第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP13

 

 世界各所で見られてるとも知らず、闘技場では光井 あかり、パンツァーネーム・ライトニング エンジェルとシャルロット・デュノア、使用機体 ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡによる中堅戦が行われていた。

 

『中堅戦、後半に入って更に白熱しております! ライトニング・エンジェルの変幻自在のライト攻撃に、シャルロット・デュノア選手、次々と武装を変更するというこちらも変幻自在の攻撃です!』

『ほとんどタイムラグ無しで量子構成を行えるデュノアさん独自の戦闘スタイルですが、まさか同一武装で似たような事をするなんて………』

 

 つばさのアナウンスと真耶の解説を遮るように、観客の歓声が闘技場に響く。

 その歓声を貫く銃声が無数に木霊していた。

 あかりのスポットライトを思わせるアームが連続してフラッシュし、それがビームの速射となってシャルロットを狙う。

 オレンジの装甲を持つシャルロット専用機《ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ》がそれをかわしながら、五五口径アサルトライフル《ヴェント》を速射するが、今度はあかりのアームがビームを拡散照射して弾丸を消失させる。

 そのまま二人同時に建物の影に隠れ、荒い呼吸を整える。

 

「何て兵装の数………カノンにショットガン、次はアサルトライフル? 一体幾つ用意して………」

「ま、まさかあのライトみたいな装備、あそこまで色んな使い方出来るなんて………」

 

 連射、拡散、フラッシュ等の多種のアームの使い分けをするあかりと、通常のISの倍の拡張領域に多数の装備をインストールして使い分けるシャルロット、奇しくも似て非なる戦い方をする二人が、残り少ない時間とシールドエネルギーを確認する。

 

(あと一発、大技を叩きこめば………)

(決着が着く………)

 

 待ったく同じ事を考えていた両者だったが、あかりはブレッドをアームに叩き込み、シャルロットは五九口径重機関銃《デザート・フォックス》を構成させる。

 物陰から飛び出したシャルロットが銃口をあかりへと向けるが、そこであかりがアームを真上へと向けているのに気付いた。

 

「まさか…」

 

 次鋒戦の時の事を思い出したシャルロットの動きが止まり、そこであかりが今までで一番強烈なビームを頭上へと発射する。

 

「え?」

 

 完全に明後日の方向への攻撃にシャルロットは一瞬疑問を感じるが、直後にハイパーセンサーに何かを感じ、全力で後ろへと跳んだ。

 つい先程までシャルロットがいた空間を、大口径の強烈なビームが直撃、盛大に粉塵を巻き上げ、今までの戦闘で一番巨大なクレーターを作り上げた。

 

「あ、危な………」

「ちっ!」

 

 全身からどっと冷や汗が吹き出したシャルロットに対し、あかりは舌打ちしながら即座に次のブリッドを準備する。

 

『ライトニング・エンジェルの必殺技、ライトニング・ジャッジメント炸裂! デュノア選手、かろうじてかわしました!』

『一瞬遅れていたら、直撃でしたね』

「まずいまずいまずいよ!」

 

 慌てふためきながら、シャルロットは高速で建物の影から影へと移動し、あかりに狙いをつけさせないようにしながらも必死になって考える。

 

(まさかBT偏向射撃、しかもあの威力! 喰らったら一発で終わる! あんな切り札持ってるなんて………時間も少ない、どうすれば)

 

 考えるシャルロットだったが、そこで目の前を突然閃光が貫き、急停止する。

 

「うわっ!?」

「外したわね」

 

 建物越しに貫通してきたビームに、シャルロットがバックしながらあかりの方を確認する。

 あかりのアームはライトのカバー部分が閉じられ、ごく僅かな隙間だけが開けられていた。

 

(小口径の貫通狙撃! そんな手まで!)

「今度は、外さないわよ」

 

 そう言いながらあかりはブリッドを装填して再度アームを上へと向け、それを見たシャルロットはある思い付きに従い、逆に全力であかりへと突撃していった。

 

「こいつ!」

 

 アームを吶喊してくるシャルロットへと向け、あかりはビームを発射。

 シャルロットはそれをシールドで受け、なおも前進する。

 

「やっぱり! このビーム、曲げられる角度と、距離に難点がある!」

 

 シールドに直撃したビームが、先程のクレーターを作り上げた物に比べれば弱い事に、シャルロットは確信を持って更に距離を詰めていく。

 

(物理法則無視だけど、距離が有れば有るほど威力を増すビーム! だから上に撃って距離を稼いだ! ある程度角度は制御出来るけど、自在には出来ないから、大きく弧を描くしかない!)

 

 半ば勘だったが、それが当たっていた確信をシャルロットは感じつつ、それでもなお強烈なビームにシールドが軋み始める。

 

「果たして、持つかしら!」

「くうぅぅ~」

 

 必殺とまではいかないが、充分相手を倒せる可能性があると感じたあかりは、アームのエネルギー全てを注ぎこみ、シャルロットへと叩きつける。

 

『これはすごい事になってきました! 残り時間30秒、ライトニング・エンジェルが押し勝つか、デュノア選手が防ぎきるか!』

『デュノアさんのシールドエネルギーがすごい勢いで減ってます! これは果たして持つのでしょうか!?』

 

 実況、解説共に興奮する中、両者の距離が詰まり、時間は減っていく。

 

『残り時間10秒! 9、8、7…』

 

 つばさのカウントダンが響く中、二人の距離が間近にまで迫る。

 

『5!』

 

 あかりのビーム攻撃が途切れるのと同時に、シャルロットのシールドが限界に達して吹き飛ぶ。

 

『4!』

 

 あかりの目は、消し飛んだシールドの裏、最後まで隠されていたパイルバンカーを捉える。

 

『3!』

「いっけえぇ!!」

 

 残ったエネルギーを振り絞り、シャルロットは六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレースケール)》をあかりへと叩きこみ、パイルバンク。

 まともに喰らったあかりの体がくの字に折れ曲がりながら吹き飛び、そこでタイムアップのブザーが鳴り響く。

 

『時間終了、と同時にKO判定! 勝者、デュノア選手!!』

 

 勝者宣言がなされると、一際大きな歓声が闘技場に響き渡る。

 

「あ、危なかった………」

 

 だがシャルロットには勝利の喜びよりも、むしろ寒気が走っていた。

 持ち上げたグレースケールには、懐中電灯を思わせる小型のビームサーベルが突き刺さっており、2発目は打てない状態になっている。

 

(あっちも奥の手隠してたんだ………)

 

 文字通り薄氷の勝利にシャルロットはパンツァーの底力を感じつつ、倒れたままのあかりへと近寄る。

 

「大丈夫?」

「な、なんとか………まさか、パイルバンカーなんて野蛮な物まで持ってるとは思いませんでしたわ」

「そっちもね」

 

 苦笑しながらシャルロットはビームが消えて転げ落ちたビームサーベルをあかりへと渡す。

 

『これ勝ち星は2対1、パンツァーチーム追いつめられました! 次の副将戦で決まってしまうのでしょうか!?』

 

 

 

「シャルロットが勝った」

「あちゃ~、まさかあかりが負けよるとは………」

 

 先程の勝敗結果に、双方が一喜一憂する。

 

「残ったのはねじるさんとどりすさんですか」

「こちらは一夏と箒、ある意味問題の大元だな」

「一体何があったんです?」

 

 サイコとラウラが頷く中、状況が飲み込めないクラリッサは首を傾げる。

 

「試合の元になったのは嫁の軽はずみな発現だ。もっともそれがなくても対立は時間の問題だったろうが」

「そらまあ、女ばかりなのに双方血の気多いのばっかやしな」

「はあ………」

 

 なんとなく状況を察しながら、クラリッサは再度調査へと取り掛かる。

 

「それにしてもこれ、アレに似てますよね………」

「フィラデルフィア実験」

 

 あれこれ融合している建物を見ながら黒ウサギ隊の一人が呟いた言葉に、他の隊員達も思わず反応する。

 

「何やそれ?」

「ある種の都市伝説なのですが、その昔、戦闘にレーダーが用い始められた頃、ステルス実験のためにある駆逐艦に巨大なコイルを設置、磁力によるレーダー反応消失実験を行ったそうなのです」

「所が、その駆逐艦エルドリッジはレーダーどころか本当に消えてしまい、2500kmも離れた場所に出現したかと思うと、また戻ってきた」

「しかも戻ってきたエルドリッジ艦内は、なんと艦と乗員の体が融合しているという恐ろしい状態で、僅かな生き残りも全員発狂していたという………」

「ほ、ほんまなんか?」

 

 クラリッサの説明を、他の隊員達が怪談口調で続け、のぞみが思わずツバを飲み込む。

 

「ばかばかしい、そんな原始的な方法では量子変換すら起こせん。ただの与太話だ」

「そう言ってしまえばその通りなんですけど………」

「そうですね。ただ、その状況だけは確かに今の状況と………」

 

 ラウラと簪が呆れる中、サイコがふとある物に気付く。

 

「あれ………」

「え?」

『きゃああぁぁ!!』

 

 サイコが指差した先、建物の壁から突き出している手足に、黒ウサギ隊の隊員達とのぞみが悲鳴を上げて思わず抱き合う。

 

「全員、落ち着いてよく見なさい」

「どう見ても人ではないな」

 

 よくよく見れば、その手足が極めて小さい事に気付いたクラリッサとラウラが、改めてその手足を見る。

 

「何だこれは、人形か?」

「そのようですね。誰かの私物でしょうか?」

「何や、人騒がせ…な…」

 

 のぞみが胸を撫で下ろした時、その突き出していた手が動く。

 

「………へ?」

「今、動いた?」

「………!………!!」

 

 サイコも気付く中、その壁から突き出した小さな手足が激しく動き始め、しかも壁の中から何か聞こえるような気もする。

 

「え~と、隊長どうします?」

「………掘ってみよう」

 

 クラリッサもラウラも判断に困る中、ラウラが腕だけISを展開し、慎重にもがく手足を掘り始める。

 

「確かに何か埋まってる………人形が、二体? けどすごい高エネルギー反応………」

「何が出てくるんでしょうか?」

 

 ISセンサーでチェックした簪が、その人形のような者が只者でない事を確信し、サイコは目つきを険しくする。

 

「そういや、副将戦まだ始まらへんのか?」

「そう言えば………何か揉めてるみたいです」

「………間違いなくどりすが原因やで」

 

 

 

『え~、副将戦なのですが、全く予想外というか私としては予想通りの所で問題が発生しております………』

 

 つばさの呆れた声と共に、なぜかなかなか始まらない副将戦の理由が、闘技場のスクリーンに写し出されていた。

 

 

「やだやだやだ! やっぱり私が大将やる!」

「あのな~」

 

 控室で文字通り駄々をこねるどりすに、ねじるが呆れた声を上げる。

 

「順番はじゃんけんでって、どりあさん言っただろうが」

「だって!」

 

『どうやら試合順に異論が出ている模様。ある意味今回の試合の原因ともなった瑠璃堂 どりす選手、パンツァーネーム ドリルプリンセスが示す通り、螺旋皇国第三皇女、正真正銘のプリンセスです。無論わがままもプリンセス級、ルームメイトの私はいつも苦労しています』

 

「ぎんちゃん余計な事言わない!」

 

 つばさの解説に思わずどりすが怒声を上げ、闘技場内に爆笑の渦が巻き起こる。

 

『あ~っと、ここでパンツァーチーム監督役の瑠璃堂 どりあさんが出てきました! 彼女も螺旋皇国の第二皇女にしてトップランクのスーパーパンツァー。さすがのわがままプリンセスも実のお姉さんには敵いません!』

 

「はいはいどりすちゃん、順番は守らないと」

「でもお姉さま………」

「お前が勝ったら五分だから、後はオレがなんとかしてやるよ」

「やっぱやだ! 私が…」

「どりすちゃん?」

「え、あ、その………」

「あ、お姉さんいい事思いついた」

 

『何だか、どこかで見た光景ですね………』

 

 つばさの解説に真耶が苦笑していたが、ふと何か様子がおかしい事に気付く。

 マイクが拾えないのか、何か小声で話してはいるが内容が分からないどりあの言葉に、なぜかどりすだけでなくねじるも頷いている。

 そしてどりあが設置してあった電話機を取ると、実況席の電話が鳴った。

 

『はいこちら実況席…、はい分かりました。何かパンツァーチームからISチームに提案がある模様です』

 

 電話を取った真耶が説明しながら、ISチーム控室へと回線を回す。

 

『これはどういう事でしょうか? 一体何が………』

 

 つばさも首を傾げる中、そこで再度電話が鳴り、真耶は再度それを受け取って頷くと、受話器を置いた。

 

『つい先程、パンツァーチームからルール改定の提案が有り、ISチームもこれを了承しました。次の試合は改定内容で行われます』

『改定内容は?』

『次の試合、残ったメンバーによる2対2のタッグマッチとし、最終的に勝者の残っていた方を二勝とします!』

 

 真耶の説明に、闘技場が一瞬静まった後、割れんがばかりの歓声が響き渡った。

 

『なんとタッグマッチです! まさかのルール改定、パンツァーバトルでもまれに行われますが、まさかここで行われようとは思いもしませんでした!』

『あ~、でも………』

 

 つばさも興奮する中、真耶が困った顔で今度はISチームの控室を映し出す。

 

 

「タッグマッチですって!? 聞いてないわよ!」

「しかもだとしたら一夏さんは箒さんとタッグ組むんですの!?」

「ずるいよ!」

 

『ああっと、今度はISチームが揉めております!』

『前の校内タッグマッチの時も大変でしたからね~。あ、いま織斑先生が出てきました! 彼女は第一回IS世界大会モンドグロッソ優勝者、そして一夏さんのお姉さんです。校内で逆らえる人は皆無です!』

 

「いい加減にせんか! お前らの出番はもう終わった!」

『は、はい~!』

 

『全員一蹴、さすがです』

『確かに、どこかで見た光景ですね~』

 

 再度闘技場内に爆笑の渦が巻き起こるが、それはスクリーンにある物が表示された事で収まる。

 

『それでは決勝戦! 一年80組 瑠璃堂 どりす! パンツァーネーム・ドリルプリンセス! そして二年62組 我王 ねじる! パンツァーネーム・ブラッディ・ドリル! 対するISチームは一年一組、織斑 一夏! 使用機体・白式! そして同じく一年一組、篠ノ之 箒! 使用機体・紅椿!』

 

 紹介と共に、今まで一番の歓声が闘技場内に響き渡る。

 

『基本ルールは同一、タッグマッチなので二対一でも全く構いません! 最終的にどちらか一人残っていれば勝敗は決します!』

『一体どんな戦いになるのでしょうか? 私としても非常に楽しみです』

 

 

「タッグマッチとは、思い切った事するな」

「つまり、両方倒しちゃえばいいんでしょ?」

「あら、そんな上手くいくかしら?」

 

 試合開始を待つねじるとやる気マンマンのどりすだったが、どりあが笑顔のまま首を傾げる。

 

「向こうはどうやら最新型らしいわよ?」

「え、そうなの?」

「新しかろうが古かろうが、用は使う人間の問題でしょう。どんな装備でも、どれだけ訓練して使いこなせるか、パンツァーと一緒だ」

「あら、いい事言うわね」

 

 強気なねじるにどりあが感心する。

 

「我王さん!」

 

 そこで先程僅差で負けたあかりが、ブレッドをセットでねじるへと投げ渡す。

 

「貴方、どうせそんなに持ってないのでしょう? 余ったから貸してあげるわ」

「いいのか?」

「勝ったらチャラ、負けたら倍返しですけれど」

「それはまずいな、バイトこれ以上増やせねえ。つう事だから共同責任だ」

「へ?」

 

 ブレッドの半分をどりすに渡し、残りをねじるは懐にしまう。

 

「様子見ようなんて思わないで飛ばして行くのがコツよ!」

「性能に頼ってきたらチャンス」

「油断大敵よ」

 

 実際にISと戦った者達が助言を出す中、試合開始のカウントダウンが始まる。

 

「どりす、あっちのとっぽい男はお前に任せる。オレはもう片方を狙う」

「うん分かった!」

「あっさりやられるなよ」

「そっちこそ!」

 

 

 

「二人で組むのは久しぶりの気がするな」

「そうだったっけ?」

 

 それぞれのISをまとった箒と一夏が、試合開始を待ちながら呟く。

 

「元はと言えばお前が原因だしな。あちらのプリンセスとはお前自身で片を付けろ」

「どうにも、あんな小さい子相手は………」

「甘くみない方がいいぞ。ただでさえお前は女に甘すぎる」

 

 今一気乗りしていない一夏だったが、そこで千冬が釘を差してきた。

 

「千冬姉、そう言っても…」

「織斑先生だ。相手を甘く見て調子に乗った挙句にやられた者もいたな」

「ぐ………」

 

 千冬の苦言にセシリアが言葉に詰まる。

 

「必殺技みたいの以外はこっちのパワーが上だから、力押しで行けるわ!」

「敵の兵装をよく見てください! 特徴的ですから!」

「サブウェポン持ってる事もあるよ!」

 

 皆からの助言が飛ぶ中、カウントダウンが始まる。

 

「ともあれ、無様な所見られる訳にもいかないしな」

「遠慮していたら、やられるのはこちらだ。それは見ていて分かったはずだ」

「ああ、それじゃあ行くぞ!」

 

『3、2、1、スタート!』

 

 ゲートが開くと同時に、四人は一斉に飛び出す。

 まるで双方で示し合わせていたように、どりすと一夏が、ねじると箒が互いに向かって一直線へと向かっていった。

 

『ああっと、二手に別れた双方が真っ向勝負です!』

「行っけぇ~!」

「行くぞ!」

 

 どりすが手にした専用アーム《カイザードリル》と一夏が手にした白式専用武装《雪片弐型》が突撃の勢いと相まって正面からぶつかり、双方のエネルギーがスパークとなって周辺に吹き荒れる。

 

『これはすさまじい! ドリルプリンセス、織斑選手、双方に全く譲りません!』

『どちらも完全な近接格闘型、しかもパワー特化型とは………』

 

 実況席のアナウンスすらかき消されそうな歓声が飛び交う中、双方が一度弾き飛ばされ、即座に体勢を立て直す。

 

「まだまだ~!」

「な、まさかここまで…」

 

 やる気満々のどりすに対し、一夏は予想以上のどりすのパワーに気圧される。

 

「たあああぁぁ!」

「くっ!」

 

 速攻を掛けてくるどりすに、一夏は雪片弐型で防御に回るが、先程とは違い、どりすは連続の刺突を繰り出してくる。

 

「たりゃりゃりゃ~!」

「この、うわ、お!」

 

 ドリルを回転させながらの刺突は先程の一撃よりは弱いが、その全てが重い感触を伝えてくる。

 

(雪片弐型に拮抗するなんて、このドリルどんなエネルギー篭ってんだ!?)

「そりゃあ~!」

「おわっ!」

 

 最後の大ぶりの一撃が予想以上に重く、一夏は咄嗟に後ろに跳んで勢いをかろうじて殺す。

 

『ああっとドリルプリンセスの速攻に織斑選手、押されてます!』

『パワーもありますが、あの攻撃速度はISではなかなかないですからね~』

 

「一夏!」

「どっち見てんだ!」

 

 思わず一夏の方を向いた箒だったが、そこでねじるの攻撃が胸元をかすめる。

 

『もう一方のブラッディ・ドリルと篠ノ之選手、こちらは派手な向こうと対照的です!』

 

 つばさの実況通り、箒は一夏とは違う理由で苦戦していた。

 

「ほらほら、どうした!」

 

 最初の突撃でこちらの攻撃すら意に介さず、そのまま文字通りぶつかってきたねじるは、完全に懐に潜り込んだまま、アームを用いずに格闘攻撃を次々と叩き込んでいた。

 

「この! こんな手で!」

「はっ! そっちのは図体も得物もデカすぎるんだよ!」

 

 箒はなんとか反撃しようとするが、ねじるの言う通り、手にした紅椿専用武装《雨月》、《空割》の二刀よりも更に内側に潜り込んで離れないねじるに、苦戦を強いられていた。

 

『ブラッディ・ドリル、まさかのゼロ距離戦法に篠ノ之選手、苦戦です!』

『確かにあの間合いならほとんどの兵装は使えませんが、極めて危険です。ISはただ手足を振り回しただけでも、充分な破壊力を持っているのですから』

 

 真耶が危惧した通り、何とか間合いを取ろうと箒が振り回した柄が偶然にもねじるの頬を打ち抜く。

 

「あ…」

 

 さすがに顔面を狙うつもりはなかった箒だったが、僅かに舞った鮮血と共に横を向く形となったねじるの口が、むしろ笑みの形に持ち上がった。

 

(この子、とんでもない好戦的!)

「隙ありだ!」

 

 食堂でのイメージとは丸で違うねじるに、箒がたじろいた隙を逃さず、ねじるの手が紅椿の片腕を掴み、左手のシールドを振りかぶると、内部に収蔵されていたドリルが展開、回転しながら紅椿の胴へと叩き込まれる。

 

「う、この!」

 

 派手にスパークが飛び散る中、箒は残った一刀でねじるへと横胴の一撃を叩き込み、強引にねじるを引きはがず。

 

『ブラッディ・ドリル、篠ノ之選手双方痛み分けと言った所でしょうか』

『実際は我王さんの方がかなり危ない戦い方ですが、それで互角というのもすごいですね………』

 

(何て無茶苦茶な………自分のダメージを考えていないのか? 一度距離を…)

 

 攻め一辺倒のねじるの戦い方に戦慄しつつ、箒は規定距離ギリギリまで下がろうと加速した瞬間、こちらも加速したねじるが紅椿の足を掴む。

 

「なっ! 離しなさい!」

「誰が離すか!」

 

 予想外の行動に困惑しながら、箒は紅椿を加速上昇させて振り落とそうとするが、ねじるは頑として手を離そうとはしなかった。

 

『ああっと! これは予想外の体勢になっています! ルール上は一定距離以上離れて飛行すれば反則対象なので、これは問題はありません!』

『けど、ISにしがみつく人は初めて見ました………』

 

 真耶が唖然とする中、かなりの速度で紅椿は加速や急旋回を繰り返すが、それでもねじるは手を離そうとしない。

 

「これ以上は危険だ! この速度で落ちたら…」

「どうなるって!?」

 

 箒の警告を無視して、ねじるは高速で振り回されるのも構わず、ドリルを繰り出してくる。

 

「おらぁ!」

「このっ!」

 

 想定すらした事もなかった、足にぶら下がった相手からの攻撃に箒は二刀を振るってなんとか防ぐが、ねじるは構わず連続でドリルを繰り出す。

 

『こ、これはすごい! ブラッディ・ドリル、篠ノ之選手双方が空中で死闘を繰り広げています!』

『あの、パンツァーってあの高さから落ちても大丈夫なんでしょうか?』

 

 すでにかなりの高度と速度になっている紅椿に真耶が引きつった顔をするが、両者は構わず激戦を繰り広げていた。

 

「ねじるやるな~」

「すげえ………」

 

 思わず攻撃の手を止めて空中戦を見ていたどりすと一夏だったが、試合中だった事を思い出して再度向き直る。

 

「それじゃあ、こっちも本気で行くぞ!」

 

 どりすがただならぬ相手だと判断した一夏は一度距離を取ると、白式の背部スラスターからエネルギーを放出し始める。

 

「?」

「イグニッションブースト!」

 

 空ぶかしにも思える行動にどりすが首を傾げた次の瞬間、放出されたエネルギーが再度取り込まれて圧縮、そして爆発的加速となって白式が超高速でどりすへと襲いかかる。

 

『おおっと織斑選手、すさまじい高速アタックです! ドリルプリンセス、吹き飛ばされた!』

『イグニッションブースト、織斑君の得意技です、が…』

 

 目にも留まらぬ加速攻撃をまともに喰らったと思ったどりすだったが、完全に吹き飛ばされる前に体勢を立て直し、堪える。

 

『ドリルプリンセス、持ち堪えました!』

『すごい、あの加速に反応出来るなんて………』

 

「ちょっとびっくりした~」

「ちょっと?」

 

 加速の勢いを載せた雪片弐型の一撃を、カイザードリルで防いでいたどりすに、一夏は再度相手の評価を改める。

 

(これは、半端じゃなく強い! 見た目はまんま子供だけど………)

「今度はこっちから行くんだから!」

 

 宣言しつつどりすがアームにブリッドをチャージ、ドリルが高速で回転を始める。

 

「やばい!」

 

 それが必殺技の兆候だと聞いていた一夏はとっさに多機能武装腕《雪羅》をどりすへとむけ、そこから荷電粒子砲を発射する。

 放たれた荷電粒子砲とカイザードリルがぶつかり合い、周辺に閃光が溢れる。

 

『双方の技が真っ向からぶつかり合い! こちらもすごい事になってます!』

『今荷電粒子砲に突っ込んできませんでした!?』

 

 真耶がおもわずどりすの心配をするが、それは平然と荷電粒子の砲撃を突破したどりすの姿にあっさり裏切られる。

 

「ウソだろ!?」

「行っけえぇぇ!」

 

 さすがに全く効かない事は想定していなかった一夏は驚愕しつつ、思わず急上昇してどりすの一撃をかわす。

 

「こら~! 降りてこ~い!」

「ど、どういう仕組みなんだ?」

 

 荷電粒子砲をドリルで弾く、という常識外れの事態に一夏は困惑する中、どりすはしばし下で怒声を上げ続ける。

 

「そっちがその気なら!」

 

 どりすはそう言うや否や、突然カイザードリルを持ち上げたかと思うと、思いっきり地面へと突き刺す。

 

『ドリルプリンセス、突然地面に自慢のドリルを突き刺しました! これは一体!?』

『あれではむしろ動けなくなって的になるだけでは………』

 

 何から何まで予想外のどりすの行動に、誰もが困惑する中、一夏は行動を起こされる前に片を付けようと荷電粒子砲をどりすへと向ける。

 そこでどりすの背部スラスターが異常に噴出している事に気付いた。

 

「まさか!」

「今だ!」

 

 ブリッドを再度チャージしたどりすが、一撃でアンカー代わりにしていたドリルを引き抜き、その小柄な体が一気に加速上昇する。

 

「そう来たか!」

「そこだぁ!」

 

 自分に向かって上昇してくるどりすに対し、一夏は再度荷電粒子砲を発射するが、どりすは背部スラスターの僅かな噴射方向の変更で、巧みに砲撃を交わす。一夏が気付いた時にはすぐ側までどりすが迫っていた。

 一夏は砲撃から雪片弐型に切り替え、ロケットのように迫ってくるどりすに相対、両者が高速ですれ違い、双方のエネルギーのスパークが舞い散る中、両者のシールドエネルギーが一気に減った。

 

『予想外の空中戦は相打ちの模様!』

『双方、エネルギーの半分以上削られてますね………』

 

「ちぇっ、外した」

 

 バーニアでバランスを取りながら着地したどりすがすねたような口調で表示されてるエネルギーを確認。

 更にそこへ、上空から落下してきたねじるがどりすの間近へと墜落する。

 

「うわ! ねじる大丈夫!?」

「大丈夫だ、これくらいな」

 

 なんとか着地体勢は取れたねじるだったか、衝撃は殺しきれなかったのか、エネルギーが大きく減る。

 

「箒!」

「も、問題ない!」

 

 なんとか振り落とした箒だったが、ダメージこそ少ない物の、距離超過の警告すら聞こえない程、顔色は青ざめていた。

 

『こちらはダメージの大きいブラッディ・ドリルの方が平然としており、逆にダメージの少ない篠ノ之選手の方が精神的ダメージが大きい模様!』

『あんな戦い方する生徒は本校にはおりませんから………』

 

 四者四様の状態の中、前半戦の残り時間が僅かとなっていく。

 

「まだまだ~!」

「こっちもな」

「行くぞ!」

「来い!」

 

 四人がそれぞれの得物を構え、再度互いへと向かって突撃を開始した。

 

 

 

「ふ~、こんな物か」

「けどこれは………」

 

 精密作業を終えたラウラが額の汗を拭う中、出てきた物をサイコが凝視する。

 

「ぶはっ! 助かったのだ~」

「ひどい目に会った~」

 

 掘り出されたのは、全長15cm位の人形、ではなく、明らかに動いて普通に喋っている小型ロボットのような物だった。

 

「助けてくれてありがとうなのだ!」

「まさかこんな大規模転移なんて考えてなくって、気付いたら壁の中だった時はどうしようかと」

「………何だこれは?」

「さあ………そっちのじゃないんか?」

「こんな小型で高機能なロボット、まだ開発されたという話は…」

「それはこちらもです」

「でも結構かわいい」

 

 誰もが首を傾げる中、その二体は全身のホコリを振り払いながら立ち上がる。

 

「申し遅れたのだ、あたしは武装神姫、猫型MMS・マオチャオなのだ」

「私は武装神姫、サンタ型MMS・ツガルだよ」

 

 文字通り猫のようなプロテクターに身を包んだマオチャオと、赤地に白のラインが走ったプロテクターのツガルに皆が思わず顔を見合わせる。

 

「へ~、完全独立の自己認識AI。しかもこのサイズでか~」

「ええ、極めて高度な技術です」

「こんなのはどこの研究所でも…」

 

 簡単に武装神姫を判断する声にサイコと簪が思わず同意した所で、それが今まで聞いてない声だという事に気付く。

 

「あ、貴方誰ですか!?」

 

 サイコの声に全員が一斉に振り向き、そこにエプロンドレスでどこか眠そうな顔をした女性に気付く。

 

「篠ノ之博士!? 何でここに!」

「あ、知り合いなん?」

「篠ノ之 束。ISの開発者で、中枢コアを作る技術を持った唯一の人間です。でも、どうして………」

 

 その人物に見覚えが有ったラウラが驚き、クラリッサが簡単に説明する。

 

「篠ノ之、確か今ねじるさんが戦っている方が………」

「箒ちゃんは私の妹だよ。あと何でここにってのは、多分君達と一緒。気付いたらここにいた。それにしても、箒ちゃんの相手してる子、すごいガッツだね~。紅椿に何かゼロ距離武装付ける事考えとかないと」

 

 マイペースで事情を説明する束だったが、黒ウサギ隊はゆっくりと彼女の周囲を取り囲む。

 

「あの、隊長………」

「今は止めておけ」

「何がや?」

「篠ノ之博士は、現在最後のコアを残して失踪中なんです。で、世界中の色んな機関が捜索してて………」

「ふんじばろうって訳かい」

「止めといた方いいよ? もう気付く人は気付いてるでしょ? ここが私達のいた世界じゃないって」

『!?』

 

 いともあっさりここが異世界らしい事を肯定する束に誰もが驚く。

 

「驚いたのだ、何で知ってるのだ?」

「簡単、上空に人工衛星が今の所一基しか飛んでないし、そもそも星の配置がずれてる。まあざっと逆算して20世紀前半って所かな?」

「当たってるよ。ここは西暦1929年の地球なんだって」

「ま、待ってくれ! それは本当か!?」

「いきなりそのような事を言われても………」

 

 武装神姫達が束の意見を肯定し、他の者達はさすがに事態を理解しきれず、困惑する。

 

「で、それを知ってるって事は君達は事情を理解してるって事でいいのかな?」

「あああ、そうだったのだ! こんな事してる暇なかったのだ!」

「早くマスターを探さないと! 皆も準備して! もう直、敵襲が有るかもしれないんだった!」

「敵襲? 何がや?」

「それが…」

 

 束の問に、ようやく自分達の目的を思い出したらしい武装神姫達が慌てる中、最早事態に付いていけないのぞみが首を傾げる。

 説明しようとしたツガルだったが、その小さな瞳が上空に向けて大きく見開かれる。

 

「遅かった………」

「まずいのだ!」

「だから何が………!?」

 

 マオチャオも空を見て呆然とするのを見た皆が背後を振り向き、それに気付いた。

 

「あれは!」

「ここに来た時と同じ………」

 

 ちょうど闘技場の真上に、突如として発生した霧が渦を巻き始める。

 それが次元転移の前兆だと誰もが知るのは、すぐ後の事だった………

 

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