第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP64

 

異なる世界 ブルーアイランド

 

「延長?」

「だって」

 

 てっきり交代要員で来たと思った亜乃亜からの話に、音羽が首を傾げる。

 

「JAMの行動に変化が生じてきてるから、用心して今関わってる世界にある程度戦力を分散させるとかどうとか」

「そうだね~、パレットチームの子達はようやく戦いなれてきたばっかみたいだし」

 

 亜乃亜の説明に、音羽の頭の上でヴァローナも頷く。

 

「そう言えば、謎の転移者もまだ見つかってないしね」

「ついてるはずのミズキからも発信地隠蔽した定時通信だけだし。何やってるんだろう~?」

「諸々片付くまで私とエリュー、マドカもここに詰める事になるって。まあマドカはここの子達が他の世界でも戦える手助けしに来たらしいけど」

「破壊力半端じゃないからね、パレットスーツって。きっと力強い味方になってくれるよ」

「ちょっと半端じゃなさすぎるけどね~」

 

 Aクラスワームを力技で粉砕したパレットチームの事を思い出しつつ、音羽とヴァローナは頷く。

 

「次にどこで何が起こるか分かればもうちょっとなんとかなるんだろうけど………」

「エイラさんの予知でもそういうのは分かんないしね」

「あちこちの組織からああいうの集めて予言班でも作ったらいいかもね~」

「そんなにいるかな………?」

 

 ヴァローナの提案に音羽は首を傾げる。

 

「まあ、どこもかしこも強い人ばかりだし、多少の事は問題ないと思うけど」

「よっぽど変なの来なければね~」

 

 集いつつある数多の世界の戦力に、ある程度は安心しつつも、どこか一抹の不安を亜乃亜と音羽はぬぐい切れないでいた。

 

 

 

数日後 学園

 

「うあ~………」

「さて、朝練はここまでね」

「ご主人様、大丈夫なのだ?」

 

 グロッキー状態のどりすに、どりあはにこやかに語り掛け、マオチャオは心配そうに頬をつつく。

 ただでさえハードな姉からのトレーニングが、ここ最近更にハードさを増してきており、どりすは色々限界気味だった。

 

「それでは後は夕方ね」

「あう~………」

「さすがに無茶過ぎないのだ? 今日は日曜だからと言っても………」

「日曜も平日も変わんない………」

「まあその通りね。ゆっくりしてる余裕は無いみたいだし」

「そうは言っても………ん?」

 

 マオチャオがどりあにクレームを入れている中、ふとマオチャオが首を傾げる。

 

「何か変な反応が………?」

「ふぎゅ!?」

 

 マオチャオのセンサーが微妙な反応を感知する同時に、どりすが珍妙な声を上げる。

 

「あら、どうかした?」

「ぱ、パパ…」

「パ?」

「ひみゃあああ! 何か入ってきた~!」

 

 微動だにしなかったはずのどりすが珍妙過ぎる悲鳴と共に跳ね起きる。

 そして履いていたブルマを引っ張ったかと思うと、その中から何かが飛び立つ。

 

「これ!?」

 

 それに気付いたマオチャオが即座に武装を展開、ナックルクロー・ヤンチャオでそれを破壊する。

 

「虫? いえ違う………」

「ものすごく小さいけど、コピーネウロイの反応だったのだ」

「それがなぜどりすちゃんの下着の中に?」

「………さあ?」

 

 あまりにも小規模かつ奇妙な攻撃?にどりあとマオチャオも首を傾げる。

 それが、学園を襲う三度目の襲撃の第一波だと気付くのはすぐ後の事だった。

 

 

 

「ふう………」

「はあ~………」

 

 朝練を終えた箒が持参してたタオルで汗をぬぐうが、一応自主的に朝練に加わった一夏は汗もぬぐわずぐったりしていた。

 

「まだスタミナが足りてないようだな」

「かもな………」

「マスター、昨日は大神司令にしごかれてたし」

「あのレベルはさすがに遠過ぎる………」

 

 タオルを差し出すツガルからなんとかそれを受け取りつつ、一夏はややうなだれる。

 

「しゃんとしろ。そんな有様ではISチームのリーダーとしてやっていけんぞ」

「分かってるって………なんか楯無会長も忙しそうだし、オレが何とかしないと」

「自覚が有るなら次は実力だ。私も協…力……」

 

 箒が途中で言葉に詰まり、その顔がみるみる赤くなっていく。

 

「? どうした箒?」

「な、なな、何でもない! ちょっとそこにいろ! いいな、絶対動くなよ!」

 

 更に顔が赤くなっていく箒をいぶかしむ一夏だったが、箒は念押ししながら物陰へと走っていく。

 

「今何か………? ちょっと待っててマスター」

 

 不審に思ったツガルが箒の後を追いかける。

 物陰で箒とツガルの話声が聞こえた直後、ツガルのホーンスナイパーライフルの閃光が放たれる。

 

「どうした!?」

 

 いきなりの発砲に一夏が慌てて物陰に行き、そこで武装状態のツガルと、何故か袴を脱いで下着姿の箒を発見する。

 

「………あれ?」

「見るな~!」

 

 箒が絶叫しつつ、思わず手にしてた竹刀で一夏の額を突き抜き、一撃で一夏は失神してしまう。

 

「………モロだね」

「動くなと言ったのに!」

「いや、急に攻撃見たら反応するかも………それと今の、コピーネウロイだね」

「は? あの虫が? なぜ下着の中に………」

「分からない。一応織斑先生に報告を………あ、マオチャオからも同じ報告が」

「複数いるのか?」

「複数、じゃなくてひょっとしたら………」

 

 

「あれ? なんか調子おかしいな………」

「そっちも?」

 

 整備課の学生達が、ISの定期チェックをしようとした所で、機器の電源が入らない事に気付く。

 

 

「おや、モニタ付かない?」

「コンセント抜けてるとか」

 

 自室にいた学生達が、備え付けのモニタがうんともすんとも言わない事に首を傾げる。

 

 

「ひやあああぁ! 何か入ってきた!」

「取って、取って!」

 

 朝練をしていた者達の間で、悲鳴が飛び交う。

 

 

「レーダーシステムに不具合、機器の故障でしょうか………」

「妙だな、先日点検したばかりでは?」

 

 エラー報告の点検に来た簪がチェックを走らせる中、千冬が不審を覚える。

 

「そのはずで………!?」

「どうした?」

「なな、何かが下着の中に!」

 

 チェックをしていた簪が突然手を止めたかと思うと、下半身を抑えて慌て始める。

 千冬の目の前だが、簪が思わず下着に手をかけた所で何かが飛び立ち、千冬はそれを素手で捕まえる。

 

「と、取れた………」

「何だこれは………」

 

 千冬が手にした物、小さな発光体としか言いようのない物に表情を険しくするが、直感的に危険を感じてそれを握りつぶすと、それは赤い破片となって砕け散る。

 

「虫の類ではないのは確かだな」

「今の、まさか敵!?」

 

 簪もようやく事態を理解し始めた所で、千冬の携帯が鳴る。

 

「こちら織斑」

『どりあです。ちょっと妙な事が』

「下着の中に潜り込む奴か」

『そちらにも出ましたか。それが、マオチャオがコピーネウロイだと』

「あれが? セクハラ以外の能力が何か…」

 

 そこでキャッチがかかり、千冬は電話を切り替える。

 

「織斑だ」

『楯無です! 学園の各所で機器の故障が頻発してます! 何か異常…ちょ、何これ! いや、スケベ!』

「下着の中ならすぐに取り出せ。これは、敵襲だ!」

 

 

 

 学園中に敵襲を知らせる警報が鳴り響く。

 

『こちら織斑、現在学園内に敵が侵入している! 種別はコピーネウロイ、超小型だ。電子機器に破壊工作を行っている模様。それと…』

 

 千冬の緊急校内放送が半ばで途切れる。

 

「く、通信機器がやられたか」

「校内通信だけです! 外部はまだ使えます!」

「ネウロイなら至急ウィッチに連絡を! 対処法を知っているかもしれん!」

『織斑教官! こちボーデヴィッヒ! こちらに向かってくる敵機らしき機影確認! デュノアと共に迎撃に入ります!』

 

 そこに定期巡回中だったラウラからの通信に、千冬も表情を険しくする。

 

「電子機器を破壊する小型を潜入させてからの襲撃か………手が込んだ事を………」

「レーダーシステムがサブまで不調! 敵の確認不可能です!」

「もうそこまでか! 至急専用機持ちに対処を! パンツァーチームにも連絡を…」

「そうですね」

 

 急いで指示を出す千冬の元に、どりあが妹と共に現れる。

 

「気付いたか?」

「さすがにすぐには。全く想定していないタイプでしたので」

「こちらもだ。問題は…」

「小さ過ぎます」

「素手で潰せる程だ。処理は難しくない。問題は…」

 

 その場にいる者達の耳に、各所から響いてくるやや珍妙な悲鳴があちこちから響いてくる。

 

「数が多過ぎる。それになぜ下着の中に?」

「さあ………」

「とにかく何とかしないと!」

「コピーネウロイがオリジナルの模倣なら、水に弱いはずなのだ!」

「更識、姉と一緒に中央管理室を死守しろ! 水が苦手なら…」

「姉さんのミステリアス・レイディなら守れるはず!」

「大型転移装置の緊急停止を…」

「アークからすでに停止措置に入っているって来たのだ!」

「コンゴウさん、いえサブコンゴウさんに緊急離脱を! もし彼女の船体に何か有ったら…」

 

 事態の深刻さを理解し始めた者達が、一斉に動き始めていた。

 

 

 

同時刻 大型転移装置

 

「電源を緊急遮断! エネルギーラインを1~5まで全部!」

「でもそれだと再起動が…」

「いいから! 早く!」

 

 エミリーが中心となって、居合わせた機械人達が大型転移装置のケーブルを物理遮断していく。

 

「用心してすぐ切れるようになんて言われた時は何かと思ったけど、まさかこんな事態になるなんて………」

「ライン切断完了したよ!」

「今予備電源も落とします!」

「急いだ方がいいな」

 

 エミリーが緊急停止措置を行う中、亜弥乎の報告に作業を急ぐが、そこで幻夢が無造作に首筋を払い、そこから体内に潜り込もうとしていたコピーネウロイを表皮の一部ごと破壊する。

 

「どうやら、私達は下着の中とはいかないようですわね」

「機械、特に電子回線を狙って破壊してくるようだ。この大型転移装置はエネルギーが高すぎて容易には出来ないようだが、私達の電子神経はそうはいかないらしい」

「! あっちに緊急用の電子シールド装置が有ります!」

「使わせてもらうしかなさそうだ」

「太古の昔母星で発生した寄生虫の話を思い出しますわね。かなりの犠牲者が出たそうですけれど」

「待ってお姉様!」

 

 幻夢と狂花が何か危険な事を言いながら電子シールドの準備をし、亜弥乎が慌てて範囲内に入ると同時に装置が起動、妖機三姉妹が完全にシールドで防護される。

 

「どうやら私達が役立てるのはここまでか」

「処理が済むまで、待つしかありませんわ」

「アーク、貴方は敵の処理をお願い。むしろ小さい方が今回はいいから」

「了解マスター!」

 

 亜弥乎の指示にアークはすぐにトライクモードに変形してコピーネウロイの処理に向かう。

 

「一体どれだけ入ってきてるの?」

 

 停止処理の最後の一手を入力しながら、エミリーは不安を呟かずにはいられなかった。

 

 

 

同時刻 コンゴウ艦内

 

『緊急出航、同時に潜水を開始、注水可能エリアは全て注水する』

 

 サブコンゴウの手にしたタブレットの表示に、艦内にいた潜水艦娘達が頷く。

 

「機械に潜り込んで破壊するなんて、なんて危険な敵でち」

「しかも下着の中にまで潜り込んでくるって」

「すごい変態ね」

「でも水が苦手なら潜ってしまえば」

「ちょっと待った~~!!」

 

 そこで同じく艦内にいたあおが大声を上げる。

 

「空気! 貴方達と違って私は空気必要なの!」

「ゴーヤ達もいらないわけではないでち」

「ただ特性上長時間潜水可能なだけ」

「それって、どのくらい?」

「半日くらいは問題ないけど?」

「死んじゃう! 私絶対溺れ死んじゃう!」

『この部屋は与圧しておく。酸素供給もしよう』

「絶対だよ!? 私は普通の人間だからね!?」

「あお、しつこいって」

 

 サブコンゴウに詰め寄るあおを、ポケットのイノセンティアがたしなめる。

 

『兵装に幾つか入られたらしい。エネルギーも各所遮断する』

「ここはダメだからね!?」

『了解した』

 

 あおの泣きわめく声が響く中、コンゴウの船体は海中へと没していった。

 

 

 

「アイーシャ!」

 

 息を切らしながら病室に入ってきたニナの目に、ベッドごと電子シールドで防護されているアイーシャの姿が入る。

 

「大丈夫!?」

「問題ない。前も似たような事が有った。あの時はナノマシン融合してる私自身がハッキングされかけたから、その時よりはだいぶいい」

「そう、それなら…」

「それよりもニナとアリカも気を付けた方がいい。ナノマシン処理している乙HiMEがこの敵に生物として見られるか機械として見られるかが分からない。特にニナは」

「! 対処方は!?」

「これがネウロイのコピーなら水に弱い。それとコアを破壊すればいいが………」

 

 話の途中で、何かがシールドに触れてスパークしたかと思うと、砕け散る。

 

「多分、これ自体がコアだ。かなり反応が小さいが、武装神姫ならむしろ対処できるかもしれない」

「分かった! ジュピシーを連れてくるから!」

「いや、それよりも遊撃に回した方がいい。私にもどれ位の数がいるか把握できない。恐らく、相当数いる」

「そんなに………」

「この学園が機能不全に陥る前に処理しないとまずい」

「急ぐわ! ここが落ちたら大変な事になるだろうし!」

 

 ニナが部屋から飛び出していくのを見送ったアイーシャは、何気に自分の腕を見る。

 最近リハビリを始めたとは言え、未だやせ衰えているそれをもう片方の手で握りしめる。

 

「急がないと………何としても………」

 

 彼女の呟きを聞く者はその場にいなかった。

 

 

 

「そこか!」

 

 大型レールカノンから放たれた高速弾が、迫ってきていた中型ネウロイを貫き、その一撃で相手は木っ端微塵に砕け散る。

 

「何だ、何かおかしい………」

「数ばかり多くて、手ごたえが全然無い!」

 

 ラウラが首を傾げる中、シャルロットも違和感を感じていた。

 

「ネウロイなら、コアが弱点のはずだが、コアの反応が無い! だがある程度ダメージを与えれば破壊は出来る」

「けど、なんかゾンビみたいに次々湧いて来るよ!」

「キリがない! どういう事だ!」

『ラウラさん! シャルロットさん! 501と繋がりました! 今回のオリジナルと交戦経験があるそうです!』

 

 簪からの通信に、ラウラとシャルロットは回線を開く。

 

「こちらボーデヴィッヒ! 現在コピーネウロイと交戦中! 倒しても次が湧いてきます!」

『それがかつて501基地を襲ったネウロイのコピーなら、今貴方方が戦ってるのは子機のような物よ。コアは今学園を襲撃している超小型の方なの』

 

 ラウラからの切羽詰まった通信に、ミーナが説明する。

 

「それじゃあここで戦っても無意味って事!?」

『無意味ではない、本体が基地の索敵を含めた電気系統を破壊し、子機がそこに攻撃を加える。よく出来た連携だ』

 

 シャルロットが思わず叫んだ所で、美緒が追加で説明する。

 

「つまり我々は、ここでこいつらが学園に行かないように迎撃し続けなけれならないと?」

『そうなるわね。コアである本体を全部倒さない限り、子機への迎撃が必須になるわ』

「了解、ここで防衛線を構築します!」

『篠ノ之です! そのコアなんですが、なんで下着の中に入ってくるんですか!? 対処法は!?』

『なぜ下着の中に入ってくるのかは不明よ。対処法は…』

 

 そこへ箒の切羽詰まった通信が割り込んでくるが、ミーナは言葉を濁す。

 

『対処法は?』

『それは………』

『簡単だ』

 

 他の専用機持ちも聞いてくる中、ミーナの後ろからバルクホルンが答える。

 

『履いているから入ってくるのだ。脱げ』

『………は?』

『だから脱げ。履いていなければ入ってくる事は無い』

『………冗談ですよね?』

『私はそうしたぞ』

『………ええええええ!?』

 

 あっさりととんでもない対処法を教えるバルクホルンに、通信を聞いていた者達全員の絶叫が返ってくる。

 

『大丈夫だよ~、ちょっとスースーするだけだから』

『空の上なら誰も見ていないしな』

 

 さらにそこへハルトマンも余計な事を追加し、バルクホルンも頷いた事に聞いていた全員が凍り付く。

 

『一夏が! 男が一人います!』

『そう言えばそうだったな。目隠しでもしておけ』

(ダメだ、ウィッチの人達は実戦慣れし過ぎてスレている………)

 

 通信を聞いていた者達全員が同じ感想を抱くが、そこで通信にノイズが走る。

 

『次元通信装置のアンテナ部に入られました!』

『まずい、奥に!』

 

 更識姉妹の慌てた声が聞こえ、ノイズが更に酷くなる。

 通信途絶の可能性を感じたラウラが急いで叫ぶ。

 

「そちらではどうやって解決したのですか!」

『ミーナ隊長がね、お…』

 

 ラウラの問いにルッキーニが答えようとした半ばで、通信が途絶する。

 

『次元通信が途絶しました!』

『潰したけど一歩遅かった………下手したらまた私達孤島でサバイバルよ!?』

『この調子で全てのシステムがダウンしたら本当のサバイバルになりかねません!』

 

 更識姉妹の悲鳴染みた通信に、聞いていた者達が顔をしかめ、中に顔色を変える者もいた。

 

「外敵はこちらでなんとかする! 本体を!」

『頼む! 取りあえず一夏に目隠し!』

『いや、オレ部屋にでも引きこもるから………』

『リーダーが引きこもってどうする!』

「武装神姫からのデータだと、本体はそれこそ虫くらいの速度しかないって! ISの速度で動き続ければ入られないよ! だから脱がないで!」

「そもそもISまとっていては無理だ!」

 

 この奇妙な敵襲に、誰もが今出来る事をするべく奮闘していた。

 

 

 

「そこです!」

 

 ココロの振るったムチがコピーネウロイを打ち砕く。

 

「ええい、敵が小さすぎる! これではどこにいるかも分からぬ!」

 

 白刃を構える華風魔が周囲を見回すが、各所から聞こえてくるあられもない悲鳴と突如として停止する機器だけだった。

 

「こんな小さい敵なんて想定してません!」

「これならまだ見えぬ物の怪の方がマシじゃ。それなら感じ取れる」

「それはそうですけど………」

 

 背中合わせになって得物を構えながら、二人は焦りを感じる中、遠くから戦闘音が響いてくる。

 

「あれはエスメラルダ殿とポイニー殿か」

「今上がっているのはISが二機とRVが二機、二人が巡回に行ってたのは幸運でしたね」

「これでは我らのRVは動けるかどうかも分からん」

「空中でエンストなんて起こしたら最悪ですし………」

「そこか!」

「ひあぅ!?」

 

 華風魔の振るった刃がそこを飛んでいたコピーネウロイを両断すると同時に、それを追っていたアリカの鼻先をかすめそうになる。

 

「あ、すまん! 怪我は無いか!?」

「は、はひ………」

 

 腰を抜かしそうになっているアリカに負傷の有無を確かめる華風魔だったが、アリカは思わず首をガクガクと縦に振る。

 

「随分と物騒………と言うか変わった装備してますね」

「我もココロ殿も元々こっちが本職だ」

「ムチと剣で?」

「マスター、彼女達はGの天使でも元はオカルト対処専門人員です。あれはそのための武装かと」

「そう言えばそういう人もいるんだっけ」

 

 ジュピシーの説明に、アリカと一緒にコピーネウロイを追っていたニナが頷く。

 

「そう言えばマシロ陛下は? 一緒にいないのですか?」

「部屋のシャワールームに立てこもって早うなんとかせい! だって」

「寮の大浴場も逃げてきた子達ですし詰めだって」

「水が苦手とは聞いておったが、そうなっておるのか………」

「私達も、ひ………ひああぁぁぁ!!」

 

 会話の途中で、ニナが一際甲高い悲鳴を上げ、尻を抑える。

 

「いるのか!」

「やああぁぁ! きゃあああぁ!」

「ニナちゃんごめん!」

 

 悲鳴を上げながら地面を転がりまくるニナをアリカが強引に抑えて下着を引き下ろそうとした所で、飛び上がったコピーネウロイをジュピシーのパウダースプレイヤーから放たれた弾丸が撃ち抜く。

 

「ひううぅぅ………」

「ニナちゃん、もう大丈夫だから」

「………随分な反応でしたね」

「………急所やもしれぬ」

 

 涙目になっているニナをアリカがなだめるのを見ながら、ココロと華風魔は思わず顔を見合わせる。

 

「私が探すから、ニナちゃんはお風呂がどっかに隠れてた方が…」

「それは…」

 

 思い悩むニナだったが、顔を上げた所でなぜかそこにいる鈴音と目が合う。

 

「あ………」

「その、大丈夫?」

「いつから………」

「なんかすごい声が聞こえたから来てみたら、転げまくってるのが見えて………」

「そこから………」

「いや、もっとクールだと思ってたけど、意外とかわいい所あるのね」

「ニナちゃんって、くすぐられるのがすごい苦手で」

「アリカそれは言わない!」

「まあ、そんな様子ならそれこそ隠れてた方いいわね。風呂がダメなら海にっての有りだろう…し…」

 

 話の半ばから、ニナの顔がみるみる赤くなっていく。

 一応フォローする鈴音だったが、ニナの肩が震え始めた事に気付いた。

 

「じ、じゃあ私はこっち探すから!」

 

 慌ててその場を取り繕って去る鈴音だったが、ニナの震えは止まらない。

 

「あの、ニナちゃん?」

「だ、大丈夫ですか?」

 

 アリカとココロが心配そうに声を掛けると、ゆっくりとニナはそちらに振り返る。

 その顔は、赤面から憤怒へと変貌していた。

 

「アリカ」

「な、何ニナちゃん?」

「あいつらを壊滅させる! 一匹残らず駆逐する! 行くわよ!」

「ま、待ってニナちゃん!」

 

 叫びながら走っていくニナをアリカが慌てて追いかける。

 

「あの様子なら大丈夫かの」

「そうでしょうか?」

 

 華風魔がそれを見送り、ココロは呆然と離れていく二人を見る。

 

「これ以上の喜…悲劇が起こらんようにせんとな」

「さっきの事は秘密にしましょう」

 

 頷きながら、二人の天使は再度得物を構え直した。

 

 

 

「そっちに反応あり!」

「どこだ!」

「いた!」

 

 ツガルのセンサー頼りにコピーネウロイを探す一夏と箒は、目の前を文字通り虫のように飛んでいくコピーネウロイを見つけ、箒が竹刀の一撃で叩き落とす。

 

「これで何匹目だ?」

「もう数えるのも煩わしい。やたら弱い上に数だけは多いときている」

 

 うんざりした顔の一夏と箒が、周囲を見回す。

 大分減ってきたが、まだあちこちから奇妙な悲鳴は響いてきていた。

 

「一応非戦闘員は浴場かシャワールームに閉じこもっているらしいけど………」

「まあ、仕方ないよな………」

「ええい、あんな恥ずかしい目にあわされて黙ってられるか!」

 

 ツガルからの報告に一夏は顔をしかめるが、箒はむしろ憤る。

 

「次はどこだ!」

「待って、反応小さくて中々…」

 

 次を探す一夏達の元に、千冬とどりあが姿を見せる。

 

「この一帯は駆逐したか」

「だといいのだけれど………」。

「こっちにも反応が無いから、多分大丈夫」

 

 合流したらしいアークが千冬の肩の上で確認するが、二人の姿を見た一夏と箒が目を丸くする。

 

「千冬姉………」

「その、どこから?」

 

 どこから持ち出したのか、千冬とどりあが全身防護服姿なのに思わず絶句する。

 

「苦肉の策だ」

「これなら防げそうなので」

「ずるい………」

「確かに………」

「ええい、取りあえず敵の殲滅が先だ! 防衛線は張れているが、本体を全部つぶさない事には意味が無い!」

「しかもあと何体いるかわかりませんし」

 

 箒の呟きに一夏も思わず頷くが、千冬は強引に話を反らし、どりあも同調する。

 

「どこ行った!」

「こっち飛んでこなかった!?」

 

 さらにそこにねじると鈴音がそれぞれ別方向から姿を見せる。

 

「今そこにいたぞ!」

「見失った! 見なかった?」

「あ」

「すぐそこに…」

 

 周囲を探すねじると鈴音だったが、そこで武装神姫が指摘すると同時に、二人の顔色が変わる。

 

「ひう!?」

「はう!?」

「入られたのか!」

 

 すぐに悟った箒が、片手で竹刀を構え、もう片手で一夏の首を強引に向こうに向ける。

 

「ぐえ」

「見るな! 今取って…」

「やるのか! セットフォーム!」

「このお!」

 

 箒の注意も聞かず、ねじると鈴音がパンツァーとISを展開させる。

 だが、すぐにそれぞれの武装の各所から火花が飛び始める。

 

「何だ!?」

「これって…」

「! すぐに解除しろ!」

「いけないわ! 早く!」

 

 何が起きているかを瞬時に理解した千冬とどりあが叫び、二人は慌てて武装を解除、直後に放り出される形で宙に出たコピーネウロイをツガルとアークが即座に撃墜する。

 

「今のは………」

「そういう事………不用意に武装すれば」

「即座にそちらに移動して回線系を破壊される」

「ただの変態かと思ったら、よくできているわね」

「ホントだね~」

 

 予想以上に相性の悪い敵に千冬とどりあが思わず唸る中、背後から突然同意の声が聞こえて振り向くと、そこにいつの間にか束の姿が有った。

 

「電子系破壊に特化したマイクロエネミーによるインナーアタックか~。さすがに想定してなかったよ。小さすぎてISのセンサーでも見つけにくいし。とりあえずなんとか学園内のサーチは終わったよ。はいこれ」

 

 束があれこれ言いながら、侵入対策かやけにカバーがごついタブレットを千冬に渡してくる。

 

「これが全部か?」

「まだかなりの数ね………下手に機械の奥に潜り込んでたら見つけるのも一苦労だし」

「それなんだけど、どうにもある程度破壊したら次の目標に移るみたいだね。故障してる機器は多いけど、完全に破壊されてる物は無いみたい。もっとも、さっきみたいに最初から内部にいたら話は別だけど」

「! それで下着の中に!?」

「いやそれはオリジナルネウロイと一緒みたい」

 

 話を聞いていた一夏が思わず叫ぶが、ツガルが即座に否定。

 

「オリジナルがなんで下着の中に入ってくるかまでは分からないけど、下手に入ってこられた状態でISやパンツァーを展開したら、即座に内部破壊するように改良したんだと思う。いや~、つくづくよく出来てるね♪」

「御託は後だ。対策は?」

「水が苦手ってのは変わらないみたいだから、それこそ水の中にいればいいんじゃない? さすがにここを水没させるわけにはいかないけど」

 

 嬉々と説明する束に千冬は声を荒げるが、束は嬉々としたまま続ける。

 

「………姉さんは平気なの?」

「ん? 一番簡単な方法あるし」

 

 そこで箒がそれとなく聞いてきたのに、束はしれっと答える。

 

「一番簡単?」

「………まさか」

 

 一夏が首を傾げるが、先程聞いた通信を思い出した箒が顔色を変えて束を物陰に引っ張っていく。

 

「………姉さん! 何考えて!」

「え~? これなら確かに大丈夫だよ。この学園に男は一っ君一人だけだし」

「一人でも問題だ!」

「はっはっは、問題ないよ~。ちゃんとイナーシャモーションでスカートは絶対捲れないし。一っ君が覗き込んでくるなら別だけど」

「だからって!」

「そこまでにしとけ。こいつに道理を説いても無駄だ。一緒に対処を考えるからお前達は敵の発見、殲滅を優先しろ」

「通信関係がほぼ停止してますから、そちらも考えませんと」

 

 ウィッチから聞いた対策を取っているらしい束に箒は肩を揺さぶって問い詰めるが、千冬は色々諦めてどりあと共に束を連れていく。

 

「サーチマップは転送してもらったから、他の所も行こう」

「ああ、そうだな………」

「じゃあ私達はこっち!」

 

 ツガルがマップを確認する中、察した一夏が思わず赤面しながら言葉を濁し、鈴音は別方向を目指す。

 一夏達が見えなくなった所で、鈴音とねじるは顔を見合わす。

 

「で、どうする?」

「どうするって………」

「やっぱ、水でも被った方がマシよね」

「そうだな、そうだよな。間違ってもノーパンなんて所業はさすがに………」

 

 一瞬スカートの中に手を入れかけたねじるが、慌てて手を出してバケツがないかと探す。

 やがて口伝にその言を聞いた者達が、究極の二択を迫られる事になった。

 

 

 

「準備はいいわね?」

「うん、一応………」

 

 IS学園指定の水着を着こみ、背中に水の満載したタンクを背負ったニナが、両手に整備科から借りてきた携帯型高圧洗浄機を構える。

 

「先程篠ノ之博士から学園敷地内のサーチデータが届きました。部活棟エリアにまだ反応が多いようです」

「じゃあまずそこから行くわよ!」

「ニナちゃんニナちゃん、ちゃんと狙ってからね? 間違っても人狙ったらダメって言われてるからね?」

 

 ジュピシーからの報告に、醜態を見られたニナが明らかにやる気満々で部活棟エリアに向かうのを、同じようにタンクを背負ったアリカがなだめながら続く。

 

「マスター、何か彼女の雰囲気が変わっていますが」

「ニナちゃんはガルデローベ居た頃から、思い込んだら一直線だったから」

「暴走しませんか?」

「まあ、それで前に殺されそうになったけど」

「………詮索はしない方がいいと判断します。! 一匹こちらに…」

「そこか!」

 

 宙を飛んでいるコピーネウロイを見つけたニナが手にした高圧洗浄機を噴射、どれだけの圧力がかかっていたのか、放たれた水流はコピーネウロイを粉砕するが勢い余ってその先の植え込みまで切断した。

 

「よし、これなら!」

「ニナちゃん威力上げすぎ! 人に当たったら怪我しちゃう!」

「どう見てもウォーターカッターです。下手したら首が飛びます」

「威力最大にしてって言っておいたから。少し落とした方がいいかしら」

「少しじゃなく大分………」

「次は向こうです」

 

 相当腹に据えかねているらしいニナをアリカはなだめつつ、ジュピシーのサポートで次を探す。

 

「10時方向、12m先です」

「そっちね!」

「どこ!?」

 

 二人が探す中、破裂音のような音が響いてくると、宙にいたコピーネウロイらしき破片が砕け散って地面へと落ちる。

 

「え?」

「あら、貴方方………すごい恰好ですのね」

 

 横手から変わったライフルを構えたセシリアと遭遇したニナとアリカだったが、そこで向こうの違和感に気付く。

 

「それは?」

「非殺傷用のエアインパクトライフルですわ。前に試作品を渡されていたのを引っ張り出してきましたの」

「あとなんで汗だくなんですか?」

「防護策ですわ」

 

 ニナの質問にセシリアはやや大型の空気銃を見せるが、続けてのアリカの質問に平然と答える。

 よく見ればセシリアはかなりの厚着をしており、ジャージ・普段と違うズボンの制服・どこからか用意したスキーウェアのズボンと、特に下半身をやたらと厚着しており、着膨れしすぎて頬からは汗が滴り落ちていた。

 

「まあ、確かにそれだけ着込めば入ってきそうにありませんけど」

「暑くない?」

「仮にもこのセシリア・オルコット、一夏さんですらまだなのに、あんな虫風情に下着の中に潜り込まれるなんて恥辱、絶対お断りですわ!」

「………そうですね」

「でも動きづらそうなんだけど………」

「お気になさらず。では私はこちらを」

 

 そう言いながら、明らかに着膨れで動きづらそうなセシリアが次を探しに行く。

 

「………身持ちが固い人なのかしら」

「なんかさらりと変な事言ってた気もしたけど」

「取りあえず次を探しましょう、マスター」

 

 それぞれに対策を取りつつ、学園内のコピーネウロイの駆逐が続く。

 

 

 

「そこなのだ!」

「でえい!」

 

 マオチャオが指摘したポイントをどりすがカイザードリル(非稼働状態)で貫き、そこにいたコピーネウロイを貫く。

 

「なんでセットフォームしないで扱えるんや」

「訓練の成果でしょう」

 

 同じように自分のツールを非稼働状態で対処しようとしていたのぞみとサイコだったが、のぞみに至っては持っているだけで息を荒げていた。

 

「無理せず避難なさっては?」

「どりすにばかりやらせておけるかい。それに上位ランカーもすでに何人かツールやられてるらしいで?」

「ねじるはパンツァー自体壊されたって」

「予想以上に厄介ですね。一見ただの変態虫なのですが」

 

 サイコはぼやきながらツールの笛を吹きならし、それに反応したのか湧いてきたコピーネウロイ数体をのぞみとどりすがそれぞれツールで叩き潰す。

 

「うお、さすがにきついで………」

「その気になれば素手でも破壊できるようですが………」

「素手で触りたいんか? 下着の中に入ってくる変態虫」

「いやです」

「だよね………」

 

 地道に見つけてはツールで破壊するという作業を繰り返しながら、三人のパンツァーはぼやくしかなかった。

 

「あとどれ位?」

「篠ノ之博士からのデータが確かなら、半分は処理出来たのだ」

「これでまだ半分かい………」

「一体どこまで設備が破壊されたのか………!」

 

 サイコが被害状況を考えるが、そこで瞬時に振り向いてツールでどりすを狙って近づいてきたコピーネウロイを叩き落とした。

 

「なんでセンサーも使わないのに分かるのだ?」

「さあ、なぜでしょう?」

「どりす以外には無茶苦茶身持ち固いからやろ」

 

 何故か全く隙を見せないサイコにのぞみは生ぬるい視線を送りつつ、のぞみは次を探す。

 

「にしてもこいつら、いつ入り込んだんやろ?」

「このサイズなら、いつ入り込んでも気付くのは難しいでしょうね」

「でも結構いるよね?」

「そう言えばそうなのだ。幾ら小さくてもこれだけ居れば何かに引っ掛かってもおかしくないのだ」

「レーダーもすぐやられた訳じゃないんやし、一体………」

 

 のぞみが首を傾げた時、ふと敷地の端の海岸線に流れ着いたヤシの実らしき物を見かける。

 

「まさか、やけど!」

 

 試しにのぞみがツールを振り上げ、ヤシの実をかち割る。

 次の瞬間、ヤシの実に偽装された小型ポッドからコピーネウロイがまとまって飛び出してくる。

 

「おわあ!?」

「漂着物に偽装して侵入してたのですか!?」

「こっち来たぁ!」

 

 まとまって向かってくるコピーネウロイにどりすが思わず叫ぶ中、サイコが何を考えているのかいきなり海へと飛び込む。

 

「そっか海に逃げ…」

「伏せてください!」

「え?」

 

 てっきり逃げたのかと思ったサイコからの声に、のぞみとどりすが伏せた瞬間、水中でセットフォームしていたサイコがツールをかき鳴らし、その衝撃波が海水を弾き出して小型の津波となって飛び立とうとしていたコピーネウロイをまとめて押し流す。

 

「これなら………」

「やった! 確かにこいつら水に弱いで!」

「ずぶ濡れ………」

「仕方ないのだ」

 

 巻き添えでずぶ濡れになりながらも、のぞみが海水で動けなくなったコピーネウロイを踏み潰し、どりすとマオチャオもそれに続く。

 

「すいません、他に手が思いつかなくて………」

「かまへん。これだけの数また解き放ったら元の木阿弥や」

「至急海岸線を調べるように連絡するのだ!」

「お願いします、携帯も通じなくなってしまいましたし」

 

 セットフォームを解きながら、サイコも他に漂着物が無いかを探す。

 

「それにしても、なんて手の込んだ真似を………」

「今まで数と力づくで襲ってきたのにな」

「そう言えばそだね」

「戦術が、変わった? 偽装潜入なんて、まるで人間が考えたような………」

 

 サイコの懸念が皆に伝わるのはしばし後の事だった………

 

 

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