第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

50 / 66
第二次スーパーロボッコ大戦 EP50

 

「遠距離攻撃出来る機体は相手の前方を攻撃! 足場を崩せば速度は落ちるはずだ!」

 

 コクピット内で支給されていた回復ドリンクを飲みながら、大神は指示を出す。

 

「相手の速度が乗っている間は不用意に手を出すのは危険だ!」

「紐育華撃団は上空から援護攻撃を…」

 

 大神に続けて新次郎の指示も飛び交うが、車輪の代わりに無数の節足を思わせる足で動く装甲列車型ネウロイは、上部の砲塔から連続して発砲してくる。

 

「散開!」

「早い割に狙いは正確だ」

「お返しデ~ス!」

 

 大神の指示を待つまでもなく、霊子甲冑が即座に動いて砲弾をかわすが、高速移動中とは思えない精度にレニが関心するが、背後にいた織姫が霊子レーザーで撃ち返す。

 だが放たれた霊子レーザーは装甲列車型ネウロイの表面をわずかに傷つけるだけだった。

 

「そんな!?」

「気をつけろ! こいつ相当硬えぞ!」

「先程の攻撃もほとんど効いていない! これは容易ではないぞ!」

 

 驚く織姫に、カンナとグリシーヌが最初に攻撃したはずの箇所にほとんど損傷が無い事に注意を喚起する。

 

「ダイアナさん! コアの場所を!」

『今確認して………これです! 恐らくちょうど中央部、ど真ん中です!』

「アレの一番奥!?」

「間違い有りません」

 

 進次郎が上空で感知に重視しているダイアナに確認し、ダイアナが指摘した箇所をジェミニが驚くが、フブキも己のセンサーで同じ箇所を確認していた。

 

「まずは速度を落とさせる事だ! この速度差は…」

「マスター、前!」

 

 大神が作戦を考える中、プロキシマがこちらへと向かってくる装甲列車型ネウロイに気付き、大神がとっさに横に跳んだ直後、ヘッド部分から発射された極太のビームがかすめていく。

 

「正面も危険か!」

「高速の装甲ハリネズミといった所だね。どう対処する?」

「いや、みんな既に分かっているようだ」

 

 プロキシマの問いかけに大神が装甲列車型ネウロイの方を見る。

 そこでは、各華撃団の霊子甲冑がすでに動き始めていた。

 

「それ、行くよ!」

 

 フライトモードで接近したハイウェイスターが装甲列車型ネウロイの上空で変形しつつ強引に着陸、武装のチェーンを装甲列車型ネウロイへと打ち込む。

 

「荒馬乗るのは慣れてるよ!」

 

 チェーンを引っ張り、装甲列車型ネウロイを強引に制御しようとするサジータだったが、上部砲塔がそちらに狙いをつける。

 だが発砲の寸前、砲塔はいきなりネジ曲がり、更に連続で撃ち込まれた蒸気砲で破壊された。

 

「次はそっちの!」

「分かった!」

 

 サジータに続いて瞬間移動で装甲列車型ネウロイの上へと転移してきたアイリス機とコクリコ機が、ニ機がかりで上部砲塔を次々と破壊していく。

 

「頼りになるねぇ!」

「任せて!」

「次はあっち!」

 

 揺れる上部で動き回る霊子甲冑を振り落とそうと装甲列車型ネウロイは車体を揺らすが、ハイウェイスターは打ち込んだ鎖を引っ張って、むしろ制御しようとし、アイリス機とコクリコ機はテレキネシスや身軽さで平然と乗りこなしていた。

 そんな中、装甲列車型ネウロイの側面に赤い光が灯り、ビームが発射されそうになるが、発射点を矢と銃弾が貫いて誘爆させる。

 

「やはり、あそこが狙い目です」

「不用意に近寄らないで。かなり威力があるわ」

 

 左右から矢と銃弾の狙撃でカウンターした花火とマリアが、次の攻撃を準備しつつ警告する。

 

「あかん、見た目は列車やけど、動輪じゃなくて節足だから走破性は結構高いで!」

「どうにかして速度を落とせないか! 決定打を打ち込めん!」

 

 紅蘭機が装甲列車型の軌道上に蒸気ランチャーを次々撃ち込んで地面を破壊するが、あまり速度が変わらない事にグリシーヌ機が手にした斧を強く握りしめる。

 

「この! 少しは大人しくしな!」

「するかな~?」

「無理じゃない?」

 

 サジータが打ち込んだ鎖で装甲列車型ネウロイの操作を試みるが、アイリスとコクリコが懸念する通り、多少の制御はともかく、制動は効かなかった。

 

「何か手はないんか…」

「おい紅蘭、ちょっと耳貸せ」

 

 誘導弾の残数を確認しながら紅蘭が思案を巡らせる中、ロベリアが寄ってきて秘匿回線で話しかけてくる。

 

「本気でっか!?」

「こんな1フランにもならない嘘をつく意味ないだろ。じゃあ行くぜ!」

「ほいな! 皆はん少し離れてや!」

 

 ロベリアの合図と同時に、紅蘭はありったけの誘導弾を一斉に放つ。

 

「これは…」

「何を?」

 

 皆が困惑する中、誘導弾は装甲列車型ネウロイの前方にくまなく着弾、壮大に爆風と土砂を吹き上げる。

 だが装甲列車型ネウロイは構わず、装甲と馬力に物を言わせて穴だらけとなったそこを突破しようとした。

 しかし穴を通り過ぎようとした瞬間、その穴にステルス機能も併用して隠れていたロベリア機が装甲列車型ネウロイの真下から両手のシザーハンズを突き刺した。

 

「ちいぃ!」

 

 重量と馬力さで弾き飛ばされそうになるのを必死にこらえながら、ロベリアはかぎ爪で相手の下部をえぐっていき、それが強引なブレーキとなって装甲列車型ネウロイの速度が急減速する。

 

「やった!」

「ならば続こう」

 

 上空から機を伺っていたリカが思わず歓声を上げる中、昴はいち早く反応、ランダムスターで一気に相手の前方に出ると変形、手にした斬鉄扇を構える。

 

「狂咲」

 

 そのまま舞うような動きで霊力のこもった斬鉄扇を振るい、すれ違いざまに装甲列車型ネウロイの片側の節足のほとんどを斬り飛ばしてしまう。

 

「降りるよ!」

「は~い!」「すごいな~」

 

 片側の節足を失い、バランスを崩した装甲列車型ネウロイから上部にいた霊子甲冑が次々と飛び降り、直後に完全にバランスを失った装甲列車型ネウロイが派手に横転してしばらく地面を派手に滑った後、停止する。

 

「今だ!」

「一気にしかけよう!」

 

 大神と進次郎の声が同時に響き、華撃団が一斉攻撃をしようとした時だった。

 

『待ってください!』

「これは…」

「しまった!」

 

 最初に上空のダイアナから、続けてフブキとプロキシマが声を上げる。

 それの意味は即座に判明した。

 横転していた装甲列車型ネウロイの中央に筋のような物が入ったかと思えば、突然のその体が前後で分離、斬り飛ばされた節足の再生半ばでそれぞれ違う方向に動き出す。

 

「な? 何だいこれは!」

「逃げるよ!」

「ど、どっち追えばいいの?」

 

 全く予想外の事にサジータが慌て、アイリスとコクリコもどっちを追えばいいのか困惑する。

 

『コアの反応が双方にあります! 元から、二機が合体してたんです!』

「つまり両方本物」

「ならば双方壊せばいいだけだ!」

 

 ダイアナの報告にレニとグリシーヌが同時に判断し、ランスと斧を振りかざすが、分離ネウロイは速度こそ先程ではないが小回りを増したのか、機敏な動きで攻撃をかわしていく。

 

「先程とは動きが違う。全く別種と判断」

「ええい、暴走の次はちょこまかと!」

 

 レニとグリシーヌが相手を追おうとするが、分離ネウロイの側面からビームが次々と放たれる。

 

「くっ」

「攻撃はそのままか!」

 

 とっさに二機はガードし、ビームはかろうじて装甲で防がれる。

 

「出力が落ちてる。これなら行ける」

「手を緩めるな! 畳み掛けるぞ!」

 

 グリシーヌの言葉を皮切りに、一斉攻撃が始まる。

 

「天罰です!」

 

 エリカ機が右手のガトリングアームで銃弾を連射、巴里華撃団でもトップクラスの霊力の籠もった弾丸が分離ネウロイの装甲を削り取っていく。

 

「まずは装甲を削れ! 中、遠距離攻撃で弾幕を構成!」

「相手の動きが細かい! むしろ狙いを定めない方がいい!」

 

 大神と進次郎が双方指示を出し、光武は距離を取って弾幕を形成、スターは上空からの攻撃を中心に分離ネウロイを追い詰める。

 

「外装が剥げてきました!」

「コアを一気に丸出しにしマ~ス!」

 

 ダイアナと織姫の攻撃がダメ押しとなって、分離ネウロイ双方のコアがあらわとなる。

 

「そこか!」

「行きます!」

 

 それを見たマリアと花火がコアを狙撃しようとするが、突然コアが覆い隠される。

 

「再生したんか!?」

「違う、体の一部をシャッターにしやがった! どういう作りしてんだい!」

 

 再生にしては早すぎる動きに紅蘭は困惑するが、ロベリアが手品地味た芸当でコアを隠した事に気付いて驚愕する。

 

「ならば、装甲ごと叩き切るだけだ!」

「ぶち抜きゃ問題ねえ!」

 

 グリシーヌ機とカンナ機がそれぞれ分離ネウロイに迫るが、分離ネウロイは更に機敏な動きで斧と拳をかわし、更にはビームで反撃してくる。

 

「くっ!」

「おわぁ!」

 

 なんとか防いだ二機だったが、それを皮切りに分離ネウロイは半ばデタラメにビームを周辺に乱射しまくる。

 

「これじゃあ近寄れねえ!」

「どうすれば…」

 

 最早デタラメに放たれる分離ネウロイのビームに華撃団は防戦一方になるが、そこで動く者が有った。

 

「大河隊長、刀でネウロイの光線攻撃に対処する方法を聞いているか?」

『加藤隊長から聞いたアレですか? ウィッチでも出来る人は数名と…』

「やるぞ」

『はい!』

 

 後方で指揮を取りながら、霊力と体力の回復を図っていた大神と進次郎が同時に動く。

 

「大神さん!」

「ボク達も!」

 

 続けてさくらとジェミニも動き、四機とも手に愛刀を構える。

 それを危険と判断したのか、分離ネウロイがそちらへとビームを放つ。

 

「はああぁあ!」

「たああぁ!」

 

 気合と共に大神、進次郎双方がありったけの霊力を刀に込め、向かってきたビームを両断する。

 

「露払いします!」

「全力で行くよ」

「破邪剣征・桜花天昇!!」

「ミフネ流、ランブリング・ホイール!!」

 

 前へと出たさくら機とロデオスターが、全霊力を注ぎ込んだ必殺技を放ち、放たれたビームごと分離ネウロイを攻撃、ビームで相殺しきれなかった攻撃が、再度分離ネウロイのコアをさらけ出す。

 

「決めるぞ!」

「了解!」

「狼虎滅却・天地神明!!」

「狼虎滅却・暴虎氷牙!!」

 

 隠す隙を与えず、大神と新次郎の必殺技が炸裂。

 コア諸共分離ネウロイを大きく斬り裂き、そしてとうとう分離ネウロイは分解霧散する。

 

「こちら大神、目標殲滅を確認!」

「あとは…」

 

 

 

「距離を取って! 図体は大きいけど、強度は大型ネウロイほどじゃない!」

「攻撃がいちいち気持ち悪いですが………」

 

 マイルズが指示を出しつつ、陸戦ウィッチ達が大型ノイズを砲撃する。

 だがマイルズの肩でフォートブラッグが言う通り、体の一部を飛ばしたり触手を伸ばしたりとネウロイとは違う攻撃に誰もが顔をしかめる。

 

「相互にカバーして! ウィッチでも直に触られたら危険よ!」

「触られただけでアウトなんて、ネウロイよりイカサマじゃない!」

「シールド解除したらダメよ! 撃ちまくれば…」

 

 パットンガールズが悪態をつきながら砲撃を続ける中、背後の地面から突然触手が飛び出してくる。

 

「え…」

「あぶな~い!!」

 

 予想外の自体に反応出来ないパットンガールズだったが、銃剣を構えていた古子が飛び出して触手を薙ぎ払う。

 

「ひょっとして、地面をすり抜けてきた!?」

「こいつ、小さいのと違って少し頭も回るみたい!」

「足元にもシールド張れって事!?」

「でもどこから来るかも分からないんじゃ…」

 

 予想外の奇襲に混乱する陸戦ウィッチ達だったが、そこで突然彼女達の目の前の地面が陥没する。

 

「!?」

「諸共潰せばいい。物質を透過出来ると言っても、地に立つ以上、重力は透過出来ないはず」

 

 いつの間に来たのか、ハルナがグラフサークルを展開させて重力球を発生させ、地面ごと地下にいた大型ノイズの触手を押しつぶす。

 

「特性さえ理解すれば、我々でも戦えないわけではない」

「だが気をつけろ! 有機体でない私達なら炭にはならんが、壊される事はあるからな!」

 

 ハルナになぜか肩車される形のキリシマが、同じくグラフサークルを展開して大型ノイズの解析を続ける。

 

「恐らくこれは兵器だ! 我らメンタルモデルとは全く違う、純粋に人のみを破壊する事に特化した!」

「どこのどいつよ、こんな趣味悪いの作ったの!」

「分からない。先程篠ノ之博士からサンプルが欲しいと連絡が来たが」

「その人も悪趣味ね………」

 

 キリシマとハルナが独自にノイズの解析結果を出す中、ウィッチ達と艦娘達の悲鳴混じりの攻撃が続く。

 

「だいぶ削れてきた!」

「あと一息…」

 

 大型ノイズの体積が減ってきた事に皆が勝利を確信しかける中、とつぜん大型ノイズがひしゃげる。

 

「え?」

「は?」

 

 予想外の動きにウィッチ達のみならず艦娘達も思わず間抜けな声を漏らす中、大型ノイズはまるで軟体生物が跳ね回るような奇怪な動きでウィッチ達に迫ってくる。

 

「散開!」

「間に合わない…」

 

 マイルズがシールドを張りながら部下に退避を促すが、フォートブラッグが思わずマイルズの襟首にしがみついた瞬間、シールドごとマイルズの体が大型ノイズによって弾き飛ばされる。

 

「隊長!!」

「くっ!」

「まずい!」

 

 空中でなんとかバランスを取ろうとするマイルズだったが、空戦用とはまるで重量の違う陸戦用ストライカーユニットが重石となり、更にそこを狙って大型ノイズが迫る。

 

(シールド、間に合わ…)

「あ…」

 

 背後から迫る大型ノイズに防御が間に合わないと悟ったマイルズだったが、そこでフォートブラッグが声を上げ、何かが彼女の体を押し上げて大型ノイズの体当たりから遠ざけ、更に誰かがその前に立って、大型ノイズの攻撃を受け止める。

 

「なるほど、確かに攻撃の瞬間は実体化しているな」

「貴方は、闘技場半壊させた…」

 

 妖機三姉妹の長女、幻夢がメタルボールを操作して自分の危機を救った事をマイルズが悟るが、幻夢が盾代わりにしたウィングを大型ノイズが透過し始めた事に顔色が変わる。

 即座に幻夢は周辺に漂わせていたメタルボールを足場にし、それを蹴りながら途中でマイルズを抱えて地上へと降り立つ。

 

「作戦変更ですわね」

「これ、すごい危ない」

「いや、マスターも炭にならなくても壊れはするから…」

 

 地上には、401から発射された降下ポッドのそばで妖機三姉妹の次女・狂花と三女亜弥乎、そしてアークが大型ノイズと対峙する。

 

「霧のコンゴウの報告通りだ。私達ならば多少触れても問題は無い。少し壊れるだけだ」

「問題はあれをどうやって取り押さえるかですわね」

「やってみる!」

 

 妖機三姉妹が跳ね回っているのかのたうちまくっているのか、よく分からないが明らかに危険な動きをする大型ノイズに対峙し、まずは亜弥乎が地面に手を当てる。

 

「ここがJAMの基地なら………有った!」

 

 地面の下にあるらしき施設から、亜弥乎が無数のケーブルを操作し、大型ノイズを縛り上げようとするが、ことごとくケーブルは大型ノイズをすり抜ける。

 

「あれ?」

「やはりダメか」

「通常物理攻撃は効かないとあったはずだ」

「これならば」

 

 首をかしげる亜弥乎に幻夢が嘆息するが、キリシマとハルナが演算力最大で重力球を複数発生させ、重力で大型ノイズを縛り上げようする。

 

「ようし、砲撃再開!」

 

 マイルズが部下達に攻撃を指示し、陸戦ウィッチ達が一斉に大型ノイズに砲撃するが、大型ノイズを縛る程の高重力に、狙いは大幅にそれ、手前にばかり着弾する。

 

「あ」

「そうか、重力で縛るという事は、こちらの攻撃も影響を受けるのか」

「なら、弾道を変えればいいだけよ!」

 

 重力攻撃は味方にも障害となる事に改めてメンタルモデルは気付くが、マイルズは即座に弾道を修正、大型ノイズの上方を狙って曲射砲撃を試みる。

 だがその前に、大型ノイズの巨体が地面へと沈み始めた。

 

「潰れて?」

「違うわ、地面をすり抜けてる! 総員後退!」

「そんな手が!?」

「まずい、これ以上重力圏を広げたらこちらにも…」

 

 大型ノイズが地面の下へと逃れようとするのを危険視した陸戦ウィッチが後退し、ハルナがなんとか重力球を操作して逃すまいとするが、大型ノイズが地面へと潜っていこうとするのが早い。

 

「もっと離れておけ」

 

 そこへ、コンゴウが突然無数のフィールド剣を作り出し、大型ノイズへと降り注がせる。

 

「だから無駄だって!」

「あれを狙うのならばな」

 

 パットンガールズが思わず叫ぶが、コンゴウは構わず次々とフィールド剣を作り出しては降り注がせる。

 

「隠れる所さえ無くせば、隠れる意味は無い」

「なるほどな。ならば掬うのはこちらでしよう」

 

 コンゴウの狙いを悟った幻夢は、ありったけのメタルボールを呼び出し、フィールド剣によって掘り崩された地面を吹き飛ばしていく。

 

「相変わらず派手ね………」

「うらやましいです」

「そうでしょうか?」

 

 膨大な土砂が吹き飛ばされてくるのをシールドで防ぎながらマイルズが呟き、副官がうなずくのをフォートブラッグが首を傾げる。

 切り崩され、吹き飛ばされた地面から逃げ損ねた大型ノイズが姿を表し、総員が再度戦闘態勢を取る。

 

「今度こそ逃さないように…」

「ミストコンゴウ! パ~ス!」

 

 マイルズが砲口を向けた時、金剛の声が響いてきたかと思うと、何かが投じられる。

 

「これは…」

 

 投じられてきたのが、艦娘達の艤装から縒り合わせた錨だと気付いたコンゴウが、それを大型ノイズへと向けて弾く。

 

「なるほどな、狂花、亜弥乎!」

「わかりましたわ」

「分かった!」

 

 艦娘達の意図を悟った妖機三姉妹は素早く展開、錨を次々と弾いて大型ノイズを縛り上げていく。

 

「やっぱり! 私達の艤装ならすり抜けられない!」

「よく気付いたオーナー!」

「目標捕縛を確認した、オーナー」

「じゃあエブリワン! フルパワーね!」

 

 吹雪がノイズが霊力や魔法力の籠もった物は透過出来ない事から思いついた作戦に、ランサメントとエスパディアが成功を確認、金剛の声と共に、艦娘達が一丸となって錨を引っ張る。

 

「エンジン全開よ!」

「無茶はしないようにね!」

「暴れないで! 北上さんが怪我でもしたらどうするの!」

「いいから引くの!」

 

 結束してるのか否か、微妙な声を掛け合いながらも艦娘達が引く錨に、大型ノイズがもがいて逃れようとするが、更に地上部分で陸戦ウィッチ達も加わって大型ノイズを強引に引き倒す。

 

「やった!」

「一斉砲撃!」

 

 なんとか大型ノイズの動きを封じた事に吹雪が思わず喝采をあげるが、マイルズは慌てずに攻撃を指示。

 陸戦ウィッチ、艦娘の一斉砲撃が大型ノイズに集中する中、後方からの援護砲撃に徹していたティーガー型ストライカーユニットが照準を定める。

 

「シャーロット、弾種魔導反応弾!」

「あれは一発しか…」

「今が使い所よ!」

 

 ティーガー型の機上で、サポーターのフレデリカが切り札の使用を搭乗者のシャーロットに指示し、シャーロットも頷くと、他世界との技術協力の課程で出来た試作品の弾頭を装弾する。

 

「目標、大型敵性体!」

「ど、どこに照準すれば!」

「外さない所よ!」

「はい!」

「なるほど、それが貴方達の切り札なのですね」

 

 そばで二人の会話を聞いていた狂花が、突然無造作にティーガー型ストライカーユニットの88mm砲の砲身にいきなり電磁ブレードを突き刺す。

 

「何を!?」

「レールガンってご存知?」

「まさか、電磁加速砲!? 基礎理論構築すらこちらでは…」

 

 突然の所業に驚くシャーロットとフレデリカだったが、88mmの砲身がスパークを帯び始めた事に狂花が何かをしようとしている事を悟る。

 

「そちらで撃ちなさい。こちらで当てます」

「任せたわ! シャーロット!」

「目標補足、撃ちます!」

 

 シャーロットだけでなく、フレデリカの魔法力も込められた魔導反応弾が発射、途中狂花によって電磁加速された砲弾が音速超過の衝撃波を撒き散らしながら、大型ノイズへと着弾。

 飽和寸前まで封入されていた魔法力が一気に開放され、内部から大型ノイズを吹き飛ばす。

 内外からの攻撃にとうとう限界に達した大型ノイズの体が風船が如く破裂、そして細かい破片となって霧散していく。

 

「やった!」

「最後は意外とあっけないな~」

「全員、状況確認! 負傷者や残弾の少ない人は一時撤退!」

 

 ウィッチや艦娘が歓声を上げる中、マイルズは周辺を見回し、そこに敵がいない事を改めて確認する。

 

「大神司令!」

『了解、地上戦力の殲滅を確認! 作戦を次の段階に移行されたし!』

「こちらも本来の任務に取り掛かろう。千早艦長、転移装置をこちらに射出を。設置に取り掛かる」

「そっちのコンゴウさん、ちょうどいいから動力こちらに回しなさい」

「ユナ達に連絡! 突入の準備してって!」

 

 激戦が終わっても息つく暇も無く、作戦最終段階の地下突入への準備が進んでいく。

 

「私らも準備ダ!」

「分かってるエイラ」

 

 地下に何がいるかも分からないため、用心のために感知に優れたエイラとサーニャもストライカーユニットを脱ぎ捨て、突入の準備に入る。

 

(待っててアイーシャ、今行くから)

 

 島の一つだけある廃墟染みた建物、その奥にいるであろう仲間の事を思い、サーニャは拳を強く握り締めた………

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。