第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP27

 

「たあぁ!」

「はあぁ!」

 

 零神のMVソードと、紅椿の空割が怪物のような外見の小型機をそれぞれ両断する。

 

「手応えあり!」

「次!」

 

 即座に他の小型機も攻撃する二人だったが、すぐ後に妙な事に気付く。

 

「後ろ!」

「何!?」

 

 双方のセンサーに、最初に斬ったはずの小型機が後ろから銃撃してきた事を感知、二人は驚きながらも銃撃を回避する。

 

「さっき確かに真っ二つにしたのに!」

「オーニャー、あれ!」

 

 手応えがあったはずなのに、小型機が再度襲ってきた事に音羽が混乱する中、ヴァローナが落下していく小型機を指差す。

 両断されたはずの小型機が、まるで逆再生でもするように切断面から繋がっていき、そして完全に元に戻ったかと思うと、上昇してきて再度こちらに攻撃を仕掛けてくる様に、音羽も箒も仰天する。

 

「再生する!?」

「じゃあ攻撃法を変える!」

「援護します!」

 

 箒が思わず手が止まるが、音羽は即座に近接戦からビーム攻撃に変更、アーンヴァルもLC5レーザーライフルを構え、小型機を攻撃する。

 二種の光学兵器が小型機を撃ち抜くが、落下していくと思われた小型機の傷口が再度ふさがり、そして再び襲い掛かってくる。

 

「これでもダメ!?」

「これなら、どうだっ!」

 

 箒は空割を大きく横薙ぎに振るい、そこから発生した巨大なエネルギー刃が小型機をまとめて斬り裂くが、それすらも程なく再生してしまう。

 

「なんて再生力!? こちらの攻撃が…」

「なら、大本を狙う!」

 

 最新の第四世代ISであるはずの紅椿の攻撃が全く効かない状況に、箒は混乱し始めるが、音羽は今度は小型機を放ってきた相手、空母ヲ級へと向かっていく。

 

「たああぁ!」

「ヲ…!」

 

 上段から零神の斬撃を、ヲ級は手にした杖で受け止める。

 刃と杖がきしみ合い、火花を散らす中、音羽が僅かに微笑む。

 

「こいつで、永遠に眠りやがれ!」

 

 零神の影から飛び出したヴァローナが、ダブルブレード、WA666アマラジェーニを投じる。

 投じられたダブルブレードは旋回しながら、容赦なくヲ級の首筋を斬り裂き、そこから黒ずんだ血が吹き出すが、それも数秒で即座に傷口が塞がっていく。

 

「こっちも!?」

「危ない!」

 

 必殺を狙った一撃が通じなかった事にヴァローナが驚くが、そこで箒が零神を取り囲もうとしていた他の深海棲艦にエネルギー刃を次々と投じて動きを封じる。

 

「ヴァローナ! データを送って! 何か弱点があるかも!」

「送ってるよオーニャー!」

「弾幕を途切れないようにしてください! 再生している間は、動きが鈍ります!」

「わ、分かった!」

 

 深海棲艦にこちらの攻撃がほとんど効かない中、音羽はためらわず敵に向かっていき、ヴァローナもそれに続く中、アーンヴァルと箒がそれを援護する。

 

「ここがこれでは、恐らく………」

 

 紅椿の攻撃が効かないという事は、他のISも同様ではないのか、という不安と恐怖が、箒の心を徐々に覆い始めていた。

 

 

 

「なぜここまで気付かなかった!」

『本当に突然現れたんです! 今も、センサー系が不調で…』

「401に戻ります! タカオ、全センサーを最大出力で稼働させろ!」

『やってるわよ!』

「生徒達は避難、専用機持ちは迎撃を…」

『坂本少佐が今指揮しています!………いいんでしょうか?』

 

 突然の深海棲艦の急襲に、会議室も蜂の巣を突いたかのような混乱に陥っていた。

 

「坂本少佐の指揮なら、むしろ安心出来る。場数が違うからな」

「そうみたいね。そちらは彼女に任せましょう」

 

 嶋の太鼓判に、どりあも頷く。

 

『嶋少将! 転移装置護衛の人員を回すように言ってもらえませんか!? これが破壊さらたら、次がいつ用意出来るか分かりません!』

「ボーデヴィッヒ! 部下達をそのまま転移装置の護衛に着かせろ!」

「防御系のパンツァーの子達も回しておきましょう」

「オレも行きます。一応それなりに場数は踏んでますんで」

 

 エミリーからの通信に千冬とどりあは即座に指示を出し、加山もそちらへと向かう。

 

「戦況をこちらに写せるか」

『今送ります!』

 

 会議室のディスプレイに、試合用に設置されていた空中カメラからの映像が各所から同時に映し出される。

 

『接近中の深海棲艦は隊列を分散しています! 三、いえ四隊! 数は10前後! まだ増える可能性も有ります!』

「これは、包囲戦か!」

「迎撃体勢はどうなっている!」

『今坂本少佐と繋ぎます!』

『嶋少将! 非常時故にこちらで指揮を取ってます! IS隊は基本三機で隊を組め! 桜野と篠ノ之の相対しているのを第一隊とし、時計回りで分散した第二、第三隊にあたれ! 空羽、トロン、エグゼリカは第四隊! 織斑は桜野と篠ノ之の増援! 一撃離脱を必須とし、動きを止める事のみに憂慮しろ! パンツァー隊、外縁部に防衛線を構築、砲撃の着弾を防げ! 施設への損害を極力抑えろ!』

 

 通信が繋がった事に気付いた美緒だったが、事後報告もそこそこに矢継ぎ早に指示を出す。

 

「現場指揮はそのまま坂本少佐に任せる。我々は敵の対処に…」

『緊急通信! コンゴウからです!』

 

 嶋の言葉を遮り、静の声と共に別の通信枠が開く。

 

『これ繋がってるんですか!? こちら吹雪! 深海棲艦には通常兵器の攻撃は効きません! それに対処するため、私達艦娘がいるんです!』

『この間の戦闘だと、ウィッチの攻撃も効いてたゾ! コンゴウ! 最大速度で学園とヤラに迎エ!』

『いいだろう、フルバーストモードをチャージ開始。使うのは初めてだ』

 

 通信枠の向こうで吹雪やエイラが騒ぐ中、コンゴウがグラフサークルを展開させて何かを準備。

 

『また緊急通信、こんどはパリからです!』

『あ、繋がったネ!』

『敵の編成がまずいわ! 重巡や戦艦クラスまでいる! どうにか私達もそちらに…』

 

 通信枠の向こうで金剛や加賀が騒ぐが、こちらから送られている画像を見ていた加賀の顔色が変わる。

 

『あれは、まさか!?』

『ノー! 戦艦棲姫!? 姫クラスまでいるなんて!』

「姫クラス?」

『深海棲艦でも、トップクラスの力を持つ存在です! なんでこんな所に!』

「………対処は可能かね?」

『………場合によっては、艦娘でも数艦隊で相手しなければならない敵です。専用兵装が無ければ………』

 

 加賀の説明に、それを聞いていた者達の表情が険しくなる。

 

『何でもいいネ! 私達をあそこに送るメソッドは!?』

『今検索中です! しかし、リボルバーカノンの最大射程でも…』

『他に送れそうな増援は!?』

『東京からカルナダインが発進準備中だそうですが、それでもすぐには…』

「………」

 

 通信の向こうで艦娘や巴里華撃団が騒ぐのを、嶋は無言で聞いていた。

 

「現状分かっている事は二つ。深海棲艦にはソニックダイバーの攻撃もISの攻撃も通じない。そして、対処可能な者達はすぐには来れない」

「それは…」

 

 静かに告げる嶋に、千冬が何かを言おうとするが、そこで複数の通信が飛び込んでくる。

 

『織斑先生! こちらオルコット! 何なんですのアレ!? どんなに撃っても、こちらに向かってきてます!』

『こちら鳳! こいつらゾンビ!? キョンシー!? 頭を撃っても、胴を撃っても再生してくる!』

『こちらデュノア! ダメ! 撃っても撃っても効かない! 増援を!』

 

 続々と飛び込んでくる専用機持ち達からの報告に、千冬の顔も一気に険しくなってくる。

 

「第三世代のISの攻撃が、全く通じない………いや、第四世代の紅椿の攻撃が通じないなら、当然か………」

「こちらの状況、は聞くまでもないわね」

『どりあ様! 妙な玉みたいな怪物がこっちにも!』

『防衛線はなんとか敷いてますけど、相手が海の上じゃ手が出せません!』

『こちらの攻撃だと一応倒せるみたいです! 届けば………』

 

 パンツァー達からの通信に、どりあの顔も曇る。

 

「原因は不明だが、ISの攻撃はすぐに再生され、パンツァーの攻撃は届かない」

「元々パンツァーは陸戦メインですし………」

「ISも海戦の訓練はしていない。本来ならISの機動力でオールラウンドカバー出来るはずだったんだが………」

「その前提は、捨てた方がいいでしょうな。今の、そしてこれからの戦いで一番邪魔になるのは常識なのだから………」

 

 嶋の言葉が、どりあと千冬に重くのしかかった。

 

 

 

「大変な事になっております! 迎撃に出たISチームですが、深海棲艦と呼ばれる敵には攻撃が通じない模様! 果たしてここから打開策は有るのでしょうか!?」

「非戦闘員は避難と言ったはずだが」

 

 実況席で実況を続けるつばさに、美緒は鋭い視線を投げかける。

 

「ご安心ください! こんな事もあろうかと!」

 

 そう言うと、つばさは実況用コンソールにこれ見よがしに設置された《非常用・みだりに押さないでね♪》と書かれたスイッチを叩き押す。

 すると、実況席に次々と分厚い防護シャッターが降り、更にはシールドまで発生する。

 

「前回を踏まえ、この実況席は小型シェルターになるように制作されております! よって、このまま実況を続けます!」

「誰だ、こんな物を作ったのは………」

「篠ノ之博士が一晩で設計してくれました!」

 

 備え付けのヘルメットを被りながら説明するつばさに、美緒は完全に呆れ果てる。

 分厚い防護シャッターの裏には複数のディスプレイが設置され、試合用のみならず学園各所の警備カメラからの映像も映し出されて簡易司令室としても十分機能する物だった。

 

「深海棲艦は4チームに別れておりますが、どこも苦戦している模様! あ、今RVチーームとエグゼリカさんも出撃しました!」

「空羽、トロン、エグゼリカ! 十時方向から旋回してきている敵群を狙え! 敵の主力と思われる! 十分に注意しろ!」

『了解!』

「パンツァーの攻撃が効くのは間違いないな!?」

『さっき見たのだ! パンツァーの攻撃で丸いのが確かに倒せたのだ!』

 

 マオチャオからの報告に、美緒は必死になって考える。

 

(陸戦、しかも近接戦主体のパンツァーを海上で戦わせる術はあるか? 前回は陸戦用ウィッチを空母で運用したが、今ここにはそんな物は無い。出来るとしたら………)

「あっと、これは前回と同じデサント戦法でしょうか!?」

 

 考える美緒の隣で、つばさの実況にそちらを見た美緒は画面の一つに、打鉄弐式のバックパックに乗るサイコが映し出されているのに気付く。

 

「それしかないか、だが………」

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

「何とか………」

 

 打鉄弐式のバックパックに、緊急で付けたマウントに足を固定しながら、サイコがツールを構える。

 

「そちらも残弾の装填は?」

「終わってます! とにかく、私が足止めしている間に、天野さんが攻撃を!」

「上手く行けばそれで…」

 

 臨時の戦術を確認すると、簪が打鉄弐式を加速させる。

 

「っ………!」

 

 襲ってくるGに、サイコは思わず体を固くする。

 

(なんて加速………セットフォームしてても耐えるのがやっと………我王さんはこんなのにしがみついて戦ったというの!?)

 

 前回の試合を思い出しつつ、サイコは身を低くして何とか堪える。

 

「! 撃ってきました!」

 

 そこに深海棲艦からの砲撃が飛来し、簪は機体をロールさせてそれをかわすが、サイコは思わずマウントにしがみつく。

 

「す、すいません!」

「いえ、いい判断でした」

 

 急な機動に思わず簪が後ろを振り向くが、サイコは何とか体勢を立て直す。

 

「次弾を放たれる前に!」

「行け、山嵐!」

 

 打鉄弐式から多数のミサイルが放たれ、それらが精密な操作で深海棲艦に直撃していく。

 

「こちらの有効距離に!」

「はい!」

 

 ミサイルの直撃で体の一部が吹き飛び、再生途中の深海棲艦へとサイコが音波攻撃を叩き込む。

 再生半ばで、その攻撃を食らった駆逐イ級が全身から血液のような液体を撒き散らし、沈んでいく。

 

「効いてる!」

「そちらの攻撃が回復する前に、こちらでトドメを刺す、この戦法で行きましょ…」

 

 有効な戦術を見つけたと思った簪とサイコだったが、横合いからビキニを着た女性のような姿に、両腕に砲塔を持つ重巡リ級がダメージから立ち上がり、砲撃をしてくる。

 

「あっ…」「しまっ…」

 

 倒しきれない相手がいた事に二人が失策を悟り、防御体勢を取るが放たれた砲弾は二人に直撃する前に、出現した水の壁によって阻まれる。

 

「これは…」

「姉さん!」

「簪ちゃん大丈夫!?」

 

 間一髪でミステリアス・レイディの水の障壁を張り巡らせた楯無が、重巡リ級に蒼流旋の銃撃を加えて牽制する。

 

「姉さん! ISの攻撃は効きません!」

「聞いてるわ! 紅椿でダメなら、他のもダメでしょうしね!」

「そこをどいて! コレでも喰らえぇ!」

 

 幾ら銃撃を加えても平然としている重巡リ級に、光の戦士用ホバーユニット・ライトニングユニットに乗ったミサキがフルチャージしたリニアレールガンの一撃を叩き込む。

 その一撃に重巡リ級は初めて咆哮を上げ、皆がダメージを与えた事を認識する。

 

「効いてる!」

「もう一発!」

 

 楯無が歓声を上げる中、ミサキは再度チャージした一撃を叩き込み、ようやく重巡リ級は大破、沈没していく。

 

「注意して! かなり耐久力の高い個体も混じってる! それに恐らく生体エネルギーの攻撃しか効かないわ!」

「せ、生体エネルギー、ですか?」

 

 ミサキの警告に、簪は頬を引きつらせる。

 

「パンツァーのツールは能力の具現化、つまり生体エネルギーの固着化だから有効だけど、破壊力が足りないわ!」

「………ブリッドがあれば何とかなったのですが」

 

 ミサキの更なる説明に、サイコが最後の一発のブリッドを懐で握り締めながら、呟く。

 

「しかも陸戦型中心だから、パンツァーの攻撃は届かない。現状で有効な攻撃手段を持っているのは、亜乃亜とエリューの持つ天使のプラトニックエナジーと私のサイキックエナジーだけね」

 

 そう言いながら、ミサキは腰のポーチから回復ドリンクを取り出し、封を切って一息に嚥下する。

 

「問題は、敵の壊滅と私のエナジー切れ、どっちが早いかよ………」

「………簪ちゃん、フォーメーションを組み直すわ! 私が前衛、簪ちゃんとサイコさんが中央、ミサキさんが後衛! 私と簪ちゃんでなるべく相手を削って、トドメはサイコさんとミサキさんで!」

「分かった!」

「私がなるべく倒します! ミサキさんはあくまで最後の手で!」

「それしかないわね………」

 

 戦った者同士で臨時チームを組んだ四人は、迫ってくる深海棲艦へと向かっていった。

 

 

 

「行って、ディアフェンド!」

 

 エグゼリカの放ったアンカーが、口腔内に女性の体が埋め込まれたような異形の軽巡ホ級に突き刺さり、そのまま海上をスイング。

 

「そこです!」

 

 周辺の深海棲艦をまとめて吹き飛ばしつつ、エグゼリカは軽巡ホ級をリリース。

 吹き飛ばされた深海棲艦達もまとめて爆発を起こすが、その爆風の中に蠢く反応を感知し、エグゼリカはダメ押しのつもりでアールスティアのビーム砲撃を叩き込む。

 だが、アンカーと砲撃、両方を食らったはずの軽巡ホ級が傷口を再生させつつ、海上に立つのを確認したエグゼリカの表情が青ざめる。

 

「トリガーハートの攻撃が、効かない!?」

「どいて! LASERセット! ファイア!」

 

 そこにおっつけ駆けつけた亜乃亜が、ビックバイパーからのビームを叩き込むと、軽巡ホ級の口からようやく絶叫が漏れる。

 

「効いてる!」

「プラトニックエナジーの攻撃なら有効よ! PEリミッターを一部解除! 火力重視のセッティングに!」

 

 エリューが叫びながら、アンカーで薙ぎ払われたはずなのに復活してきた他の深海棲艦達に次々と対地ミサイルでトドメを刺していく。

 

「再生力が異常です! 詳細はサンプルを解析しないと不明ですけど………」

「アレをサンプル確保はやだな~………」

 

 状況を解析していくエグゼリカに、亜乃亜は更にこちらに迫ってくる異形の怪物としか言い様のない深海棲艦の姿に、若干ビビる。

 

「サンプルは後で回収ね。今はただ、こいつらを学園に近付けさせない事!」

「破壊できなくても、足止めは出来ます! 二人はトドメを!」

「OK!」

「そのフォーメーションで…亜乃亜!」

「まだ!? ドラマチック・バースト!」

 

 エグゼリカが先陣を切り、それに続こうとした亜乃亜とエリューが先程倒した思ったはずの軽巡ホ級の影から、損傷を追いつつも重巡リ級が迫ってきた事に気付き、切り札のDバーストのサーチレーザーでダメ押しする。

 

(再生力だけでなく、かなり耐久力が高い………リミッターを解除した状態で、私達のプラトニックエナジーが持つの?)

 

 迫りくる深海棲艦に、エリューは不安を抱きつつ、向かっていった。

 

 

 

「戦況は!」

「各所で押されてます!」

「タカオ! 援護攻撃を!」

『残弾少ないわよ!?』

「構わん!」

 

 401のブリッジに飛び込んできた群像は、戦況モニターを確認しつつ、艦長席に座って指示を出す。

 

「かなり特殊な個体のようです。攻撃してもすぐに再生してしまう時とそうでない時の二種類有るようで」

「現状で有効なのはパンツァーの方々と天使のRVによる攻撃、あと一乗院さんの攻撃ですね」

「RVはともかく、他は海上戦には向いてないだろう」

「実際押されてる。あ、落ちた」

 

 静の報告に群像が懸念するが、イオナはモニターの一つに映る、簪とサイコを真似て外縁部の防衛に当たっていたパンツァーの一部が増援に来たISに乗ってデサント戦法を行っていたが、ISの機動に対応しきれず振り落とされ、慌ててISが回収する光景を見ていた。

 

「皆さん、対処が分からずにかなり付け焼き刃な戦い方してますね」

「それはこちらもだ。こんなのとどう戦えば………」

「悪ぃ、遅れた!」

「どいてどいて!」

 

 僧が冷静に判断し、群像も対処に戸惑う中、杏平や蒔絵達もブリッジに飛び込んでくる。

 

「静、前線に出ている者達とホットラインを構築! 杏平は状況に応じて速援護出来るように準備! タカオはいおりと緊急出港体勢! 場合によってはこの船を盾にする! 蒔絵は相手の解析を…」

「まずそれだね~」

 

 矢継ぎ早に指示を出す群像だったが、そこで聞きなれない声に気付く。

 

『ちょっと! 部外者入ってるわよ!?』

「いやあ、なかなかの設備だね」

 

 タカオがなぜかブリッジにいる束の姿に、思わず怒鳴るが束は平然としていた。

 

「篠ノ之博士? ここは関係者以外は…」

「いや、ちょっとここの設備借りたくてね。アレの解析、しなきゃダメでしょ?」

 

 群像も顔をしかめる中、束の提案にしばし考える。

 

「………いいでしょう。蒔絵と一緒にお願いします。ハルナ、キリシマも手伝ってくれ」

 

 彼女の天才ぶりは聞いていた群像は、少し迷いながらも使用許可を出す。

 

「OK。ハルハル、パリでのデータ出して」

「分かった」

「う~ん、分かってるのはここまで?」

「パリでの設備じゃ、これが限界だったそうだ。一応サンプルが一部詳細分析に回されていたが………」

 

 四人がかりで深海棲艦の解析に取り掛かる中、群像は再度戦況モニターに目を移す。

 

「RVチームはなんとか押してます。一乗院さんの所は辛うじて拮抗、他は火力頼みで足止め出来るかどうかといった所でしょうか」

「ISチームに連絡、こちらからの援護攻撃のために遠距離攻撃中心を通達!」

「坂本少佐からも同じ通達が出てます!」

「さすがに慣れてるようですね」

「坂本少佐にもホットラインを! 対処法を!」

『千早艦長か、そちらの残弾でどこまで対処出来る?』

「前回大分消費したまま。しかもこれは………」

 

 戦況モニターの一つに、援護のために401から放たれたミサイルが深海棲艦の一群に炸裂するが、爆炎が晴れるとそこから吹き飛んだはずの一群が体を再生させながら出現するのを見た群像の顔が険しくなる。

 

「こちらの攻撃は有効とは言えない。侵食魚雷が残っていればあるいは対処可能だったかもしれないが………」

『構わん、各部隊と連携して支援攻撃で相手を牽制し続けてほしい。対処可能な者達が向かうまでの間だ。我々はネウロイとそうやって戦っている』

「体験済みって事ね」

「でも、まるでゾンビ映画みたいなんですけど………」

 

 美緒の経験に基づいた助言に、杏平と静はある意味納得するが、モニターに映し出される、一部を除いて、どんな攻撃を食らっても平然と迫ってくる深海棲艦に恐怖を覚えずにはいられなかった。

 

「もっと画像拡大出来ない?」

「う~ん………そうだ、借りてきた空中探査ポッド有ったはず!」

「タカオ、出せるか?」

『それならすぐ!』

「それにしても、非常識とはこういうのを言うのか?」

 

 四人がかりで深海棲艦の解析を進めていくのを群像は横目で見ながら、次の手を考える。

 

「イオナ、コンゴウは到着まであとどれくらい掛かる?」

「フルバーストモードのチャージに入っている。コンゴウも使った事がないから最高速度は分からないが、早くて30分」

『コンゴウの事だから、無茶してもっと早くなるかもね』

 

 イオナに続けてタカオが補足し、群像は少し考え込む。

 

「つまり最低でも30分、持たせなくてはならない」

「マジでゾンビ映画になってきたな………」

「待ってください、何か忘れてませんか?」

「あ!」

 

 杏平が思わず漏らす中、僧と静がそれよりももっと早いタイムリミットを思い出す。

 

「桜野さんの、ナノスキンの効果時間は?」

「もう三分の一以下です!」

「何だと!?」

 

 群像もその事を失念していた事を思い出し、零神と紅椿が映し出されているモニターを確認する。

 そこには、周囲を深海棲艦に囲まれつつも、奮戦している二人の姿が有った。

 

 

 

「はあっ、はあっ………」

 

 箒の口から、荒い呼吸音が漏れる。

 普段からの鍛錬で、本来ならばここまで息が乱れる事なぞ少ないはずが、呼吸を整える事すらままならない。

 

(効かない、紅椿の攻撃が………私の剣が………)

 

 幾度となく深海棲艦に攻撃を加えても、平然と再生し、襲ってくる光景に箒の戦意は消えかけていた。

 

「危ない!」

「えっ…」

 

 アーンヴァルの警告に、箒が我に返った時、巨大な顎を持つ駆逐ロ級が水中から飛び上がってその顎を持って紅椿に食いつこうとしていた。

 だが、その額に白刃が突き刺さり、体勢を崩した駆逐ロ級はそのまま海面へと戻っていく。

 

「大丈夫!?」

「た、助かりました!」

 

 とっさにMVソードを投げて箒を救った音羽が、即座に予備のMVソードを抜いて構える。

 

「こういうのと戦った事が?」

「ワームはここまでキモくなかったけどね………」

「こんなモロに生物じみたのは前回いなかったよ~」

 

 未だ戦意が衰えていない音羽に、思わず箒が聞いた所で音羽とヴァローナが答える。

 

「けど、どうすれば………」

「坂本さんは、亜乃亜ちゃん達が来るまで持たせろって。それに、ここで私達が頑張らないと、学校壊れちゃうよ?」

 

 音羽の一言に、箒は思わず学園の方を振り返る。

 

(そうだ、ここで私が戦わなければ!)

 

 戦意を辛うじて取り戻す箒だったが、横目で奮戦を続ける音羽を見てある結論に辿り着く。

 

(私に足りなかったのは技術や経験よりも、覚悟、か)

 

 性能で言えば明らかに紅椿よりも劣っている零神で、しかも幾ら攻撃しても効かない相手に恐れず戦い続ける音羽に、箒は絶対的な差を感じずにはいられなかった。

 

「オーニャー! もう七分切ってる!」

「分かってる!」

「何が?」

「ナノスキンの有効時間!」

 

 ヴァローナの忠告に音羽は頷き、箒は思わず聞き返すが、返ってきた答えに箒はソニックダイバーの活動限界の事を思い出す。

 

「それが、切れたらどうなるんです?」

「ナノスキンはソニックダイバーの機動に対応するためのバリアシステムなの。切れたら、私は零神の動きに耐えられなくなる」

「!!」

 

 文字通りの活動限界に、箒の顔色が変わる。

 

『音羽! 残り時間が五分切ったらなんとしても戻ってこい! 高速機動変形で、アクチュエーターに負荷が掛かり過ぎてる! そのままじゃ零神にも限界が来るかもしれねえ!』

「それも分かってる!」

 

 僚平からの通信に返信しながら、音羽はMVソードを振るい続ける。

 

「機体にも!?」

「そっちの程頑丈じゃなくってね」

 

 紅椿と互角の高機動戦闘を行うために、かなり無茶をしていた自覚は有った音羽は、思わず苦笑する。

 

「ここは私が抑えます! すぐに帰還を…」

「一人じゃ無理だよ!」

「私達もいますが、しかし………」

「手が足りないのは事実だね~」

 

 箒が帰還を促すが、音羽は拒否。

 アーンヴァルとヴァローナも、質の悪いもぐら叩き状態に完全に状況は膠着状態だった。

 

「誰か! 誰でもいい! 早く増援を…」

『もう少しだけ待ってくれ!』

『今向かってる! ジャマ~!』

 

 箒が通信で叫んだ時、それに答える声が有った。

 

「一夏! プリンセスも一緒か!」

『白式の攻撃も効かないけど、プリンセスのドリルなら効いてる!』

『もうちょっとだけ待ってて!』

 

 紅椿のセンサー範囲ギリギリの所で、別の深海棲艦の一群と戦っている白式とその背に乗っているドリルプリンセスの姿に、箒は僅かに希望を持つ。

 だが、ナノスキンの有効時間は刻一刻と減っていっていた………

 

 

 

「まだかコンゴウ!」

「限界まで急ぐのなら、こちらも最高速度まで出そう。あと180秒待て」

「それって、どれくらい速度出るの?」

「分からない。一度も使った事も無い兵装が我々霧には多い。だから実際使ってみるまでは断言出来ない」

 

 急かすエイラとサーニャに、コンゴウは平然としたままフルバーストモードの準備をしていた。

 

「皆、壁に背を向けて座って! 固定してない物の側には近寄らない!」

「何が始まるの?」

「コンゴウの最大加速らしい」

「そ、それで何でジェットコースターみたいな準備?」

「とんでもなく速いらしいのです!」

 

 周王の指示の元、第六駆逐隊が大慌てでショック体勢を取っていく。

 

「急がないとまずい! 恐らくもう時間がない!」

「な、何のですか?」

「桜野の、ソニックダイバー用ナノスキンの限界時間ダ!」

「多分、あと五分くらい………」

 

 ランサメントが慌てるのに吹雪が思わず聞き返すが、サーニャとエイラが説明してやる。

 

「ナノスキンが切れたら、音羽さんは無防備になるわ! けど、さすがに間に合わない………」

「長距離攻撃の準備もしておこう。あと30秒でフルバーストモードに入る」

「向こうにいる連中に期待するしかナイ! 空羽にトロンとエグゼリカもいるハズ!」

「かなり苦戦してるらしい。発動まで15秒」

「一刻も早く私達が行かないと!」

「5,4,3,2,1、フルバーストモード」

 

 皆が慌てる中、コンゴウの冷静なカウントダウンと同時に、船体が凄まじい速度で急加速する。

 

「なな、何だコレ!?」

「ジェットコースターどころじゃない!?」

「つ、潰れそう………」

 

 体がGで壁に押し付けられる、凄まじい急加速に誰もが仰天する。

 

「最短時間での到着を優先させるのならば、到着してもフルバーストモードの負荷でしばらく船体を動かせなくなる」

「お前ハリネズミの大親玉みたいナ重兵装だから問題無いダロ!」

 

 片付けられなかった昼食の皿がGで飛んでくる中、コンゴウだけは立ったまま平然としながら説明し、頭から冷めたスープの直撃を食らいながらエイラが怒鳴る。

 

「コンゴウさん、アレは大丈夫?」

「そちらは問題無い。アレくらいならさほどナノマテリアルも使わなかった」

 

 周王の質問に作ったばかりのある兵装をチェックしながら、コンゴウは頷く。

 

「到着と同時に出撃だよ!」

「この状況じゃ艤装も装着出来ないよ!」

「お、お昼が戻ってきそう………」

 

 ランサメントが鼓舞するが、吹雪は身動きも難しいGに悲鳴を上げそうになり、暁にいたっては思わず口を押さえていた。

 

「待ってて、音羽ちゃん………」

 

 サーニャはすぐに出撃出来るように固有魔法の魔導針を発動させつつ、ただ静かに学園への到着を待っていた。

 

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