第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP40

 

異なる世界 惑星エアル エアリーズ共和国 

 

 山間のある地域、木々に囲まれ遠くから確認し辛い場所に、多数の軍トラックと軍人が集結し、忙しく動き回っていた。

 木々が途切れた場所、そこには似つかわしくない近代的な建築物が立っていたが、それには真新しい破壊痕が残り、軍人達はその建物を中心に、周辺の捜索作業の最中だった。

 そこに、ゆるやかなウェーブヘアのいかにも気の強そうな女性が訪れる。

 

「状況は?」

「は! 現在施設の残存データ及び生存者の捜索を行っております。しかし、かなり派手な戦闘が有ったらしく、難航しております」

 

 女性に軍人の一人が敬礼しつつ答える。

 

「まさかウチの領内にシュバルツの残党が潜んでたなんてね。しかも………」

 

 苦々しい顔をしながら、女性は自ら半壊状態の施設へと足を踏み入れる。

 施設の内外、どこも激しい戦闘の痕跡が残り、幾つかの死体の回収作業の最中でもあった。

 

「これはお姉さま、わざわざ…」

 

 作業の指示に当たっていたエアリーズ共和国のマイスター乙HiMEの一人、チエ・ハラードが敬礼する中、その強気そうな女性、エアリーズ共和国を代表するマイスター乙HiME、《珠洲の黄玉(すずのこうぎょく)》 ハルカ・アーミテージ准将が周囲を見回す。

 

「チエ、何か気付いた事は?」

「やはり、戦闘の規模に対して死体の数が少なすぎます。スレイブ使用による消滅とも考えられますが、何か妙です」

「妙って?」

「それは…」

「生存者です!」

 

 そこへ飛び込んできた報告に、二人のマイスター乙HiMEは即座に振り向き、そちらへと向かう。

 そこにいたのは見るからに重傷の男で、ひどくうなされていた。

 

「どうやら施設の崩壊により、閉じ込められていた模様で」

「運がいいのか悪いのか」

 

 ハルカは呟きつつ、重傷の男に近寄る。

 

「私が誰か解かる? 何が有ったの?」

「す、珠洲の黄玉………アレはお前らではないのか………」

「アレ?」

「ストライプに発光する………妙な機械群が突然………仲間は次々あいつらに捕らえられ…ぐっ………」

「准将、これ以上は」

「すぐに病院に移送なさい! 下手したら唯一の目撃者よ!」

 

 ハルカの指示で、重傷の男はすぐに医療班が治療用車両へと運び込み、治療を受けつつ移送されていく。

 

「今の、聞いた?」

「ええ。ストライプに光る機械、先日ヴィントブルームを襲撃した連中と同じと見ていいでしょう」

「乙HiMEが狙いだって情報だったけど、乙HiMEだけじゃなかったようね」

「ガルデローベに知らせますか?」

「すぐにお願い。乙HiME、シュバルツと来たら次は………」

 

 

 

同時刻 アスワドの村

 

「愕天王(がくてんおう)!」

 

 女性の声と共に、虚空から赤い体躯に車輪を持った機械仕掛けの獣のような存在が飛び出し、目前に迫っていた敵を貫く。

 

「非戦闘員の避難は!」

「完了しました!」

「頭領、やっぱりこいつら………」

 

 愕天王を召喚した頭領とよばれる髪を結い上げた少女にも見える女性 ミドリが、部下達の言葉に頷く。

 

「縞に光り鳴動する機械群、ヴィントブルームを襲った連中だな」

 

 かつては惑星エアルのテクノロジーの聖地の民、その末裔と呼ばれる断片的なロストテクノロジーを携える一族の村に攻めてきた謎の機械群に、女性はむしろ不敵な笑みで迎撃態勢を取っていた。

 

「ここに攻めてくるとはいい度胸だ! その事を後悔させ…」

 

 口上の途中で、突然機械群の一角が爆発四散する。

 

「…は?」

「頭領、アレを!」

 

 思わず固まったミドリだったが、部下の一人が指さした先に見える、紫のローブをまとったマイスター乙HiMEに気付く。

 

「嬌艶の紫水晶!? なぜここに!」

「詳しい話は後にしときましょ。それに、ウチだけじゃなかったようやし」

「え?」

「頭領! あちらにも!」

 

 嬌艶の紫水晶 シズル・ヴィオーラの突然の参戦にミドリが驚く中、シズルとは別方向の敵が突然破壊される。

 その先、つば広帽にコート姿の女性が、人間とは思えない動きで機械群を次々破壊していった。

 

「そっちもか! ええい、こちらも早くしないと出番が無くなるぞ!」

 

 本気か冗談か判断しかねるミドリの号令に、アスワドの戦士達も一斉に機械群へと向かっていく。

 五柱の一人まで加わった戦闘はそれほど長引かず、敵影が確認出来ない事を確かめたミドリは改めて増援の二人を見る。

 

「助太刀感謝する。だが、なぜ五柱がここに?」

「礼なら学園長に行っておくんなはれ。乙HiME以外にも念のためにアスワドに警告しときと言いはりましてな。まあ襲われている最中に出くわすとは思いまへんでしたけど」

「規模はそれほど大きくないようでしたが」

「そちらは?」

「ああ、ミユはん? ヴィント事変の時、学園長始め、何かと世話になった人でありんす。まあ、ただの人ではないようどすけど」

「アスワドにはアリカさんが世話になったと聞いております。遅ればせながらお礼を」

「ま、その分は今のでチャラって事だな」

 

 丁寧に頭を下げるミユにミドリは笑ってそれを誇示するが、そこでシズルの懐からコール音が響く。

 

「ちょっと失礼。はいシズル、ああナツキ。ナツキの懸念大当たりどしたわ。………ええ、ミユはんも来てくらはったし、数もそんなおらへんやったから。………それはいつ? ………さいか。じゃあ………ええ………」

 

 携帯電話を取り出し、何か話し込んでいたシズルの表情がだんだん険しくなり、口調もどんどん深刻になっていくのを見たミドリも思わず拳を握りしめる。

 やがて電話を切ったシズルが振り向くと、その顔には普段の余裕は消えていた。

 

「何が有った?」

「エアリーズに有ったシュバルツ残党のアジトが、ここを襲ったのと同じ連中に襲撃されはったそうです………」

「何だと!?」

「しかも、かなりの人数の構成員が連れ去らわれはったと」

「どうやら、この星の特化技術を無差別に狙っているようですね」

 

 ミユの指摘に、ミドリの喉が思わず鳴る。

 

「ここが狙われたのは、アスワドの技術が狙いか!」

「正確には、その技術が施された人ら、でっしゃろが」

「恐らくそうでしょう。この存在は、どうやら特化技術に並々ならない興味を持っているようです」

 

 ミユの指摘に、僅かにシズルの眉が上がる。

 

「ミユはん、何を知っとるんどすか? 先程から含みがあるように思えるんやけど」

「私にもそう聞こえた」

 

 ミドリからも重ねての指摘に、ミユは少し小首を傾げてから話し出す。

 

「詳しい事は何も。その調査のためにヴィントブルームに向かっている最中に、ここでの転移反応を感知したため、急行した次第です」

「転移反応?」

「ええ、しかもかなり高エネルギーです。この惑星には収まらない程の」

「待て! お前は何を言っているんだ!?」

「恐らくアレは、この惑星上の存在ではありません。転移エネルギーレベルから推算すると、間違いなくこの惑星外、場合によっては次元外からの存在の可能性が高いと思われます」

「………宇宙人でも攻めてきた、言う事どすか?」

「端的に言えば、そうなります」

「な………」

 

 ミユの話す内容に、シズルもミドリも一概には信じる事は出来なかった。

 

「………ナツキは、念のためにウチにしばらくここの警備につくよう言うとりましたが、どうやらそうした方がいいようどすな。学園からもパールを何人か回すような話どすし」

「むう、用心に越した事は無いか」

「では私はガルデローベに向かいます。まだ推論段階ですが、現状では他に説明しようが有りません」

「ナツキにその話、通しておく必要が有りますな。信じてくれるかは別でっしゃろが………それと」

 

 シズルが左右に目を向け、アスワドの戦士達がまだ戦闘の後処理に奔走してるのを確認すると二人を手招きして小声で話し始める。

 

「これはトップシークレットどすが、実はすでに拐わかされた乙HiMEがいなはります」

「誰だ?」

「ニナ・ウォンどす」

「な!? 生きていたのか!?」

「しっ」

 

 予想外の名前に思わず大声を上げたミドリだったが、シズルに促されて慌てて口を塞ぐ。

 

「今回の敵は、どうにも妙な事ばかりしよるようどす。あんさん達二人も気ぃ付けなはれ」

「防備を固めた方がいいな。すぐに取り掛かろう」

「私は急いでガルデローベに」

「待っとくなはれ。実はこの件、アリカはんは知りまへん。知らせたら間違いなくニナはん探しにすっ飛んでいくでっしゃろから」

「分かりました。内密にします」

 

 それだけ言うと、ミユは身を翻してその場を後にする。

 それを見送った二人はどちらともなく口を開く。

 

「宇宙人、か。信じられるか?」

「ウチは何とも言えまへん。けど、一つだけ言える事がありんす」

「それは?」

「アレは、ウチらの敵やという事どす………」

 

 

 

太正十八年 帝都東京沖 追浜基地

 

「アイーシャがこの世界に!?」

「それ本当!?」

 

 冬后から聞かされた話にソニックダイバー隊、特に音羽とエリーゼは過敏に反応する。

 

「助けに行かないと!」

「すぐに出撃を!」

「待て」

「落ち着きなさい!」

 

 格納庫に向かおうとする二人を、冬后と瑛花が止める。

 

「あくまで可能性が高い、という話だ。確定じゃない」

「でも!」

「それにどこにいるかも分からないのに、どうやって助けるつもり?」

「うう………」

 

 冬后と瑛花に説得され、音羽とエリーゼはなんとかおとなしくなる。

 そこへ可憐が改めて問う。

 

「その情報は本当なんでしょうか?」

「突然訪れた戦闘妖精達から直接聞いた情報だそうだ。それで、その情報を元にJAMに対抗するための組織を正式に設立する事になったらしい」

「組織?」

「前は半ば済し崩しで共闘してたような物だが、今度はきっちり体系化するって事だろうな。所属組織とは別に、能力ごとに特別班を作る事になるらしい。昼休憩の後に詳細を詰めるらしいが、機体特性状、園宮あたりが選別されるだろうな」

「なるほど、分かりました」

「じゃあ私は剣戟班で!」

「私は帰国子女班!」

「多分無いわよ、そんなの………」

「取り敢えず、詳しい事は会議が終わってからになるだろう。休憩で途中経過だけ送られてきたからな」

 

 瑛花が呆れる中、冬后はこれからの事を考える。

 

「ラストフライトのはずが再編成か。上になんて説明するのやら………」

「Gの方から適当にやっとくんじゃない~」

 

 冬后のボヤきに相変わらず音羽の頭の上のヴァローナが適当に返す。

 

「大佐、それで午後からの訓練生の教習内容ですが」

「大幅に変更だな。各組織のデータをかき集めておいてくれ」

「それは私が」

「桜野とエリーゼも手伝ってくれ。協力態勢をある程度考慮する必要がある」

「了解!」

「Zustimmung(了解)!」

 

 統合組織設立に向けて、ソニックダイバー隊は準備を開始した。

 

 

 

同時刻 太平洋 東方帝都・IS合併校 通称・学園

 

「統合組織?」

「JAMに対抗するために、今関係している組織をひとまとめにするって」

「出来るのかな~?」

 

 交流試合の後片付けをしている生徒達から、漏れ聞こえてくる情報に誰もがあれこれ勝手な事を言い始める。

 

「人の口に戸を建てられない。とはこの事か」

「教えたのはほんの数人なんですけどね」

 

 食堂で昼食を取っていた千冬とどりあが、食事前に数人に教えただけの会議内容がすでに食堂内でも囁かれてる事に半ば呆れ果てていた。

 

「でもまあ、遅かれ早かれ、皆さん知る事ですし」

「こちらも見直さないといけない事が多いな」

 

 昼食のカツカレーを半ばまで食べた所で、千冬の視線がどりあに向けられる。

 

「正直、そちらがいの一番に賛同するとは思わなかった」

 

 千冬の言葉に、どりあはカリフォルニアロールセットに伸ばしていた箸が止まる。

 

「こちらには、もう伏せているカードが無いんですの」

「それは…」

「最後まで伏せておくべきだった、いえ伏せておかなければならなかったドリル・クィーンという最強のカードを、場に出してしまった。これ以降、相手はその存在を念頭に置いて行動する。それに対抗するには、他の手札を用意するしかありませんの。他の組織との協力という手札を」

「…なるほどな。その点はこちらも似たような物だ。最初から最新型ISを前面に出しているからな」

「今までの戦闘で、こちらのデータは丸裸にされてると考えていいでしょう。個々では戦えないというのは特と思い知りましたし」

「全くだ。それは他も同じだろうがな」

「他の世界にも似たような事をしている組織が有るらしいって話が本当だといいのですけれど………」

 

 互いに空になった食器を前に、二人は今後についてあれこれ話し込む。

 周囲の生徒達が思いっきり聞き耳をたてていたが、構わず話していた二人は午後からの開催時刻が近付いたため、その場を後にする。

 なお、二人の会話内容が学園内に広まるまで30分と掛からなかった。

 

 

 

「統合組織?」

「そう」

「また随分と話がとんだわね」

「というか、どこからそんな話が出てくるわけ?」

「確かに、体制を統一する必要はあるかもしれない。だが、可能か?」

「私達が言えた義理でもないけどな」

 

 概念空間の中、メンタルモデル達が会議で決まった統合組織について話し合っていた。

 

「群像はこの組織と、霧の同盟を結びたがっている」

「同盟か。霧にその概念があるかどうかが問題だろう」

 

 イオナの話に、コンゴウが首を傾げる。

 

「無理じゃないかしら? そもそも今この場に、人間のために戦おうってのが、何人いるの?」

「そもそも私達はメンタルモデル形成まで、自分という概念も無かったのよ? 最近になってようやく自分と仲間という概念を持てたくらいなのに、見ず知らずの連中と同盟なんて組めるの?」

 

 ヒュウガとタカオの鋭い意見に、誰もが考える。

 

「少なくても、私が今協力しているのは蒔絵のためだ。ここで蒔絵を危険視する者は誰もいない」

「本人も色々やる気だしな。私はその付添だ」

「私はイオナ姉さまのためよ。それ以外に無いわ」

 

 ハルナとキリシマの言葉に、ヒュウガも己の意見を述べる。

 

「私は群像の船。群像が決めたなら、それに従う」

「………艦長の判断なら私も従う」

 

 イオナとタカオも持論を述べた所で、一人だけ無言の者に視線が集中する。

 

「それで、コンゴウは?」

 

 ヒュウガが口火を切ると、コンゴウは少し考えてから口を開く。

 

「401には恩、と呼ばれる物が有る。それに…」

「それに?」

「この世界に飛ばされた時、最初に会った二人のウィッチは私が人間でないと知っても、大して驚かなかった。どころか、私をまるで人間と変わらないように扱った。艦娘達は私を頼れる存在として接してくる。周王は私の足らない所を色々教えてくれた。それらは不快ではない。ならば、少し協力してもいい」

「ここの生徒達にはビビられてますけどね」

「そりゃ、来て早々超重力砲ぶっ放せばそうなるだろ………」

 

 コンゴウが淡々と述べるのを、ヒュウガとキリシマが余計なツッコミを入れる。

 

「メンタルモデルを持った以上、今まで無かった自分の思考という物を私達は持つ事が出来る。だったら、霧との同盟も不可能ではないかもしれない」

「やってみなくては分からない、という事か」

 

 イオナの言葉に、ハルナが少し考える。

 

「どのみち、私達だけでは元の世界には戻れない。私は特に戻る理由も無いが」

「私は蒔絵に危険が及ぶなら、戻らない事も考慮している」

「霧との同盟以前に、ここにいる面子だけでも意見が統一してませんわね………」

「元からそうでしょ」

 

 コンゴウとハルナの意見にヒュウガとタカオが呆れる。

 

「この際それは置いといて、JAMだけならば私達でもなんとかなるが、霧の攻撃力を持ってしても倒せない敵がいるなら、倒せる連中の力を借りるしかないだろう」

「突き詰めれば、結局そこに落ち着くわね」

「じゃあ、統合組織への協力は全員賛成と群像に言っておく」

 

 キリシマとヒュウガがまとめた所で、イオナが頷いて概念空間から去る。

 

「さて、私は交流試合の後片付けが有るから」

「私は蒔絵と交流試合のデータ整理をする」

「会議が長引きそうだから、警戒態勢は維持しないと」

 

 メンタルモデル達が三々五々去っていく中、コンゴウは一人残っていた。

 

「戦う理由か………今の私に、有るのだろうか?」

 

 

 

「うわ~、広~い!」

 

 学園の大浴場に来たリカがその広さにはしゃぐ。

 

「ほらほら、転ばないようにね」

「わ~い!」

 

 ジェミニの注意も聞かずか、リカは浴槽へと突撃していく。

 

「負けた割には元気そうだな」

「あ、パリの…」

 

 洗面台で体を洗っていたグリシーヌがそれを見て苦笑するのを、ジェミニは罰が悪そうに頬をかきながらその隣に座る。

 

「あの年齢であの距離を狙ってくるとは、いい銃使いがそちらにはいるようだな」

「あ、ひょっとして当たりました?」

「しずくが飛んだだけだ。服は今洗っている」

「こっちは進次郎に直撃したけど」

「ごめんなさいね。後で言って聞かせるから」

 

 ジェミニとは反対側の洗面台にポクルイーシキンが顔をのぞかせながら謝る。

 

「まあ、あいこという事だな。試合の方はなかなかだった」

「あの、激突した人は大丈夫ですか」

「後ろにいるわよ」

「え?」

 

 笑うグリシーヌに、ジェミニがクルピンスキーの事をそれとなく聞くが、ポクルイーシキンが後ろを指差し、思わず振り返ったジェミニは、そこで湯に浸かりながら鼻歌なぞ歌っているクルピンスキーを見つける。

 

「話には聞いてたけど、タフな人だね………」

「大浴場が有るって聞いて、すっ飛んできたのよ」

「それこそ手当する前にな」

「………そんなに入りたかったんだ」

「だといいのだけれど」

 

 ジェミニがリカと同じ理由かと思っていたが、ポクルイーシキンは言葉を濁す。

 

「あ、さっきの! ぶつかったの大丈夫か?」

「やあリカちゃんだね。あれくらいはいつもの事さ」

「タフだな~。リカうらやましいぞ」

「はっはっは、君だってもう数年すれば」

「数年すれば、なんですか?」

 

 話しかけてきたリカににこやかに応じるクルピンスキーだったが、そこで絶対零度の視線で背後にいたロスマンが銃口を突きつける。

 

「え~と先生、お風呂で銃は無いと思うんだけど」

「貴方が先程から誰かれ構わず声をかけなければ確かに必要無いかもしれませんね」

「お、そっちの用心深いな! リカも持ってきてるぞ!」

 

 明らかに警告にしては度を過ぎているロスマンを見たリカが、興奮しながらジェミニに結い上げてもらった髪の中から、いつの間に仕込んだのかデリンジャーを取り出す。

 

「………この子を口説くのはやめた方がよさそうだね」

「………そうですね」

「それ以前の問題だろう」

 

 体を洗い終わったグリシーヌが呆れながら、湯へと浸かる。

 なお、その光景は他に大浴場にいた者達にバッチリ見られ、浴場内に武器の持ち込み禁止が言い渡されるのはすぐ後の事だった。

 

 

 

『ウイングはこちらで同一の物を製造しました。フィッティングはどうですか?』

「悪くはないわね。貴方達、いい設備持ってるわ」

「トリガーハートは基本単独出撃前提の特別機だからね。母艦には大抵の設備が整っているのよ」

 

 カルナダインで修理を終えたシルフィードが、カルナからの確認に頷くのを脇でフェインティアが覗いていた。

 

「それで、どうやら統合組織を創る事になったみたいだけど、そちらは協力出来るの?」

「JAMの危険度認識はそれぞれよ。JAMをフィクションだと思い始めてる人間も結構いるわ。けれど、私達の指揮官はJAMの危険をよく理解している。統合組織への協力は認可されると思うわ」

「また随分と急に態度変えたわね。もっともその様子だと、その指揮官も苦労してそうだけど」

「クーリィ准将は軍部内でもタカ派で有名なの。むしろ苦労してるのはブッカー隊長ね」

「そりゃ、脱走するようなユニット抱えてたらね」

 

 思わずボヤいたフェインティアを、シルフィードはじっと見つめる。

 

「やっぱり、見た目はそっくりでもツヴァイとは違うわね」

「そりゃそうよ。あの子も色々有ったから。敵だった頃はすごい好戦的だったけど、コントロールコア壊したら途端に大人しくなっちゃったし」

「聞いてるわ。彼女が来なかったら、こちらもここまで活動してなかったでしょうし」

「確認しておきたいが、そちらは現状どこまで把握しているのだ?」

 

 話を聞いていたムルメルティアの確認に、シルフィードは少し間を持って口を開く。

 

「はっきり言えば、こちらの次元転移技術は自立した物じゃないの。こちらで使っている次元転移は、JAMが作った超空間通路にこっそり横穴を作るような感じ」

「つまり、JAMが行ってる世界にしか行けないって事?」

「そう、しかもかなり規模も小さいわ。現在安全に転移出来るのは私達戦闘妖精だけ」

「それで、ここ以外で確認出来ているのは?」

「ここ以外だと、他に3つの世界に転移は成功してるわ。けど、ウチ一つは大規模転移が一度起きただけで、転移通路が不安定で監視ユニットが常駐してるだけ。もう一つはJAM以外の何かの転移が相次いで危険指定されてるし、安定してるのは一つだけね」

「どこも問題だらけね………」

「監視ユニットとは、他の戦闘妖精か?」

「いいえ、自立小型ユニットよ。ツヴァイからもらった貴方達のデータを参考にしたね」

「武装神姫を?」

「もっとも、民間の競技用を転用したから、戦闘力はそちらに比べてかなり低いようだけど」

「一応色々やってんのね」

「ならば、まずはその転移の安定した世界に行ってみるべきだと思う」

「そちらの技術も使えば、なんとかなるかも。それに、その安定してる世界って、どうやら艦娘達の世界らしいから」

「なら決まりね」

「マイスター、懸念が有る。超空間通路が安定しているという事は、それだけ次元転移が起きているという事でもある」

「どこも似たような状況かもね………」

 

 フェインティアはボヤきつつ、今後の困難を予想していた。

 

 

 

同日 夜半

 

「まだ終わってない?」

「何か、相当突っ込んだ所まで話し合ってるらしいって」

 

 交流試合も終わり、勝手に次の試合をやろうとする有志(と言う名の暴徒?)に対処するという名目で警戒態勢は続いているが(実際数件有った)なんとか一段落つけた一夏が、食堂に明かりがついてるのに気付き、寄った所で大量の夜食を作っている鈴音達からの話を聞いて唖然とする。

 

「今日中、というかもうじき日付が変わるけど、粗方決めるつもりらしいから、専用機持ちは待機だって」

「一応決まった事は随時こちらに転送されてるよ」

「まあそれは仕方ないとして………」

 

 ツガルが会議に参加している武装神姫からの送信内容を確認する中、用意されている大量のコーヒーピッチャーに一夏は会議の更なる延長にそこはかとなく不安を覚える。

 

「来たならちょうどいいわ。そっちの分を第二会議室に運ぶの手伝って」

「第二?」

「なんか束博士を中心として、すでに技術陣だけで別会議してるらしいわよ。あちこちからマッドが集結してるって話」

「束さんみたいなのがたくさん来てるわけじゃないよな………?」

「どうだろ?」

 

 ワゴンに載せられた夜食とコーヒーピッチャーを押し付けられた一夏が、鈴音の話に更なる不安を覚える。

 

「箒とねじるは向こうに行ったままで来なかったし」

「東京でしごいてもらってるらしいわよ? サムライ少佐クラスがごろごろいるって噂」

「マジか………」

 

 夜食のあまりのおにぎりを口にしつつ、聞こえてきた噂に一夏が肩をすくめる。

 

(いる人全員束さんみたいな人達じゃないよな~?)

 

 ワゴンを押しながら、指定された第二会議室の扉を開けた一夏だったが、そこで繰り広げられている光景に唖然とする。

 

「つまり、外部的に生体エネルギー兵器は難しいって事?」

「不可能では無いだろうが、制御の問題がある」

「相手いかんじゃ暴走するで?」

「敵の詳細データももう少しほしいですね。どこまで対処可能かを明確にしないと」

「じゃないとコンゴウが超重力砲撃ちまくるしね~。あ、出来たよ超重力砲の深海棲艦へのダメージ詳細」

「生体エネルギー、霊力や魔法力と呼ばれる生物固有エネルギー、登録、保存」

「注釈だらけだな………」

 

 そこでは、束と宮藤博士を中心に、紅蘭、周王、蒔絵など加わってありとあらゆる方面から戦闘分析が行われ、ハルナとキリシマはあまりに多方面に渡る内容に苦労しながら議事録を作成していた。

 

「あ、いっ君。何か用?」

「あの、夜食を…」

「そうだな、少し休憩にするか」

 

 大量の書類やホワイトボードに所狭しと書かれた図式、今までの戦闘全てを再生している端末なぞが山となっているのを宮藤博士がかき分け、かろうじて夜食が置けるスペースを確保する。

 

「ちょうどカフェインがほしかったんだ~」

 

 束がそう言いながら、コーヒーをピッチャーごと取ると、それにミルクと砂糖を大量にぶち込み、そのまま嚥下する。

 

「今晩一睡も出来なくなるんじゃ…」

「ん~? いつもの事だし」

「篠ノ之博士がライフリズム守ってくれないってヴァローナが言ってたけど………」

「まあ技術者なんてそんなモンや」

「ここまでは極端だけど」

 

 一夏もツガルもドン引く中、紅蘭と周王もコーヒーを手に(さすがに紙コップで)苦笑する。

 

「やっぱり、汎用性の問題がどうしても出てくるな」

「機体特性が違い過ぎるしね~」

「エネルギー総量も違うわ。量も質も」

「単純に出力だけやないしな」

「う~ん」

 

 休憩のはずがまた議論が始まった事に、一夏は突っ込まない事に決めて夜食を配るが、そこで手が止まる。

 

「あの、さすがにこの子にコーヒーはまずいんじゃ…」

「うん?」

 

 蒔絵に紙コップを渡そうとした所で手が止まった一夏に、蒔絵も小首を傾げる。

 

「まあ、確かに時間的にそろそろ問題あるわな」

「普段なら就寝している時間だ」

「大丈夫だよ? 振動弾頭開発してた頃はたまに徹夜してたし」

「ローティーンになんて事させてたの………」

「言うな。その点に関しては同意する」

 紅蘭と周王が呆れ、ハルナとキリシマも同意する中、宮藤博士も時間を確認する。

 

「もう少し目処をつけたら一度解散しよう」

「つくかな~?」

「やっぱり高出力戦闘する人達を活用して…」

 

 再度議論が始まった所で、一夏はワゴンを置いたままこそこそと部屋を出る。

 

「とてもついていけない………平均IQどれくらいだろ?」

「さあ? マスターもそろそろ寝てた方いいよ? 待機でも仮眠くらいはいいだろうから」

「そうしよ。今の聞いてたら頭痛くなってきた………」

 

 今日一日で色々有った事を思考の隅に追いやり、一夏は自室へと戻って仮眠どころか完全に熟睡する。

 その後、技術者達の間である結論が出された事を知るのは翌日の事だった。

 

 

 

翌日 帝都東京沖 追浜基地

 

「う~ん………」

「むむむ………」

「何してるの………」

 

 格納庫内を、訓練の予定も無いのにモーションスリット姿の音羽とエリーゼがうろついているの見た瑛花が、呆れた口調で問いかける。

 

「いや、いつ出動がかかってもいいようにって思って」

「アイーシャがどこかにいると思うとじっとしてられない!」

「気持ちは分かるけど、落ち着きなさい」

 

 すぐにでも飛び出して行きかねない二人に、瑛花は思わずため息をつく。

 

「今あちこちで探索中らしいわ。あんまり派手にやると向こうに気づかれる可能性もあるって話だけど」

「でも、アイーシャに何かあったら!」

「う~、バッハがもっと行動範囲広かったら………」

「ソニックダイバーは短期決戦機よ。私達には私達の役割が有るわ」

「それはそうだけど………」

「じゃあ、本人に聞いてみる?」

 

 そこで音羽の頭の上の定位置にいたヴァローナが妙な事を言い出す。

 

「本人?」

「聞いてなかった? 武装神姫を造ったのは未来のアイーシャ・クリシュナムだって」

「ホント!?」

「正確には、こっちの世界のプロフェッサー・クリシュナム。そっちの行方不明になってる人とはパラレル存在って奴」

「つまり、当人の別人で………あれ?」

「でも、何か分かるかも!」

「今ちょうどデータ交換のためにここの管制室と通信中…」

 

 ヴァローナの話を最後まで聞かず、音羽とエリーゼは管制室へと猛ダッシュを始める。

 

「全く………」

 

 瑛花も少し考えた後、その後を追った。

 

「あ、皆さんお揃いで」

「うわ、ホントにアイーシャだ!」

「でもちょっと老けてる」

 

 管制室に飛び込んできた音羽とエリーゼ続けてきた瑛花に、作業中だったタクミと七恵、可憐が少し驚くが、通信画面に移っている未来のアイーシャに音羽とエリーゼも驚いた。

 

『次元間通信ラインは安定している。念の為、常時接続で』

「分かりました。データ転送も順調です」

 

 作業を続ける未来のアイーシャに、自分達の知るアイーシャと年齢以外ほとんど変わってない事をソニックダイバー隊は感じていた。

 

「久しぶりかな、始めましてなのかな?」

「えっと、どっちだろう?」

「それ、さっき私達もやりました」

 

 音羽とエリーゼの会話に可憐が苦笑しながら答える。

 

「久しぶり、でいい。その年代のみんなに会うのは数年ぶりだから」

「そうなんだ。なら、久しぶりアイーシャ。それでね、え~とアイーシャ?」

『音羽、何?』

「その、こっちのアイーシャが行方不明なんだけど、何か知らない?」

『知らない。こちらではそんな事は起こらなかった。一応私のナノマシンパターン反応を送ってみたけど、反応は掴めていないらしい』

「ドライなとこは全然変わってないね。ちなみに何年後?」

『あの戦いから15年経っている。こちらで有った戦いは知らない方がいい』

 

 自分達の知るアイーシャそのままの反応に、音羽とエリーゼは思わず顔を見合わせる。

 

「心配じゃないの? その、自分が行方不明だって事に」

『元々、私はここまで干渉するつもりは無かった。だが、もうそちらの世界とこちらの世界は完全に別の歴史を歩んでいる。私自身の行方不明もその内の一つの事象に過ぎない』

「ドライさに磨きかかってない?」

「向こうでも色々有ったんでしょう………」

 

 あまりに淡々と話すアイーシャに、思わず瑛花も呟くが、可憐も顔を見合わせる。

 

『JAMが私を拉致した目的をまず正確に探る事が大事。それから何か分かるかも』

「何かしてたら、格納庫の全弾薬叩き込んでやるんだから!」

「どれだけ重武装する気で、あれ?」

 

 物騒な事を言うエリーゼにタクミの顔が引きつるが、そこでふと通信枠に映るアイーシャの背後、研究室らしき場所の扉が開いたかと思うと、小さな人影が入ってくる。

 

「え?」「あれ?」「ん?」「あの後ろ…」

 

 ソニックダイバー隊の妙な反応にアイーシャも気付いたのか、背後に振り向く。

 そこにいたのは、二歳になったかどうかの幼児の姿だった。

 

『あ、また入ってきた』

『しんきは?』

『今出払ってる。残念だった』

 

 イルカを模したベビーウェアをまとい、髪の片側を結んでいる女の子と思われる幼児はアイーシャに首を傾げつつ問いかけるが、アイーシャがなだめながら抱き上げる。

 

「………あの、その子は?」

 

 誰もが思った疑問を七恵が代表して問う。

 

『………この子は』

 

 アイーシャが僅かに困った顔をするが、抱かれている幼児は通信枠の方を見ながら小首を傾げる。

 可愛らしい仕草に思わず誰もが笑みをこぼしそうになるが、直後にその幼児の口からすさまじい爆弾発言が飛び出した。

 

『ママ?』

「「「「誰が!?」」」」

 

 ソニックダイバー隊四人全員が同時に叫んだ所で、いきなり通信が断絶する。

 

「切られた!?」「今大事な事言った! すごい大事な事言った!」「すぐに繋ぎ直して!」「あ………」

 

 騒ぎ立てる音羽、エリーゼ、瑛花だったが、そこで可憐が背後に嶋がいる事に気付く。

 

「管制室で何を騒いでいるか! 貴様ら! 作業の邪魔になるから退室しろ!」

 

 嶋の怒声が響き渡り、ソニックダイバー隊四人全員が管制室から叩き出され、以後必要時以外出入り禁止を言い渡された。

 

「すっごい怒られた………」

「大事な所だったのに………」

「あの子、明らかにこっち見てママって言ってたわよね?」

「でも、誰を見てたかは………」

 

 めげてないソニックダイバー隊が顔を突き合わせ、先程の事を討議し始める。

 

「さっきの映像を思い出そう。肌の色とか髪の色とか」

「15年後って事は、誰が子供産んでても不思議じゃないし」

「それはそうだけど………」

「ただあの年齢だと判断も少し難しいかと………」

「ちらっとしか見えなかったしね………そうだ! ヴァローナは何か知らな…」

「プロフェッサーから今データロックが来たよ。喋れないね~」

「先に喋らせとくんだった………」

 

 この事が各所に伝わり、パラレルワールドの違う意味の恐ろしさとして知れ渡る事となった。

 

 

 

「危なかった………」

 

 ラインは確保したまま、通信を切ったアイーシャが小さく息を吐く。

 

「ママいたね」

「ちょっとママだけどママじゃない。まあ分からないだろうけど」

「うん?」

 

 アイーシャは幼児に説明するが、無論理解出来ようはずもない。

 そこでドアがノックされ、一人の女性が入ってくる。

 

「すいません、ウチの子こっちに…いた!」

「ママ!」

 

 入ってきた女性に、アイーシャは幼児を手渡す。

 

「ごめんなさい、最近この子簡単なロックくらいは外せるようになっちゃって」

「将来有望だな」

「しんきいないけど、ママいた」

「え?」

「ちょっと昔のデータ整理をしていた」

「ごめん、邪魔しちゃったわね。じゃあまた今度皆でも呼んでゆっくりと」

「そうだな、七恵」

 

 今度はきっちりロックしておこうと決めつつ、アイーシャは七恵とその娘を見送った。

 

 

 

「これらが、昨夜決まった内容だそうよ」

 

 帝国劇場の作戦室で、華撃団隊員達は昨日の会議で決まった統合組織の骨子案をかえでから説明されていた。

 

「取り敢えず、紅蘭は技術班としてすでに動いてるようよ」

「帰ってこなかったのはそれですね」

「つうか隊長も前支配人も 帰ってきてねえんだけど」

「明け方近くまで会議してたそうよ。向こうで仮眠してから帰るって」

「疲労はまずい。回復は優先」

「じゃあお兄ちゃんまだ帰ってこないのか~」

 

 花組隊員達も手渡された資料を見つつ、あれこれ呟く。

 

「巴里と紐育でも何人か特別班に選抜されるらしいわ」

「感知・解析班とか治療班には打って付けの人達もいますしね」

「詳しい所はまた後日のようね。人員選抜にかかりそうだし」

「保有免許、技能、能力詳細を名簿化して提出とあるわね。どこまで書けばいいのかしら?」

「それはこちらでやっておくわ。書く事多そうだけど」

「お~みんなここやったか」

 

 名簿制作について話し合っている最中、学園に行ってたはずの紅蘭が戻ってくる。

 だがその顔を見て全員がぎょっとした。

 

「こ、紅蘭?」

「すごい顔デ~ス………」

「大丈夫か、オイ………」

「あ~、議論が白熱しとってな~。終わったのついさっきや」

 

 目の下に明らかにクマが浮かんでいるが、テンションだけは異様に高い紅蘭に仲間達は心配そうに声を掛けるが、当人は至ってハイテンションのままだった。

 

「パラレルワールドいうんは面白いモンやな~。貴重な意見がたくさん聞けたわ。まあ理解できんのも有ったんやけど」

「ひょっとして、紅蘭みたいなのがたくさん?」

「篠ノ之博士は間違いなくそっちだと思うわ………」

「でも、宮藤博士はマトモに見えたぜ」

 

 そこはかとない不安を覚えつつ、花組がこそこそ話すが、紅蘭は聞いてないのかハイテンションのまま続ける。

 

「そいでな、色々話したんやけど、結局一つの結論に落ち着いたわ」

「それは?」

 

 かえでが聞き返すのを、紅蘭はにやりと笑みを浮かべる。

 誰もが嫌な予感がしながら、紅蘭の返事を待つ。

 

「これから一緒にやってく言うなら、互いの実力把握が必要やろ? そやから、一度全員で戦ってみよういう話や」

『全員?』

「そや。まだ技術陣だけでの話で上にこれから話通す予定なんやけど、ようは交流試合の全体版。それが互いの事知るには一番手っ取り早いいう話になったんや」

 

 嬉々として話す紅蘭に、花組隊員達は顔を見合わせるしかなかった………

 

 

 

AD1945 ガリア共和国 パ・ド・カレー

 

 ネウロイから開放され、復興が進みつつある農業地帯の上を、三人のウィッチが飛んでいた。

 

「また家が増えましたわね」

 

 先頭を行く、金髪のロングヘアにメガネをかけ、シャルトリュー(灰色猫)の耳を持つウィッチ、元501統合戦闘航空団のペリーヌ・クロステルマン中尉が、書類を確認しながら呟く。

 

「ええ、今度は一回に3件も増えたみたいです」

 

 彼女の右に並んで飛ぶおさげ髪にスコティッシュフォールド(折れ耳猫)の耳を持つウィッチ、同じく元501統合戦闘航空団のウイッチ、リーネことリネット・ビショップ曹長が手にしたレポートに書き込みながら答える。

 

「これなら、もう少しで一段落付きますね」

 

 ペリーヌの左を飛ぶ、ショートヘアにアナウサギの耳を持つペリーヌの後輩に当たる自由ガリア空軍のウィッチ、アメリー・プランシャール軍曹が手にしたカメラで写真を取りながら微笑む。

 

「そう言えばペリーヌさん、あの話どうするんですか?」

「506の件ですわね? 正直まだ迷ってますの」

「でも名誉な事じゃないですか」

「ガリアの復興はまだ途中なのに、私が抜けるのも………」

 

 リーネとアメリーに濁した言葉で返しつつ、ペリーヌは迷っていた。

 

「どちらにしろ、返事はまだ待ってほしいとは伝えてありますし、こちらが一段落つくまでは向こうも急かすつもりはないそうです」

「でも、聞きました? あの噂」

「あちこちの前線でネウロイじゃない奇妙な敵が出たって話ですよね? なんでも、接触したのミーナ隊長達らしいですよ?」

「それはそれで気になる話ですわね………」

 

 どこかから伝わってきた噂に、ペリーヌとリーネは、前に有った世界の壁を超えた戦いを思い出さずにはいられなかった。

 

「あれ? 誰か来てますね」

 

 ペリーヌの収めるクロステルマン領地の館に帰還しようとした時、無骨な軍用トラックが止まっているのにアメリーが気付く。

 

「また軍から何か言ってきたのかしら?」

「でもあれ、カールスラントの車両じゃ………」

 

 ガリア有数のウィッチとして、色々な所から引っ張り出されようとするのにうんざりしていたペリーヌだったが、リーネがそれが普段のとは違う車両である事に気付いた。

 

「カールスラント? 誰かしら?」

 

 さすがに予想外の来客らしい事に、ペリーヌは首を傾げつつ、館のそばに造られた滑走路に着陸する。

 

「お帰りなさいませ。先程からお客様がお待ちです」

 

 主の帰還を待っていた老執事がそう言いながら、滑走路のそばに立つ小柄な人影を指す。

 

「お久しぶりです。クロステルマン中尉、ビショップ曹長」

「ウルスラさん!」

「ウルスラさんじゃないですか。どうしたんですか? 急に………」

 

 その予想外の客人、エーリカ・ハルトマンと瓜二つの顔を持つメガネをかけた少女、エーリカの双子の妹でウィッチエンジニアのウルスラ・ハルトマンの来訪にペリーヌとリーネは心底驚く。

 

「今回私はガランド少将の命で来ました」

「ガランド少将の?」

 

 更に予想外の名前に、ペリーヌの顔が曇る。

 そんな相手を気にもせずに、ウルスラはある一枚の書類を取り出す。

 

「ミーナ・ディートリンケ・ヴィルケ中佐の要請をガランド少将が受諾。501統合戦闘航空団が再結成される事になりました。お二人に緊急の招集依頼が出ています」

「再結成!?」

「ホントですか!?」

 

 完全に予想外の話に、ペリーヌ、リーネ共に驚愕の声を挙げる。

 

「そ、そんな困ります! 今ペリーヌさんにいいなくなられたら、ここの復興事業はどうなるんです!」

 

 後ろで話を聞いていたアメリーが慌てて反対意見を出す。

 

「そうですわ………私が今ここを離れる訳には」

「………すいませんが、続きはここでは」

「そうですか。では今お茶の準備を」

 

 ペリーヌも困惑するが、ウルスラが目配せし、それに気付いた老執事が一礼して室内へと促す。

 来賓室へと移動した一行が、お茶が出されるより前にウルスラから重要機密とされた封筒を差し出される。

 

「これが、501再結成の理由です」

「これは………」

 

 その封筒の中から、明らかにネウロイとは違う何かと戦うウィッチ達の写真が出てき、中に見覚えの有る顔も幾つも有った。

 

「これ、シャーリーさんとルッキーニちゃんだ!」

「こっちの人知ってます! 確か、扶桑の西沢飛曹長です!」

「これは一体………」

「ペテルブルグ、トブルク、そしてベルギカに置いて、ネウロイとは全く違う敵の存在及び交戦が確認されています。そして、武装神姫達の派遣も」

「武装神姫が!? ではこれは………」

「はい、パラレルワールドからの敵に間違いありません」

 

 ウルスラの説明に、ペリーヌのみならずリーネとアメリーも愕然としていた。

 

「のみならず、502統合戦闘航空団及び31統合戦闘航空団の次元転移も確認されました。ただし、すでにこちらからのその所在と安全も確認されています。そして、前回と同じように違う世界から転移してきた方々も」

「また、始まるのですね。あの数多の世界を巻き込んだ戦いが」

「はい」

 

 ペリーヌの問いかけに、ウルスラははっきりと答える。

 

「ガランド少将とミーナ中佐にお伝え下さい。こちらの用意が済んだら、すぐに合流すると」

「ペリーヌさん!」

「アメリーさん、貴方もあの大西洋の決戦には参加していたでしょう。私達は行かなくてはなりません」

 

 再び戦場に飛ぶ時が来たと、ペリーヌは決意した………

 

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