第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP38

 

「う~ん、なかなかすごかったね~」

「やり過ぎ、という奴では」

「コンゴウの奴、こちらを頼むと言うからイヤな予感はしてたが………」

 

 コンゴウのブリッジ内、大型画面で第一試合を見ていた蒔絵は興奮しているが、ハルナとキリシマは少し呆れていた。

 

「だから私は他の奴にしろと言ったんだ!」

「一番派手に戦えて頑丈な者、という事で決まったと聞いている」

「周王博士が推薦したらしいよ。経験値が足りないからって」

「ヤバい経験値を高めてどうする………」

「だが、東京での件もある。我々もメンタルモデル単体での戦い方を考慮すべきかもしれん」

「ハルハルも試合出たら~?」

「考えておこう」

 

 色々考える物が有ったのか、蒔絵に適当に応えつつ、ハルナは各種レーダーを常時チェックしていた。

 

「今の所、怪しい反応は無いな」

「だがあのJAMとかいう連中、異常に隠蔽がうまいからな。本気でステルスされたら、我々霧でも探れるかどうか………」

「見られてる可能性は高いという事か」

「でも、これだけ派手にやったら、会議の方はバレてないと思うよ?」

「目的通りと言うべきか?」

「闘技場の損害請求が来たらコンゴウに押し付けよう」

「コンゴウ、お金持ってるの?」

「体で払わせろ。腕一本分のナノマテリアルでも持っていく所に持っていけばいい値になるかもしれん。周王博士がそう言っていた」

「香坂財団で行っている精製実験が成功すると同時に値崩れするだろうがな………」

 

 ここ数日学園で聞いた事を織り交ぜつつ、ハルナは警戒を続ける。

 

「え~と、次は502ウィッチと紐育華撃団の人か~」

「会場修理にかかりそうだけどな………」

 

 

 

「Oh、ミストコンゴウ、ロスね」

 

 海上を哨戒しながら、借りてきたHMD(※IS学園備品)で試合を逐次見ていた金剛が悔しがる。

 

「あの、一応哨戒中だからマジメに」

「ムリ。皆試合の事気にしてる」

「そりゃそうだけど………」

「てっきり霧のコンゴウさんが勝つと思ってたけど」

 

 一緒に哨戒中の暁型四姉妹が借りてきたタブレット(※東方帝都学園備品)を覗き込む。

 

「この幻夢さんって人も強いね」

「亜弥乎が言ってた通り」

「というか二人共すごい戦い方………」

「なんかすごい怪我してるように見えるのです………」

 

 試合のリプレイ動画が流れる中、どう見ても試合に見えない戦い方に皆がそれぞれ口を開く。

 

「こうなったら、この私がミストコンゴウの敵討ちを…」

「砲弾残り少ないし、模擬弾準備出来ないからって出場希望断られたんじゃなかったかしら?」

「それ以前に私達じゃ海戦しかできない」

「華撃団の装備なら幾つか使えるらしいけど」

「使い慣れてないのはちょっと………」

 

 意気込む金剛に、暁型四姉妹の総ツッコミが入る。

 

「オーナー、今後も同様の試合がある可能性は高い。装備が充実してからザダチャ(挑戦)すればいい………」

「それしかないネ………残弾じゃ哨戒が精々だし」

 

 艤装の上で妖精達と一緒に周辺を監視していたエスパディア(※当人に妖精は認識出来ないが)の呟きに、金剛は溜息と共に頷く。

 

「前回も前々回も敵襲は終盤に来たって話だから、そうそうすぐには来ないかしら?」

「油断は禁物。どうせなら来ない方が一番」

「でも前と違って、戦力はいっぱいいるし!」

「迎撃の用意ありです!」

 

 注意がだいぶそれつつも、艦娘達の哨戒は続いていた。

 

 

 

『定時確認、現状で上空、海上、海中にて異常は見当たらず。各哨戒部隊からも報告はありません』

「こんだけ警戒してて来るとしたら、相当な自信かバカのどっちかでしょ」

 

 学園の上空に待機しているカルナダインの艦内で、探索モードのままのブレータからの報告に、フェインティアはぼやく。

 

「そうとも限らん。JAMというのはかなり高度な戦術を使う。どんな手を使ってくるかも分からんしな」

「その通りだマイスター」

「注意するに越した事はありません」

 

 カルナダインで警備の指揮をしている美緒の指摘に、ムルメルティアとアーンヴァルも賛同する。

 

「前みたいに転移で大軍勢送り込まれる可能性も無い訳じゃないけど、霧の戦艦クラスが臨戦態勢、それでもダメな際は永遠のプリンセス号も転移させる算段でしょ? さすがにあれをここに持ってくるのはどうかと思うけど」

「宇宙船なんて無いこの世界に持ってくれば、大騒動必至だからな。一番まずいのは、今この場ごとどこかに跳ばされる事だが」

『それほどの大規模転移はかなりの高エネルギーを必要とします。そう簡単には行えないと推察いたします』

「だといいんだけどね………」

 

 フェインティアが呟きながら、警戒を続けるが、そこでようやく第二試合開始の情報が入ってくる。

 

「やっと続きね。今度は壊さないといいんだけど」

「次はペイント弾仕様の模擬戦だから大丈夫だとは思うが」

「あの、一つ気になる事が………」

 

 次の試合の内容を確認した美緒だったが、そこでアーンヴァルが恐る恐る手を挙げる。

 

「武装神姫同士の情報共有で聞いたんですが、次の試合に出場予定のクルピンスキー中尉ですが、あまりにストライカーユニットの破損が多くてブレイブではなくブレイクウィッチーズと呼ばれていると………」

「それなら私も聞いたわ」

「私もだ。パリに行った時、そんな事を聞かされた」

「………ペイント弾で壊す事は無いと思うが」

 

 さすがの美緒も僅かに顔をしかめる中、第二試合が始まろうとしていた。

 

 

 

『え~、大変お待たせしました。ようやくシステム復旧の目処が付いたので、第二試合が開始できそうです。その前に先程の第一試合の被害レポートが来ております。コンゴウ選手、幻夢選手双方重傷との報告が………え~と、コンゴウ選手が片腕もげて、幻夢選手がウイング千切れた、ってこれ大丈夫ですか!?』

『それは重傷じゃなくて重体なんじゃ………』

『いや、データによればメンタルモデルと言うのは体をナノマテリアルで構成し、編成や再構築が容易に出来るらしい。それに幻夢も試合で命に関わる程の負傷をするほど迂闊ではない』

『あ、続報来ました。コンゴウ選手がもげた腕の代わりに千切れたドレス繋いだ? 幻夢選手がウイング再移植のために循環系調整中? あのこれは………』

『ならば大丈夫だろう』

 

 つばさが自分の見識の外に有る話に首を傾げるが、剣鳳の言葉に取り敢えず頷く事にする。

 

『それでは、気を取り直しまして、第二試合、双方準備が出来た模様! 第二試合の組み合わせは紐育華撃団星組所属、リカリッタ・アリエス! 使用機体、シューティングスター! 対するは502統合戦闘航空団《ブレイブウィッチーズ》所属、ヴァルトルート・クルピンスキー中尉! 試合ルールはヒット制、インターバル無しの五分制になります!』

 

 第二試合の発表に、観客は更に湧いていた。

 

 

 

「よ~し、やるぞ~!」

 

 選手用ブースのシューティングスター内で、リカはやる気満々だった。

 

「向こうは相当なベテランらしいから、注意して」

「確か伯爵って呼ばれてるって聞いたね」

 

 セコンドの新次郎とジェミニが声をかけるが、興奮状態のリカにはあまり聞こえてなかった。

 

「ペイント弾使用のヒット制ルールですから、機動戦に持ち込まれたら若干不利かと思われます」

「つまり、先に相手に当てればいいんだね!」

 

 ルールの説明をするフブキだったが、ジェミニが勝手に略す。

 

「相手が加速する前に狙うか、こちらもフライトフォームで応戦するか、その判断が大事」

「おう! 狙って当てるのは大得意だぞ!」

 

 新次郎がアドバイスするが、リカがどこまで理解しているのかは謎だった。

 

「油断はするな。あいつは正面からの一撃離脱を得意としている、なかなか厄介な相手だぞ」

 

 警備にあたっているはずがなぜかセコンドと称して居るマルセイユの方に、新次郎は視線を向ける。

 

「一時期同じ部隊にいた。着任した当日に炎上したまま握手を求められたのは驚いたがな」

「………不死身ですかその人?」

「無駄にタフなんだ、心身共にな。追い詰められるとは思わない方がいいぞ」

「大丈夫! 勝負は当たれば一撃だ!」

 

 マルセイユの助言を聞いているのかいないのか、すぐにでも飛び出しそうなシューティングスターにマルセイユは苦笑するだけだった。

 

「まもなく始まります」

 

 フブキの言葉と同時に、試合開始のカウントダウンが始まった。

 

 

 

「いいですか、分かってますね?」

「ユニットを壊さない、相手を怪我させない、ルールは守る、以上ですよ?」

「しつこいな~、先生も大尉も」

 

 必要以上に念を押すセコンドのロスマンとポクルイーシキンに、クルピンスキーは頭をかきながら頷く。

 

「基本ルールはウィッチ同士の模擬戦と同じ、手足に三発以上、頭部や胴体にニ発以上喰らえば負け。このルールじゃ怪我しようが無いって」

「それでもしそうだから言ってるんです。先程の方達はやりすぎて双方重傷だそうですしね」

「何よりも、ウィッチとしての品位を落とすような事は絶対しないように」

「随分な言われようだな………」

 

 更に念を押すポクルイーシキンとロスマンに、見学も兼ねてセコンドに付いているグリシーヌが呆れる。

 

「相手の子は11歳か………あと数年もすれば」

 

 こりずに何か危険な事を呟くクルピンスキーだったが、そこでロスマンとポクルイーシキンが二人がかりで何かを準備し始める。

 

「もしウィッチの品位を落とすような事をするのなら」

「これを使います」

「何だこれは………」

 

 二人が用意した物、明らかに人が使うには巨大過ぎるライフル、黒ウサギ隊試験品・対IS用試作武装アンチマテリアルバスターライフル・《トールハンマー》を二人は教えられた通りにセットし始める。

 

「これでどうするつもりだ?」

「もちろん、撃ちます」

 

 引きつった顔のグリシーヌに、ロスマンが平然と言い放つ。

 

「さすがにそれはちょっと危なくないかな~?」

「そうですね。だから撃たせないでくださいね」

 

 シールドごとふっ飛ばされそうな得物に、さすがのクルピンスキーも少し焦るが、ロスマンは淡々と告げる。

 

(昔何かあったらしいとは聞いたが、それが何かは聞かない方が良さそうだ………)

 

 セコンドどころかトドメを刺しに来てるとしか思えないロスマンの態度に、グリシーヌがそこはかとなく寒気を覚える。

 そこで試合開始のカウントダウンが始まり、クルピンスキーは魔法力をストライカーユニットに送り込み、出力を上げていく。

 そして試合開始のブザーと同時に闘技場へのシャッターが開き、両者は同時に飛び出す。

 更にはまるで申し合わせたかのように、両者は同時に銃口を向けてトリガーを引き、放たれたペイント弾を双方横に避けてかわし、そしてペイント弾はそのままシャッターが締まりきって無かったブース内へと飛び込む。

 

「おうわ!?」

「きゃあ!」

 

 飛び込んできたペイント弾はかたや新次郎に直撃し、かたやポクルイーシキンがとっさに張ったシールドに阻まれるがブース内にペイントを撒き散らす。

 

『ああっとこれは試合開始と同時にトラブル発生! ブース内への攻撃は禁止事項です! 双方、ペナルティが発生します!』

「ありゃしまったな」

「むう、そうだったのか」

 

 つばさの勧告に、クルピンスキー、リカ双方が思わず声を漏らす。

 

『第一試合の影響でしょうか? アリエス選手、クルピンスキー選手いささか急ぎすぎの模様です!』

『リカはいつもの事よ』

『やはりルールの見直しが必要だな』

 

 いきなりのルール違反をつばさが指摘するが、ラチェットは普通に受け流し、剣鳳は少し唸る。

 

『そうですか………しかし双方、ペナルティもお構いなしに凄まじい銃撃戦です!』

 

 つばさの解説通り、クルピンスキーは闘技場内を縦横に飛び交いながらシューティングスターを狙うが、対するリカも機敏にシューティングスターを動かし、狙いを定めさせない。

 

(幾らフィールドが狭いって言っても、死角に潜り込もうとしているこちらの狙いを的確に避けてる。バウンティハンターとは聞いてたけど、こりゃ相当銃に慣れてるぞ………)

(う~、微妙に速くなったり遅くなったり、狙いがつけづらいぞ!)

 

 互いに相手がかなりの手練と判断しつつ、得物に次弾を装填した。

 

 

「試合開始と同時にこれか………」

「すいません、とっさに………」

 

 シールドに阻まれ飛散した挙げ句に服に付いたペイントに顔をしかめるグリシーヌに、ポクルイーシキンはハンカチでなんとか拭い取ろうとする。

 

「この際、それは後で構わん。それよりも」

「かなりの腕ですね」

 

 グリシーヌの言わんとする事を、ロスマンが先に呟く。

 

「ここから向こうまで、かなりの距離が有ったはずだ」

「しかも建物が複数あって、狙いはかなり狭まります。それで出る瞬間を狙ってくるとは………」

「しかもライフルじゃなくてハンドガンでしたね。あれだけの射撃の名手、ウィッチにもなかなかいません」

 

 ハンカチもペイントに染まった事で拭い取る事を諦めたポクルイーシキンもリカの射撃技術を素直に認めざるをえなかった。

 

「この試合、相手のミスを誘い出してそこをつけるかどうかだな」

「ええ………」

 

 グリシーヌの断言に、ロスマンも頷いた。

 

 

「あちゃ~………」

「大丈夫シンジロウ?」

「ペイント弾なので問題は有りません、姫」

 

 流れ弾で被弾した新次郎をジェミニが心配するが、フブキはダメージが無い事を確認する。

 マルセイユは閉まっているシャッターと試合の様子を映す画面を交互に見ていた。

 

「相変わらずいい腕をしているな」

「前からこう?」

 

 思わず聞き返したジェミニに、マルセイユは答える。

 

「試合開始と同時に発進、引き起こしと同時にこちらを狙ってきた。半ば見越し射撃で撃ってここまで届くのだから、相変わらず攻撃重視の戦い方をする」

「ある意味リカと似てますね」

「あの子も攻撃重視だからな。互いに攻勢一辺倒なら、ミスに活路を見いだせるかだな」

 

 双方のブースで、くしくも試合予想は一致していた。

 

 

 加速と減速、上昇と下降を巧みに織り交ぜ、死角に潜り込もうとするクルピンスキーの鼻先を、ペイント弾がかすめる。

 

「おっと、どうやらこちらの動きに慣れてきたかな?」

 

 段々狙いがこちらの移動先へと変わってきた事に、クルピンスキーは急旋回しながら呟く。

 

「これだけ動いても視界から全然外れない。若いのにかなりの銃使いだね」

 

 急旋回の隙を逃さずに放たれた直撃コースのペイント弾をシールドで防ぎながら、クルピンスキーはリカの能力を更に上方修正する。

 

「だったら、一番狙いにくい機動で!」

 

 クルピンスキーは身を翻すと、そのまま急上昇を始める。

 

『ああっとクルピンスキー選手、急上昇していきますが、そのままだと規定距離を割ってしまいます! 試合開始と同時にペナルティが発生しているため、二度目は即失格です!』

『そんなドジは踏まないでしょう』

『恐らくこれは…』

 

 追ってくるシューティングスターの銃撃をロールでかわしながら、クルピンスキーは規定距離ギリギリでストライカーユニットの出力をギリギリまで絞って上下反転、シューテイングスターの直上を取ると、一気に急降下しながら銃口を向ける。

 

「このっ! このっ!」

 

 真上から急降下で迫るクルピンスキーにリカは二丁拳銃を速射するが、それは全てクルピンスキーのシールドに阻まれる。

 

『クルピンスキー選手のシールド急降下攻撃! アリエス選手、窮地か!?』

 

 真上からの急降下、しかも正面にシールドが張られている以上、為す術のないリカだったが、即座にある判断を下す。

 

「行くよ!」

 

 外しようの無い距離まで接近した所で、クルピンスキーの指がトリガーにかかった瞬間、シューティングスターが変形、フライトモードになってそれへと舞い上がる。

 

「!? そう言えば紐育のは飛べるんだった!」

 

 光武とスターの一番の違いを失念していたクルピンスキーが慌ててトリガーを引くが、放たれたペイント弾は舞い上がったシューティングスターから外れ、そのまま両者は交差して互いの位置を入れ替えたような状態で弧を描いて反転する。

 

『なんと今度はアリエス選手、機体を変形させて空中戦に持ち込みました! 互いに空中戦なら、規定距離は適用されません!』

『さて、どちらに分があるかしら?』

『すぐに分かるだろう』

 

 解説席ならず、観客の誰もが空中に飛び立った両者を固唾を飲んで見守る。

 

「行っくぞ~!」

 

 先程のお返しとばかりに、リカはクルピンスキーの周囲を旋回しながら、ミサイルを次々と放つ。

 

「ジエット飛行、しかも誘導弾とはね」

 

 シールドが一方向にしか張れないと見抜かれた事を悟ったクルピンスキーは四方から来るミサイルから逃れようと速度を上げるが、逃げ切れないと悟ると、即座に腰のホルスターから緊急時用に用意しておいたワルサーP38(※実弾)を抜くと、追ってくるミサイルの弾頭を後ろ向きの速射で撃ち抜き、半数を破壊するが残る二発が迫る。

 

「まず…」

 

 そのままミサイルはクルピンスキー間近で炸裂、ペイントを派手に撒き散らす。

 

「やっ…」

 

 リカはカメラ越しに勝利を確信しかけるが、即座にそれが過ちだった事に気付く。

 

「これはいざって時に使おうと思ってたんだけどな~」

 

 クルピンスキーは呟きながら、自分の後方に張ったシールドを解除、阻まれたペイント弾が地上へと落下する。

 

『ああっとクルピンスキー選手、なんと後方にシールドを張ってミサイルを阻むという隠れ技を披露! てっきりウィッチのシールドは前方にだけだとばかり思っていました!』

『今のは阻んだんじゃないわね』

『しかり。後方にシールドを張り、そして減速してぶつけにいった物だ』

 

 興奮するつばさと対極に、ラチェットと剣鳳は冷静にクルピンスキーの行った高等技能を見抜いていた。

 

『残り時間はすでに一分を切っております! 果たして軍配はどちらに上がるのでしょうか!?』

『………勝負有ったわね』

『恐らくは』

 

 つばさの実況に観客も湧く中、解説の二人の呟きは聞こえていなかった。

 

「う~………撃っても撃っても全然当たらないぞ!」

「出力も武装もあっちの方が少し上かな? だとしたら」

 

 旋回しながら機を伺っていた二人だったが、両者は同時に同じ結論に至る。

 

「もうこうなったら!」「これしかないね」

 

 まるで申し合わせたかのように、双方が同時に相手に向かって一直線に突撃していく。

 

『両者、勝負に出ました! 激突の結果は!?』

 

 つばさの実況が響く中、お互い必殺の距離まで攻撃を放とうとしない。

 

(絶対避けられない距離で!)

(攻撃を叩き込む!)

 

 まったく同じ事を考えながら、双方が急接近、最初にリカがありったけのミサイルを放ち、クルピンスキーの周囲を囲むようにする。

 

「もう逃げられないぞ!」

「そうかな?」

 

 ミサイルに取り囲まれ、リカは今度こそ勝利を確信する。

 だがクルピンスキーの顔には笑みが浮かんでおり、逃げ場が塞がれる直前、クルピンスキーは固有魔法のマジックブーストを発動。

 大量の魔力が一気にストライカーユニットに流れ込み、クルピンスキーの体が急加速、ミサイルの包囲が完成する直前にそれを追い抜くが、なんとそのままクルピンスキーはシューティングスターに向かっていく。

 

「え、ぶつかる!」

 

 さすがに危険だと判断したリカが思わず機体をずらそうとするが、間に合わず双方が激突する。

 

『え!?』

 

 予想外の事態につばさも思わず言葉を失い、誰もが息を呑む。

 質量の違いで、クルピンスキーの体が弾き飛ばされるが、激突の直前に彼女がしっかりとシールドを張っていた事に気付いたのは僅かだった。

 

「もらった」

 

 狙い通り、弾き飛ばされつつも、クルピンスキーの銃口は文字通りかわしようもない距離でシューテイングスターに向けられ、トリガーが引かれた。

 放たれたペイント弾が、シューテイングスターのバーニア近辺のみならず、機体にも派手にペイントの花を咲かせた。

 そして決着を告げるブザーが闘技場内に鳴り響いた。

 

『こ、これは接触事故かと思われましたが、クルピンスキー選手の作戦の模様! 文句のつけようのない勝利です!』

『かなり危ない作戦だけどね』

『………気のせいか、ユニットから煙が出ておらぬか?』

 

 見事なクルピンスキーの逆転に観客が湧くが、マジックブーストと接触の衝撃か、クルピンスキーのストライカーユニットからは煙が立ち上り始めていた。

 

 

「ふむ、死中に活ありと言う奴だな」

 

 グリシーヌがクルピンスキーの勝利に感心しながら、視線を横へと移す。

 

「そういう事だから、それは止めた方が………」

『エネルギー充填開始、ターゲット設定』

「え~と、後は目標をセンターに入れてスイッチと」

「間違って魔法力を込めないように。この時代の武器は魔法力で壊れてしまいます」

 

 黙々と銃撃準備をするポクルイーシキンとロスマンを、グリシーヌはそれとなく制止する。

 

「アレほどストライカーユニットを壊さないようにと言ったのに………」

「どうせ観客の女の子達にかっこよく見せようとした結果でしょう」

 

 ブツブツと言いながら目に仄暗い炎を宿す二人のウィッチに、グリシーヌはどう止めるべきかを悩むが、突然甲高い警報が鳴り響く。

 

「何事だ!」

「これは…」「まさか敵襲!?」

 

 グリシーヌが思わず叫び、ポクルイーシキン、ロスマン双方も思わず手が止まる。

 

『こちらに向けて急接近する高速飛行体感知! 総員警戒態勢に移行してください。繰り返します、こちらに向けて急接近する高速飛行体あり…』

 

 鳴り響く警報に重なるカルナからの報告に、聞いていた者達は一斉に反応する。

 

「光武を回す! そちらの準備を!」

「分かりました! クルピンスキー中尉!」

『今リカちゃんと上空に向かってる! どっちから来る!?』

「こちらの準備も進めます!」

 

 ブースからグリシーヌが飛び出し、ポクルイーシキンはクルピンスキーに指示を出しながら、大急ぎで射撃準備を進める。

 それと似たような事は各所で起きていた。

 

 

「リカ! 模擬戦から実戦モードに! クルピンスキー中尉と闘技場上空を警戒! 実弾はそんなに積んでないから、無理しないで! こちらもすぐに出るから!」

『分かったぞ!』

「ライーサ、ユニットを回しておけ! すぐに行く!」

「急ごう!」

 

 新次郎、マルセイユ、ジェミニがブースから飛び出し、自分達の搭乗機へと向いながら通信で指示を出す。

 

 

「セットフォーム!」

 

 観客席で東方帝都学園の生徒達が次々とパンツァーを展開、その隣ではIS学園の生徒達が教習用ISを起動し、専用機持ち達は率先して上空へと舞い上がる。

 のみならず、観客全員が一斉に臨戦態勢を取る。

 有事に備え、観客全員が戦闘要員で構成されていた闘技場は数瞬で前線基地へと変貌する。

 

『皆さん、落ち着いて行動してください! 間違って同士討ちとかしないように!』

『それが一番難しいわね』

『向こうがどう出るかだ』

 

 ヘルメットをかぶったつばさが実況席で呼びかける中、ラチェットは愛用のナイフを抜き、剣鳳も大剣を構える。

 闘技場の外でも用意されていた機体が次々起動し、無数の駆動音が鳴り響いている。

 

 

 

「二度有る事は三度って事か!」

「そう何度も好きなようにはやらせませんわ!」

 

 先陣を切る一夏とセシリアに、他の専用機持ち達も続く。

 

『反応は一機、北東方向からかなりの速度で………待ってください、これって投降信号?』

「え?」

 

 カルナからの報告に、一夏の動きが止まる。

 

「投降って事は敵じゃない?」

「欺瞞の可能性もありますわ」

『総員警戒体制のまま待機! トリガーハート隊は接近中の目標に接触、天使隊は即戦体制!』

 

 予想外の状況に、美緒の指示が素早く飛び、全員が手に手に得物を持ったまま、固唾を飲んで状況を見守る。

 

「さて、どんな奴かしらね」

「マイスター、一機だけというのが不自然だ」

 

 指示通り接近中の目標へと向かっていくフェインティアだったが、ムルメルティアも状況を理解出来ないでいた。

 

「敵にしろ味方にしろ、こんだけの手勢居るのに、妙な事は出来ないわよ」

「エグゼリカの合流を待たなくていいのか?」

「その暇は無いようよ」

 

 合流を待たずして、すでに目標が近い事を感知したフェインティアが随伴艦の安全装置を外す。

 

「目標、速度低下を確認。接触するようだ」

「さて、どんな奴…」

 

 こちらも速度を落としつつ空中に静止したフェインティアが油断なく待ち構えるが、光学観測可能な距離にまで来た所で、それがデータにある個体だと気づく。

 

「あいつ………」

「外見データ一致、戦闘妖精《FRX―00 メイヴ》と呼称した個体と判断出来る」

 

 間近まで来たのが、漆黒の戦闘妖精だとムルエルティアも感知、投降信号を出したまま、メイヴはフェインティアの手前でこちらも静止する。

 

「よく来たわね、と言いたい所だけど、何の用かしら」

「あなた達は今JAMと戦っている。それに合流するために来た」

「はあ?」

 

 フェインティアの誰何に、あまりにストレートに答えたメイヴに聞いたフェインティア自身が思わず首を傾げる。

 

「メイヴさん!?」

 

 そこに合流したエグゼリカが接近してきた相手の正体に驚く。

 

「仲間になりにきたって言ってるわよ、この子」

「え? それは歓迎しますけど………」

「まず聞いておくわ。貴方の製造目的と作戦目標は?」

「戦闘妖精の製造目的はJAMの監視報告、私の目的はJAMの殲滅」

 

 再度の質問に、またストレートに答えるメイヴだったが、その意味する事に聞いていた者達は違和感を覚える。

 

『この子、どこかおかしいわよ』

『確かに監視と殲滅、全然違いますね』

『それ以前に、前回接触した戦闘妖精はほとんど情報を開示出来ないほど強固なプロテクトが付いていたはず』

『でも、彼女にはそれを感じない………』

 

 秘匿回線でフェインティア、エグゼリカ、ムルエルティアが違和感の正体を探ろうとする。

 だがそこへ、更なる問題が発生した。

 

『新たに高速接近する存在感知! 数は2つ! そちらへ急接近しています!』

「今度は何!」

「追手」

 

 カルナからの報告にフェインティアが思わず叫ぶが、メイヴが更に危険な事を言いつつ、手に大型ナイフを構える。

 

「あんた、まさか!」

「脱走してきた」

「こいつ、どういうプログラムされてる!?」

「来ます!」

 

 言動以上にデタラメ過ぎるメイヴに、フェイティアのみならずムルメルティア、エグゼリカも臨戦態勢を取る。

 

「緊急報告! 接触した機体は戦闘妖精《FRX―00 メイヴ》! こちらに合流のため、脱走してきた模様! 現在接近中のは追手だそうよ!」

『脱走!? 天使隊、至急向かえ! 貴重な情報源を確保!』

 

 美緒の指示が飛び交う中、追手はすぐそこまで迫ってきていた。

 

「あんた、仲間攻撃出来るの?」

「攻撃してきたら、それは敵」

「マイスター、後で彼女のデバッグを提唱する」

「敵味方判定が単純過ぎるわね………」

「来ます!」

 

 迫ってきていた追手は、メイヴと同じ戦闘妖精と思われる、一人は長身に淡い緑のウェーブヘアに水色の装束をまとった少女で、もう一人は前に接触した褐色の肌に薄紫のツインテールの少女だった。

 追手の戦闘妖精は一度高速で待ち構える者達の両脇を通り抜け、大きく弧を描きながら再度向かってくる。

 

「虚仮威しなら無駄よ!」

『こちらからは手を出すな! 向こうの発砲を確認しない限り、敵とは判断出来ん!』

「なにか、向こうも同じ事考えてるんじゃ………」

 

 随伴艦をサイティングしたフェインティアだったが、美緒がそれを制止、エグゼリカは向こうもすぐには攻撃する意志が無いらしい事を悟る。

 再度迫ってきた追手は制動をかけ、メイヴの眼の前でホバリングする。

 

「メイヴちゃん、何をしているの?」

「あんたはなんでこういつも問題起こすの! 戻るわよ!」

 

 ウェーブヘアの少女は優しくメイヴを諭すが、ツインテールの少女は怒気も顕にする。

 

「残念だけど、こちらは彼女の亡命依頼を受諾した所よ」

「JAMの情報を持っているらしいというならば、こちらとしてもそう簡単に返せません」

 

 メイヴを連れ戻そうとしているらしい戦闘妖精達に、トリガーハート達はそれを拒む。

 

「それに今にこちらの手勢がわんさと来るわよ。空戦技術が自慢らしいけど、こちらにもそれくらい出来るのは大勢いるわ」

「お互い、無駄な戦闘は避けませんか?」

「それがダメなら、こちらは情報源の確保を優先する」

 

 あくまで強気の相手に、戦闘妖精達は顔を見合わせる。

 

「メイヴちゃん、貴方はどうしたいの?」

「JAMの殲滅、それだけ」

 

 再度ウェーブヘアの少女が問うが、メイブの返答は先程フェインティアにしたのと全く同じだった。

 

「どうするの? こちらの増援が30秒以内に到着するわよ?」

「貴方達はメイヴちゃんから情報を得て、なおもJAMと戦おうというのですか」

「あいつらがどんな奴らか分かってんの?」

「たとえJAMがなんであっても私達も仲間も、友達の住む世界を守りたい。それだけです」

「さ、そういうわけだから。もう増援来ちゃうわよ」

 

 トリガーハート達の言葉に、追手としてきた戦闘妖精達は互いに視線を交わし、頷きあう。

 

「その必要はありません。私の名はFAF所属 戦闘妖精《FFR―31MR/D スーパーシルフ》」

「私は《FFR―31 シルフィード》。今回の私達の任務は脱走したメイブの追跡及び確保」

「しかし、私達はある条件下の場合に限り、別の特命を執行するよう命令されています」

 

 突然名乗って作戦目標を告げてきた戦闘妖精に、トリガーハート達は驚く。

 

「特命内容は、JAMとの交戦を予定している組織等に接触した場合、こちらの持つ情報を開示せよ、です」

「つまり、私達自身が貴方達の欲しがっている情報源って訳」

 

 相手のいきなりの態度の変化に、トリガーハート達は顔を見合わせる。

 

「そいつらか!」

「目標発見! 攻撃態勢…」

「待った、ストップ。こいつらに攻撃の意志は無いわ」

 

 そこへ駆けつけた華風魔とココロが攻撃態勢に入るのを、フェインティアが止める。

 

「どういう事かの?」

「なんか、情報提供に来たって………」

「それは、今ここで何が行われているか知ってるという事でしょうか?」

 

 華風魔が首を傾げる中、エグゼリカが説明するとココロはむしろ警戒する。

 

「やけに警備が厳重な中試合してる以上の事はこちらも把握していないわ」

「信用してよいのか?」

 

 スーパーシルフがかいつまんで説明するが、華風魔もどこか警戒していた。

 

「多分大丈夫よ。彼女達のプロテクトは固い、裏を返せば許可の無い事は出来ない仕組みになってるから。そっちの黒い子は何か違う見たいだけど」

「坂本少佐に報告、こちらムルメルティア、接近してきたのは戦闘妖精三機。交戦の意志無し、情報提供の意志有り。今後の指示を」

『………ちょうど下では情報が足りなくて困っていた所のようだ。誘導を頼む』

「だそうだマイスター」

「OK、こっちに着いてきて。下の連中血気はやってるから、妙な事しないように」

 

 何か毒気が抜けてく気がしながら、トリガーハートとRVのエスコートを受けつつ、戦闘妖精達が学園へと着陸していく。

 

「あれが、戦闘妖精?」

「見た目は意外と普通だな」

「でも今まで全然接触してこなかったのに…」

「なんで急に?」

 

 臨戦態勢で待ち構えていた者達が、拍子抜けしながら遠目に戦闘妖精達を見てあれこれ呟く。

 

「ようこそおいでくださいました」

「こちらへどうぞ」

 

 そこに用心のためか、ISをまとったままの更識姉妹が戦闘妖精達を出迎える。

 

「随分と警戒されてますね」

「ここまで来たから教えるけど、今地下で指揮官クラスの大会議中よ。地上の交流試合とこの警備はそのダミー」

「なるほどね」

 

 スーパーシルフが予想以上に厳重な警備体制を見て取る中、フェインティアの説明にシルフィードが頷く。

 

「で、この子達三人とも連れてく訳?」

「できれば、一、二名で」

「じゃあ私とメイヴちゃんで。シルフィードちゃんは残って」

「分かったわ。あまり歓迎されてないみたいだけど」

「タイミングが悪かっただけだ、気にするな」

「あ、っそ………」

 

 ムルメルティアに諭されるが、シルフィードはどこか不機嫌なままだった。

 

「それと、交流試合の続きをどうするかの問い合わせが来てるんですけど」

「第三試合は帝国華撃団と光の戦士の方の予定でしたよね?」

「この状況で平然とやったらJAMに怪しまれるかもね………」

「ならばどうする?」

 

 簪の問い合わせに、エグゼリカ、フェインティア、ムルメルティアが顔を突き合わせる。

 

「………こういう時は、警備責任者に聞きましょ」

「坂本少佐ですか? わかりました、すぐに」

 

 フェインティアの丸投げに、簪がすぐに美緒へと連絡を取る。

 

「え、あ、はい。あの、いいんでしょうか? ええ、今なら皆さんすぐに上がれますが…」

「………坂本少佐はなんて?」

「それが…」

 

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