第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP63

 

異なる世界 ガルデローベ学園 学生寮

 

「う~ん………」

「なんとか終わったわね」

「明日の分はだけど」

 

 ひかりが同室のタテナシとディアナの協力で、何とか終わらせた課題を前に突っ伏していた。

 

「なんとか授業には付いてこれるようにはなったようだし」

「かなりギリギリだけど」

「ギリギリです………」

 

 持ち前のスタミナで何とか持ってるが、今まで習った事のないような知識を何とか詰め込んでいる状態に、ひかりは色々とテンパっていた。

 そこで通知音のような物が鳴り、皆がそちらを見ると、何かを受信しているティグリースの姿が有った。

 

「ラボからお呼びのようやで、オーナー」

「あっと、いけない。行かないと」

「転入してすぐにトリアスのお部屋係なんて名誉な事よ」

「そうね」

「じゃあ行ってくる!」

 

 ティグリースを伴って部屋を出ていく光を見送ったタテナシとディアナは足音が遠ざかってからどちらともなくため息を吐く。

 

「で、実態はどうだと思う?」

「どう考えてもお部屋係という名の人体実験かと。あの人だし………」

 

 

 

「遅れました、イリーナ先輩………じゃなくてお姉様」

「いいえ、こっちも遅くにごめんね」

 

 学園の地下のラボに顔を出したひかりに、眼鏡姿で小柄、そして学園トップクラスを示す白い制服姿のパール、イリーナ・ウッズが出迎える。

 

「それと無理にこっちに合わせなくてもいいわ。お部屋係なんてどうせここに入る口実だし」

「でも階級はそちらが上、しかもトリアスってここの最優秀組だって………」

「ホント変な所が軍人気質ね」

 

 苦笑しながら、イリーナはひかりを伴ってラボの奥へと向かう。

 

「前にも言ったけど、半年前に起きた事件で優秀な同級生が何人も学園辞める羽目になっちゃってね。気付いたら機械いじりしか能の無い私がトリアスになっちゃってたのよ」

「でも、立派だと思いますよ? 502のサーシャさんも戦闘リーダー兼整備士やってましたし」

「苦労してそうね、その人も。それとこれ」

 

 用意しておいた物をイリーナはひかりに手渡し、ひかりはそれを広げてみる。

 

「これって…」

「コーラルローブ、の模造品ね。見た目はそっくりだけど、本物みたいな防御力は無いわ。一応ちょっとした戦闘服並の防御性能は持たせたけれど。一人だけ違う格好だとアレでしょ?」

「ありがとうございます!」

「そっちで試着してみて。微調整は必要かもしれないし」

「はい!」

「よかったなオーナー」

 

 ひかりがもらったばかりのフェイクローブを手に、ラボの端にある更衣室に向かう。

 

「色々すまんな、お姉様」

「学園長からも頼まれてるしね。それに中々興味深いわ、彼女も、これもね」

 

 ティグリースが小さな頭を下げる中、イリーナはもう一つの本題、ひかりのストライカーユニットを見る。

 

「整備出来たんか?」

「分かる範囲はね」

「着替えてきました!」

「きつい所とか、動きにくい所は無い? 一応戦闘用だからね」

「大丈夫みたいですけど………」

「汚れたらこっちに持ってきて。普通の洗濯機だと洗うの難しいから。予備も作っておくわ」

「何から何まですいません」

「いいのよ、こっちも実験に付き合ってもらってるし」

 

 頭を下げるひかりに、イリーナは笑みで返す。

 

「取りあえず、ユニットの整備は手探りだけど終わったわ。起動させてみて」

「はい!」

 

 ひかりは元気よく答えると魔法力を発動、ハンガーに固定されたストライカーユニットを装備させると、魔導エンジンを起動させる。

 

「出力は少しずつ上げて」

「分かりました」

 

 指示通り、魔法力を徐々に上げると、ストライカーユニットの魔導プロペラの旋回速度が上がっていき、ラボ内に疾風となって吹き付けていく。

 イリーナはそれをつぶさに観察しながら、状態を確かめていく。

 

「問題は無さそうね。そろそろ止めていいわよ」

「はい!」

 

 ゆっくりと回転速度を落とし、停止を確認するとひかりはストライカーユニットを脱着する。

 

「燃料系や制御系は問題無さそうね」

「詳しい所は飛んでみないと分かりませんが………」

「今日は遅いからそれは後日ね。ただ問題はやはり動力系か………これに使われてる魔導エンジンって言うのは、少なくても惑星エアルの技術とは全く異なる理論と技術で構築されてるわ。私にはお手上げね」

「その、私も詳しい所までは………」

「いいのいいの、乙HiMEだって誰もかれもがシステムの詳細把握してるわけじゃないし。まだ他は私の手に負える範囲で良かったわ」

「やっぱ技術問題は難しい所あるわ。世界が違えばなおの事な」

「学園長から違う世界から来たなんて聞かされた時は耳疑ったけれど、このストライカーユニットこそがその証明ね」

「あの、私は?」

「ああ、ウィッチの力も初めて見たけれど、それ以外はすごく誰かに似てるのよね。頑張り屋さんな所なんて特に」

「はあ………」

 

 イリーナの説明に、ひかりは首を傾げる。

 

「それと、お部屋係って軍で言う従卒ですよね? なんか私の方がお世話になりっぱなしで………」

「だからここに来る口実みたいな物だって。私が学園長から依頼されたのはひかりちゃんの技術的サポート。こっちとしても珍しい物いじれてすごく勉強になってるし」

「けれど………」

「学園長からの好意や、素直に受け取っといた方いいで。いきなり砂漠に放り出されても文句言えん立場なんやし」

「まあそれは無いと思うけど………」

 

 困惑するひかりにティグリースの今一サポートになってないサポートに、イリーナが苦笑する。

 

「それと他に困ったら舞衣さんに頼めとも言われてます」

「彼女は極めて珍しい、政治が絡んでないマイスター乙HiMEだし、学園長の信頼も厚いからね。聞いてる? 舞衣お姉様ってジパングのお姫様でもあるのよ」

「え、そうなんですか?」

「それがなんで普段ラーメン屋やってるんや………」

「色々有ったらしいわ。まあそんなこんなで訳ありなんて珍しくないから、細かい所は気にしない気にしない」

「NORN内部にも色んなのおるからな………オーナーは地味な方や」

「地味………」

「私は再度ストライカーユニットの点検してるから、部屋に戻っていいわ」

「はい。ローブありがとうございました!」

 

 お辞儀して元気よくラボからティグリースと共に出ていくひかりを見送ると、イリーナは思わずため息を漏らす。

 

「ほんと、無駄に元気な所なんてアリカそっくりね………」

 

 

 

「じゃあこれ明日から早速使わせてもらおう」

「着替えの時間も必要やしな。間違っても制服の下に着ておくとかは止めておいた方いいで」

 

 学生寮に通じる吹き抜けの廊下を歩きながら、ひかりは渡されたフェイクローブをまじまじと見ていた。

 

「しないよ、さすがに…」

「! なんか来るで!」

「え…」

 

 ティグリースがセンサーに何かの反応が高速で近づいて来るのに気付き、ひかりは思わずローブを後ろ手に隠しながら魔法力を発動させる。

 だが次の瞬間、背の高い影がいきなり目の前に出現し、思わず尻もちをつく。

 

「だ、誰ですか!?」

 

 突如として現れた、つば広帽にマント姿の長身女性にひかりは声を上げる。

 

「貴方が、アリカ ユメミヤと入れ替わる形で出現した者ですか?」

「なんでそれを………敵、じゃないんですか」

 

 出現はいきなりだったが、意外と丁寧な相手の口調にひかりは少し警戒を解く。

 

「オーナーどうやら敵ってわけじゃないようや。しかし、こりゃ驚いたで………あんた、アンドロイドかいな。そういや、そんなんがおる言う話学園長が………」

 

 そこでティグリースが自らのセンサーからの反応にその相手をまじまじと見る。

 

「サポートドロイド? なるほど、確かにこの惑星上の者ではないようですね。私はMerciful Intelligential Yggdrasil Unit、あの人はミユと呼びます」

「ミユ、さん? あ、雁淵 ひかりです」

「ウチは武装神姫トラ型MMS、ティグリースや」

「貴方方に問います。アリカ ユメミヤの行先に心当たりは有りますか?」

「その前に答えてや、なぜそんな事を聞くんや?」

「私の目的はこの星とあの方の血筋の行く末を見守る事。今はアリカがその対象になります」

「観察者かいな………」

「え~と、どういう事?」

「彼女はアンドロイド、つまり人間サイズのウチみたいなもんや。スペックは相当開いてそうやが………」

「え、じゃあこの人、機械!?」

「ああ、オーナーはまだそういうの見た事なかったか」

「こちらの質問の回答を」

「分かった、データを並列化したいんやけど、相互伝達可能かいな?」

「そちらにもよりますが」

 

 ティグリースはデータ交換を申し出ながら片手を開いたまま突き出し、ミユもかがむとその手に大分サイズ差の有る自らの手を合わせる。

 程なく、双方の目が明滅し、双方のデータが行きかうのをひかりは訳が分からない顔で見ていた。

 それほどかからずにデータ交換を終えた両者は合わせていた手を外す。

 

「なんて処理速度に容量や、こっちが吹っ飛びそうや」

「なるべくそちらに合わせたつもりなのですが」

「そうか。けどこれでこちらの事情は理解できたんか」

「はい、多次元侵略体JAMとその対抗組織NORN、貴方方はその構成メンバーなのですね」

「まあ、絶賛孤立中ではあるんやけど………」

「ここの学園の人達にお世話になってます」

「だとしたらアリカもNORNもしくは類似組織と接触している可能性が高い」

「確認は出来へんけど、状況的にそう思うで」

「なんでそのアリカさんと私が入れ替わったのか分かりませんけど………」

 

 ミユが敵や不審者ではないと判断したひかりだったが、そこでミユがこちらをじっと見ている事に気付く。

 

「あの、何か………」

「ひかり、少し失礼します」

 

 ミユは断りを入れてから、ひかりの髪に手を伸ばし、それを一本抜くといきなりそれを口に咥える。

 

「え?」

「何してるんや?」

「塩基配列確認、照合………なるほど」

 

 いきなりの事に再度驚くひかりだったが、程なくミユは咥えていた髪を取り出すと、再度ひかりの方をじっと見る。

 

「分かりました。アリカが戻ってくるまでの間、ひかりを私の保護対象にします」

「え~と、保護対象?」

「守ってくれる言うわけか。でもなんでまた急に?」

「それは…」

 

 

 

異なる世界 リトルリップ・シアター

 

「そういう訳でしばらく彼女をこちらで預かる事になった」

「改めて立花 響です。よろしくお願いします」

「こっちこそ」

「まあ初めてじゃないし」

「集団で来られるよりはマシだろう」

「響は何が得意なんだ!?」

 

 サニーサイドの紹介にお辞儀する響だったがそこで紐育華撃団が色々な反応を示してくる。

 

「あまり色々詮索してはダメよ、困ってるでしょ」

「あ、一応お世話になる身ですし………」

「そうは考えない方がいいね。あくまで君とボクらは協力関係、こちらは生活環境その他を提供する代わりに、響君はそちらの持っている情報と戦闘能力解析に協力してもらう、OK?」

 

 そこでラチェットが助け舟を出し、響が謙遜するがサニーサイドがそれを否定する。

 

「あまり遠慮しない方いいわ、向こうもノイズやシンフォギアのデータが欲しくてたまらないのだし」

「そう言われても、どう説明すればいいのか………」

 

 紗羅檀に言われるも響は色々考え込む。

 

「まあすぐにとは言わないよ。お互いに手探りになるだろうし」

「あちこちの世界に出向した先でトラブル多発して、技術陣も各世界に散らばってるようですしね」

「どこも忙しいな~」

「ここもいつそうなるか分からないからね。それじゃあ住居はジェミニの部屋でいいんだね」

「あ、はい」

「一人ぼっちも可哀そうだしね」

「一応私もいますが」「私も」

 

 確認するサニーサイドに響は頷き、ジェミニが親しげに響の肩に手をのせるが、微妙に紗羅檀とフブキから抗議が上がる。

 

「じゃあまずはその準備だね。これで必要な物を用意するといい」

 

 そう言いながらサニーサイドが取り出した紙幣の数に響が驚く。

 

「あの、いいんですかこんなに?」

「文字通り着の身着のままで来たんだから、色々必要だろ? この間までウィッチ部隊まるでいた時に比べれば、この程度は些細な物さ。ジェミニ、あと新次郎、響君のエスコートを」

「イエッサー!」

「つまり荷物持ちって事…」

「行くよ響、シンジロー!」

 

 軍資金を手にジェミニが響と新次郎を伴って嬉々として出ていく。

 それを見送ったサニーサイドは姿が見えなくなった所で一息つく。

 

「響君の事はジェミニに任せておいて大丈夫そうだね」

「前に違う世界に行った経験もあるらしいからね。どうにも大神司令の出したレポートは信じきれないのだけれど」

 

 サニーサイドとラチェットの会話に、残った星組隊員達が考え込む。

 

「正直、ジェミニから聞いてたのは要領得なくてさっぱり分からない」

「魔界だの天界だの、聞く度に舞台が変わっていたからな」

「本物のニンジャやナイトやサムライと仲間だ ったって言ってた!」

「突拍子も無さ過ぎて私もちょっと………」

「それを今こっちも体験してるわけね。サムライっぽい人はいたけれど、ニンジャはいたかしら?」

 

 ラチェットも思わず一緒に考え込むが、とにかく思考を切り替える。

 

「今優先されるのは、彼女からノイズ対策を習得する事。霊力を常時流してないと、霊子甲冑の中にまで潜ってくるような相手を、彼女はずっと相手してきてるのだから」

「まずは信頼を得る事かな? 幸運な事にジェミニはある程度信頼されてるようだし」

「信頼って言うよりは、なんか似たようなタイプに見えたんだが…」

「同意する」

 

 サニーサイドが少し考える中、サジータと昴が先程の二人の様子を見て呟く。

 

「仲良くなったのならいい事でしょう」

「そうだな! お供は食べられそうないけど!」

 

 ダイアナとリカも頷く中、サニーサイドは皆に見られないように俯きつつ、少しだけ表情を険しくする。

 

「間に合えばいいんだが………」

 

 その呟きを聞いた者はいなかった。

 

 

 

「大体こんな物かな」

「着替えに食料に雑貨に………後何かあるかな?」

「それくらいにしておいた方が………」

 

 ジェミニと響が買い物袋を提げて歩く中、二人の後ろを二人の合計より更に多い買い物袋を持たされた新次郎が続いていた。

 

「もらったお金ほとんど使っちゃったけど、よかったのかな?」

「いいんじゃない? 支配人お金持ちだし」

「準備金として渡されたのなら、問題ないと思うよ。必要だから渡してきたんだろうし」

「気前いいんだね、そっちの司令」

「状況によるけどね。そう言えば響の所の司令ってどんな人?」

「映画好きでカンフーの達人で私の師匠なんだ。いかにも体育系って感じだけど、すごい頼りになる人だよ」

「へ~、確かに頼りになりそう」

「なんか色々すごそうなんだけど………」

 

 ジェミニと新次郎が脳裏に筋骨隆々な人物を想像するが、それがほぼ合っているとはさすがに知る由も無かった。

 

「ここだよ、ボクのアパート」

「お邪魔しま~す」

「違うよ、今日からしばらくはここが響の家」

「その、ただいま」

 

 大量の荷物と共にジェミニのアパートに到着した一行だったが、響がドアを潜る時に発した言葉をジェミニに指摘され、ややためらいながらも言い直す。

 それに室内からいななきが返ってくる。

 

「ただいまラリー」

「うわ、本当に馬と一緒だ………」

「まあビックリするだろうね」

「支配人がここ紹介してくれたんだ、動物OKの部屋」

「馬はOKなのかな………」

「一応………」

「それじゃあ紗羅檀はそこに」

「分かったわ」

 

 荷物を運びこむ中、フブキに促されて紗羅檀が後から送られてきたソーラー充電機能付きクレイドルを窓際のフブキのクレイドルの隣にセットする。

 

「じゃあ着替えはそっちのチェストの空いてる所に入れていいよ。ボクはご飯の準備するから。本場のテキサスステーキ!」

「テキサスステーキ!? いいの!?」

「ジェミニの得意料理なんだよ」

「シンジロウも食べてって! いっぱい焼くから!」

 

 嬉々として調理に入ろうとするジェミニに期待しながら、響はチェストに買ってきた着替えを仕舞い始める。

 

「これはどっち置いとく?」

「そっちのハンガーかな?」

「え~とこれは…」

 

 調理中のジェミニに相談しながら荷解きをする響と新次郎だったが、買ってきた歯ブラシとコップを洗面台に置こうとした時、そこにすでに歯ブラシとコップが二つある事に響は気付く。

 

「あれ、これ………」

「ああ、姉さんの」

「え、お姉さんいるんですか?」

「うん、いたんだ………」

 

 過去形で若干言葉を濁すジェミニに、響はそれとなく察してそれ以上は聞かなかった。

 

「その話はあまり気にしないで」

「はい」

 

 小声で新次郎に言われ、響も小声で返す。

 

「意外と複雑みたいね」

「紗羅檀、しっ」

「私も聞いてません」

 

 武装神姫達も一応小声で口裏を合わせる中、響もそれ以上の事は聞こうとはしなかった。

 なお、その後の食事で新次郎以上の大食漢を発揮した響に、ジェミニも嬉々として追加を作る事になった。

 

 

 

翌日

 

「そういう訳で、響君は表向きはリトルリップ・シアターの見習い新人という事になる」

「はい!」

 

 サニーサイドからの指示に響は元気よく答える。

 

「しばらくはジェミニが指導してもらおう」

「イエスサー!」

「それじゃあまずは…」

 

 

「そっか、見習いってこういう事か………」

「そういう事」

 

 モップを手にした響が、同じくモップを手にしたジェミニに連れられてシアター内を掃除していた。

 

「ボクも最初は見習いの掃除係だったんだ」

「こっちはそんな事無かったな~。シンフォギア装者ってすごい少なくて、私がガングニールの装者だってわかったらすぐスカウトされたし」

「そうなんだ、華撃団も基本スカウトだし」

「データによれば重犯罪者をスカウトした事もあるようです」

「どういう基準かしら?」

 

 話しながら掃除を進める二人に、フブキと紗羅檀もどこから持ってきたのか耳かきの房で窓枠のホコリを落としながら呟く。

 

「それってホント?」

「巴里華撃団の事らしいけどね。ボクも詳しくは知らないな」

「まあ、こっちもクリスちゃんとかマリアさん達の事もあるし………」

「どこの組織も大なり小なり訳ありの方はいるようです」

「使える人間かき集めるのはどこも同じね」

「私なんていきなりシンフォギア発動してびっくりしたからな~」

「お、やってるな」

 

 掃除を続けながらあれこれ話すジェミニと響だったが、そこにサジータが通りかかる。

 

「おはようサジータ!」

「おはようございます!」

「元気そうでなによりだ。色々大変だろうが、揉め事が起きたら私に持ってきな」

「いいんですか?」

「本職だからな」

 

 そこで響がサジータがスーツにアタッシュケースという格好なのに改めて首を傾げる。

 

「サジータは本職弁護士なんだよ」

「え、弁護士?」

「そういう事。これからすぐ法廷でね、ちょっと忘れ物取りに来た所さ。法律相談ならいつでも乗るよ」

 

 軽快に言いながら、サジータは足早にその場を去っていく。

 

「弁護士さんが華撃団?」

「ここじゃ珍しくないよ? ダイアナはお医者さんだし、リカは賞金稼ぎしてるし。違うのはボクと昴くらいかな? 新次郎も普段モギリだけど海軍少尉だし」

「はあ………色々な顔を持ってるって事かな? そう言えば新次郎さん朝から見かけてないような?」

「大河隊長は午後から学園で隊長クラスによる戦術会議に出席するので、資料の整理中です」

「隊長さんも大変だね………」

「色んな組織が参加してるからね。指揮系統の問題も有るわ」

「そう言えばS.O.N.G.は司令はいても隊長はいないな~」

 

 武装神姫達の話に頷きながら、響はモップ掛けを続ける。

 

「そう言えば、普段の響は何してるの?」

「私立リディアン音楽院高等科の2回生。仲間もほとんどそうなんだ。あ、翼さんは卒業したし、マリアさんは成人してるな」

「へ~、音楽学校か。歌で戦う人達ならいかにもだね」

「リディアンは元から装者の候補者を集めてたらしいしね」

 

 あれこれ話しながら、二人は掃除を進めていく。

 

「現状、二つの世界に行った方々がNORN参加をまとめてこれるかがカギです」

「お姉様の所の司令も賛同してくれるといいけれど」

「う~ん、師匠は話は通じるかもしれないけど、一応S.O.N.G.って国連管轄だからな~」

「ウチは支配人が裏で何か色々やってるみたい。詳しくは知らないけど」

「姫、司令官が政治力を持ってるかは重要です」

「JAMには政治も何も関係なさそうだけど」

「ややこしいな………」

「あ、二人とも仕事は進んでる?」

 

 会話があれこれ弾んでいる中、ラチェットが姿を見せて話しかける。

 

「はい、ちゃんとやってます」

「二人だと早いしね」

「午後からシンフォギアの実験を行いたいのだけれど、いいかしら?」

「こっちは午前中には終わると思うけど」

「構いませんけど、壊したりしたらエルフナインちゃんに怒られるかな?」

「そこまで無理はしないわ。発動条件の確認と、適合条件の確認よ。他の星組も参加するわ」

「あ、それなら。けど、早々適合する人は………装者って今六人しかいませんし」

「違う世界なら以外といるかもしれないよ?」

「この間、学園ではIS適正が有る乙HiMEが模擬戦したら装着してたISが発火した事例も有るので」

「危険性の確認もしておかないと」

「シンフォギアでそれは無い………と思うけど」

 

 武装神姫達に言われた事故に、響は少し考え込む。

 

「でも、聖遺物自体が危険だったら別かな? ネフィリムとかの例も有るし」

「ネフィリム?」

「怪獣みたいな聖遺物です。暴れまくる上に他の聖遺物を食べるとかで、私一度腕食べられた事が………」

「え!? 大丈夫だったのそれ!?」

「なんでか生えてきて」

「シンフォギアって腕生えるの!?」

「多分たまたま………」

「………なるべく詳しく調べた方がいいようね」

 

 それとなく響が話す内容に、ラチェットは実験の人員を今から増やせるかと思い始めていた。

 

 

午後 地下紐育華撃団基地

 

「準備はええか?」

「こちらはよろしいです」

「各種機器が干渉しないように」

 

 急遽用意された実験エリアで、帝都から来た紅蘭と整備班長の王、更に宮藤博士までもが来て各種観測機器の中央、ガングニールのペンダントがセットされていた。

 

「準備よし」

「それでは始めるとするか」

 

 紅蘭と宮藤博士が最終確認をすると、準備が終わるのを待っていた響に声をかける。

 

「それじゃあ、始めます」

 

 そう言うと、響は歌い始める。

 その歌声に反応し、ガングニールのペンダントが鳴動し、発光していく。

 

「これがシンフォギアの発動かいな………あえて言うなら霊子発振器の振動に似とるな」

「ある種の生体振動だけでなく、個人の生体エネルギー波動とも関係があるようだ」

「う~ん、もうちょい詳しく解析したい所やけど………」

「振動なら蒔絵君の専門だが、今来れないし………やはりかなりの独自性が強いな」

「取りあえず一遍ストップや」

 

 解析を進める紅蘭と宮藤博士がある程度データを収集した所で、一度響に歌うのを止めさせる。

 

「じゃあ交代や」

「はい! じゃあボクから!」

 

 そこでジェミニが元気よく名乗り出ると、試しに歌い始める。

 するとガングニールのペンダントは僅かに反応するが、その反応は響と比べようもない位弱かった。

 

「う~ん、星組隊員でもこんなモンか」

「条件が絞り込めないな。他も試してみよう」

「じゃあ次リカが!」

 

 星組隊員が代わる代わる歌ってみるが、ガングニールのペンダントは同じように反応はすれど、とても発動レベルまでには到達しなかった。

 

「霊力量と無関係、とは言えへんけど、他の条件もあるようやな」

「その特性が絞り込めないか」

「いや、実はシンフォギア装者の中でも全員発動レベルまで持っていける訳じゃなくて、リンカーって薬使って上げてる人もいて」

「投薬? 影響は無いのかね?」

「体にあまりよろしくないそうです………そもそも作れる人ももういませんし」

「そっちじゃそんな事までしてるんだ………」

「あ、私はこっちが原因だけど」

 

 ジェミニが思わず呟いた所で、響が襟もとを引っ張り、胸にある傷をそれとなく見せる。

 

「何それ」

「私はたまたまシンフォギアの破片が心臓に食い込んでいて、それが数年かけて影響して装者になったんで………」

「心臓!? 何がどうやったらそうなるん!?」

「それ以前に大丈夫だったのかね?」

「まあ、色々大変でしたけど」

「苦労してるんだね………」

 

 とんでもない響の経歴にその場にいた者達は唖然とする。

 

「真似はしない方がよろしいでしょうね」

「投薬? それとも心臓?」

「どっちもだよ!」

 

 ダイアナ、昴、サジータがそれぞれ意見を述べる中、王は紅蘭や宮藤博士と共にデータを見分する。

 

「条件が分からない以上、他の組織の方もやってみるのがいいかと」

「そうやな。歌唱力の問題もあるかもしれんし」

「NORNには芸能関係も多い。まずはそこからか………」

「適合者が見つかっても、肝心のシンフォギアは今の所人数分しかないんですけど」

 

 あれこれ思案する技術班に、響がそれとなく口をはさむ。

 

「いや、あくまでこれは共有化や影響を調べる実験でもある」

「帝都にJAMが攻めてきよった時、兵装が足りんで、霊子甲冑用の武装使うたりしたさかい」

「だけでなく、物によっては干渉を起こしたりするそうだ。つい先程、ISの最新型とマイスター乙HiMEが模擬戦をしたら、相互干渉して硬直状態になったそうだ」

「どれが良くてどれが悪いか、調べておく必要が有りますな」

「敵にも味方にもな。色々面倒や」

「違う世界で協力するのも何かと大変なんだ………」

「前の戦いだと、互いに敵と認識して危うく敵対しそうになった事も有ったそうよ」

「いきなり転移出現するので、無理も無いかと」

 

 響が改めて現状を認識するのに、紗羅檀とフブキが追加で余計な事を言う。

 

「ひょっとして、私の世界でも誰か………あ!?」

「何? 心当たりでも?」

 

 いきなり声を上げた響にジェミニが首を傾げる。

 

「そう言えば、謎のドリル使いが出現してるって話が有った! ひょっとしてその人が………」

「そっちの人じゃなければ、お姉様同様にどこかの世界から飛ばされてきた人かもね」

「でも確かお金もらってトラブル解決してるとかって聞いたような?」

「随分とたくましい方のようですね」

「前にお金さえ払えばどんな所のどんな相手にも売ってくれる宇宙商人の人っていたけど………」

「どんな世界にも金にシビアな奴ってのはいるんだね」

「ただ金に汚いだけかもしれない」

「お金というのはどの世界でも大事にされるんでしょうか?」

「大事だぞ! お金出ないと賞金稼ぎ出来ないからな!」

 

 転移経験者と武装神姫の話に、星組隊員達は半ば呆れ果てる。

 

「ひょっとして、探せば他にも違う世界から来たのが見つかるかもしれへんな」

「否定はできないね」

「私達武装神姫も全ての人に配属されている訳ではないので」

「突発的転移だけに、何とか感知出来た所に送り込まれてるだけなのよね。何体かそのまま失踪してるかも………」

「え、そうなの?」

「それこそ確かめようは無いわ。まあ事態が落ち着いたらプロフェッサーが回収してくれるだろうけど」

「いつ落ち着くんだろう………」

 

 何か危険な事も聞いた気がする響だったが、取りあえず危険な場所に放り出されたりしなかった事には安堵した。

 

「発動だけでなく、戦闘力のテストも行うべきだと昴は思う」

「それは一理あるな、前回はよく見てる暇も無かったし」

「シンフォギアってかなりのパワーありますけど………」

「指令に演習場の使用許可を取っておきましょう。軍用のですから、多少の事は問題ありません」

 

 昴とサジータの提案に響は少し難色を示すが、王が手際よく準備を整えていく。

 

「その許可ってすぐ降りるんか?」

「出来れば立ち会いたい所だが」

「降りました、すぐいいそうです」

「早っ!?」

「手際がいい組織ね」

「ウィッチと華撃団は戦闘経験が有数なので、対応も早いようです」

 

 紅蘭と宮藤博士が同行を望むが、即座に許可が降りた事に響は驚き、武装神姫達も関心する。

 

「では車の用意を」

「ボクのスターも持ってこう!」

「全員分はいらないだろう」

「じゃあ私のサイレントスターで」

「観測機器も積み込みを」

「はいこちらに」

 

 そして恐ろしいほどの手際の良さで、数時間後には一行は米軍の演習場の一角にいた。

 

「S.O.N.G.でもここまで手際よくいかないな~………」

「支配人は色んな所に顔が効くそうだからね」

「取りあえず今観測機器設置するから待っててや~」

「日没前にある程度のデータは収集しておきたい」

「念のため聞いておくけど、お姉様夜戦の方は?」

「いや、夜目が効いたりする訳じゃないから」

「感覚が強化される訳ではないのか」

「他に変わった能力とか無いんか?」

「私とマリアさんは絶唱の影響を抑制できる力が有りますけど、他には………」

「純粋な戦闘特化型か」

「そのようやな」

「変わった能力って、例えばどんなのですか?」

「華撃団やウィッチには治癒とか感知能力持ってる人もいるんだ。変わったのだと瞬間移動とか」

「瞬間移動!?」

「今度合わせたるさかい。そいじゃ始めよか」

「は、はい!」

 

 ジェミニの話す変わった能力に響は色々気になる事は有ったが、紅蘭に促され響はペンダントを手に取ると聖詠を歌い始める。

 それに応じてペンダントが反応発光したかと思うと、無数のパーツへ変じてシンフォギアとして響の体に装着されていく。

 

「ほう、こうなるんか」

「光の戦士のバトルスーツとも違うようだね」

「歌いながら変身するってかっこいいな!」

「そうだね!」

 

 紅蘭と宮藤博士がシンフォギア発動時のデータを解析していく中、リカとジェミニはのんきな感想を言っていた。

 

「では演習を始めるとしましょう」

 

 王がそう言いながらスイッチを押すと、演習用ターゲットが次々と現れていく。

 

「あれを壊せばいいんですね」

「そや、手持ちの武装なら何使っても…」

「とりゃああぁ!」

 

 紅蘭の説明の途中で、響が気合と共に飛び出してターゲットを殴り飛ばし、一撃でターゲットが木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 

「………あのターゲット」

「軍用の軽金属標的ですが」

「軽装甲相当の奴が跡形も無いで………」

 

 宮藤博士の確認に王が答えるが、紅蘭は予想以上のシンフォギアの破壊力に驚く。

 さらに響は聖詠でフォニックゲインを高め、次々とターゲットを拳と蹴りで破壊していく。

 

「カンナはんみたいやな」

「ああ、そちらの空手使いの」

「型から見て中国拳法のようですが」

「この間は少し見ただけだったが、かなりやるねあの子」

「本当ですね。アレなら十分通じますね」

「リカもやりたいぞ!」

「リカにやらせたら全弾か全ターゲット切れるまでやるからダメだと昴は思う」

「では少し難易度を上げましょう」

 

 星組隊員達も響の戦闘力を確認して頷く中、王は装置を操作する。

 すると今度は地上だけでなく、空中にもターゲットが射出され始める。

 

「たあぁ!」

 

 響は気合と共に飛び上がって空中のターゲットを蹴りで破壊し、更にもう一つを拳から放った衝撃波で打ち抜く。

 

「対空戦も出来るのか」

「いや…」

 

 サジータが関心していたが、昴は鋭く響の動きを見つめる。

 空中でバランスを崩した響が何とか体勢を立て直して着地するが、その間に空中に出たターゲットを逃してしまう。

 

「あっと!」

 

 取りあえず手近のターゲットを狙う響だったが、続けて空中ターゲットを逃がしてしまう。

 

「格闘特化だけあって、三次元戦闘は難しいようだと昴は思う」

「まあ誰だって得手不得手は有るだろ」

「むしろよくやってますよ?」

 

 遠距離や空中のターゲットに拳足から放たれる衝撃波で攻撃する響を観察してあれこれ言う星組隊員達だったが、評価は悪くなかった。

 

「あくまでテストやさかい、あまり無理せんでええで!」

「いえ、出来るだけやります!」

「どうやらかなりの努力家のようだな」

「怪我とかなさらないといいのですが………」

 

 紅蘭の警告を聞きながらも、頑張る響に宮藤博士や王も少し心配する。

 

「たあ、あっ!?」

 

 思いっきりジャンプしてからの回し蹴りでターゲットを破壊した響だったが、そこでバランスを崩す。

 立て直そうとした響だったが、地面に落ちるより早く何かの上に着地する。

 

「えっ?」

「大丈夫?」

 

 驚く響だったが、それがジェミニの駆るロデオスター・フライトモードだとようやく気付く。

 

「サポートするよ、足場が有ればなんとかなるでしょ?」

「…うん! ありがとう!」

 

 響は大きく頷くと、ロデオスターの上に立ち、構える。

 

「二時方向!」

「そこっ!」

「次十時!」

「せいっ!」

「もっと飛ばして大丈夫!?」

「ガンガン行って!」

 

 ロデオスターを足場に、空中のターゲットを次々破壊していく響に見ていた者達は絶句する。

 

「あの二人、いつの間に息が合ったんだ?」

「さあ………」

「すごいコンビネーションだぞ!」

「恐らく、最初から」

 

 星組隊員達も驚く中、昴は冷静に二人のコンビネーションを解析する。

 

「剣術と格闘の違いは有るが、二人の戦闘スタイルは極めて酷似している。つまり互いにある程度行動パターンが読めるのだと昴は思う」

「手っ取り早く言えば似た者同士って事かい」

「仲がいいのはよろしい事ですね」

「いいコンビだぞ!」

 

 星組があれこれ言う中、他の者達は二人のコンビネーションを技術的解析を進めていた。

 

「フライトモードのスターの上に乗って平気とは、かなりの能力持ってるようやな」

「シンフォギアの身体強化のためだろうが、彼女自身のセンスも悪くないようだ」

「お姉様もいきなりソロで放り出されて大丈夫かと思ったけど、問題ないようね」

「姫とこれほど息が合うのは予想外でした」

 

 武装神姫達も解析に参加する中、最後のターゲットが大上段からのかかと落としで粉砕される。

 

「そこまでです。これ位にしておきましょう」

「了解しました!」

 

 王からの終了報告に、響は元気よく答えると、ロデオスターから飛び降りて見事に着地し、ロデオスターもそのすぐそばに変形して着地する。

 

「行けるねこれ! 後でもうちょっと練習してみよう!」

「そうだね! 飛びながら戦うのは初めてだったけど!」

「悪くないと思います、姫」

「初めての割には上出来よ、お姉様」

 

 嬉々として即席とは思えないコンビネーションを話し合うジェミニと響に、フブキと紗羅檀も同意する。

 

「共闘出来るかが疑問やったが、こりゃ問題なさそうやな」

「そうだな、相性も問題ないようだ。未知の技術同士が共闘する以上、未知の問題が起きる可能性がある事は前に立証されてしまったが」

「もっと研究調査をしておいた方がよろしいでしょうな」

 

 紅蘭と宮藤博士がデータをまとめる中、王が演習の終了手順を踏みながら頷く。

 

「そういや、隊長クラスの戦術会議とやらはどうなったん?」

「まだ続いてるらしい。かなり議論が白熱してるそうだ」

「戦い方もそれぞれですからな。前回の前線基地襲撃ではなんとかなりましたが」

「今後あれ以上の戦いが起こらないとは断言出来ない。話がまとまっているといいのだが………」

 

 

 

同時刻 学園 ミーティングルーム

 

「現状で分かってる敵の種別と対処法はこんな物でしょう」

 

 隊長クラス会議で議長を兼ねているポリリーナが、大型ディスプレイに映し出されている現状確認されている敵とそれごとの各部隊に置ける対処法一覧をまとめる。

 

「こうやって見ると、どこもかなり尖った戦闘力を持ってるが、万能とは言えない物だな」

 

 ブッカーが対処法一覧を見て呟く。

 

「敵の種類が多過ぎるし、どれも個性が強すぎるわ。まだどんな形でも対処出来るならマシね」

「その通りです陛下。ノイズ相手に私達武装神姫は何の役にも立ちませんでした」

 

 任地のアフリカに戻ったのもつかの間、すぐこちらに来た圭子とサイフォスが先日のノイズとの戦闘を思い出してぼやく。

 

『幾ら進んだ技術を持っていても、対処出来ないケースも幾つか確認されてますし』

 

 通信参加の僧が深海棲艦と蒼き鋼の戦闘映像、先日の救助撤退戦のも交えてこちらに表示させていく。

 

『力押しだけではダメって事ね………』

 

 同じく通信参加のみずはが、初めて見る異なる世界の敵の数々とその特性に顔をしかめる。

 

「特に注意すべきはそちらのアローンと、そしてノイズでしょう。攻撃力の差以上に人体への危険度という点では群を抜いています」

『アローンをスコップで掘って追い返した人がいるって本当?』

 

 ポリリーナが特性が真逆の二種を指摘するが、そこでみずはの質問にその場の半数が首を傾げ、残る半数が苦笑いする。

 

「実際、先日のノイズとの戦闘で感じた事ですが、ノイズはただ盲目的に人を襲っていたように思います。攻撃してくる相手には危険を感じて優先的に反撃しますが、その途中で通りがかった遊覧船を襲おうとしてましたし」

「理性も統制もあった物じゃなかったわね。響さんが言うには、超古代の兵器だって話だけれど」

 

 新次郎と圭子がノイズ戦を思い出すが、その厄介さに顔をしかめずにはいられなかった。

 

「どんな相手でも複数部隊で対処する、というのには賛成だな。エースウィッチ三人がかりで追い返すのが精いっぱい、などと言うのに早々来られてはたまらん」

「オレもです。最新型のISが全く歯が立たない事もあったし」

「アルトレーネがエライ目に有ったと言ってました………」

「それはこっちもです」

 

 ラルと一夏がそれぞれの聞いた話や経験から頷き、ブライトフェザーとツガルも同意する。

 

「各部隊基地や該当施設に転移装置の設置も進んでいる事だし、上に掛け合って対応シフトも考えておくべきね」

 

 ポリリーナが現状で判明している各部隊で対処可能な敵と対処法を見ながら、考えられる増援を並べていく。

 

「こうなると、あの次元間転移装置ってのがもう少しほしいわね」

「どうやっても大型になるし、運用の問題もあるわ。次元工学がある程度発達した世界か、理解出来る人がいないと」

『霧クラスの設備が整った母艦とかですね。確かに厳しいでしょう』

 

 圭子の案にポリリーナが首を左右に振りながら答え、僧も使った感想からそれに同意する。

 

「中核となるメンタルモデルはいるんですよね? 船体は作れないんですか?」

「材料となるナノマテリアルはやっと量産体制が整いそうなんだけど、主導してたエリカが失踪して………他にも幾つかプロジェクトが遅延する可能性も………」

 

 一夏の何気ない問いに、ポリリーナが返答した所で全員の顔が引きつる。

 

「パトロン攫われたのはやはりじわじわ効いてくるわね………」

「ブリッドの量産体制が整った後だったのがせめてもの幸いよ」

 

 圭子のボヤキに、あかりが俯きながら呟く。

 

「Gの転移装置は対応機体使用が前提ですので、実質RVしか使えませんし………」

「機械化惑星の転移装置はここのより更に大型だ。部隊どころか艦隊転移用となる」

「つまり、現状ではここの次元転移装置を介してが中心となるでしょう」

『攻龍のドッグのはソニックダイバー発進の間位しか持たなかったし………』

 

 ジオールと幻夢の説明に、通信参加の瑛花も追加して皆考え込む。

 

「無い物を考えても仕方ないわ。ある物で出来る事を考えていきましょう」

 

 帝撃から隊長役として来ていたマリアの総評に、誰もが頷かざるを得なかった。

 

『転移による派遣戦闘はシフト制というのは賛成します。ただ、もう一つの問題は突発的戦闘に巻き込まれた際、指揮系統をどうするかという点があるかと』

 

 通信参加のミーナからの意見に、それぞれが顔を見合わせる。

 

「確かに有るわね」

「軍属ならそのまま階級でやればいいが、そうでない者も多い」

「こっちは学生だからな………」

「華撃団も隊員には階級なんてありませんし」

 

 現役軍人の圭子とラルの意見に、一夏と新次郎が考え込む。

 

「隊長クラスがいるならそいつが指揮を取ればいいが、都合よくいるとは限らないからな」

「こっちは一応ランキング別って事になってるわ。変動式だけれど」

 

 ブッカーも考えながら頭をかく中、あかりがパンツァーを一例に出す。

 

『部隊ごとに指揮順位を決めておくというのは? もしもの時にそれに従ってという事で』

『けど、結構色んな人達が集まってるんでしょう? 確認の問題が出ない?』

 

 僧の提案に、みずはが問題点を指摘する。

 

「指揮や運用がバラバラの組織が集まってる訳だから、色々難しいわね………」

「もっと分かりやすく出来りゃいいんだが」

 

 ポリリーナとブッカーもそれぞれの立場からどうすべきかを考えるが、中々答えは出ない。

 

「う~ん………やっぱり簡単かつ明確にするにはアレしかないかしら」

「アレってなんですか?」

 

 圭子の呟きに、シスター・エリカが問い返す。

 

「作ってみる? 全体ランキング」

『え?』

 

 圭子の大胆な提案に、誰もが思わず絶句せざるを得なかった………

 

 

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