第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP15

 

「始まったか!」

「状況は!」

『敵機多数! 外見から、東京を襲撃した勢力と同勢力と思われます! 戦闘開始直前から、妨害が激しくなって詳細は…』

「迎撃は出来てるのか?」

『それは確認しています! ノイズが激しいですが、各所で応戦している模様!』

 

 突如としてもたらされた学園急襲の報に、各指揮所は蜂の巣を突いたかのような騒ぎとなっていた。

 

「まずいですね、かなりの規模の襲撃です」

「だが、こちらの予想よりも戦える人員が多くいたようだ。なんとか迎撃できてる」

「今の所は、だがな」

 

 帝国華撃団本部で、情報整理していたエルナーと大神が上空衛星からのモニターを確認していたが、先日の戦いを思い出した米田が言葉を濁す。

 

「増援は?」

「現在、亜乃亜とエリュー、そしてエグゼリカが全速で向かっています。到着は15分後。カルナダインはまだニューヨークを発ってないので、今から向かってどれくらいかかるか………」

「三人、か。まああの嬢ちゃん達も強ぇからな」

「問題は、現地の人達がどれだけ持ち堪えられるか………」

「もしここが学校なのだとしたら、いるのはまだ生徒だという事になる。つまり、実戦経験がほとんど無いかもしれない………」

 

 軍人としての一番の懸念事項、戦歴の少なさを危惧する大神だったが、それは他の指揮官達も同様だった。

 

『向かっている者達に任せるしかない』

『こちらジオール、Gの他のメンバー達も出撃しますか!?』

『今からでは間に合わんかもしれんが、救援は必要かもしれん』

 

 門脇とジオールも表情を険しくする。

 

「せめて、誰かすぐにでも駆け付けられる人がいれば………」

 

 エルナーの呟きは、誰もが心中思っていた。

 

「ん?」

 

 そこで大神の肩でモニターを見ていたプロキシマが何かが見えた気がして目をこする。

 

「どうした?」

「今、何かが画面に映ったような………」

「………まさか、他にも何かいやがるのか?」

 

 

 

『こちら校舎前! なんとか敵を押し留めてます!』

『食堂周辺! 今パンツァー達が増援に来ました!』

『こちら更識、非戦闘員のシェルターへの移動完了! 私も出ます!』

 

 あちこちからの報告が届いてくる中、千冬は僅かにうつむいて、ある違和感を感じていた。

 

『おかしいですわね』

「そちらもそう思うか」

『ええ、これだけの襲撃なのに、死者が全く出ていない』

「怪我人は出ているが、重傷者は出ていない。もっともこれは避難が迅速に進んだ結果でもあるが」

 

 繋ぎっぱなしになっていた電話から、同じ違和感を感じていたどりあの同意に、千冬は更に違和感を深くする。

 

「これだけの戦力で襲撃しておきながら、死者を出していない」

『こちらもそちらも強いから、ではありませんね』

「残念ながらな。つまり、敵の狙いは…」

 

 

 

「! これは!?」

 

 突然敵の戦い方が変わった事に、ラウラが一番最初に気付く。

 他でもない、自分に攻撃が集中し始めたからだったが、他の者達もすぐにそれに気付いた。

 

「隊長が狙われているぞ!」

「隊長を守るんだ!」

 

 黒ウサギ隊が一斉に攻撃を集中するが、それでも敵は執拗にラウラのシュバルツェア・レーゲンを狙ってくる。

 

「どないなっとるんや!? あいつら銀髪好きなんか!?」

「それは無いんじゃ………」

 

 のぞみが素っ頓狂な声を上げるが、簪が即座に否定。

 

「この中で、一番火力が強いのが彼女です。つまり、ここの要だと気付いたのでしょう」

「多分ね~、しかも恐らく狙いは…」

 

 サイコの指摘に束が頷きながら、ある懸念を抱く。

 

「何だこれは!」

 

 それはすぐに現実の物となった。

 シュバルツェア・レーゲンの周囲を小型の飛行型が取り囲んだかと思うと、一斉に何かの樹脂のような物を発射してくる。

 

「舐めるな!」

 

 プラズマ手刀を展開したラウラは一閃でそれらを薙ぎ払うが、そこで再度集中攻撃が再開される。

 

「トリモチ!?」

「いえ、多分鹵獲兵器です!」

「やっぱ銀髪好きか!」

「違いますわ、狙いは…」

「うわっ!?」

 

 そこで悲鳴が上がり、皆がそちらを見ると、クラリッサがISごと先程の鹵獲兵器で絡め取られていた。

 

「あかん!」

 

 のぞみがアームを投じ、強引に樹脂を切り落とす。

 

「助かった!」

「銀髪じゃなくてドイツ娘趣味か!」

「違います!」

 

 訂正したのぞみを、更にサイコが訂正しながら背中で彼女を突き飛ばす。

 

「なっ!」

 

 転びながらも受け身を取り、振り返ったのぞみの目に、自分に向かって放たれようとしていた鹵獲兵器を、サイコがアームを吹き鳴らして生じさせた音の防壁で防いでいた。

 

「狙いは、ISの機体を含めた私達自身………!」

「そうだね。パンツァーとIS、両方まとめて拐う気みたいだよ」

 

 簪がようやくたどり着いた相手の狙いに、束があっさりと頷いた。

 

「多分、他の所もだろうね。まあ箒ちゃんといっくんの所は違うみたいだけど」

 

 束が空恐ろしい事を口にするが、同時に学園各所で悲鳴が上がり始める。

 

「これは、マズいで………」

 

 

 

『お、織斑先生! 敵の行動が変化!』

『止めろ! この!』

『敵更に増援! 救援を!』

 

 突然の相手の戦術変更に、千冬は深刻な顔をせざるを得なかった。

 

『なるほど、随分と来るのが遅いと思ってましたけど、こういう事でしたか』

「ああ、狙いは機体ごと騎乗者を鹵獲する事、か」

『観察されていたのかもしれませんわね、最初から』

「道理で死者を出さない訳だ」

『お、織斑先生! 闘技場上空に更に敵が! 敵が!』

「山田先生、少しの間頼む。戦闘中の全員に通達、決して単独行動は取るな」

『ええ!?』

 

 こちらも悲鳴じみた真耶の通信に、千冬はある事を決意してその場を後にする。

 

『………ま、そうするでしょうね』

 

 どりあもそう呟きながら、その場を後にした。

 

 

 

「このっ! 来るなっ!」

 

 鈴音が悪態をつきながら、甲龍の衝撃砲を連射する。

 

「こいつら、急に戦い方変えてきた!」

 

 先程までの際限なく押し寄せてくる戦法から一転し、中~近距離型の甲龍の弱点を突くように、遠距離からのしかも複数方向からの狙撃に、鈴音は何とか防ぎながらも応戦する。

 

(一体潰しても、すぐに別方向から撃ってくる! こっちの攻撃範囲が完全に読まれてるって事?)

 

 ISの装甲でなんとか持ってはいるが、試合のダメージも残っており、このままでは押し込まれるのも時間の問題だった。

 

「まずいわね………」

 

 狙撃から逃れるべく、建物の影に回りこんだ所で、そこに隠れていたはさみと目が合う。

 

『あ』

 

 思わずお互い間抜けな声を漏らした所で、空戦型がこちらに向かってくるのに気付き、偶然にも二人揃って同じ方向に逃げ出す。

 

「あんたのせいで見つかったじゃない!」

「こっちも大変なのよ!」

「こっちだって誰かのせいでアーム片方壊れたままなのよ!」

「それはこっちだって!」

 

 口論しながら逃げる二人だったが、敵は空陸合わせて段々増えていく中、はさみがアームが無い方の手でそのまま進むようにサインを送る。

 

「一体全体、こいつら何体いるのよ!」

「こっちが聞きたいわよ!」

 

 相変わらず口論しながら、二人は目の前にある体育館の中へと飛び込む。

 追ってきた空戦型、陸戦型も体育館の中へと入ろうとした時、入り口を吹き飛ばしながらフォールドシザーの衝撃波が敵をまとめて吹き飛ばす。

 

「ざっとこんな物よ」

「なるほどね。それ、まだ打てる?」

「ブリッドはあと三発しかないけど、誰かが誘導してくれれば、結構行けるわよ」

「………成る程、しょうがないわね。でもトドメ刺し損ねなたら衝撃砲をぶち込んで追い打ちするわよ。あんたの攻撃で崩れた後ならなんとかなるでしょ」

 

 二人は体育館から飛び出しながら、狙撃機の弾道から隠れるように動きつつ、敵を誘導していく。

 

「それじゃあ行くわよ、チャイナツインテール!」

「そっちこそね、シザーツインテール!」

 

 軽く悪態をつきつつ、二人は同時に得物を構えた。

 

 

 

「く、これは………」

 

 スターライトmkⅢを構えたセシリアだったが、即座に死角から来る敵機に狙撃体勢を崩さざるを得なくなる。

 

「しつこいですわよ!」

 

 狙撃からビット攻撃に変えたセシリアが向かってきた敵を撃破するが、即座に新手が向かってくる。

 

「次から次へと!」

 

 狙撃とビット攻撃、その隙を交互についてくる敵に、セシリアは歯噛みしながらもブルー・ティアーズをスライドさせて、何とか優位な体勢に持ち込もとうするが、中々その隙は与えてもらえない。

 

「まさか、先程の試合を見られてましたの?」

 

 明らかにこちらの対抗策を講じてくる敵に、セシリアは違和感を感じていたが、敵は次々と押し寄せてくる。

 

「どうにか、敵をまとめられれば…!」

「動かないで!」

 

 そこで突然下から声が響いてきたかと思うと、突き上げるような竜巻がブルー・ティアーズの周囲にいた敵を巻き込んでいく。

 

「これは! そういう事ですの!」

 

 好機と見たセシリアはビットとスターライトmkⅢを同時に構え、竜巻に捉えられた敵を次々と蜂の巣にしていく。

 

「助かりましたわ!」

「ま、こっちもだけど」

 

 下でアームを構えていたのずるに、セシリアは素直に礼を述べる。

 

「実は、ブリッド切らしてね。相手を破壊できる程のパワーが出せないの」

「つまり、今ので全力?」

「今の私のはね」

「………分かりましたわ。とどめはこのセシリア・オルコットにお任せください。それで先程の貴方の勝ちは無効という事で」

「貴方、案外せこいわね………」

「な、この私にせこいなんて!」

「けど、そうしてもいいわよ。生き残れたら」

 

 のずるがそう言いながら、押し寄せてくる新手にアームを構える。

 

「まずはそれが大事ですわね………」

 

 セシリアも思わず生唾を飲み込みながら、スターライトmkⅢを構えた。

 

 

 

「まずい、狙われてる………!」

 

 専用機持ちに攻撃が集中し始めた事をシャルロットは確信しつつ、弾切れを起こした銃を投げ捨て、次を呼び出す。

 

「それにこれは………」

 

 次から次へと武装を変えるシャルロットの戦い方に対抗するように、周囲の敵も複数の種類が混在し、散弾銃を使えば大型の重甲型が、カノンを使えば小型の高速型が前面へと出てくる。

 

(さっきの試合、観察されてた? だとしたら、まずい………!)

 

 奥の手のグレースケールは故障したままで、徐々に追いつめられつつあるシャルロットは、残った武装を確認しつつ、弾幕を張り続ける。

 

(大口径は間合いを詰められる、小口径は防がれる、でもって上空も段々増えてきた!)

 

 包囲が狭まってきてる事に焦り始めるシャルロットだったが、打開方法が思いつかない。

 

「せめて、遅滞戦闘だけでも…!」

 

 誰もが苦戦しているらしい事は気付いていたが、それでも増援を期待しつつ、シャルロットがトリガーを引き続ける。

 そこに、上空から飛来した小型の飛行型が、鹵獲用の樹脂をラファール・リヴァイブカスタムⅡ、その手へと向かって発射してくる。

 

「しまった!」

 

 反応が一瞬遅れたシャルロットは、両手が握っていたマシンガンごと固められた事に愕然とする。

 

「このっ、何で!」

 

 必死になって剥がそうとするが、固着性がかなり強いのか、封じられた両手は引き剥がせない。

 

(まずい!!)

 

 逃げる事も困難な状況にシャルロットの焦りが頂点に達した時、突然飛来したビームの連射が敵陣に穴を開ける。

 

「え………」

「あら、誰かピンチかと思ったら、貴方でしたの」

 

 その穴をくぐり抜け、あかりが飛び込んでくると、シャルロットの両手を見る。

 

「少し熱いですわよ」

「って何を、熱うう!」

 

 説明もせずに、あかりはスポットライト型アームをシャルロットへと向けると、両手の樹脂へと向けて弱めたビームを発射。

 シャルロットは思わず悲鳴を上げるが、樹脂は溶け落ち、ついでに赤熱化してきたマシンガンを慌てて放り投げる。

 

「伏せて!」

 

 二人が同時に伏せた直後、限界に達したマシンガンが内部の炸薬で爆発四散する。

 ついでに弾丸も周囲にばら撒き、相手の動きが鈍った隙に二人は背中合わせになる。

 

「取り敢えず、ありがと」

「礼は良いですわ。私もお願いがあるから」

「お願い?」

 

 そこで、シャルロットはあかりの顔色が少し悪い事に気付く。

 

「誰かさんにぶち抜かれそうになった所が痛んで、上手く動けませんの。誰かがサポートしてくれるとありがたいのですが」

「………ごめん。何なら、背中にでも乗る?」

 

 どうやら無理に助けに来てくれたらしいあかりに思わず詫びつつ、シャルロットはラファール・リヴァイヴカスタムⅡのバックパックを指差す。

 

「………仮にもランク一位が誰かにおぶわれるなんて屈辱ですが、この際足になってもらいますわ」

 

 プライドと現状のピンチを天秤にかけ、妥協したあかりはバックパックへと飛び乗る。

 

「それでは、いきますわ!」

「OK!」

 

 二人は同時に叫びながら、己の得物を構えた。

 先程まで激闘を繰り広げていた者同士が協力する、奇妙な状況だったが、誰もそれに異論を唱える者はいない。

 その余裕すらない、というのが誰にも分かっていた………

 

 

 

「予測しておくべきだったか。なぜ学園ごと、ここに出現したかを」

 

 千冬は呟きながら、まとった戦闘用のボディスーツの具合を確かめる。

 

「まるごと拐うとは、随分と剛気な誘拐だ」

「そうですわね」

 

 腰に何本も日本刀風のブレードを指していた所で、いつの間にか背後にいたどりあに千冬は視線を向ける。

 

「何となくですが、相手の狙いは見えましたわね」

「ああ。観察し、収拾する。ふざけた事だ。だがこの私がいる以上、そんな事はさせない」

 

 髪を結い上げ、他の装備を確認する千冬だったが、そこでどりあが首を傾げる。

 

「貴方はISを使いませんの?」

「生憎と、私の専用機は訳あって封印中なんでな。だが現状を打破するには、相手の注意を引くだけの実力者が出る必要がある」

「囮になる、と?」

「ISが無くてもヒヨコ達に負ける気はせん」

「あらあら、大変ですわね。何でしたら…」

 

 そう言いながら、どりあは右腕を真横へと伸ばす。

 その腕にどこかから出現した流体金属が巻きつき、漆黒のドリル型アームを構成した。

 

「お手伝いいたしますわよ?」

「それは助かる」

 

 素直にどりあの助勢を受け入れる千冬だったが、そこで室内に設置してあるモニターに映される、闘技場内の激戦を見る。

 

「雑魚はともかく、問題はこちらか」

「あれ位なら、あの子達に任せておきましょう。どうやら弟さんもかなり出来るようですし」

「そちらの妹もな」

 

 戦闘準備を終えた千冬は、最後に防戦だが一撃を狙っているらしいどりすと一夏の姿を確認してその場を後にし、どりあもそれに続く。

 

「それにしても、お互い姉というのは何かと大変だな」

「ええ、全く」

 

 二人そろって苦笑しながら、激戦の続く外へと向かっていく。

 間違いなくこの場で最強の二人が、現状を打破すべく、戦場へと………

 

 

 

「来るなら来てみなさい」

 

 笑みを浮かべながら、楯無は闘技場上空に待機していた。

 彼女のまとう、他のISに比べて随分と軽装に見える専用機《ミステリアス・レイディ》は、その周囲に霧を漂わせていた。

 

「そこ!」

 

 闘技場上空を覆うように展開された霧に敵が触れた瞬間、楯無は手にした大型ランス・蒼流旋に内蔵されたガトリングガンで即座に破壊する。

 

「一夏君達の邪魔はさせなくてよ」

 

 周辺を漂う霧、その正体はミステリアス・レイディの特殊能力、ナノマシンが含まれた特殊用水を制御・変化した物を結界のように展開させながら、楯無は下の激闘に潜り込もうとする敵を迎撃し続けていた。

 そこへ一遍に複数の空戦型が霧の結界を突破しようとするが、飛来した銃撃がその空戦型を正確に貫いた。

 

「邪魔はさせません!」

 

 教師用IS、ラファール・リヴァイヴを展開させていた真耶が、狙い澄ました狙撃で霧の結界を突破しようとする敵を迎撃していた。

 

『大変な事になっております! 学園各所に激戦が発生! 闘技場に出現した大型に、パンツァー、IS両タッグ、更には何か小さな増援が参加している模様ですが、こちらも苦戦中です!』

 

 どこから持ってきたのか、安全第一とプリントされた工事用と思われるヘルメットを被ったつばさが、その状況でも実況を続けていた。

 

「さっき逃げなさいって…」

『それが、実況室の通路は敵の攻撃で破壊されており、逃げられません! よって、このまま実況を続けます!』

 

 避難したはずのつばさが戻ってきた事に真耶が驚くが、彼女の実況に慌てて通路のあった辺りを見ると、確かにそこは戦闘の余波で通路のある場所が崩壊していた。

 

(ここまで影響が出るなんて………もしここで一夏君達が負けたら、戦況は一気に悪化する………)

 

 表情こそ余裕を見せていた楯無だったが、かなりまずい状況になってきているのは理解していた。

 すぐにでも下に増援に行きたいが、今自分がここを離れれば、敵の増援が一気に押し寄せる事も理解していた。

 

「任せるしか無いわね………下の四人、+小さな二人に」

 

 呟きながら、次々現れる敵を撃破していく楯無だったが、下の方を見てある確信を得る。

 

「やっぱり、あれは………」

 

 

 

 戦況にまた変化が生じた。

 押し寄せてきた敵が、ある箇所へと集中し始めたためだった。

 苦戦していたパンツァー、IS双方の生徒達は、その中心部を呆然と見つめていた。

 

「ふっ…」

 

 小さな呼気と共に、陸戦型の間を漆黒の影が旋風となって通り過ぎる。

 それに僅かに遅れ、陸戦型の脚部、しかも関節部分近くが正確に切断され、バランスを崩した所に投じられたハイパーグレネードが、相手をまとめて吹き飛ばす。

 その向こう、校舎の屋上からは漆黒の帯のような物が押し寄せてきた空戦型をまとめて絡めとり、引き寄せる。

 塔がごとく連なった空戦型を真下から団子の串でも通すように、漆黒の帯が長大なドリルとなって一気に貫き、破砕した。

 

「思っていた通り、なかなかやるな」

『あら、そちらこそ』

 

 ブレードを手に陸戦型を次々と破壊していく千冬と、流体金属アームで空戦型を次々破壊していくどりあが、顔は見えずとも互いに笑みを浮かべつつ、次の目標へと襲いかかる。

 

「つ、強い………」

「強過ぎよ………」

 

 先程まで自分達が苦戦していた相手を苦も無く倒していく二人に、双方の生徒は思わず手を止め、その圧倒的な実力に見入ってしまう。

 片やブリュンヒルデ、片やスーパーパンツァー、どちらもトップクラスの実力者だという事は知っていたが、実際その戦いを生で見るまで、その肩書の意味を理解していなかったのだと誰もが悟っていた。

 何よりも、千冬は生身、どりあはアームのみ、どちらも全力で戦っていない事が、その桁外れの実力差を生徒達に否が応でも突き付けていた。

 

「案の定、実力者が出張ってくれば、そちらに戦力を集中させてきた」

『欲張りさんですね。まあその分生徒達に回せなくなるでしょうけど』

「ならいいのだが………」

 

 自分達の参戦で、明らかに敵の戦力は減っていたが、千冬はまだ安心出来ない予感がしていた。

 

『織斑先生』

「更識か、そちらはどうだ?」

『一夏君達は一進一退、攻めあぐねています。それと、あの大型、見覚えが有ります』

「何?」

『ロシアにいた頃見たのですが、向こうで計画されていた拠点防衛もしくは制圧用の移動トーチカ、それに極めて似てます』

「ではあれはロシア製か?」

『それが、技術面、資金面など複数の理由で計画段階で中止になったはずです。正式な図面すら完成しなかったと聞いてます』

「つまりは、存在するはずの無い兵器、か」

『ええ………』

『あらあら、気になる話ね』

 

 2人の通信に、なぜかどりあが意見を述べる。

 

「………プライベート回線が聞こえたのか?」

『いいえ、でも内緒話には注意しないといけない身分でして』

 

 千冬の位置から見えなかったが、そういうどりあのメガネには、望遠表示と読唇解析表示が浮かんでいた。

 

「突然融合した二つの学園、双方にいる特殊戦闘能力者、そして存在しないはずの兵器の襲撃………」

『分からない事が増えましたわね。それと、もう一つ』

 

 どりあが上空を見上げ、小さくため息をもらす。

 

『少しばかり厄介になりそうですわね』

 

 そこには、今だ存在し続ける霧の竜巻から、今までとは比べ物にならない数の敵の増援が出現する所だった。

 

 

 

「JAM増援、更に増大」

「転移施設迎撃戦力、許容量超過の可能性あり」

「本部からの作戦内容、変更無し」

「………状況を自己判断、作戦内容を最上位目標準拠に変更」

「最上位目標、JAM殲滅。作戦を襲撃JAM撃破に変更、FRX―00、交戦開始(エンゲージ)」

 

 

 

「な、これは………!」

 

 今までとは比べ物にならない敵の増援に、楯無は愕然とする。

 しかも明らかに、その内の一部はこちらへと集団で向かってきていた。

 

(狙いは恐らく、いえ間違いなく最新型の紅椿と白式! それとドリルプリンセスもかしらね。あの数、私だけでは抑えきれない!)

「楯無さん!」

 

 増援が危険と判断した真耶も上昇してきて楯無に並ぶが、IS学園内の実力者の二人を持ってしても、向かってくる数は圧倒的だった。

 

「私が出来るだけ数を減らします! 楯無さんはここから動かないで!」

「けど山田先生!」

「やるしかありませ…」

 

 叫びながらライフルを構えた真耶だったが、そこで何かがハイパーセンサーに引っかかる。

 

「高速で接近する物体あり!? そんな、こんなそばまで気付かなかった!?」

「うそ!?」

 

 楯無も気付かなかった謎の存在に思わずそちらを振り向く。

 それは、音速超過の雲を引きながら、一気にこちらへと向かってくる。

 

「戦闘機、いえIS?」

「違います! そのどちらでもありません!」

 

 ハイパーセンサーの感度を最大にした二人が、それが人間サイズだという事、そしてISでも無いのにそのサイズではあり得ない速度を出している事に愕然とする。

 

「攻撃を開始」

 

 その謎の存在、小柄な体に褐色の肌、長い黒髪とそして獣のような耳を持ち、戦闘用と思われるスーツの各所に戦闘機を思わせるパーツが付随した少女は、小さく呟くと体の各所から一斉にミサイルを発射する。

 

「攻撃した!」

「しかも狙いは…」

 

 少女が放ったミサイルは、向かってきた敵群へと飛び込み、盛大な爆発を起こす。

 

「………味方?」

「のようですが………」

「今のミサイル、一発も外さず命中してました」

「私にもそう見えました。敵のジャミングを突破している、と見ていいんでしょうか」

「ISでも簡単に突破できない物を?」

 

 楯無と真耶が謎の少女がどうやら敵ではない事と判断するが、少女は速度を全く落とさず、そのまま敵群へと向かっていく。

 

「ちょっと!?」

 

 超高速のまま向かっていく、自殺行為としか言いようのない行動に楯無が慌てるが、少女の両手にはいつの間にか大型のナイフが握られており、ためらいなく敵群へと飛び込み、先程のミサイル攻撃で出来た穴を正確に縫ってそのまま突き抜ける。

 直後、突き抜けるついでにナイフで両断された敵が、次々と爆発を起こした。

 

「す、すごい………」

 

 圧倒的な少女の戦闘力に、真耶は唖然とするしかなかった。

 

 

 

「今度はなんや!?」

「誰かが上空ですごい速度のまま戦ってます! ISじゃありません!」

「パンツァーでもあり得ませんね、あれは………」

 

 上空に飛行機雲を描きながら、その軌道上にある敵を次々と撃破していく謎の存在に、誰もが唖然としていた。

 

「すごい運動性だね。システムはISより若干古い所もあるけど、その代わり蓄積データが半端じゃないみたい」

「データって………」

「あの子、アンドロイドだよ」

 

 素早く謎の少女を解析した束は、ある結論へと辿り着いていた。

 

「あ、アンドロイド!?」

「た、確かにそうみたいです………けど、あんな人間そっくりなアンドロイドなんて、まだどこも作ってません!」

「こちらでもです。一体どこの誰が………」

「さあ?」

 

 簪とサイコも同じ結論に達するが、根幹的な疑問には束も首を傾げるだけだった。

 

「取り敢えずそれは後だ! あれが敵の包囲に穴を開けている! その隙に敵の増援を端から潰すぞ!」

『はい隊長!』

 

 謎の少女を友軍と判断したラウラが、反撃に出るべく、黒ウサギ隊と共に一斉に弾幕を展開していく。

 

「こっちも来よったで!」

 

 更にそこへ、陸戦型の敵も押し寄せてくる。

 

「こちらは私達で!」

 

 応戦しようとしたのぞみとサイコだったが、反転してきた少女から何かが落下する。

 

「何か落としよったで?」

「まさか、爆撃!?」

「何だと!?」

 

 予想外の事態に皆が慌てるが、落下してきた爆弾のような物は突然空中で分解、中から無数の何かを落下させる。

 

「クラスター爆弾!?」

 

 簪が落下してきた物の正体に気付く中、降り注いだ物、子爆弾は陸戦型に触れると同時に次々と爆発していき、相手に甚大なダメージを与えていく。

 

「待て! 国際条約違反だぞ!」

「まあ、一応助けてくれたちゅう事で………」

「武装もかなりあるね。ISみたいな量子変換型かな?」

 

 明らかに条約違反な武装にラウラが声を上げるが、のぞみはダメージを負った相手に追い打ちをかけていく。

 そんな中、束はさも面白そうな表情のまま、少女を見つめていた。

 

 

 

「転移施設内戦力、一部利用可能。アクセス開始」

 

 高速戦闘を繰り広げながら、少女は下の状況を確認すると、小さく呟く。

 そして少女の目が明滅、正確にはその目の中に無数のプログラムが一斉に走り始めた。

 

 

 

「なにこれ! 何かが甲龍にハッキングしてる!」

「何ですって!?」

 

 鈴音の絶叫に近い声に、はさみも思わず絶叫を上げる。

 

「この状況で暴走なんてしたら、おしまいよ!」

「分かってるわよ! けど今セキュリティに回す余裕が…」

 

 そこで、鈴音は甲龍のプロテクトがあっさりと突破されていくが、挙動その物に何も問題が起きてない事に気付く。

 

「これって………」

 

 

「どうなってますの!?」

 

 ブルー・ティアーズのシステムの一部が、セシリアの操作も無しに何かを設定していく。

 

「電子攻撃!?」

「そ、それが違いますの! 何がどうなって………」

 

 

「保有火器全確認!? FCSが勝手に動いてる!」

「壊れたんじゃないんですの!?」

 

 勝手に目標を設定しいてくラファール・リヴァイヴカスタムⅡにシャルロットが顔色を変えるが、シャルロットが勝手に展開していく火器が全て上空を狙っている事に気付く。

 

「これ………攻撃支援要請!?」

「し、支援って、まさかこれあの子が!?」

 

 

 

「ISの過半数が同時にハッキングを受けているだと!?」

『それも、攻撃ではありません! 上空への攻撃支援要請です!』

『つまり、あの子ね』

 

 簪から届いた報告に、限界が来たブレードを新しい物に変えながら千冬が驚き、どりあが上を見て微笑む。

 

「馬鹿な! これだけの数のISに同時にハッキングなぞ、半端な電子戦能力ではない!」

『しかも闘いながら。どうやら、あの子も相当出来るようですわね』

「………IS各機、上空からの支援要請を受け入れろ!」

 

 千冬が攻撃支援要請受け入れを指示し、皆がそれを認証。

 直後、ISのありとあらゆる火器が一斉に上空へと放たれ、その全てが正確に敵へと命中していく。

 

「………これだけ多種の火器、それらを正確に誘導し、敵の回避行動まで予測して当てた、だと?」

『すごいわね~』

 

 どれだけの演算能力が必要なのか分からない状況に、千冬は思わず生唾を飲み込み、どりあは微笑のまま、だが視線は鋭く謎の少女を見据える。

 

「あれは、本当に味方なのか?」

『さあ? でも、今の所はこちらを助けてくれてますし』

「敵には回したくないな」

『だったら、そうしましょう』

 

 どこか恐怖すら覚える少女に、二人は注意をしつつ、目の前の敵へと攻撃を続けていた。

 

 

 

「JAM掃討率、12%。戦闘を継続。迎撃戦力評価を若干上昇」

 

 両手に持ったナイフを敵とすれ違いざまに振るいながら、少女は淡々と現状を確認する。

 学園上空を覆っていた空戦型は、その半数近くが少女に狙いを定めそれを追うが、少女の高速機動と戦闘力の前に、次々とその数を減らしていく。

 

「す、すごい………」

 

 一騎で戦場を撹乱しまくる少女に、構えたままのスターライトMkⅢを撃つ事すら忘れ、セシリアはその圧倒的な戦い方を見とれていた。

 

「あ………!」

 

 下で同じようにその光景を見ていたのずるだったが、そこに空戦型から一斉に何かが放たれるのを見た。

 

「ミサイル!? しかもあれ程大量に!」

「まずい!」

 

 少女に向けて、一斉に大量のミサイルが放たれ、無数の噴煙がかなりの広範囲から少女を狙う。

 

「ミサイル確認、フレア、チャフ同時発射」

 

 少女の足元辺りから、欺瞞用熱源の光球と無数のアルミ蒸着のフィルムがばら撒かれる。

 ミサイルの何割かは狙いを外れるが、それでも残ったミサイルが少女へと迫っていく。

 

「援護しますわよ!」

「分かった!」

 

 セシリアとのずるがどうにかしようと得物を向けた時、少女がこちらへと向かってくるのに気付いた。

 

「え、まさか………」

「ちょ、ちょっと!?」

 

 どんどん迫ってくる少女とミサイルに、セシリアは狙えるミサイルに向かってトリガーを引いて撃破するが、どう見ても全てを撃破するよりも少女との接触の方が早い。

 

「また!?」

 

 更にそこに、ブルー・ティアーズのFCSがハッキングされ、勝手にビットを含めた火器の狙いが定められていく。

 

「き、きゃああぁぁ!」

「危な…」

 

 接触の直前、セシリアは思わず声を上げるが、次の瞬間起きた事に真下で見ていたのずるは絶句した。

 接触の直前、少女は減速しつつ飛びながら、進行方向を一切変えずにトンボを切るように一回転、更に回転の最中にどこかから取り出した機銃とハッキングしていたブルー・ティアーズの全火器を一斉発射し、残ったミサイルを全て撃墜してしまった。

 

「クルビット!? しかも戦闘機動中に!?」

 

 ログを確認して何が起きたかを知ったセシリアも絶句する。

 クルビット、ハイアルファループとも呼ばれるエアショーに用いられる機動を持って、しかもその最中にハッキングと正確な機銃斉射を行いミサイルを撃破する、とても信じられない少女の能力に、セシリアは通り過ぎていった少女の方を見つめる。

 

「………桁違いですわ、あの方の強さ」

「………確かに」

 

 セシリアとのずるは呆然と遠ざかっていく少女を見送るが、そこで少女の腰のプロテクターのような部品にある文字が白く描かれていた。

 

「《雪風》?」

「名前? それとも………」

 

 

 

「はああぁ!」

 

 裂帛の気合と共に、箒は全力で空割を大型へと斬りつける。

 

「最大、出力!」

 

 そのまま、紅椿の出力の許す限り強引に刃を押し付け、相手の装甲を押し斬ろうとするが、切っ先が表面をえぐるだけで精一杯だった。

 

「行っけぇ!」

 

 そのえぐった箇所に向かって、ねじるがドリルを突き刺し、派手な火花と共に装甲を貫こうとするが、ドリルが潜り込みかけた所で上から振り下ろされた節足にその場を離れざるを得なくなる。

 

「くっそ、なんて硬さだ!」

「ハッチの類がどこにも見当たらん。無人機なのは確かなようだが………」

「まだ行くのだ! どかどか。どっか~ん!」

「いっくよー、ホーリィナイト・ミサ!!」

 

 ダメ押しでマオチャオが猫の顔が付いた小型ビット五機からの一斉攻撃と、ツガルがホーンスナイパーライフルの速射で、ドリル痕を更に深くする。

 

「これでやっと傷一つかよ」

「この子ら、このサイズでなんて破壊力だ」

 

 武装神姫の追加攻撃でようやく傷らしい傷を付けられたが、それでも相手の巨体と比較すれば微々たる物だった。

 

「知ってるのだ! お城だってアリの巣から壊れるらしいのだ!」

「マスター達の攻撃を届かせるためにも、どんな小さくたって続ければ!」

「確かに、な」

「だが………!」

 

 そこで大型の各所が光ったかと思うと、多数のビームが周辺に一斉発射される。

 

「くそっ!」

「回避だ!」

「まるでハリネズミなのだ!」

「全然可愛くないけど!」

 

 狙いを定めない数で押すビーム攻撃を、皆が回避するが、わずかにかすめたねじると箒の残り少ないエネルギーが更に減っていく。

 

「ちっ!」「しまった……」

「ねじる!」「箒!」

『来るなっ!』

 

 思わず背後にいたどりすと一夏が飛び出そうとするが、ねじると箒が同時に同じ言葉を叫んで止める。

 

「心底分かった! こいつの装甲を壊せるのは、お前のドリルだけだ!」

「そしてどんな高出力でも、白式の零落白夜なら行動不能に出来る!」

「なんとかしてそのチャンスを作ってみるのだ!」

「だから、その時までエネルギーを温存しといて!」

 

 ねじると箒のみならず、マオチャオとツガルにまで言われ、どりすと一夏は同じように歯を噛みしめる。

 

「でもやっぱり…」

「ダメだ!」

 

 それでも戦闘に参加しようとするどりすを、一夏は肩を掴んで止める。

 

「白式の零落白夜も使えてあと一度切り、君の変身もそう何度も使えないんじゃないか?」

「けど!」

「信じるんだ! きっとチャンスは来る!」

 

 叫びながらも、一夏の手が震えている事にどりすは気付く。

 彼もまた、今にも飛び出したいのを必死になって抑えているのが嫌でも感じ取れた。

 

『一夏君!』

「盾無さん! 他はどうなってます!?」

『さっき、見たことも無いタイプだけど増援が来たわ! こっちは何とかするから!』

「見た事も無い?」

「多分、他の世界から転移してきた誰かだよ」

「他の世界?」

 

 盾無からの通信にツガルが助言を入れるが、状況を理解出来ない一夏は逆に困惑する。

 

『……えますか。誰か聞こえますか!』

 

 更にそこでいきなり全帯域でのオープン通信に声が飛び込んでくる。

 

「一夏!」

「聞こえてる! こちらIS学園! 今聞こえた! そっちは!?」

『こちらTH60 EXELICA! 他二名と共にそちらの増援に向かっています! 後五分だけ持たせてください!』

「ようやく来たのだ!」

 

 突然聞こえてきた外部かららしい通信に、マオチャオが歓喜の声を上げる。

 

「何が何だか分からないけど、どうやら他にも増援が来るらしい」

「その前に、倒してやる!」

 

 何者かは分からないが、自分達を助けようとしているらしい者達の存在に、一夏とどりすは闘志を高めていく。

 

「オレ達の学園を何としても守るんだ!」

「もちろん!」

 

 決意を秘め、一夏とどりすは己の得物を強く握りしめた………

 

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