第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP49

異なる世界 とあるマンション

 

「JAM?」

「そう呼ばれとるらしい。詳細は受け取る前にこの世界に派遣されてしもうて、不明じゃ」

「そう、取り敢えず参考にはなるわ」

「ならばオーナー、この状況をどうにかしてほしいのじゃが………」

 

 マンションの一室、黒騎 れいがミズキから現状の説明を聞いていた。

 が、説明するミズキはどこか渋い顔だった。

 

「ダメ。私をオーナーと言うなら、言う事を聞いてもらうわ」

「しかしの………」

 

 有無を言わせぬれいに、ミズキが顔をしかめた所で、背後でインコのピースケが一声鳴いた。

 なぜかミズキはピースケと同じ鳥かごに入れられ、頑丈そうな電子ロックまで付けられていた。

 

「あいつから守ってくれたのは感謝するわ。けど私の邪魔はしないで」

「しかし…!」

 

 反論を許さず、れいは自室へと籠もる。

 残ったミズキは思わずため息を漏らしていた。

 

「まずったかの………まさか反体制派とは思わなんだ」

 

 れいからの話を少しは聞いたミズキは、鳥かごの中にいながらあぐらをかいて考え込む。

 

「自らの世界を取り戻すため、この世界の高出力エネルギー機関を破壊する、か。果たしてそのような事でどうにかなるのか?」

 

 背後で再度ピースケが鳴いた事で、ミズキはそちらを見る。

 

「わらわ達のオーナーはとんでもない堅物じゃな。話を少しは聞いてくれるが、聞くだけじゃ。はてどうすればよいか………」

 

 考え込むミズキは、れいに命令していた謎のカラスを思い出す。

 

「あやつ、何かが引っかかる。何じゃったか………」

 

 

 自己のデータバンクに何か該当する存在が無かったか、ミズキは検索する。

 ちなみにピースケはそんなミズキを不思議そうに見つめていた。

 

 

 

AD1929 パリ

 

「目標地点の制空権、完全確保を確認」

「リボルバーカノン、目標座標入力済み、いつでも行けるです!」

「全員準備はいいね?」

『いつでも!』

 

 メルとシーが出撃準備を整え、凱旋門地下からその姿を表しているリボルバーカノンが、今激戦が繰り広げられている名も無き無人島へと砲口を向け、グラン・マの声に巴里華撃団・花組の皆が応える。

 

「リボルバー・カノン、発射!」

 

 グラン・マがトリガーを引くと同時に、リボルバーカノンから光武F2を内包した射出ポッドが次々と射出され、目的地へと向かっていく。

 

「今あちらはどうなってるんだい?」

「大神司令を中心に陸戦部隊が順次降下、展開中!」

「向こうも陸戦部隊を出してきました! 地上戦が始まってます!」

 

 司令室の画面に中継で送られてくる映像を見ながら、グラン・マは視線を鋭しくし、メルとシーは一緒に送られてくる各種データを解析していた。

 

「現在確認されているのは東京でも確認された陸戦型JAMとウィッチのデータベースにある陸戦型ネウロイが中心で…」

「あれ? なんか妙なのがいるです?」

 

 データを解析していたメルの報告途中で、シーが首を傾げる。

 

「シー、何がいるって?」

「ほらあれ。なんか粘土みたいな、変な芸術作品みたいな…」

「あれは…」

 

 

 

「はあっ!」

 

 気合と共に振るわれた双刀が、足の生えた戦車のような陸戦型ネウロイをコアごと両断、崩壊させていく。

 

「帝国華撃団花組、総員降下完了! 各自戦闘に入りました!」

「巴里華撃団がまもなく到着する! 上空のウィッチと協力して、まずはその降下地点を確保だ!」

 

 マリアの報告に重ねるように命じながらも、大神の剣は止まらない。

 

「すご………」

「確かにありゃ頼りになるわ………」

 

 隣で降下、戦闘に突入していた陸戦ウィッチ隊が、大神の獅子奮迅の活躍に唖然としていた。

 

「目標の地下に突入するためにも、地上の制圧は必須よ! 各自陣形を維持し、弾幕を形成して!」

 

 陸戦ウィッチ隊隊長のマイルズの指示が飛ぶ中、陸戦ウィッチ隊は手にした砲を各所から出現する敵へと向かって撃ちまくる。

 

『そのまま陣形を維持して! ティーガーが降りるわ!』

「了解!」

「あれ、降下用に作ってあったっけ?」

「戦車用の降下装置どっかから持ってきたらしいわ………」

 

 弾幕を形成する陸戦ウィッチ隊にフレデリカからの通信が届く中、エイハブから一際大きなティーガー型ストライカーユニットが降下を開始する。

 

「魔導榴弾装填! 危険を感じたら即発砲よ」

「了解!」

 

 フレデリカが地上を警戒しつつ、操縦手のシャーロットに呼びかける。

 

「見覚えのある連中が多いのが逆に救いね。手の内は読めるわ」

「そうですね………あれ?」

「どうかした? あそこ、見覚えの無いのが…」

 

 シャーロットの指摘に、フレデリカがそちらに視線を向ける。

 そこには、地面からせり出した搬出口と思われる所から、文字通り這い出すような形でてくる、異様に目立つ蛍光色の体表に粘土細工のような姿の存在がいた。

 

「あれは、ひょっとして…」

 

 

 

「シャーリー! あれ! あれがいる!」

「本当だ!」

 

 補給を終えて翔鯨丸から文字通り飛び出してきたルッキーニが、大声を出し地面を指差し、気付いたシャーリーも顔色を変える。

 

「総員に緊急連絡! 今出てきた粘土細工みたいな奴に最大級警戒! 通常攻撃はすり抜けるし、触られたら炭になるぞ!」

「前回の交戦データを配信、要注意を」

 

 シャーリーが通信に叫ぶ中、隣を飛んでいた飛鳥も分かっている限りのデータを配信する。

 

 

「あれか、ウィッチの世界で出てきた新型は!」

「確認するぞマスター!」

 

 大神が新たに出てきた敵を見る中、光武二式の頭頂からプロキシマがその敵、異なる世界でノイズと呼ばれる敵へと向けてイクシオンライフルをショルダーキャノンモードで攻撃する。

 だが放たれた攻撃はまるで幻影のようにノイズをすり抜けていった。

 

「本当にすり抜けた! 攻撃効果認められず!」

『大神さん! これって!』

「ああ、グノーシスに似ている。だが…」

 

 さくらが前の戦いで戦った異なる世界の敵を事を思わず思い出す中、大神はためらいなく突進、手にした白刃をノイズへと向けて横薙ぎにすると、一撃で相手は両断、霧散していく。

 

「報告通りだ! 霊力か魔法力を上乗せした攻撃ならば効く!」

「だがマスター、物質を透過するのなら、近接戦は危険だ!」

 

 大神機を敵と認識したのか、ノイズが集団で一斉に襲ってくるが、それを銃撃や砲撃、ビームが迎え撃つ。

 

『それの対処はこちらにお任せ下さい!』

『また随分けったいな連中や!』

『全然美しくないデ~ス!』

 

 マリア機を中心とし、紅蘭機、織姫機の遠距離攻撃を主体とする者達がノイズに攻撃を加え、更にそこへ降下したティーガー型の砲撃も加わる。

 

「そいつは任せた! 絶対に近寄らせるな!」

『了解!』

 

危険度を憂慮して、大神も一度ノイズのそばから退避、他の敵と交戦を続ける。

 

『一郎おじさ…じゃなくて大神司令! 紐育華撃団も降下して陸戦に…』

「待て! 用心して上空から援護を!」

『了解!』

 

 上空を旋回しながら援護していた紐育華撃団を念の為に待機させつつ、大神は戦況を見直す。

 

「妙だ。海でも空でも、中核となる大型や強敵を用意していはずだが、見当たらない………」

「種切れかもしれないぞ、マスター」

 

 大神機の頭頂でセンサーによる援護活動をしているプロキシマが大神の呟きに返すが、大神の中での違和感は大きくなっていく。

 

「何だ、何かがおかしい………何かを見落として」

「マスター、巴里華撃団も到着した! 敵戦力を一気に殲滅しよう!」

 

 プロキシマが上空のポッドから降下してくる光武F2を指差しながら叫ぶ中、大神はその様子に違和感が最大になっていく。

 

『大神さん! 巴里華撃団只今到着です!』

『交戦に入る! あの醜いのには要注意だ!』

 

 エリカとグリシーヌの声が響く中、三華撃団が揃い踏みした戦場は一気に優勢になっていく。

 だが大神にはグリシーヌの言葉に何かを感じ取る。

 

「要注意、アレに………まさか!?」

「マスター?」

「ウィッチ隊! すぐに陣形を放棄! 華撃団総員もその場に留まるな!」

『大神司令? 何を…』

「急げ!!」

 

 大神の突然の命令に、ウィッチ隊が僅かに戸惑う。

 だが、その時に一番大型のティーガー型ストライカーユニットの死角からノイズが姿を表し、襲いかかろうとする。

 

「!?」

 

 搭乗者のシャーロットが気付くより一瞬早く、飛来したミサイルがノイズに直撃、爆風に煽られながらもシャーロットは慌ててティーガー型ストライカーユニットを退避させる。

 

「今の!」

「地面の下から!?」

『皆さん下がってください! 他にも出てきます!』

 

 シャーロットとフレデリカが何が起きたかを理解する中、紐育華撃団一の感知力で寸前で気付いて援護したダイアナが叫ぶ。

 その言葉を皮切りに、陸戦ウィッチ隊の足元から次々とノイズが姿を表していく。

 

「こいつら、地面をすり抜けてきたの!? 総員後退!」

「申し訳ありません隊長! 感知が遅れました!」

 

 マイルズも予想外の攻撃に驚く中慌てて部隊を後退させ、肩にいたフォートブラッグも自分のミスを認める。

 

「動き続けて! 止まったら狙われるわ!」

「それでは戦列が維持出来ません!」

「狙われないのが先決よ! まさかこんな手で来るなんて…」

「10時方向、中型ネウロイ!」

「3時方向からJAMも来ます!」

 

 陸戦ウィッチの陣形が完全に崩壊する中、迫ってくる敵に上空からの紐育華撃団の攻撃がそれを阻止しようとする。

 

『ダイアナさんはまたあいつらが出てこないかサーチを! 他の人達はウィッチの人達を援護してください!』

「その妙なのハこっちで! サーニャ!」

「分かったエイラ! シュナウファー少佐!」

「こっちは私が!」

 

 感知能力に優れたダイアナやエイラ、サーニャ、ハイデマリーが各自の能力で出現前にノイズの位置を特定、上空から攻撃を仕掛ける。

 

「く、結構数が多いゾ!」

「個々はそれほど強くないのですが………」

「地面の下から湧き出してくるのは大問題」

「そこをどいてください!」

 

 感知能力無しではどこから湧いてくるかも分からないノイズ相手に、地上部隊は完全に混乱状態に陥り、上空からの支援も思い通り行かなかった。

 

「地面の下に反応多数、JAMやネウロイもいるけど、あの不定形が多いようね………」

「見た目以上に奇怪な奴だが、対処法が分からん。こちらにはそこまで覗ける奴はいないからな」

 

 ミーナが固有魔法の空間感知で戦場を解析する中、隣に来たラルが顔をしかめる。

 

「ストラーフ、貴女のセンサーで分かる?」

「大体だったら。けど数が多すぎて………」

「この混戦状況では、マスターに知らせるのがせいぜいです」

「だろうな。陣形も何もあった物じゃない」

 

 ミーナからの問にストラーフとブライトフェザーが応え、ラルもノイズから逃げ惑いながらも戦闘している地上部隊を見て考える。

 

「一度降ろした物をまた上げるわけにもいかんしな」

「魔法力の類を持たない部隊を近寄らせる訳にはいかないわ。何か策は…」

 

 援護攻撃をしながらも悩む二人の隊長だったが、そこで大神からの通信が飛び込んでくる。

 

『誰か感知に優れた者で、敵の出現深度が分かる人はいるか!?』

「! 大神司令、501隊長のヴィルケです! 相手の出現地点はおそらく地表下、10m前後! 何か通路のような物が張り巡らされていると思います!」

『捕虜のいる地点まで通路のような物は!?』

「待って下さい………地表下に他にもかなりの通路がある模様! それ以上は私の能力では…」

『十分だ。つまり、少し位派手にやっても問題無いね』

「え?」

 

 大神からの通信の意味が分からず、ミーナが首を傾げるが、すでに下では動き始めていた。

 

 

「進次郎! ジェミニ君と降下! さくら君とオレと共に敵を引きつけつつ、島の四方に展開!」

『了解!』

『何々? とにかく了解!』

 

 大神からのいきなりの指示に進次郎はためらいなくフジヤマスターを降下、一瞬遅れてジエミニのロデオスターも降下、着地する。

 

「オレは北、進次郎は南、さくら君は東、ジェミニ君は西へ! あの不定形、霊力に弱いようだ。合図と共に地表下に一気に霊力を流し込んで殲滅する!」

「なるほど!」

「分かりました!」

「OK!」

「他の花組は援護を! 霊力の消費状況では、動けなくなるかもしれない!」

『了解!』

 

 大神の指示に、各華撃団が一斉に動き出し、島の四方に向かう者達のルート上の敵の排除、後方の護衛に徹し始める。

 

「………すごいわね」

「ああ、余程の信頼が有るようだ」

 

即座に連携して動き出した華撃団に、ミーナとラルの両名共に驚く。

 

「大神司令は帝都、巴里双方の隊長を歴任し、紐育華撃団でも一目置かれているという話よ。人望、実力共に稀有な人物ね」

 

 補給を済ませてきた圭子が、華撃団の迅速な動きに感心しながら二人の元に来る。

 

「こちらだとあそこまでの連携は無理ね」

「そこまで人望の有る指揮官がいないからな」

「全くね」

 

 ウィッチの隊長三人が全く同じ結論に達した所で素早く散開、部下達に指示を出しながら地上の援護に従事する。

 

「さて、噂の司令はどう出るのかしら?」

「見物では有るだろう、閣下」

 

 圭子が更に高度を上げて戦況を観察しようとし、サイフォスがセンサーの感度を上げる。

 

「マルセイユ! ライーサ! 真美! 出れる!?」

『補給は完了した、すぐ出るぞ!』

『こちらもです!』

『装備変更完了しました! こちらもすぐに出ます!』

「地上は大混戦よ、注意して!」

 

 補給のためにエイハブに一時帰艦していた部下達に指示を出しながら、景子は銃口を下へと向けるが、敵味方入り乱れる戦場に一度銃口を上げる。

 

「地中に隠れるネウロイなら聞いた事あるけど、完全に地面を透過してくるのがここまで厄介なんてね………戦術を練り直す必要がありそう」

「私達武装神姫にもそんな戦術マニュアルはインプットされていない。大神司令はよく対処出来ている」

 

 視線の下、島の四方に向かう四機の霊子甲冑を、他の霊子甲冑が的確にサポートしていく。

 

「華撃団は個々の能力も高いけど、集団戦闘は更に高いわね」

「紐育華撃団のチームワークも高かったが、東京とパリのはそれ以上だ」

「こっちの上官に見せたい光景だ事………」

 

 

 

「マスター、右前方から出てくる!」

「分かった!」

 

 プロキシマが己のセンサーに感知された箇所を示し、大神も半ば直感で突進しながら地面に刀を突き刺し、そこから湧き出そうとしていたノイズが貫かれ、霧散する。

 

「かなり独自のエネルギーパターンだ、今までのどの敵とも違う。故に感知はしやすいが………」

「それ以外が厄介過ぎる。他の三人は大丈夫か?」

 

 大神が島の四方に向かっている他の三機の様子を確認する。

 

『地下の敵が収束しつつあります! 注意して下さい! 位置はこちらで教えます!』

「分かりました!」

『こっちにも回しや! 援護するで!』

 

 美緒の指示でアーンヴァルがさくら機のサポートに付き、湧いてくるノイズを次々斬り捨て、送られてくるデータを元に紅蘭の援護攻撃も加わる。

 

「姫、こちらの観測データ回します」

『私も観測に徹します!』

『リカは念の為ダイアナさんの護衛に!』

『分かったぞ!』

『私も降りるぞ、地中なら狙える!』

『進次郎とジェミニの霊力消費を抑えさせろ。大神司令の作戦では、大量に霊力が必要になる』

 

 フブキとダイアナのサポートを元に、紐育華撃団が進次郎とジェミニを援護する。

 

「何もない所から出てきて、気持ち悪いよコイツら!」

「姫、正面!」

 

 ジェミニがノイズに思わず悪態をついた時、フブキの警告に一瞬反応が遅れ、足元から湧いたノイズがスターの装甲をすり抜けようとするが、コクピットに達する前に思わずジェミニが霊力を放出し、それに阻まれて弾かれる。

 

「あ、危な………」

 

 弾かれたノイズにきっちり白刃を突き刺して仕留めながらも、ジェミニの全身を冷や汗が吹き出す。

 

「油断は禁物です、姫」

「了解………」

『何やってんだい!』

 

 フブキの警告とサジータの怒声が響く中、ジェミニは若干移動速度を落として注意しながら島の隅へと向かう。

 

「みんな注意して! あいつら、装甲も何も関係無しにコクピット狙ってくる!」

「見た目が悪い割に、攻撃は正確のようです」

 

フブキが指摘する通り、周辺では地面から直接狙ってくるノイズに、陸戦ウィッチ達がシールドでかろうじて防いでいる光景が各所で広がっていた。

 

「ウィッチのシールドはすり抜けられないんだ!」

「そのようです。しかし、彼女達のシールドは一方向にしか張れません」

「早くなんとかしないと…!」

「姫、後方から!」

 

 ジェミニが急ぐ中、フブキの警告に思わず振り向きそうになるが、上空から飛来した銃撃が背後から襲いかかろうとしたノイズを貫き、霧散させる。

 

「援護する! そのまま進め!」

「ありがとう!」

 

 再出撃してきたマルセイユが、低空で水平飛行しながら叫び、ジェミニはそれに答えつつも足を早める。

 

『敵の動きが変化してます』

『四方に向かっている四機に敵が集中してる模様』

「分類問わずね。501各機は敵の足止めに専念!」

 

 サーニャとハイデマリーから報告を元に、ミーナは部下達に指示を飛ばし、501のウィッチ達が急降下しながら地上の敵を狙う。

 

「さくらさんは速度を落とさないで!」

「お願いね!」

 

 さくら機の頭上で、アーンヴァルがGEモデルLC5レーザーライフルをノイズ以外の敵に撃ちまくり、さくらは背後を任せて歩を緩めない。

 

「真美、大河隊長を援護!」

「はい!」

 

 圭子の指示で真美がボヨールド40mm砲を速射、フジヤマ・スターに群がろうとしていた敵をまとめて吹き飛ばす。

 

「彼女、大人しそうな割に戦い方が派手ですね………」

「ウチで一番のパワー派だからね」

「隊長、地下から更に来ます!」

 

 進次郎が真美の重火力に思わず呟いたのに並走してサポートしていたマイルズが苦笑するが、肩にいたフォートブラッグが地下からの反応を知らせる。

 

「ネウロイもたまに地面から来るけど、あいつらは更に厄介ね………」

「対処お願いします! こちら進次郎、島の端に到着!」

『こちらさくら、到着!』

『こちらジェミニ、こちらも到着! ってこっち来るな!』

『華撃団各員は配置についた四名を護衛! 配置についた四名は合図と同時に、全霊力を地下に放出、あの不定形を殲滅する!』

『了解!』

 

 大神の作戦を聞いた華撃団は即座に防衛体制を整える。

 

『ウィッチ隊に通達! 全霊力を放出後、こちらは戦闘が困難になる可能性が高い! 援護の準備を!』

『501、了解です!』

『502、了解した』

『31も了解!』

『それでは、構え! 3、2、1!』

 

 大神の合図で島の四方に陣取った四機の霊子甲冑が同時に刀を構えると、カウント共に地面に白刃を突き刺し、一気に全霊力を放出する。

 

「余力のある者は大神司令に続け!」

「全員はダメだ! 警戒は維持しろ!」

 

 グリシーヌが叫びながら自らの斧を地面へと突き刺し、サジータも鎖を地面へと打ち込みながら、警告する。

 放出された霊力は地表化の通路に達し、そこにいた敵に吹き荒れる。

 とっさに地上へと出ようとしたのか、ノイズが地面を透過して現れようとするが、放出された霊力を食らって霧散していく。

 JAMやネウロイも同様に霊力の放出を食らい、こちらは霧散までは行かなくてもダメージを食らい、そこを待ち構えていた華撃団やウィッチ達に次々と殲滅されていく。

 霊力の放出が終わると、そこには最早大した敵勢力が残っていなかった。

 

「さすが大神さん!」

「マスター、まだ全滅させたわけじゃないよ!」

 

 シスター・エリカが大神の作戦が成功した事に喝采を上げるが、アルトアイネスに指摘されて右手の20mmガトリングアーム「ザカリエル」を残った敵へと向ける。

 

『華撃団総員、残敵を掃討! 地下突入部隊に連絡、準備を…』

 

 全霊力を放出して呼吸が荒い状態の大神が次の指示を出そうとした時だった。

 

『大河さん! 地下から強力反応複数!』

『何か来る…』

『注意してください!』

『何だこいつは!?』

 

 上空にいた感知系四人がほぼ同時に警告を発する中、地面が揺れ、三つの大型の影が出てくる。

 

「こいつは!」

 

 一体は巨人と見まごうような大型のノイズ、一体は装甲列車のような外見をした頑強そうなネウロイ、そして最初に学園を襲った物とほぼ同一の陸戦型JAMだった。

 

「あんなのまだ隠してたの!?」

「迎撃態勢を…」

『離れてください!』

 

 ウィッチと華撃団が慌てて陣形を整える前に通信が響き、大型ノイズに次々と砲撃が炸裂する。

 

「効果有り!」

「やはり、あの不定形には私達の攻撃は効くみたい!」

「的も大きいから丁度いい」

 

 海上から吹雪と如月が砲撃効果を確認し、ランサメントが周囲から地上戦力が退避した事を確認すると合図を出す。

 

「全艦、大型目標に砲撃!」

 

 吹雪の号令と同時に、艦娘達の砲が一斉に火を吹く。

 

「狙いやすくていいデ~ス!」

「ダー、撤退前に全砲弾を消費しましょう」

「残存機を発艦させま…」

 

 金剛が次弾を装填しつつ笑みを浮かべ、エスパディアもうなずく中、加賀が矢をつがえようとするが、そこへ大型ノイズが体の一部を砲弾のように打ち出す。

 

「回避…」

「必要ない」

 

 吹雪が慌てて回避を指示しようとするが、そこへコンゴウが艦娘達の前に降り立ち、フィールドを形成。

 放たれた奇妙な砲弾はそれに阻まれるが、今度は大型ノイズから高速で触手が伸び、コンゴウのフィールドにぶつかったかと思うと、それを透過し始める。

 

「ミストコンゴウ!」

「なるほどな」

 

 金剛が叫ぶ中、コンゴウは無造作に透過してきた触手を掴むと、それを一息に引き千切る。

 

「ちょ、霧のコンゴウさん!?」

「それ触ったらダメって………」

「有機体ならば、の話だろう。ナノマテリアルで構築されているこの体なら問題無いようだ」

 

 暁と電が慌てるが、コンゴウは自らの手を見ながら平然としていた。

 

「これは、深海棲艦とまた違うな。完全に攻撃不能ではないようだが、奇妙としか言いようがない奴らだ。普段は位相空間に潜んでいるのか。つまり見えているのは位相空間から見える影に過ぎない」

「影?」

「そして攻撃する時のみ、位相空間から出てくる。つまり」

 

 吹雪が首をかしげる中、コンゴウは更に襲ってくる触手を前に、フィールドを解除、更にグラフサークルを展開して演算力を最大にする。

 

「向こうの攻撃の時、こちらの攻撃も届く」

 

 瞬時にして形成したフィールド剣でコンゴウは襲いくる触手を次々切り裂くが、三本目に切りかかった瞬間、フィールドの刃が触手をすり抜ける。

 

「ミストコンゴウ!」

「くっ」

 

 金剛が叫ぶ中、コンゴウが触手が直撃する瞬間に片手でそれを止めようとするが、止めきれずに吹っ飛び、そこに金剛の放った砲撃が触手を千切り飛ばす。

 

「やはり難しいか………」

「無茶はノーね!」

 

 海面に作り出したフィールドでかろうじて態勢を立て直したコンゴウが呟く中、金剛が叱りつける。

 

「マイルズ隊は大型不定形の右翼、パットン隊は左翼! 艦娘との十字砲火で一気に片をつけるわ!」

 

 艦娘達からの援護に、マイルズが即座に陣形を立て直し、大型ノイズを包囲する。

 

「FIRE!」

「砲撃開始!」

 

 多数の砲から次々と砲弾が発射され、大型ノイズへと炸裂する。

 

「効果はあるようだけど…」

「デカいだけあって、かなりタフです」

 

 被弾した箇所はダメージになってはいるが、体積か組成か、小さいのと違ってすぐには消滅しない事にマイルズとフォートブラッグは僅かに焦る。

 

「隊長! 五時方向からネウロイが!」

「マイルズ隊、一時散か…」

「ちぇすとぉぉ!」

「ハアァァ!」

 

 文字通り突っ込んでこようとする装甲列車型ネウロイにマイルズが部下を退避させよううとするが、そこにカンナ機とグリシーヌ機が横手から突っ込み、装甲列車型ネウロイの軌道を強引に変える。

 

「こいつはアタイ達に任せろ!」

「中のコアを壊せばいいのだったな!? ならば簡単だ!」

 

 拳と斧を構えるカンナ機とグリシーヌ機に、周囲の華撃団も一斉に装甲列車型ネウロイを取り囲む。

 

「分担した方がよさそうね」

「他の隊もそう判断してます」

 

 マイルズがネウロイを華撃団に任せる事にし、もう一体の方を見る。

 大型JAMには、空戦ウィッチ達がすでに攻撃を開始していた。

 

「胴体には普通の攻撃は通じないわ!」

「足だ! 足を狙え!」

 

 巨大な甲虫を思わせる大型JAMに、ミーナとラルは学園襲撃の時のデータを元にまずは動きを封じる作戦に出る。

 

「他の敵と合流させないで! この場で留めないと!」

「そっちはなんとかなりそうだけど、問題はあの硬さだね」

 

 ポクルイーシキンが声を張り上げながら銃撃する中、クルピンスキーは試しに胴体部分に撃った弾があっさりと弾かれるのを確認する。

 

「足は任せた! オレは本体を叩く!」

「コアが無いなら、完全に破壊するまでだ!」

 

 他のウィッチ達が足止めに専念する中、直江が固有魔法の圧縮シールドを拳に込めて突撃し、反対側ではバルクホルンが固有魔法の怪力でどこから持ってきたのか鉄骨を振りかざして双方が大型JAMを渾身の力でぶん殴った。

 

「ぐっ!?」

「これは!」

 

 返って来た手応えに直江は顔をしかめ、

バルクホルンは愕然とする。

 小型ネウロイならばコアを狙わずとも撃墜出来る程の双方の攻撃は、相手の表面に僅かにヒビが入っただけで、直江の手は痺れ、バルクホルンの鉄骨はひん曲がっていた。

 

「くそ、予想以上に硬えぞ!」

「注意しろ! これは強敵だ!」

「あれどうやってドリルで穿ったんだろ………」

「さあ?」

 

 直江とバルクホルンの警告に、ニパとリーネが首を傾げるが、大型JAMの各所に燐光や機銃が出てきた事にウィッチ達が一斉に反応する。

 

「総員防御!」

「離れろ!」

 

 ミーナとラルの声が響いた直後、大型JAMの各所からビームと銃弾が放たれる。

 

「反撃してきた!」

「前のには機銃なんてついてなかっただろ!」

「改造したのか!」

 

 ニパと直江がとっさにシールドを展開、バルクホルンはビームをギリギリで回避しながらついでにひん曲がった鉄骨を大型JAMへと投げつける。

 

「攻撃の手を緩めるな! 動き出されたら事だ!」

「火力の低い者は機銃を潰して!」

 

 バルクホルンが鉄骨を投げつけても平然としている大型JAMに背負っていたMG42を速射しながら叫び、ポクルイーシキンが優先度を指示しつつも自ら機銃を狙い撃ちしていく。

優先度を指示しつつも自ら機銃を狙い撃ちしていく。

 

「ふん、まだるっこしいな」

 

 上空からその様子を見ていたマルセイユが、マガジンを交換した後、上空から一気に急降下していく。

 

「下にいる奴は下がれ! 巻き込まれてもしらないぞ!」

「マルセイユか! 退避だ!」

 

 上から突っ込んでくるマルセイユに気付いたバルクホルンが率先して下がり、他のウィッチ達も慌てて距離を取る。

 急降下しながら銃口を向けるマルセイユに、大型JAMのビームや銃弾が放たれるがシールドと驚異的な機動でそれらを次々とかいくぐったマルセイユは、狙い済ましてトリガーを引く。

 放たれた銃弾は、先程の攻撃でひび割れた箇所に正確に集弾しヒビを更に拡大、そしてとうとう分厚い装甲を貫いて内部へと到達する。

 

「ざっとこんな物か」

 

 1マガジン撃ち尽くしたマルセイユが再度上昇しながら、背後から追撃してくる大型JAMの攻撃を後ろ目で回避していく。

 

「すごい………」

「あれは彼女だからできる芸当よ。真似しないようにね」

 

 後方からの援護に徹していた静夏が絶句するのを、隣で同じように後方援護していたロスマンが忠告する。

 

「突破口が出来たわ! 狙える人は破損点を狙って!」

「狙える奴だけでいいぞ! 後は足止めに専念しろ!」

「真美! 狙える?」

「やってみます!」

 

 ミーナとラルの指示が飛ぶ中、圭子の指示で真美がボヨールド40mm砲を構える。

 

「撃ちます!」

 

 40mm砲弾が速射され、大型JAMへと直撃。

 次々と砲弾は直撃するが、僅かにマルセイユが貫いた破砕点からはずれていたが、ヒビを更に大きく拡大させた。

 

「続くぞルッキーニ!」

「うんシャーリー!」

 

 それに続けとばかりに、シャーリーがルッキーニの手を持って固有魔法の加速を使って回転、高速状態で射出されたルッキーニが固有魔法の多重シールドを展開、ひび割れた箇所へと思いっきり体当たりする。

 衝撃でヒビは更に拡大、大型JAMの胴体の半ばまで達する程になる。

 

「501の人達って派手だね………」

「そうだね………」

「いや、全員そうって訳じゃ…」

「トネール!」

 

 バルクホルンの鉄骨攻撃やシャーリーとルッキーニの合体攻撃を見たジョゼと定子が呆然と呟くのをリーネが否定しようとするが、そこへペリーヌの固有魔法の電撃が炸裂する。

 

「………そうかも」

「動きが止まった! 一気に仕留め…」

 

 リーネが苦笑する中、マルセイユが率先して大型JAMの破損箇所に銃口を向けるが、そこで大型JAMの各所から何かが上空へと射出される。

 

「何だ!?」

「あれって…」

「まずい! 対地攻撃兵器だ!」

 

 バルクホルンやリーネが射出された物を見る中、一度それを見た事があるウィッチ達は一斉にシールドを展開させる。

 

「防御に全魔法力を集中!」

「シールドの小さい物や弱い者は複数で張れ! 来るぞ!」

 

 圭子が叫びながら真美のシールドの下に潜り、ラルが部下達に叫びつつ部下に密集態勢を取らせた直後、射出されたポッドから無数のスプレッドニードルが射出された。

 

「来たぁ!」

「うわわっ!」

「………あれ?」

 

 ウィッチ達がシールドにありったけの魔法力を込めて対抗しようとするが、程なくしてニードルが降ってこない事に気付く。

 

「何が………」

「これは………」

「大丈夫ですか!?」

 

 上空を見上げたウィッチ達は、そこにある一際巨大なシールドとそこに剣山がごとく突き立つニードル、そしてそれをほとんど一人で受け止めた芳佳の姿に気付く。

 

「あれを一人で!?」

「ミーナめ、あんなのまで隠してたのか………」

 

 圭子とラルが驚く中、501のウィッチ達は即座に動いた。

 

「ミヤフジ、それそのまま!」

「はい?」

「シュツルム!」

 

 シールドを解除して上昇していくハルトマンが声をかけながら、己の固有魔法の疾風を展開、芳佳のシールドを通り抜ける際に大量のニードルを巻き込み、それを携えながら針の竜巻となって上空で旋回、ニードルごと大型JAMへと向かっていく。

 

「お返しだぁ!」

 

 急降下の加速も加え、寸前でハルトマンは脱出、針の竜巻が大型JAMへと直撃してその巨体に己のニードルが次々と突き立っていく。

 

「一斉攻撃!」

 

 それをチャンスと見た圭子の号令を皮切りに、ウィッチ達が一斉に大型JAMへと攻撃を開始、今までの攻撃のヒビに加え、突き刺さったニードルがもろくなっていた装甲に止めとなって弾かれていた銃弾が突き刺さっていき、そこにロケット弾や砲弾も加わり、とうどう限界を突破して大型JAMは爆散、その破片を無数に周辺にばら撒いていった。

 

「一丁上がり!」

「他はどうなっている!」

 

 直江が思わずガッツポーズを取り、バルクホルンが他のニ体の方を振り向く。

 そこでは…

 


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