第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP58

 

「うわ、この…」

 

 霧の竜巻に取り込まれたひかりは、上下左右も分からない状態で、必死になって体勢を整えようとする。

 

「何がどうなって………お姉ちゃん!」

 

 姉を呼びながら、なんとか戻ろうとするひかりだったが、視界には荒れ狂う霧の中にデタラメな光景が現れては消えていく。

 だがいきなり、その体が弾き出されるようにどこかに飛び出す。

 

「わわわ!? なんの!」

 

 いきなり感覚が戻った事に、ひかりは慌ててストライカーユニットを吹かして体勢をなんとか整える。

 だがその前に、いきなりJAM飛行型が現れる。

 

「敵!」

 

 ひかりが即座にそちらに九九式二号二型改機関銃を向けるが、トリガーを引くより早く目前のJAM飛行型が撃墜される。

 

「お姉ちゃ…」

 

 てっきり姉の援護だと思ったひかりが振り向くと、そこには姉とまったく違う人物がいる事に気付く。

 

「だ、誰!?」

「それはこっちのセリフ! あなたは誰!? アリカちゃんはどこにいったの!?」

「え? アリカ?」

 

 相手に問うたはずが逆に問われ、ひかりは困惑する。

 二人の困惑をよそに、JAM飛行型が二人の周辺を取り囲み始める。

 

「いけない! 敵が来ます!」

「貴女にとってもあれは敵って事ね。とりあえず、話は後で。あなた戦える?」

「はい!」

「私は炎綬の紅玉、鴇羽 舞衣。あなたは?」

「502統合戦闘航空団所属、雁淵 ひかり軍曹です!」

「軍曹ってことは軍人? とにかくついてきて!」

「あ、はい!」

 

 訳の分からぬまま、とにかく応戦を優先させようとひかりは舞衣の後に続き、銃口をJAM飛行型に向ける。

 その時になって、ひかりは周囲の光景が先程と一変している事に気付く。

 

「地面が、黄色い? 砂? 砂漠!?」

 

 自分が先程とは全く違う場所にいる事に、ひかりは混乱しそうになる中、JAM飛行型に向けてトリガーを引く。

 

「何言ってるの、ヴィントブルーム王国の周りには砂漠しかないわよ?」

「どこですかそこ!? 私はさっきまでペテルブルグの雪原にいたはずです!」

「は、ペテルブルグ? どこよそれ!」

 

 互いに言ってる事が噛み合わぬ中、二人をJAM飛行型が囲もうとする。

 

「ええい、邪魔よ!」

 

 そこで舞衣の周囲を浮かぶ法輪が業火を纏いつつ旋回、そのままJAM飛行型へと放たれ、相手を次々撃墜していく。

 

「すごい………」

 

 舞衣の圧倒的な戦闘力にひかりは呆然とする中、自分も残ったJAM飛行型に銃撃を撃ち込んでいく。

 

(旧式銃にあのユニット、乙HiMEじゃない? じゃあ何?)

 

 ひかりの戦い方を見ながら、舞衣は首を傾げながらも、次々法輪を繰り出してJAM飛行型を撃墜していく。

 

「何がなんだか分かんないけど、とにかくこいつらを倒さないと!」

「その通りや、手伝うで」

 

 思わず漏らした呟きに帰ってくる言葉が有った事にひかりは思わず周囲を見る。

 

「どこ見とるんや、こっちやこっち。正面や」

「え?」

 

 言われて改めて正面を見たひかりは、そこに朱と黒を基調とし、背中にごついユニットを背負った小さな影に気付く。

 

「なんとか追いつけたな。ウチは武装神姫、寅型MMSティグリース。条件に一致、今からアンタがウチのオーナーや!」

「これって、西沢さんと同じ…」

「後や後! 来るで!」

 

 ティグリースに言われ、ひかりはとにかく戦闘を終わらせるべく、銃口を残った敵へと向けた………

 

 

 

AD1946 オラーシャ ペテルブルグ近郊

 

「ひかり! ひかり!」

「落ち着け孝美! あの中に飛び込む気か!」

 

 周辺を取り囲むJAM飛行型を無視して、超空間通路に強引に飛び込もうとする孝美を義子が抑える。

 

「あの中は完全にJAMの制御下なのです! 飛び込んだらどこに跳ぶか分からないのです!」

「けどひかりが!」

「その前に自分の心配をしろ! 来るぞ!」

 

 取り乱す孝美を怒鳴りつけつつ、義子は向かってくるJAM飛行型に銃撃を叩き込む。

 

「どいて! ひかりの元に行かせて!」

 

 まだ落ち着きは取り戻してはいないが、少し冷静になった孝美が行く手を塞ぐJAM飛行型に義子と一緒になって銃撃を叩き込み、撃破していく。

 

「あ………」

「どうしたレーネ!」

「雁淵軍曹の反応、ロスト………この世界からどこかに跳ばされたと推察されるのです………」

「そんな!」

「うん? 待ってください、新たに超空間通路に反応!」

「ひかりが戻ってきたの!?」

「いえ、反応は二人………と何か。片方はかなりの高エネルギー反応!」

「誰か来るのか!」

「誰が!?」

「来るのです!」

 

 アルトレーネの言葉通り、超空間通路から二人の人影が飛び出す。

 

「うわっと!?」

「うわわ!」

 

 飛び出してきた片方、おさげ頭の少女が空中でバランスを取り、もう片方の銀髪の少女が落ちそうになるのをなんとか掴む。

 

「ええい、何がどうなったのじゃ!」

「分かんない! けど周りはあいつらばかり! おわっ!」

 

 銀髪の少女が偉そうな口調で叫ぶのを、おさげの少女が周囲にいるJAM飛行型を見ながら叫んだ時、その頭に額にバツ印のあるやたら太った猫が着地する。

 

「おお、ミコト! ん? おいアリカ、下、というか周りを見るのじゃ!」

「なにマシロちゃん? 白い!? まさか、雪!?」

 

 明らかに困惑している二人に、JAM飛行型が襲いかかる。

 

「とにかく、周りを片付けるのじゃ!」

「イエス、マイ マスター!」

 

 おさげの少女、アリカは自らのマスターである銀髪の少女、マシロを背中へと背負い、マシロのペットのミコトを頭に乗せたままダブルセイバーを構える。

 

「マシロちゃん落ちないでね! ミコトも!」

「落とさないのがマイスター乙HiMEの努めじゃろう! ミコトもこっち!」

 

 マシロに声をかけつつ、アリカは急加速しダブルセイバーを一閃、JAM飛行型を一撃で両断、破壊する。

 

「ちょっと硬いけど、問題ない! バンバン行くよ!」

「おう、それには賛成だな」

 

 いきなり声をかけられた事にアリカが驚き、そこにいる義子にようやく気付く。

 

「誰!? そういえば舞衣さんは!?」

「こっちも聞きたい事があるが、周りが邪魔でな」

「そなた、見慣れんローブじゃな。どこのマイスター乙HiMEじゃ?」

「ローブ? なんの事か分からないが、とにかくお前は味方でいいんだな?」

「あいつらの敵なら、そうなる!」

「はい、その通りになるでしょう」

 

 そこで更に新たなる声が間近で響いた事にアリカとマシロは周囲を見回す。

 

「こちらです」

「うわ、なんか小さいのいた!」

「何じゃこれは!?」

「私は武装神姫、種型MMS ジュビジー。条件に一致、今からあなたが私のマスターです」

「マスター、私が?」

 

 アリカが思わず自分を指差す。

 

「待て、マスターである妾を差し置いて何を勝手にマスターになっておる!?」

「あなたはマスターのマスター、つまりはグランドマスターという事でしょうか?」

「それならばよし!」

「ちっこいが、そいつらは結構役に立つぞ!」

「そちらも何か厄介そうなマスターなのです………」

 

 マシロの異議にジュビジーがウィットな提案をすると、義子とアルトレーネがそれぞれ真逆の感想を口に出す。

 

「孝美! そいつの補助につけ! 背中のを狙わせるな!」

「り、了解!」

 

 少しは落ち着いたがまだ混乱している孝美に義子は叫びながら、自ら突撃していく。

 

「もう一人おったか」

「第508統合戦闘航空団所属、雁淵 孝美大尉よ。あなたは?」

「蒼天の青玉のマイスター乙HiME、アリカ ユメミヤです!」

「ヴィンドブルーム王国女王、マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム、こやつのマスターじゃ! そしてこっちは妾の飼い猫のミコトじゃ」

「女王?」

 

 アリカの自己紹介よりも、マシロの自己紹介に孝美は反応するが、次の瞬間には振り返って背後から迫ってきていたJAM飛行型を狙い撃つ。

 

「あなた、ウィッチじゃないみたいだけどシールド張れる!?」

「シールド? 大抵の攻撃はこのローブが防いでくれます! マシロちゃんとミコトも私にしがみついてる間は大丈夫!」

「落とすでないぞ!」

「私もサポートします」

 

 孝美の問いにアリカは元気よく答え、マシロが釘を刺した所でジュピジーもうなずく。

 

「じゃあ行くよ!」

 

 そこでアリカが急加速、JAM飛行型を次々と手にしたダブルセイバーで斬っていく。

 

「速い!? ウィッチの比じゃない!」

 

 あまりの速度差に背につく事は不可能と悟った孝美は、その場でS―18対物ライフルを構え、アリカが残したJAM飛行型を狙撃していく。

 

「向こうもなかなかやるの」

「後ろから全然来ない、すごい戦いやすい」

「雁淵大尉、西沢飛曹長は共にエースウィッチとしてデータに登録されています」

「こちらも負けておれんぞ!」

「うん!」

「私も援護します、シェルプロテクション、発動」

 

 ジュビジーも巨大なクローがついたウイングを展開、敵へと突撃していく。

 

「収穫の季節!」

 

 そのままウイングクローでJAM飛行型の表面を抉るように突き抜け、一撃を食らったJAM飛行型は制御を失って落下していくのを孝美がトドメを刺す。

 

「確かに小さい割に使えるようじゃ」

「はいグランドマスター」

「どんどん行こう!」

 

 アリカも張り切ってJAM飛行型を撃墜していき、ウィッチ達もそれに続く。

 

「そいつで最後!」

 

 最後の一機に義子が残った全弾を叩き込み、撃破した所で皆が一息つこうとするが、孝美は超空間通路の方へと向かう。

 

「おい待て!」

「万が一でもひかりの所に!」

 

 義子の制止も聞かずに超空間通路に突入しようとする孝美だったが、その目前で超空間通路は霞のように消え去っていく。

 

「え………」

「消えた!?」

「超空間通路、消失確認なのです………」

「こちらでも確認、次元歪曲数値も戻っていきます」

 

 今までそこにあったはずの超空間通路の消失に、孝美は呆然とする。

 

「ねえ、あの霧の竜巻消えちゃったんだけど………」

「おいお前達! お前達もアレから来たのか?」

「そうじゃ! 我が王国に再び現れたかと思うと、あの縞模様共が襲ってきて、妾はアリカに迎撃を命じて………」

「そしたら突然竜巻の一部が急に伸びてきて」

「気付いたらここにおった」

「って事は、ひかりもそうなってんのか?」

「誰か似たような目に追うたのか?」

「あいつの妹だよ」

 

 義子が孝美を指差した所で、孝美が今だ超空間通路の有った場所を見ている事にアリカとマシロも気付く。

 

「妹さん!? それは大変!」

「その前に妾達じゃ! 一体ここはどこなのじゃ!」

「落ち着いてください。マスターはマイスター乙HiMEと名乗りましたね? つまり惑星エアルの出身なのでしょうか?」

「そうだけど?」

「何を当たり前の事を」

 

 ジュビジーの質問にアリカとマシロが同時に答えるが、そこでアルトレーネとジュビジーが顔を見合わせる。

 

「落ち着いて聞いてほしいのです」

「ここは、惑星エアルではありません」

「ここは地球のペテルブルグ近郊なのです」

『………え?』

 

 武装神姫達の説明に、アリカとマシロが同時に間の抜けた声を上げる。

 

「地球、ってあの地球?」

「バカを申すな! 地球との連絡も何も途絶えて何年経っていると!」

「何年かしらねえけど、ここは確かに地球だぞ?」

 

 義子からも念押しされ、改めてアリカとマシロは絶句する。

 

「待って待って! じゃあどうやって帰れば!?」

「妾は女王じゃぞ! 妾が急にいなくなったら、とんでもない事になってしまう!」

「言って悪いが、多分これからなるのは確実だな」

「ええい、これジュビジーだったか、どうにかならぬのか!」

「落ち着いてくださいグランドマスター、まずは安全な所へ」

「そうだな。孝美、まずは報告だ! 上の連中が何か妹を探す手を考えつくかもしれないぞ!」

「………了解」

 

 しばし無言でひかりが消えた辺りを見ていた孝美だったが、義子の言葉になんとか我に帰って合流してくる。

 

「マシロ陛下、でしたね。とりあえずペテルブルグ基地に案内します。以後の事は上と相談してみませんと………」

「心得た。まずは寒くない所にじゃ!」

「そうだね、ローブ解いたら凍えちゃいそう………」

 

 一面に広がる銀世界に、マシロとアリカの意見は一致する。

 

「じゃあこっちに」

 

 先導する義子にアリカが続き、孝美が最後尾につくがそこで一度振り返る。

 

(無事でいてひかり。必ず助けに行くから………)

 

 強く決心した孝美は、ペテルブルグ基地へと向かっていった。

 

 

 

異なる世界 ガルデローベ学園

 

「それは本当か!?」

 

 再度の謎の敵の襲撃に、自らも迎撃に出られるようにしていたナツキに届いた報告に思わず声を荒げる。

 

「間違いないのか!?」

『はい、蒼天の碧玉の反応は消失、破壊信号も出ていません! アリカさんを完全に見失いました! 王宮から同時刻にマシロ陛下がこつ然と消失したそうです!』

「まさか、あいつらに拉致されたのか!?」

『舞衣さんからの報告だと、その可能性が高いです!』

「なんて事だ………」

 

 前回よりも小規模だった襲撃だが、そのもたらした被害は遥かに深刻だった事にナツキは呆然とする。

 

『それと、もう一つ………』

「今度は何だ」

『アリカさんと入れ替わるように、マイスター乙HiMEじゃない誰かが現れたようなんです………』

「はあ!?」

 

 

 

「あそこよ」

「なんか立派な所ですね~」

「滑走路あるんか? ウィッチには必要やで」

 

 敵を全滅させた後、舞衣に案内されてひかりとティグリースはガルデローベ学園へと向かっていた。

 

「滑走路………あそこのメイン通路で足りる」

「あ、なんとか」

 

 学園正門から伸びる道に向けてひかりは速度を落としつつ降下し、着陸する。

 

「確かに、妙な者を連れてきたな舞衣」

「アリカちゃんは見当たらなかった………やっぱり奴らに………」

「マシロ陛下もだ。奴ら、マスターごとさらうという事を覚えたらしい」

「あの、こちらの方は………」

「あ、このガルデローベ学園の学園長、ナツキ・クルーガー。私とここで同級生だったの」

「氷雪の銀水晶、ナツキ クルーガーだ。君は?」

「はい! 第502統合戦闘航空団所属、雁淵 ひかり軍曹です!」

「武装神姫 寅型MMSティグリースや」

 

 脱いだストライカーユニットを片手で抑えながら敬礼するひかりと、その肩にいるティグリースの姿にナツキは眉根を寄せる。

 

「第502統合戦闘航空団………聞いた事も無いな。君はどこのマイスター乙HiMEだ?」

「いえ、私は扶桑海軍出身のウィッチです!」

「ウィッチ?」

 

 元気よくひかりが答える聞き慣れない単語に、ナツキは更に表情を曇らせる。

 

「ちょっと待ってや。ガルデローベ学園にマイスター乙HiME言うたな? という事はここは惑星エアルか?」

「そうだが………」

「アップデートされたばかりのデータに登録されとる。つまりここは地球やないいう事や」

「え? どういう事?」

「雁淵 ひかり軍曹、データだと駐屯地は地球のオラーシャ、ペテルブルグ基地で会っとるな?」

「そうだけど………」

「待て、地球だと!? 君は地球から来たというのか!?」

「そうですけど………」

「正確には異相世界の異なる地球って事になるさかい」

「………どうやら、その小さいのは色々知ってるようだな」

「データによれば、このガルデローベ学園はマイスター乙HiMEの養成学校、あんたが指揮官という認識でええやろか?」

「あくまで五柱とここの生徒の、だがな」

「了解、現状で指揮官と認識するさかい」

「え~と………」

「とりあえず一緒に来てくれ。互いに話す事は山とありそうだ。舞衣も頼む」

「OK、どうやらアリカちゃんの行方をこのちっさいのは知ってるようだし」

「推測、やけどな」

 

 状況が全く飲み込めないひかりを連れ、ナツキは取り敢えず学園長室へと向かう。

 

「ミユの言っていた事はこれか………さてどう説明すべきか………」

 

 

 

「どうぞ」

「あ、どうも」

 

 赤を基調としたワンピース状のガルデローベ学園一年生コーラルの制服に身を包んだ生徒が持ってきたお茶を、ひかりは一礼して受け取る。

 その生徒がおじぎをして学園長室から出ていくのを確認してから、ナツキは口を開いた。

 

「複数の世界に攻撃する存在JAMとその対抗組織NORNか………ニナ・ウォンの無事が確認出来たのは良いが、ずいぶんな事になっているな」

「そうや。大雑把に言えばマスターもNORNの構成メンバーの一人になる」

 

 大まかな説明をティグリースから受けたナツキは、かなり渋い顔をしていた。

 

「どう思う、舞衣?」

「どうもこうも、話が大きい上にデタラメすぎてなんとも言えないわね。ミコト呼んでくるべき?」

「もう来とるぞ」

「うわっ!?」

 

 いつの間にか室内にいる修験者姿の少女に、ひかりは思わずお茶をカップごと落としそうになる。

 

「え? ど、どこから………」

「そこ」

「はあ………」

 

 気付いたら開いている窓の一つを指差すミコトに、ひかりはこの部屋に来るまでに階段を何段登ったか思い出そうとする。

 

「来たならちょうどいい、あなたの意見を聞こうと思っていた所だ」

「話は途中からだが聞いていた。おそらく、その小さいのの言ってる事は本当だろう」

「確かに、辻褄は合う。JAMとやらの目的が特異戦力の観察なら、ここだけでなくシュヴァルツやアスワドを襲ったのもな」

「シュヴァルツのスレイブとは別のウィッチ達がベルギカで交戦したらしいで。ただ改造されてたいう話やけど………」

「改造、か。ならば何故彼女はここにいる?」

「え?」

 

 いきなり話を振られて、ひかりは戸惑う。

 

「JAMはよっぽど貴重なサンプル以外は、むしろ違う世界に放り出して戦闘データを取るようや。中には学校まるごとちゅうのも有ったし」

「ここがそうならなくてよかった、というべきか?」

「ここが違う世界に飛ばされても、マイスター乙HiMEの統合管理システムは導きの星にあるだろ。霊廟からだけでは足りん」

「あ、そっか。でも待って、それじゃあ………」

「JAMは蒼天の青玉がスーパーマイスターGEMだと知っていたのか?」

 

 色々と考え込む者達を前に、全く理解出来ないひかりは空になったカップを手にしたまま少し困っていた。

 

「とにかく、今の一番の問題は一つや」

「それは?」

「オーナー、どこにいればいいんや?」

「あの、ペテルブルグには………」

「ウチら武装神姫は転移反応を感知して自動的に送られるだけや。今回はマスター追っかけて転移する間にガイド用マーカーのシグナルが切れたさかい、明らかにNORN側ではこの世界の座標を把握しておらへん。一応ビーコンは出しとるが、いつ見つけてもらえて、いつ戻れるかは分からんで?」

「え………」

「つまりそれは、アリカとマシロ陛下もいつ戻ってくるか分からない、と?」

「そうなるで」

「えええええ!? どうしよ!? 勝手にいなくなって戻らないなんて、ラル隊長に怒られる!」

「向こうもそこら辺は分かっとる思うんやけど………」

 

 ティグリースの説明に、ひかりは改めて慌て始める。

 

「こちらも色々困る。よりにもよって一国の女王がマイスター乙HiMEと共に行方不明になってるのだぞ?」

「この子達連れてって説明させる?」

「納得すると思うか?」

「無理ね………」

「頭の固い連中には無理だろうな。これがどれほど高度な技術の集合体かも分からんだろ」

「見た目はしゃべる人形だからな」

「武装神姫や!」

「とにかく、雁淵軍曹と武装神姫はこちらの管理下におく必要があるのは確かだ」

「管理下って事は………」

「アレ、しかないだろうな」

「去年もアリカちゃんにやったんだよね?」

「ああ、どうにか審議会をごまかさんといかんが」

「その辺はナツキに任せる」

「あの~………アレってなんですか?」

「それは………」

 

 

 

翌日 ガルデローベ学園 コーラル星組教室

 

「それでは、特例中の特例ですが、転入生を紹介します」

「ヒカリ カリブチです! よろしくお願いします!」

 

 コーラル星組担任のユカリコ・シュタインベルグの紹介に、ひかりは元気よく挨拶する。

 

「どういう事?」

「最近辺境で見つかった特異体だって」

「保護と研究のための転入らしいわよ」

 

 星組のクラスメート達は今朝回ってきたばかりの情報(※学園長自ら流したダミー)を呟きつつ、興味の視線をひかりへと向ける。

 

「ついでにウチはティグリースや。よろしう」

「しゃべる人形!?」

「あの、先生………」

「カリブチさんと一緒に見つかったサポートユニットだそうです。カリブチさんはかなりの辺境の出身なので、しばらくこの子もサポートにつくそうです。カンニングとかはさせないので」

「ちなみにどこいらですか?」

「扶桑の佐世保です!」

 

 クラスメートからの問いに勢いよくひかりが答えた所で、全員が隣の席と顔を見合わせる。

 

「フソウだって」

「聞いた事ある?」

「いやまったく………」

「これは相当な田舎者ね………」

 

 全く聞いた事の無い地名に、クラスメート達はとんでもない辺境から来たと勝手に結論づける。

 

「それではカリブチさんの席はそこの空いている所に」

「はい!」

 

 新たに用意された席へと向かって座るひかりに、隣の席にいた淡い水色の髪のクラスメートが話しかけてくる。

 

「ガルデローベに転入、しかも二年連続なんてね。ここは色々厳しいわよ」

「がんばります!」

「タテナシ・サラシキよ。寮では同室になるわ」

「こっちもよろしく!」

 

 笑みを浮かべながら差し出された手をひかりは強く握って大きく振り、あまりの無邪気さにタテナシの方が面食らう。

 が、その手に幾つものタコがあるのにタテナシは気付いていた。

 

(銃ダコ? この子何者?)

「それでは授業を始めます。教科書の37ページから…」

 

 タテナシは内心疑問を抱えたまま、とにかく授業に集中する事にした。

 

 

 一時間目終了後、早くも机に突っ伏しているひかりに、タテナシは微妙な視線を向けていた。

 

「大丈夫?」

「ぜ、全然分かんない………」

「そうやろな………マイスター乙HiMEにはかなりの高度なアレコレを要求される言うんは聞いてたが、ここまでとは」

「後で教えてあげるから。次の授業の準備よ」

 

 ティグリースも早くもダウンしかけているひかりをなんとか起こそうとする中、タテナシは呆れながらもそれを手伝う。

 

「え~と次の授業って………」

「舞闘よ」

「舞闘?」

「模擬戦の事よ」

「模擬戦………それなら!」

 

 

 コーラルローブに身を包んで整列した星組クラスメート達が、一人だけ制服のままのひかりの方を見る。

 

「あの、先生。カリブチさんが」

「ああ、彼女は特別なのよ。私もまだ詳しくは知らないのだけれど」

「大丈夫です」

 

 皆の視線が集中する中、ひかりは魔法力を発動、魔法陣が浮かび上がり、使い魔であるフソウリスの耳としっぽが彼女の体から生えてくる。

 

「うわ!? 何あれ!?」

「耳としっぽが生えてきた………」

「確かにこれは特別ね………」

 

 

昨晩 ガルデローベ学園医務室

 

「それじゃあ、ここに入学するためにはまずこれが必要なの」

 

 ガルデローベ学園の研究員兼保険医のヨウコ・ヘレネに説明されながら、ナノマシン入りの点滴が用意される。

 

「これ打つんですか?」

「少し熱が出るかもしれないけど、一晩経てば大抵下がるから」

「そうなんですか」

「乙HiMEってこうやってなるんやな」

 

 ベッドに横になったひかりと枕元のティグリースが興味深そうに見る中、点滴針が刺され、ナノマシンがひかりに点滴され始める。

 

「それじゃあ、時間かかるから寝ててもいいわよ」

「え~と、それじゃあ…」

 

 ヨウコがナノマシンの注入を確認して、その場を離れようとした時だった。

 点滴の中に気泡が湧いたかと思うと、それはどんどん増えていき、まるで沸騰したかのように点滴パックの中身が湧き上がり、膨れ上がったかと思うと突然破裂して中身を周囲にぶち撒ける。

 

「きゃあ!」

「ヒカリさん! 大丈夫!?」

「は、はい………」

 

 突然の事にひかりは驚き、それ以上にヨウコは驚きながらも慌てて点滴針を抜いて状態を確かめる。

 

「これって………」

「分からない、私も初めて見たわ。拒絶反応? それとも……」

 

 ヨウコは首を傾げ、じっとひかりを見る。

 

「一応聞いておくけど、異性と関係を持った事は?」

「関係?」

「肉体の」

 

 聞き返して質問の意味をようやく理解したひかりが、顔を真っ赤にして猛烈な勢いで首を左右に降る。

 

「そうよね………乙HiME用のナノマシンは男性のY染色体に弱いの。けど、もしそうだとしても分解されるだけでこんな事には………」

「あ~そうや。確かデータの中にウィッチの魔法力とナノマシンは相性悪いいうの有ったはずや?」

「魔法力?」

「これです」

 

 ひかりが魔法力を発動させ、使い魔の耳としっぽを出してみせる。

 

「これが………つまり、彼女自身の力にナノマシンが耐えられない、って事?」

「多分やけど」

「弱ったわね………ナノマシン定着が出来ないとここではやっていけないわよ?」

「私はウィッチです! なんとかこっちでやってみます!」

 

 

「それがローブの代わりなのね。こんなのは私も初めて見るわ」

 

 ユカリコも魔法力を発動させたひかりをしげしげと見つめる。

 

「今更聞くのもアレだけれど、舞闘の基礎訓練は必要?」

「大丈夫です! ちゃんと受けてます!」

「それじゃあ、誰か相手を…」

「先生、私が」

「そうね、それではタテナシさんと」

 

 立候補したタテナシとひかりが、舞闘用のロッドを手に対峙する。

 

「それでは構え」

 

 ユカリコの号令に双方構えるが、タテナシはひかりの構えがちゃんとした物だという事に感じていた疑問が更に深くなる。

 

(素人じゃない………本当に何者?)

「始め!」

「たああぁ!」

 

 開始と同時にひかりが突撃して放つ一撃をタテナシは受け、それがしっかりと腰の入った一撃だと確認する。

 

「てい! やあ!」

 

 続けて放たれるひかりの攻撃をタテナシは次々と受けながら、そのどれもが確かな訓練を受けた物だと確信する。

 

(間違いない、この子は戦闘訓練を受けている! けどその割には無知過ぎる………一体?)

 

 困惑しつつも、ひかりの放った突きを受け流し、タテナシはカウンターの一撃でがら空きの胴を狙う。

 だがその瞬間、ひかりが張ったシールドがその一撃を防ぐ。

 

「なんか出た!」

「あんな事も出来るの!?」

「ホント変わってる………」

 

 クラスメート達が驚く中、タテナシは落ち着いてロッドを翻して頭部を狙うが、ひかりは慌てて自らのロッドでそれを止める。

 

「なんの!」

「出来るわね」

 

 攻守一転、今度はタテナシが連続で攻撃し、ひかりはロッドとシールドでその攻撃をなんとか受け、防ぐ。

 

「すごい、サラシキさんとあそこまでやり会えるなんて」

「手加減してるんじゃ?」

「でも悪くはないわね」

 

 クラス有数の実力者となんとか渡り合っているひかりにクラスメート達が驚く中、タテナシは落ち着いてひかりの実力を解析していく。

 繰り出したロッドが胸元を狙うのをひかりがシールドで防ごうとするが、そこで突然軌道が変化してシールドの切れている足元を払おうとするのに、ひかりが慌てて飛び退る。

 

「なるほど。そのシールド、一方向にしか張れないのね」

「私だとそれが限度で…」

「何ばらしてんのやオーナー!」

 

 シールドの欠点を見抜かれた事にひかりが思わず認めたのを、クラスメートと一緒に見学していたティグリースが怒鳴る。

 

「じゃあ本気で行くわよ」

 

 タテナシが宣言すると同時に、その場で旋回したかと思うとその場から消える。

 

「え…」

「左やオーナー!」

 

 一瞬の間に横手に回られたひかりが慌ててシールドを張るが、次の瞬間にはタテナシは正面にいる。

 

「は、速い!?」

「あなたが遅いのよ」

 

 シールドを張り直す暇も無く繰り出されたロッドを、ひかりはかわそうとするがかわしきれず肩をかすめる。

 

「つっ!」

(シールド以外の防御力はローブほどじゃない、次で!)

 

 タテナシはロッドを手元に引き、体を旋回させて勢いをつけた渾身の一撃を繰り出す。

 ひかりはロッドとシールドを併用してその一撃を受け止めようとするが、堪えきれず後ろに吹っ飛ぶ。

 

「決まった!」

「強烈~」

(いや、決まってない!)

 

 クラスメート達が決着を確信するが、タテナシは予想よりも手応えが軽かった事に気付いていた。

 

(跳んで衝撃を緩和した! まだ来る!)

 

 魔法力の身体増強も使って見た目的には派手に飛んだひかりが、練習場端の柱に叩きつけられるかと思った瞬間、体勢を反転させて柱へと真横に着地する。

 

「え…」

「まだついてない!」

 

 クラスメート達がようやくまだ決着がついてない事に気付くが、すでにタテナシは間合いを瞬時に詰めていた。

 

(跳ね返って来た瞬間をカウンター!)

 

 ひかりがそのまま柱を蹴って向かってくると予想したタテナシが、その直線軌道上に大上段からロッドを振り下ろす。

 だが振り下ろされたロッドは、そのまま空を切って地面を穿つ。

 

「何…」

 

 完全にスカを食らわされたタテナシは、そこで信じられない物を見る。

 ひかりの足元に魔法陣が生じ、柱に着地した体勢のまま張り付いているという事に。

 

(そんな事も!? まずい、体勢が…)

 

 渾身の一撃の後で体勢が崩れていたタテナシがロッドを引き戻すよりも、ひかりが柱を蹴るのが早かった。

 

「たぁ…」

 

 最大の好機にひかりは全力でタテナシに突撃しようとするが、勢い余って柱を蹴るより早く、足元の魔法力を切ってしまう。

 結果、柱を蹴るよりも早く重力が働き、中途半端な体勢でひかりは地面へと向かって突っ込んでしまう。

 

「ふぎゃ!?」

『………』

 

 完全に予想外の自爆に、誰もが無言だったが、そこでタテナシがロッドでひかりの頭を軽く小突く。

 

「それまで! カリブチさん、いささか変則的だったけど、悪くは無かったわ。詰めが甘かったけど」

「ふぁい………」

 

 半ば本能で顔面が地面に直撃する前に発生したシールドで最悪の事態は防げたが、衝撃までは防ぎきれなかったひかりが、あちこち赤くなった顔面で項垂れる。

 

「なかなかやるわね。最後のはアレだったけど」

「うう、ロスマン先生に見られたら怒られる………」

「誰? 師匠?」

「はい、502で教官を…あっと」

 

 タテナシに助け起こされながら思わず口走った事を慌ててひかりは口を抑える。

 

(………なんとなく分かった。この子は確かにどこかで戦闘訓練を受けたプロだけど、同時に馬鹿正直。間違ってもエージェントなんかではなさそうね)

 

「ね、今のどうやったの!?」

「他に何出来るの!?」

「鼻真っ赤だけど大丈夫?」

「あの、えっと…」

 

 待機席に戻ろうとした所で、クラスメート達に囲まれてひかりは慌てふためく。

 それを見たタテナシは、微笑を浮かべながら自らも待機席へと戻っていった。

 

 

 

「疲れた~………」

「お疲れさん」

 

 なんとか初日を乗り切ったひかりが、ややふらつく足取りで寮の指定された部屋へと向かう。

 

「乙HiMEってウィッチより大変かも………」

「象徴的な意味合いもありよるらしいしな。とにかく無理はせん程度に」

 

 ティグリースになだめられながら、ひかりは教えられていた部屋の前に立つ。

 

「え~と、ここだよね?」

「部屋番号は間違いないで」

 

 部屋番号を確認したひかりが、部屋のドアをノックする。

 

「どうぞ」

「お邪魔しま~す」

 

 中から聞き覚えのあるタテナシの返答を聞くと、ひかりは室内へと入る。

 中には室内着姿のタテナシと、やや長めの金髪でメガネを掛けた少女がいた。

 

「臨時追加されたから、あなたのベッドはそっちの壁際だけどいい?」

「大丈夫です、立派な部屋ですね~」

「一応成績優良者用の部屋だからね。私はディアナ・ハルトマン。これからよろしく」

「ヒカリ カリブチです! よろしく」

 

 メガネを掛けた少女、ディアナが読んでいた本を閉じて自己紹介しつつ差し出した手を、ひかりが握り返して上下に振る。

 

「今日の舞闘、なかなか興味深かったわ。タテナシとあれだけ戦えるのはコーラルにもそういないわよ?」

「負けちゃいましたけどね………」

「今年コーラル舞闘トップ相手にね」

「え?」

「ちなみに学科のトップはディアナだ」

「ええ?」

「つまり、ここは成績ツートップの部屋言うわけか」

 

 ティグリースの解釈に、タテナシとディアナは同時に頷く。

 

「あの、いいのかな、そんな部屋に私お邪魔して………」

「特異性で言えば間違いなくコーラルトップね」

「確かに」

「つまり変わり者トップ言うわけか」

「え~~?」

 

 ひかりが疑問符付きで抗議の声を上げるのを、タテナシとディアナは思わず笑い出す。

 

「そう言えば、保護と研究のための転入って聞いてるけど、学費はどうしてるの?」

「学費?」

「一応、ヴィントブルーム王国で出してくれるそうや」

「それは良かった。ここはこの星でトップクラスの学府だが、学費もそれ相応でな」

「国費留学生や裕福な家庭の子女なんかが多いの。私はエアリーズ協和国の、タテナシはジパングの国費留学生よ」

「つまり、国の代表という事?」

「そうなるんやろな」

「………私が入って良かったのかな?」

「今更何言うとんねマスター?」

「そう、入ったからにはそれなりの事を学ばなくてはな」

 

 そう言うと、タテナシは部屋の中央にテーブルを起き、ディアナはその上に教科書を大量に置く。

 

「明日から少しでも授業についていけるよう、私達で予習復習してあげる」

「全然わかりませんでしたって訳にいかないからね」

「うえ!?」

 

 慣れない授業内容に疲れていたひかりへのさらなる追い打ちに、思わず奇妙な声が漏れる。

 

「良かったなオーナー、学年ツートップが直々に教えてくれるそうやで?」

「あの、明日からという事には」

「このガルデローベ学園はそんな甘い所じゃないぞ?」

「大丈夫、分かるまでちゃんと教えてあげるから」

「あ、ウチちょっと野暮用あるさかい、オーナーの事頼むわ」

「ちょ、ティグリース…」

「さて、まずはエアル史から…」

 

 山のような教科書に涙目になっているヒカリを二人に任せ、ティグリースは部屋を出る。

 

「あっちの方は大丈夫やろ。親切なルームメイトで安心や。問題は…」

 

 ティグリースは演算回路を稼働させ、ある事を確認すると、目的地へと向かって急ぐ。

 小さい体でいささか時間がかかったが、目的の部屋へとたどり着くとそのドアをノックする。

 

「誰だ」

「ティグリースや、すまんが空けてもらえへんか?」

 

 目的の部屋、学園長室の中から返答を確認し、中からナツキがドアを開けて相手を確認する。

 

「お前だけか、オーナーはどうした?」

「ルームメイトと勉強中や。すまんけど、そちらも学園長だけか?」

「そうだが………」

「あんたにだけ見せたい、つうかあんたにしか見せられんモンがあるんや。なんか再生機器あるか?」

「? ちょっと待て」

 

 ティグリースに言われ、ナツキは去年の騒動の後に新調した通信機器を用意する。

 

「これで一応映像も映るはずだが」

「ちょっと失礼………規格がこうで、そうなって………なんとかいけそうや」

 

 機器を操作、自らの通信装置となんとか互換を確保し、ティグリースはデータを機器に送信する。

 

「まず言っとく。これから見せるんは、JAMと最初に戦こうとったFAFから提供されたモンや。ただ、NORN内部でも各組織のトップクラスしか閲覧は許可されとらん」

「一級機密という事か」

「そうや、本来なら指揮官クラスの人間の閲覧許可がいるんやけど、オーナーの階級は502でも一番下っ端やさかい、なんとかプロテクト回避したんや。NORN参加云々以前に、まずはマイスター乙HiMEの指揮官としてこれを見てもらわなあかん」

「そうか………再生させてくれ」

 

 ティグリースの真剣な顔に、ナツキも真剣になって画面を見る。

 そして再生されたのは、惑星フェアリィ撤退戦の様子だった。

 無言、というか半ばから絶句してそれを見ていたナツキだったが、再生が終わりしばらくは何も言う事が出来なかった。

 

「な、何だ今のは………」

「恐らくはJAMの正体に一番近いと思われている物、や」

 

 ようやく言葉を絞り出したナツキの問いに、ティグリースも不確定な可能性を返すしかなかった。

 

「あれと、戦わねばならないのか………」

「違うで、もう戦ってるんや。今までの襲撃は、偵察どころか下手したら予告編や」

 

 ただ呆然としたまま、ナツキは手のひらにかいた汗を強く握りしめる。

 

「こんな物、とても審議会では見せられん………」

「NORNの指揮官クラスと連絡取れへん以上、他への閲覧はアンタの判断に一任するわ」

「………他には何かあるか」

「取り敢えず、これを見せにだけ来たんや」

「寝る前に見る物じゃないな。今夜は寝酒が必須だ」

「すまんな。間違っても他に見せるわけにあかんし」

「これは再度封印しておいてくれ。無論他言無用だ」

「了解や。そいならこれで」

 

 通信機器をしまいながらナツキは大きくため息をつきつつ、ティグリースに釘を刺して退室させる。

 

「シズルに戻ってきてもらうか? いやまだダメだ………ミコトにでも意見を聞くべきか。ああもうなんで私が学園長の時に次々と………」

 

 全ての仕事を中断し、ナツキは愚痴を垂れ流しつつ自室へと向かう。

 今夜は深酒になりそうだという確信と共に………

 

 

 

「そう、うまくいったんだね。さてここからか………次は決まってる? それも興味深いな。さて、彼女達はどう動くのかな………」

 

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