ そして横たわる男の上に四つん這いになると、男の喉を食いちぎった!! ブチッという音と共に赤黒い血が男の喉から溢れだす! 男はゴフッと呻くと動かなくなった・・
透はその場に立ち尽くしたまま動けずにいた・・ そして、自分の母親がその交際相手を食べる姿を見つめ続けている・・
心配性ながらも優しかった母親が、女の恥じらいもなく獣のように夢中で人間を食べている!!
クチャクチャ・・バリバリ・・肉をかじり、骨を噛み砕く音・・そして、血と糞尿の混じったような臭いがしている・・
男を食べる母親の動きが止まった。
「透・・・あんたも・・・」
母親がゆっくりとこちらへ振り向く・・
「美味しそうね!!」
その顔はいつもの母親のものではない! 目はつり上がり、口は耳まで裂け、キバが生えている!!
「うわあああ!!」
透はここでようやく声を出すことが出来た!
母親は四つん這いのまま、人間とは思えない跳躍で、たちまち透を押し倒した!!
食われる!!
透の体から力が抜けた。逃げようとする本能より、恐怖が勝ったのだろう。蛇に睨まれた蛙のようだった。
透の頭の中は空っぽになった! 死にたくない、という思いより 死んでいく恐怖を味わいたくないのか・・ 透から理性が消えた・・
そして、いよいよ食われようとする、その瞬間だった!!
透の身体の奥底に何者かが入り込んだような気配がした!!
それは・・暴力的な感覚・・ 溢れるばかりの力・・・
その力が透の身体に変化を与えたのだ!!
「お、お前はぁぁ!?」 怪物と化した透の母親は、バッと後ろに後退りした。
「わかっている筈だぜ・・・」
透はゆっくりと立ち上がった。透の身体が変化していく・・顔はワニのようになり、身体中が鱗に覆われてた! 爪が鋭く尖り、長い尻尾が生えた!! まるで人とワニを併せたような姿・・・
「俺は・・お前たち悪魔の力と、人間の心を持つ者・・・悪魔人間(デビルマン)だ!!」