第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP66

 

異なる世界 ブルーアイランド

 

「学園が壊滅?」

「実際に壊滅したわけでなく、システム的に壊滅状態らしいです」

「電子配線と下着に潜り込むコピーネウロイに攻め込まれて、学園中の電子機器がオシャカ、潜り込まれないように下着脱いだり水かぶったりしてたら風邪が大流行してるって」

 

 音羽が可憐から聞いた報告に眉をひそめるが、ヴァローナからの詳細に更に困惑する。

 

「つまり、学園自体が壊れた訳じゃないと」

「見た目には全然無事だそうです」

「IS隊の隊長が目とお尻潰されそうになったって~」

「何が有ったんだろう………」

 

 ますます疑問が深まる中、音羽が地図を広げて外出準備を進める。

 

「まだ見つからないんですか、転移してきた人」

「何でか全然ね~」

「ミズキが何か手貸してるのかも。なんでか定例報告以外、接触もしてこないし」

「相当な訳ありの人みたいですね………」

「あかねちゃん達と手分けしてあちこち探してみてるんだけど………FAGの子達のセンサーって武装神姫程よくないらしくて」

「見た目は似てても、中身は別物だからね~」

「それこそ転移してきたって見た目で分からないかな? ウィッチの人達はすぐわかったけど」

「それは、あれだけ目立つ特徴が有れば別ですが………」

 

 可憐が初めてウィッチと接触した時の事を思い出しながら呟く。

 

「そりゃ獣耳とかついてたら一発だろね~。でなけりゃよっぽど時代錯誤な恰好してるか」

「完全に現地に溶け込んで潜伏してるのかもしれません」

「どうやったら見つかるかな~?」

「何か他に特徴があればいいのですけど………」

 

 

 

「これは………」

「分かる?」

「ええ、間違いなく外的要因ね」

 

 ひまわりの自室で、ひまわりと共にアローンの戦闘を解析していたマドカが、ひまわりが見つけた物を注視する。

 

「何らかの変化因子か、エネルギー注入か………これだけだとどうにも判断が」

「ごめん、これ以上のデータは無くて」

「無理も無いわね。アローンやパレットスーツのエネルギー量が強すぎて、他のは霞んじゃうし。けど、明かに人為的な物な事だけは分かった」

「じゃあ、ひょっとしてこれをやってるのは………」

「私達が探している人物、かもしれない」

 

 ひまわりとマドカはようやく見つけたかもしれない可能性に、大きく頷く。

 

「ではこのデータ転送しておきます」

 

 解析に協力していたアーキテクトが素早くデータをまとめ、ブルーアイランドに転送させる。

 

「つまりチャンスは」

「次にアローンが現れた時」

「だが、こちらではJAMの介入が有った」

「そちらはこちらでなんとかする。というかアローン相手だとRVでも出力足りるか分からないし、ソニックダイバーじゃ相手にもならないようだし………」

「出力問題は大きい。そもそもこっちでもパレットスーツ以外だとアローンの相手にすらならない」

「蒼き鋼の艦をどっちか回してもらいたいけど、どっちも離れられないみたいだしな~」

「データは来ている。あの出力ならばアローンとも戦えそうだ」

「それってどんな船?」

 

 マドカとアーキテクトの会話に、ひまわりは思わず首を傾げる。

 

「でなければ永遠のプリンセス号か、もうそろそろ機械化帝国の大型転移装置も修復が終わるはずだから、増援艦隊を………この世界って宇宙人の艦隊来て大丈夫な感じ?」

「絶対パニックになる」

「だよね………」

「そちらは最終手段にした方がいい」

「これ以上こっちの世界を混乱させないでほしいんだけど」

「それはどこの世界も思ってるはずだよ………」

 

 マドカは思わずため息をもらしつつ、今後の方針を詰めるべく、各所に連絡を入れる事にした。

 

 

二時間後 ブルーアイランド 会議室

 

「以上の点に置いて、アローンのパワーアップに何らかの要因を付与している存在の可能性が有ります。そしてそれが別世界からの存在の可能性は十二分に有り得ると思われます」

 

 マドカとひまわりが解析結果を発表するのを、健次郎、嶋、悠里、ジオール、クルエルティアが聞いていた。

 

「ぬう、アローンを外部から強化か………確かに容易な事ではないじゃろう」

「こちらの世界では可能か?」

「ほぼ不可能………じゃろうな。そもそもアローンの詳細自体掴めておらん。それを強化なぞとは土台無理な話じゃ」

 

 健次郎と嶋が顔を突き合わせるようにして唸る。

 

「こちらの世界の技術でないとしたら、違う世界の技術」

「その可能性は高いでしょうね」

「何という事………」

 

 ジオールとクルエルティアが頷く中、悠里は思わず顔をしかめる。

 

「その者が何者かは分からぬが、アローンを手助けしているという事は、目的は示現エンジンの破壊」

「そうなるでしょうな」

「端的に言えばテロリストという事でしょうか?」

「次元を跨いだテロリストというのは随分スケールの大きい話ですが」

「何故、示現エンジンを狙うのでしょうか?」

 

 悠里の問いに、全員が首を傾げて唸る。

 

「その人物についていると思われる武装神姫から何らかの連絡は?」

「発信源偽装した定時報告のみだそうです」

「まさかテロ活動手伝ってたりしないわよね?」

「さすがにそれは無いと………」

 

 嶋の問いにマドカはほとんど内容の無いミズキからの報告を表示し、ジオールとクルエルティアが思い悩む。

 

「とにかく、狙いは次にアローンが現れた時」

「これまでの状況から、JAMが何らかの干渉をしてくる可能性も十二分にあります」

「アローンの相手は無論ビビットチームで行おう」

「JAMの干渉によるが、そちらはソニックダイバー隊とトリガーハートで対処、天使隊はビビットチームの援護に回す」

「了解しました」

「了解です」

 

 嶋の指示にジオールとクルエルティアは頷く。

 

「問題はアローンの次の襲撃がいつかという事ですけど」

「ある程度の周期性は有るから、多分そろそろだと思う」

「じゃろうな。次のアローン出現時に、アローンのみならず周辺も警戒、不審人物の割り出しに全力を注ごう」

「調査なら得意です。他の者達にも伝えます」

 

 マドカとひまわりが次のアローン出現を算出し、健次郎が警戒を手配するのにアーキテクトがFAG達の参加を申し出る。

 

「さて、一体何が出るのか………」

 

 

 

「そういう訳で、次の戦闘の際に特別作戦を行う事になったわ」

 

 瑛花の説明に、ビビットチーム、ソニックダイバー隊、天使隊、トリガーハート隊が耳を傾ける。

 

「目標はアローンに何らかの処置を行っていると思われる人物の発見及び確保。まあ本当に人ならいいんだけど」

「ミズキからは詳細全然届いてないからね~よっぽどの訳ありってはの確かだね~」

 

 瑛花の疑問付きの説明に、ヴァローナが一応補足する。

 

「人間じゃない可能性もあるって事?」

「私達みたいな人型機かもしれませんし」

 

 みずはの質問にエグゼリカが小さく手を上げる。

 

「それはそれで目立ちそうだけど………」

「学校だと全身義体って言ったら皆さん納得してくれてますけど」

「それはそっちがそういう技術レベルだからよ」

「全身義体って?」

「サイボーグ、つまり機械仕掛けの人の事」

 

 みずはが思わずぼやくと、エグゼリカが補足説明するがそれを聞いたビビットチームが更に首を傾げる。

 

「脱線はそこまで。問題は幾つかあるわね、今までのデータから見れば、アローン出現と同時にJAMが何らかのアクション起こす可能性は高いけれど、それが何かまでは分からない。そしてそんな中で該当人物を捜索、発見、確保までしなくてはいけない事」

「武装神姫が付いてるって事は、その人が何らかの戦闘力を持ってる可能性も高いね~」

「つまり武装してる可能性もあるって事?」

「白兵戦が出来る人を誰か回してもらうべきかしら………」

 

 瑛花が説明を続ける中、ヴァローナの指摘に音羽が頭上のヴァローナに確認し、瑛花が思わず唸る。

 

「相手の情報が全く無いのでは、対策の立てようも無いわね。とにかくやれる事をやりましょう」

 

 ジオールがそうまとめると、その場は解散となる。

 

「瑛花さん、ちょっと」

「何か?」

 

 席を立った瑛花をジオールが呼び止める。

 

「実は、現在半音信不通の武装神姫ミズキからある情報が届いているんです」

「それは?」

「代弁者について」

 

 

 

「ポイント確認」

「規定フィールド確保」

「予備転移装置、準備OK。送信受信、双方問題無し」

 

 ブルーアイランド階下の物資搬送用ドッグの一つを改修し、受け入れ準備を整えていたマドカと手伝っていたひまわりとアーキテクトが最終確認をする。

 

「これでいいんですか?」

「OK、じゃあ始めましょう」

 

 マドカが装置を起動させると、ドッグの入り口に渦が発生し、そこからゆっくりと攻龍が出現していく。

 

「なかなか非常識………」

「カルナダインやRVと違って次元転移前提の船じゃないからね。外付けで使い切りの転移装置つけてなんとかしてるの」

「このクラスの船でも出力が足りない訳か………」

「転換炉なんてまだ理論段階のだろうしね。あ、ここの示現エンジンならなんとかなりそうかも」

「もしくは私達クラスなら転移に紛れ込める」

「さすがにブレイクスルーが過ぎる。まだ早い」

「そんな事言ってられなくなるかもよ、っと」

 

 技術格差の事を呟きながら、攻龍の完全転移を確認したマドカが装置の点検を進めていく。

 

『こちら攻龍、艦の状態を確認中、現状で異常は認められず』

『こちら可憐、攻龍とのデータリンク確保を確認しました』

 

 攻龍艦内からのタクミからの通信と、ブルーアイランド管制室に詰めていた可憐からの報告が届く。

 

「これでよし、さて次はソニックダイバー積み込まないと」

「大型だと運用大変ね」

「どの装備もそれぞれ一長一短がある」

「それは分かってる。貴方達にも貴方達の利点があるし」

 

 肩に登ってきたアーキテクトを見ながら、ひまわりは呟く。

 

「示現エンジンの次元間転移理論が完成すれば、貴方達もこっちで戦えるんだけどね」

「一色博士はもう少しだと言ってる。まあ学会に発表出来ないとも言ってたけど」

「技術交流もかなり段階すっ飛ばしてるからね………どこの組織も、それぞれの技術は特化してるし」

「見てみたい、色々」

「今回の作戦が終わったら、案内してあげる」

「お願い」

 

 心なしか期待しているひまわりに、マドカは笑みを返す。

 

(他の所もこう順調に交流出来てるといいんだけど………)

 

 

 

異なる世界 横須賀鎮守府

 

「う~ん………」

「よくない知らせか?」

 

 提督執務室で、一枚の書類を手にしてうなる冬后提督にガランドが声を掛ける。

 

「大本営からの召喚状だ。どこから漏れたのか、どうやら君達の事についてらしい」

「おやおや、かなり耳が早いようだな」

「やはり、ここ数日基地の周りにいたのは………」

 

 顔をしかめる北郷少佐に思わず苦笑するガランドだったが、その肩にいるウィトゥルースが懸念を口にする。

 

「だろうな。もっともスパイかただのマニアかは分からん。よく訓練中の艦娘を砲塔のようなカメラ構えている奴が盗撮しに来るのは断固阻止してるが」

「ははっ、こちらもだ」

「スパイよりも盗撮が問題なのですか?」

「下手したら盗撮の方が厄介でな。前にウィッチの機密情報の売買が行われると聞いて踏み込んだら、盗撮マニア達が自分達の秘蔵の交換会をしていた事が有った。その場でネガごと燃やしたら発狂しかけてたがな」

「こちらでも似たような事が有ったな。艦娘達が砲撃叩き込もうとするのは何とか止めたが」

「どこの世界も諜報組織よりマニアの方が危ないのでしょうか………」

 

 ウィトゥルースがとんでもない話に呆然とする。

 

「身内を疑う暇が有るのなら、もっと深海棲艦対策を考えればいいだろうに」

「驚異的な力を持つ相手に恐怖を覚えるのはどこも変わらない。こっちでもウィッチ反対派の軍人はどこにでもいるくらいだ」

 

 思わずため息を漏らす二人の司令官に、ウィトゥルースはどう言うべきか判断に迷う。

 

「もっとも最前線ではそんな事気にしている余裕も無いのが現実だがな」

「協力出来るなら協力するし、使える物は使う。今そうしているようにな」

 

 

 

同時刻 小笠原諸島近海

 

「目標確認、駆逐級二隻、軽巡一隻、重巡一隻、空母一隻、戦艦一隻と判断出来ます」

「急速浮上!」

 

 静の報告を聞きながら、群像が浮上を指示。

 イー401が海底間近から一気に浮上していく。

 

「海面まであと30、20、10、海面まで浮上しました」

「カタパルト用意!」

「501、発進シーケンス入ります!」

「第0艦隊、続けて発進準備中!」

 

 ストライクウィッチーズがイー401のカタパルトから次々発艦していき、続くように横須賀鎮守府で特別組織された第0艦隊が艤装をまとっていく。

 

「フォーメーションライブラ! 制空権を確保するわよ!」

『了解!』

 

 ミーナの指示の元、501のウィッチ達がこちらに気付いたらしい深海棲艦に攻撃を開始する。

 

「雑魚から潰すぞ!」

「おっきい雑魚だな~」

 

 バルクホルンの指示にハルトマンがボヤきながら、急降下しつつMG―42の銃口を駆逐イ級に向けるとトリガーを引いた。

 魔法力を帯びた弾丸は駆逐イ級に突き刺さり、イ級の口から絶叫が漏れる。

 

「もう一押しか」

 

 急降下から体を引き起こした二人を、深海棲艦達が狙おうとするが、そこに弾幕が降り注いでそれを阻む。

 

「そう簡単には行かなくてよ!」

 

 ペリーヌが中心となり、他のウィッチ達がフォーメーションを組んで弾幕を張る中、エース二人がまた急降下して銃撃を叩き込んでいく。

 断末魔と共に駆逐イ級が轟沈する中、空母ヲ級から艦載機が飛び立つ。

 

「上がってきた!」

「フォーメーションアクエリアス! 敵艦載機の撃墜を優先!」

 

 ハルトマンが警戒して高度を上げる中、ミーナの指示で部隊の半数以上が敵艦載機へと向かっていく。

 

「落としまくれ!」

「的ちっちゃいから狙いにくい~」

 

 シャーリーとルッキーニが二人一組となって艦載機を撃墜していく。

 

「小さいのは私ガ! サーニャは元を牽制してクレ!」

「分かった!」

 

 エイラが艦載機を撃墜していく中、サーニャが深海棲艦にフリーガーハマーを撃ち込み、その動きを牽制していく。

 

「陣形単縦陣! 攻撃体勢!」

 

 何故か第0艦隊の旗艦になってしまった吹雪の号令の元、イー401から発艦を終えた艦娘達が陣形を組んでいく。

 

「目標、射程範囲に入った!」

「撃てぇ!」

 

 吹雪の肩にいるランサメントが正確に距離を計測し、それを聞いた吹雪の号令で艦娘達の艤装が一斉に火を噴く。

 ウィッチ達が制空権を確保している上方を避け、やや低めの弾道を描いた砲弾が深海棲艦達に命中していく。

 先頭にいた駆逐ロ級が沈没し、深海棲艦も撃ち返してくる。

 

「取り舵回避!」

 

 吹雪の号令で艦娘達が回避する中、一人だけ砲を構える艦娘がいた。

 

「目標敵砲弾、発射!」

「迎撃ぃ!」

「ダー」

 

 FAFが複数世界の技術を結集させて作った艦娘用リニアキャノンを如月が向かってくる砲弾に照準し、ランサメントのアクティオンランチャーとエスパディアの投刃・フィラータが発射され、砲弾の半数が撃墜される。

 残った砲弾は狙いを外れ、艦娘のそばに着弾して盛大に水柱を上げる。

 

「砲弾を狙い撃ちとはとんでもねえな………」

「とても真似は出来ないわね」

「私達のとは技術レベルが数世代違うわ。どうやって深海棲艦の影響下で動かしてるのも謎だけど」

 

 天竜と龍田が如月と武装神姫達の性能に改めて驚く中、加賀が頷きながらも矢を構える。

 

「オ…!」

 

 それに応じるようにヲ級が更に艦載機を出そうとするが、射出口となっている大型頭部に弾丸が命中し、発進が中断される。

 

「当たった、けど…」

「やっぱり固いね。けど動きさえ止められれば…」

 

 イー401の護衛として上空に控えていたリーネの狙撃がヲ級に直撃するが、思ってたよりもダメージが少ない事にリーネが不安視するが、同じく護衛として待機していた芳佳が目をこらすと、こちらの援護を受けた加賀の発射した艦載機が深海棲艦へと襲い掛かっていた。

 

「全艦、次弾装填終了と同時に一斉斉射!」

「フォーメーション・サジタリウス! 上空から敵艦隊を斉射して動きを止めるわ!」

 

 吹雪が次の攻撃を指示する中、ミーナが上空からの援護で深海棲艦達の動きを封じようとする。

 それに反撃するように軽巡ト級が三つの口から咆哮しながらウィッチ達を砲撃するが、機敏な動きのウィッチ達を捕らえることは出来ず、逆に反撃を食らう。

 

「全艦発射!」

 

 更にそこへ艦娘達の一斉砲撃が叩き込まれ、駆逐ロ級が轟沈、残った深海棲艦達も大きくダメージを負う。

 

「もう一押し!」

「まだ戦艦が残ってるわ! 注意を!」

「何かこっち睨んでるよオーナー!」

 

 ハルトマンが前に出ようとするのをミーナが牽制、そこへミーナのそばにいたストラーフがセーラー服姿の戦艦タ級が凄まじい形相でウィッチ達を睨んでいるのに気付く。

 そしてタ級の艤装の16inch連装砲が一斉に火を噴くが、それが狙っていたのはウィッチでも艦娘でも無かった。

 

「宮藤さん!」

「はい!」

 

 放たれた砲弾がイー401を狙っているのに気付いたミーナの号令と同時に芳佳だけでなく同じく護衛として残っていた静夏がシールドを展開、その砲弾をかろうじて防ぐ。

 

「く、やはり強烈………」

「シールドにだけ力を集中させて! この船が壊れたら帰れなくなるから!」

「は、はい!」

 

 芳佳のサポートで何とか砲弾を防いだ静夏が思わず苦悶を漏らすが、芳佳の助言に大きく返事する。

 

「強度の高い相手は艦娘の人達に任せて! 私達は空母型を集中攻撃!」

「次弾用意、全艦装填終了と同時に一斉斉射!」

 

 ウィッチと艦娘、上空と水平からの同時攻撃に、深海棲艦は追い詰められ、撃沈されていく。

 

「オ、ノレ………!」

「バーニング・ラ~ブ!」

「トドメだ!」

 

 タ級が怨嗟の声を漏らす中、金剛の35.6cm連装砲とバルクホルンのパンツァーファウストが同時に炸裂、そのままタ級は轟沈していく。

 

「周辺に敵反応有りません」

『こちらでも反応は無しです』

「戦闘終了を確認、イー401に帰艦します」

「敵艦隊殲滅を確認、帰還します」

 

 サーニャと静の報告に、ミーナと吹雪が戦闘終了を告げ、一行がイー401に戻っていく。

「501のウィッチ及び、第0艦隊の艦娘、総員の乗船を確認」

「周辺海域、レーダー上では敵影無し」

『こちらの船体もダメージ無し。航行に支障は無いわ』 

 

 401のブリッジクルーからの報告に、群像は安堵のため息をかすかにもらす。

 

「当該作戦行動終了を確認。当海域を離脱する。通常航行速度を維持、出撃メンバーの休養の後に次回作戦の立案を…」

「待ってください艦長。横須賀鎮守府から、通信が来てます」

「何?」

 

 次の指示を出そうとした群像に通信を受けとった静から声がかかる。

 

「どうやら面倒事のようです」

 

 

「いや~、楽でいいな」

「本当ね」

「艦娘の母艦運用は前々から検討はされていたけれど、防御的問題で実用化されてなかったから」

 

 格納庫内で艤装を解除しながら天竜と龍田が呟き、弓を置きながら加賀もうなずく。

 

「この船ならいざって時は逃げる事も可能ですしね」

「深海棲艦の攻撃食らってもすぐには沈まんしな」

 

 格納庫の反対側でストライカーユニットを脱ぎながらミーナとバルクホルンも頷く。

 

「こんな船がもっと有ったら、深海棲艦との戦いももっと楽になるんだろうけど………」

「運用が色々大変だろうけどね」

「このクラスの水上母艦はあとコンゴウだけだ」

 

 如月が思わず漏らした言葉に、吹雪とランサメントが苦笑する。

 

『お疲れの所、申し訳ないが早めに弾薬補給量の報告、お願いするぜお嬢様方』

 

 格納庫に音声通信のみで杏平からの声がかかる。

 

「了解だ。使用分は我々武装神姫でカウントしてる。各自確認の上で報告する」

 

 ランサメントが通信を双方向に切り替えて返答する。

 

『頼むぜ。なんせあいつらへの攻撃は401の兵装じゃさっぱりだからな。俺も牽制とあんたらの砲弾管理ぐらいしか出番ねーし』

「ダー、それこそ向き不向きの話」

 

 杏平の愚痴にエスパディアが慰めるように答える。

 それを聞いていた他のメンツも苦笑を受かべる。

 

「なんでもかんでもうまくいくって物でもないか」

「この船の兵装が深海棲艦に有効であれば、私達の出番もないでしょう」

 

 シャーリーと加賀の会話に皆がうなづく。

 

「そうお互いにやれる事を最善を尽くすしかない」

「戦況としては有利だけど、作戦目標の一つである烈風丸はいまだに再発見出来てないからな」

 

 格納庫に顔を出したイオナと艦内待機していた美緒が会話に続く。

 

「これで会敵した艦隊は三つ目ですけれど、肝心のは見当たりませんでしたわ………」

「マーカーでも付けておくべきだったわね」

 

 ペリーヌが烈風丸を持った相手がいなかった事に落胆し、肩にいたヴェルヴィエッタも肩を落とす。

 

「一応アレコレ探しテるんだが………」

「深海棲艦の瘴気がすごくて、アイーシャみたいに見つけられない」

 

 こちらも色々探知しようとしているエイラとサーニャが顔をしかめたり首を左右に振る。

 

「この体制ならまだまだ行けるネ! 見つかるまでレッツトライ!」

「それがそうも行かなくなった」

 

 金剛がテンション高く宣言するが、そこで美緒が水を差す。

 

「ワッツ?」

「横須賀鎮守府から緊急の帰投命令が出たそうだ。冬后提督に大本営からの召喚状が届いたとか」

「え、大本営からの呼び出しですか!?」

「穏やかじゃないわね………」

 

 美緒からの説明に、吹雪とミーナが顔色を変える。

 

「一応私達の事はまだ知らせないはずですよね?」

「どこかから漏れたのかも。艦娘はその戦闘力から危険視してる人も少なくないわ」

 

 静夏が首を傾げるが、加賀が説明してやる。

 

「それって、大丈夫なんでしょうか?」

「何とも言えないらしい。まあ他の鎮守府でもJAMかその関係と思われる敵の目撃や交戦報告は上がっているらしいから、無下にされない、とは思いたい所だ」

 

 芳佳が心配するが、美緒も聞いていた情報をまとめながら思わず唸る。

 

「上層部に強硬派がいるかどうかね。私達も前に一度部隊解散させられかけた事も有ったし」

「結局その強硬派期待の新兵器が暴走して私達が倒す事になりましたけどね………」

 

 ミーナが過去の苦い経験を思い出すが、リーネもその時の事を思い出す。

 

「そちらも色々有るんですね………」

「組織の運営なんて色々紙一重よ。今回はどう出るのか………」

「呉鎮守府の杉山提督への交渉もまだ途中だと言うのにな。誰か他に味方になってくれそうな者はいないのか?」

 

 吹雪とミーナが唸る中、美緒の質問に艦娘達が顔を見合わせる。

 

「大本営に顔が効いて、こちらの味方になってくれそうな人………」

「と言うと………」

「一人だけいる事はいる。ただ」

「ただ?」

「ものすごい難物デ~ス………」

 

 金剛ですら思わず顔をしかめている事に、ウィッチ達は首を傾げる。

 

「味方になりそうな難物か。それは味方につければ心強いとも言う事だな」

「どんな方なんですの?」

 

 美緒が関心を持つ中、ぺリーヌの質問に再度艦娘達が顔を見合わせる。

 

「艦娘が開発されたばかりの頃、それの指揮運用ノウハウ、そして現状の鎮守府システムをほぼ独力で構築し、日本各地に艦娘と鎮守府を配置させたとんでもない女傑よ」

「通り名は《海の魔女》、現在鎮守府の提督であの人に逆らえる人は誰もいないと言われてます………」

「杉山提督もか?」

「杉山提督は彼女を尊敬し信望してるって聞いてるわ」

 

 加賀と吹雪の説明に、バルクホルンが更に問うが、加賀が更にそれを補足する。

 

「あのいかにもな御仁が信望ですか………」

「とんでもなさそうね、マスター」

 

 ペリーヌが眉根を寄せる中、ヴェルヴィエッタも思わず唸る。

 

「まあ、確かに味方になってくれれば頼もしそうな方ですが………」

「多分もう皆さんの事は知ってると思います。今だ各鎮守府に独自の情報網を持ってるらしいので」

「妖精さんがタレ込んでるって噂もあるぜ。本当かどうかは知らないけど」

 

 ミーナも困り顔で頷く中、吹雪と天竜の説明に、皆の視線が外した艦娘の艤装を点検整備している妖精達へと向くが、当の妖精達はかわいらしく首を傾げると作業へと戻る。

 

「ともあれ、まずは鎮守府に戻ってからだ。やはり早々同盟もうまくはいかないようだな………」

「予想はしてたけれどもね………」

 

 美緒とミーナは、そろって重いため息を漏らした。

 

 

 

「そういう訳で私も大本営に行く事になった」

「大丈夫でしょうか?」

 

 帰港後すぐにガランドから告げられた事に、ミーナが率直に不安を述べる。

 

「この世界の上層部が、早々馬鹿な事をするような者達でない事を祈っておくか」

「あ、その点は多分大丈夫だそうだと冬后提督が。前回で懲りてはいるらしいと」

 

 ガランドの不穏な発言をウィトゥルースが補足する。

 

「前回?」

「前に各鎮守府の提督達が大本営に集められ、艦娘の運用に対して苦言を言われた時が有ったらしい。もっともその場の全提督から放たれた殺気で苦言を行った当人は逃げ出したらしいが」

「何を言ったのか、なんとなく予想出来るのが………」

「私達もよく言われていたからな。まあ現場を知らん奴の戯言だが」

「戯言で済むのかな~?」

「さあ………」

 

 顔を曇らせるミーナと笑うガランドにストラーフとウィトゥルースは顔を見合わせる。

 

「それにこちらではウォーロックのような対深海棲艦兵器の類も成功してないようだ。実質、艦娘に頼るしかない」

「艦娘の皆さんも頑張ってますからね。どこの世界も文句を言ってくるのは前線を知らない人間でしょう」

「ああ、その通りだ」

 

 横から聞こえた同意に、二人がそちらを向くと長門の姿が有った。

 

「私も秘書官として提督に同行するが、そちらはどうする?」

「そうだな、バルクホルンにでも同行してもらうか。いざという時に強行突破出来るように」

「強行突破前提なのですか………?」

 

 長門の問いへのガランドの返答に、ウィトゥルースはそこはかとなく不安を覚える。

 

「ついでに坂本少佐も連れてくか? 乱戦に向いてるだろう」

「最初から乱闘を想定するのはどうかと………」

「まあ大本営も二度目はこりごりだろうしな」

「………二度目?」

 

 物騒な事を言うガランドにそれとなくミーナが釘を刺すが、長門の言葉にストラーフが首を傾げる。

 

「先程確認したが、杉山提督にも召喚状が届いたらしい。一体どこでそちらと接触した事が漏れたのか………」

「内部にばかり目を見張らせてるのかしら? どこも本当に一緒ね」

 

 ミーナが呆れる中、どこかから声が上がる。

 

「何だもう迎えが来たのか」

「随分と急くな。ミーナ、バルクホルンを呼んできてくれ」

「分かりました」

 

 ガランドは他に何か必要な物は有ったかと考えながら、声の上がった玄関の方に向かうが、そこで突然止められる。

 

「待ってください、ヤバいのが来てます」

 

 ガランドを止めた足柄は玄関、正確にはその先に止まっている車の方に目を向けながらガランドの姿が見えないように己の影に隠す。

 少しだけ外を見たガランドは、そこに面頬をかぶり、憲兵の制服に身を包んだ異様な集団に気付く。

 

「アレは?」

「海軍特別憲兵隊、通称・海特憲。艦娘がらみ専門の憲兵隊です。まさかもうそこまで話が行ってたなんて………」

 

 足柄の明らかに狼狽している雰囲気に、ガランドも相手が一筋縄で行かない相手である事を悟った。

 そんな中、異様な憲兵の一人が後続で来た車の扉を開くと、そこから同じ憲兵服、ただ他の憲兵に比べると小柄に見える女性が姿を現す。

 

「な、隊長自ら!?」

「隊長、アレが?」

「海特憲隊長、更識 盾無少佐。別名、《不動の盾無》。まず話し合いが聞く相手じゃないわ」

「………どこかで見た顔だな」

「IS学園の生徒会長に類似してます。何故か同姓同名です。パラレル存在かもしれません」

 

 ガランドの疑問にウィトゥルースがデータバンクから答えるが、それを聞いた足柄の顔色が一気に青くなる。

 

「それってここから未来の世界? 過去の世界?」

「恐らく未来かと」

 

 ウィトゥルースが答えると、足柄が何故か油汗を垂れ流し始める。

 

「それ、絶対に教えたらダメ! 絶対よ!」

「何故だ」

「だって彼女のもう一つの通り名は行かずg…」

 

 そこまで言って足柄は思わず自分の口を塞ぐ。

 

「詳しい理由はそっちの盾無に聞いて。これ以上は私の口からは…」

「どれ挨拶してくるか」

 

 足柄の制止を無視して、ガランドは表に出る。

 

「送迎ご苦労。そちらが探しているのは私の事かな」

「横須賀鎮守府に接触してる謎の部隊がいる、との報告は聞いていたが、そちらから出てくれるとはな」

「カールスラント空軍ウィッチ隊総監 アドルフィーネ・ガランド少将だ」

「海軍特別憲兵隊隊長、更識 盾無少佐だ。だが聞いた事の無い部隊の将校を名乗られてもな」

「ああ、こちらでは存在してないようだから。さてどう説明すれば納得してくれるか………」

「話は大本営で聞こう。出頭してくれるかな?」

「ああ、少し準備をしてからな。従兵は何名までいい?」

「一人までだ」

 

 半ば命令口調で睨みつけてくる更識少佐に、ガランドは不敵な笑みで応じる。

 

「少し待っていてくれ。なに、逃げはしない」

「それは助かる。さすがに鎮守府一つ相手取るのはこちらの本意ではないからな」

「本意、か」

 

 それは敵対する用意が有る、とも取れる事にガランドが小さく笑みを浮かべながら身支度を整えるために身をひるがえす。

 

「あの、ご主人様………」

「しばらく隠れていろ、確かに色々厄介な相手のようだ」

 

 懐に隠れていたウィトゥルースを再度懐に押し込みつつ、ガランドは油断なくこちらを見ている相手の視線を感じていた。

 

「多少の困難は予想していたが、さてどう出るべきか………」

 

 

 

数時間後

 

「また随分と厳重だな」

「話を聞きたいのは本当だからな」

 

 用意されていたやけにいかつい車に乗り込んだガランドは、対面で同乗した更識少佐に話しかけながら外の景色を見ていた。

 

「相手が相手だけに、むしろ内地は安全か」

「鎮守府は深海棲艦の影響を避けるためにアナログ化してるとは聞きましたが」

「その通りだ。そちらは違うのか?」

 

 窓から見える被害の見えない景色にガランドが呟き、同伴したバルクホルンが聞いていた事を思い出すが、そこで更識少佐が眉をひそめる。

 

「こちらの事をどこまで聞いているかは知らないが、こちらにはこちらの事情が有ってな」

「大本営は君達を相当怪しんでいる。無論、私もだ」

「好きなだけ怪しめばいい。怪しんでいられる余裕が有る間はな」

「横須賀と呉を襲った不明の敵軍の事か」

「それも有る。だがこちらの見る限り、あれはまだ威力偵察レベルだろう」

「ほう………あれ以上の攻撃が有ると?」

「これ以上はそちらからの情報も必要だな」

「そうか、なら後は大本営で聞こう」

 

 

 

「………なんか聞いててそこはかとなく怖いんですけど」

「そりゃ、どっちもたたき上げらしいからな………」

 

 401のブリッジで、ガランドの懐に隠れているウィトゥルースを通じて会話を盗聴していた静が少し顔を曇らせ、同じくそれを聞いてた群像も頷く。

 

「で、そっちは?」

「こちらも似たような物ね」

 

 別の車に分乗している冬后提督の懐に隠れているスティレットから送られてくる会話を聞いていたミーナも、顔をしかめていた。

 

「こちらを疑っているけど、情報も欲しい。そんな感じが明け透けね」

「海特憲は艦娘の保護と暴走を両方監視するのが役目だからね。明確な敵対はしないと思うのだけれど………」

 

 ブリッジ内で双方の会話を聞いていた陸奥が、唸るように呟く。

 

「問題は大本営の上層部か………もっとも従兵がバルクホルンでは、下手な事は出来ないだろうが」

「長門も一緒だからね。また大本営壊さないといいのだけれど………」

「………また?」

 

 陸奥の発言に不穏な単語が混じった事に静が思わず聞き返す。

 

「前に各鎮守府の提督を集めて、艦娘の絶対管理体制を申し渡されそうになってね。提案したのがタカ派で有名な将校だったらしいけれど、全提督の反対に有ってね。相当もめて危うく各秘書艦と大本営警備兵との戦闘になりかけた事が有って………」

「それは物騒ね、まあ似たような事は501でもあったけれど」

「何してるの、マスターのチーム………」

 

 陸奥の説明に美緒が苦笑するが、ストラーフが思わず突っ込む。

 

「今回はウチの提督と杉山提督だけだから、そこまでは行かないと思いたいけれど………」

「呉の秘書艦はトゥルーデと互角に殴り合える逸材と聞いているわ。何か有っても提督達を無事帰還させられると思う」

「それって向こうの被害計算してますか?」

 

 少し悩む陸奥にミーナが頷きながら答えるが、今度は静が思わず突っ込む。

 

「とにかく、うまく行けばこの召喚でNORNとの協力体制が決められるかもしれない」

「うまく行けば、ですけれど………」

 

 群像の半ば希望案に、陸奥は更に首を傾げる。

 

「最大の問題は、こちらの上層部がどこまで危機感を持っているかだ」

「どんな状況でも、危機感が欠ける者はいるわ。しかも上層部にすら………」

「提督がどうにかまとめてきてくれればいいのですけれど………」

 

 群像、ミーナ、陸奥の三人が思わず顔を突き合わせて唸るが、答えは出ようはずもなかった。

 

 

 

しばらく後 市ヶ谷・帝国大本営

 

「こういうのはどこも変わらない物だな」

「何がですか?」

「いかにもモンスターが巣くってそうだ」

「はあ………」

 

 やたらといかつい作りの庁舎を見たガランドの呟きに、バルクホルンはどう答えるべきか迷う。

 

「出来ればクーリィ准将並に話が通じる相手がいるといいが」

「あの人は何か裏が有るともっぱらの噂だと聞いてますが」

「だろうな。その方がこちらもやりやすい」

 

 色々危険な事を呟きつつ、ガランドは何故か冬后提督と別々に案内され、会議室のような場所へと案内される。

 

「従卒の方はそちらの部屋で」

「心得た」

 

 別室に案内されたバルクホルンは、そこで長門と共に見覚えのある顔を見つける。

 

「お…」

「おお、バルクホルン大尉。来てたのか」

「こちらの指揮官の付き添いでな」

 

 そこにいた武蔵に声を掛けながら、バルクホルンは扉を閉めた所で、やけにその音が重い事に気付く。

 

「これは………」

「秘書艦専用の待合室、となっているが、その実は隔離部屋だ。また頑丈にしたようだが」

 

 一応調度品は整っているが、窓が無く唯一の扉の内側が金属張りになっている事にバルクホルンは顔をしかめる。

 

「やましい事をすると言っているような物ではないか、これは………」

「また余計な横槍を入れてほしくないんだろう。まあ必要になればためらわないが」

「艤装無しでどこまでやれるかだな」

 

 呆れるバルクホルンに、戦艦級の二人はすでに物騒な事を言っていた。

 

「ここの上層部がそこまで愚かでない事を祈っておこう」

 

 バルクホルンが鼻を鳴らしながら武蔵の肩に手を置く。

 その手に何か握られているのに気付いた武蔵がそちらに手を伸ばした所で、何かをそっと手渡される。

 

「魔導インカムだ、向こうの話が聞こえる」

「仕込み済みか、やるな」

 

 バルクホルンにそっと呟かれ、武蔵が魔導インカムをそれとなく耳に嵌める。

 聞こえてきたのは、すでに紛糾の様相を呈し始めている会話だった。

 

 

「ウィッチ、か。艦娘とは全く違う存在、それが何故ここに現れた」

「必要に応じてだ。深海棲艦とは違う存在の襲撃情報は届いていると思っていたが」

 

 通された会議室で待ち構えていた大本営の将校達の質問に、ガランドは努めて冷静に答えていた。

 

「確かに奇妙な敵の襲撃報告は上がっている。だが深海棲艦の変種との可能性も有るのでは?」

「見てない人間は何とでも言えるな」

「な…」

 

 将校からの問いに半ば悪態で答えるガランドに問うた将校は絶句する。

 

「報告書は上げたはずです。明らかに深海棲艦とは特徴が違い過ぎた」

「こちらも同様だ。しかも横須賀と呉に現れたのはそれぞれ別種らしい」

「横須賀のはJAM、呉のはネウロイと呼ばれる存在だ。我々の、そして君達の新たなる敵となる存在」

 

 冬后、杉山両提督が説明し、それにガランドが補足する。

 

「そもそもそちらは深海棲艦相手に母艦として使える高性能潜水艦まで保有していると聞いている。そんな物をどこから持ってきたのだ?」

「こことは違う世界、と言って信じるか?」

 

 蒼き鋼のイー401の事まで持ち出してきた相手に、ガランドはむしろ不敵な顔で答える。

 

「違う世界? そんな事が有り得るのか?」

「そちらがどこまで知っているかはこちらは知らない、だがウィッチにしろ君たちの言わんとする霧の潜水艦にしろ、この世界の技術で作れる物だろうか?」

「そんな事は調べなければ分からないだろう!」

 

 

「かなり紛糾してますね」

「まあ予想通りね」

 

 ウィトゥルース、そしてスティレットの双方から送られてくる盗聴音源を401のブリッジ内で聞いていた静とミーナが思わず呟く。

 

「どうにも、大本営の目的はJAMの事よりもこちらの技術の事か………」

「深海棲艦の相手だけでも大変なのに、新たな敵とそれに対抗できる力、欲しくない訳ないわね」

 

 同じく聞いていた群像と陸奥が半ばあきれ顔で呟く。

 

「向こうが強硬手段に出る可能性は?」

「懲りてるだろうから、無いと言いたい所だけれど………」

「警備がかなり厳重だぞ、警戒はされているな」

 

 群像と陸奥が呟く中、ライドオンシステムを使用している美緒が返す。

 念には念を入れ、完全武装状態のアーンヴァルがガランド達を尾行、大本営上空に潜伏して送ってくるデータを見つつ、全員が思わず唸る。

 

「ま、こっちも強硬手段は準備してるし」

 

 杏平が401搭載の弾道ミサイルの照準を大本営に定めていた。

 

「ミサイルの弾頭に入って強行突撃ってのは、さすがに向こうも想定してないだろうけど………」

「イオナちゃん達はすでに中でスタンバってるし、最高速なら数分で到着すっからな。それくらいなら向こうで持たせるっしょ」

「場合によってはアーンヴァルを突入させる。攪乱くらいは可能だろう」

「反乱と思われないといいけど………」

 

 こちらの強硬手段を聞いていたミーナが少し顔を曇らせるが、杏平は嬉々として準備を進め、美緒も平然と言い放つが陸奥も同じく顔をしかめていた。

 

「前例が有るなら改訂版の後発も考えてしかるべきだろう」

「多分そんな事思いつく鎮守府提督はいないわ」

「まあ、宇宙空間まで打ち上げて再射出した前例もこちらにはあるしね………」

「何やってるのそっち………」

 

 群像やミーナの説明に陸奥は心底呆れかえる。

 

「こっちでそこまでやる必要が出ないといいが」

「そうですね」

「最悪、この船だけで相手する事なるぜ? 弾薬の在庫も不十分だってのに」

「さすがにコンゴウの艦体まで持ってくるのは最終手段にしたい。目を付けられるだけじゃすまないだろう」

 

 401のクルー達の会話に、陸奥は思わず考え込む。

 

「やはりあると思う? JAMからの更なる大規模襲撃」

「無いとは考えない方がいいわ。そしてそれまでにこちらの協力は取り付けたいのが正直な所ね」

「ウチと呉の提督とガランド少将でどこまで話を進められるか………」

 

 陸奥の問いにミーナは断言し、陸奥の表情は再度曇る。

 

「この会話聞く限り、難しそうだぜ?」

「自分達が攻撃されない限り、危険を認識しきれないのかもしれないわね。私の母国では一度全土からの撤退戦まで行ったから」

「そこまで………」

「海運を抑えられてもまだ理解しきれないのか? まあこちらもよその事は言えた義理じゃないが」

「こちらは本土周辺まで攻め込まれて思い知ったからな。あれは酷い戦いだった………」

 

 ウィッチや蒼き鋼の語る向こうの世界の事情に、陸奥は深く考え込む。

 

「む、待てまた誰か来たようだぞ」

「あら、他の提督も呼び出されたのかしら?」

 

 ライドオンシステムを通して送られてくる画像を見ていた美緒が、新たに到着した車から降りてくる人影に気付き、陸奥もブリッジのディスプレイに写された人影を見る。

 

『確認します、マスター』

「いや、その必要は無さそうだ」

 

 アーンヴァルが近寄って確認しようするが、その降りてきた人影が明確にこちら、正確にはアーンヴァルの方を見た事に美緒は僅かに驚くが、その顔を見た瞬間完全に驚愕した。

 

「まさか…」

 

 

 

「ではそちらの技術提供は承服しないと?」

「そうは言っていない。ただこちらも無償提供という訳にはいかないのだ」

「その新たな敵とやらをそちらが引き込んだ可能性も有るのでは?」

「そうは思えない。あれは明確な敵意を持っていた」

「ヤラセとはとても思えない猛攻だった。呉では全艦娘が戦闘参加した程だった」

「それはこちらもだ」

「だがそれが本当に未知なる敵とも限らないのでは?」

(ダメだなこれは………)

 

 明らかに自らにのみ有利になるように仕向けたいのが明らかな大本営の将校達に、ガランドはどうすべきかを考える。

 

(各提督に丸投げ状態とは聞いていたが、ここまでとは………これではとてもNORN参加に協力出来まい。さてどうすべきか)

 

 考えながらも、ガランドは席から立ち上がる。

 

「どこへ行くのだ?」

「少し花を摘みに」

「花?」

 

 思わず聞いた大本営将校が慌ててそばにいた将校に囁かれ、仕方なく納得する。

 

「それでトイレはどちらかな?」

「女性用は下の階の左端だ」

「では戻ってくるまでそちらで協議なさってください」

 

 冬后提督に案内されたトイレに向かいながら、半ば捨てセリフを言ってガランドは部屋を出る。

 すぐに再開された不毛な議論を背に、自らの頭を少し冷ますべくガランドはその場を離れた。

 

「ご主人様、新たに訪れた者がいるとアーンヴァルから」

「こちらに関係ありそうな人物か?」

「恐らくは………」

 

 トイレでウィトゥルースからの報告を聞いたガランドだったが、そこで廊下から重めの音が響いてくるのに気付く。

 

(杖? しかも何か仕込んでるな………)

 

 足音と思わしき音と等間隔で響く音に、それが何かと勘繰るガランドは、トイレを出て程なくその音の発生源となった相手と出会う。

 

「見慣れない軍服ね。貴方が横須賀に現れた謎の部隊の人かしら?」

 

 そこにいた、帝国士官服に身を包み、やや太めの杖をついた年配の女性に声を掛けられ、ガランドは答える。

 

「カールスラント空軍ウィッチ隊総監 アドルフィーネ・ガランド少将だ」

「私は佐世保鎮守府提督、神崎 ヴィオラ、階級は大佐よ、よろしく」

「神崎?」

 

 差し出された手を握り返したガランドは、相手の顔にどこか見覚えの有る事と、その手が明らかに鍛えられた者の手で有る事に気付く。

 

「ひょっとして、神崎重工の関係者かな?」

「それを知らないという事は、確かにこちらの人では無さそうね」

「神崎提督は神崎重工の会長でも有ります」

 

 神崎提督の後ろにいたどこか薄幸そうな艦娘、戦艦 扶桑の説明に、ガランドが学園で行われた大会議の時にいた人物と、目の前にいた人物が重なる。

 

「一応うかがうが、神崎 すみれという人物に心当たりは?」

「………なぜ私の事を知らないのに、お婆様の事を知っているのかしらね?」

「さて、なんと言えばいいのか………」

 

 目の前の相手がどういう関係かを悟ったガランドが、思わず苦笑する。

 

「その事は後にいたしましょう。今はそれより重要な事が有るので」

「貴方も召喚された口かな?」

「逆ね。私を呼ばない方がおかしいのよ」

「ほう、そういう立場か」

「一応ね」

 

 雑談を交わしながら、二人は先程の会議室へと入る。

 ガランドの後ろに続いて入室してきた神崎提督の姿に、室内にいた者達は一瞬で静かになった。

 

「か、神崎提督………」

「海の魔女が何故ここに………」

「何故? 深海棲艦とは別種の敵とそれと戦う者達が現れたとの話が、なぜ私の耳に入ってこないのか、まずそれが問題ではなくて?」

 

 明らかに狼狽している大本営将校達を冷たく見据える神崎提督に、見据えられた者達の顔色が変わる。

 

(ほう、階級は佐官だが、実質は将校レベルか………)

 

 ガランドが先程までの席に座ると、杉山提督が無言で部屋の隅から予備の椅子を持ってきてガランドの隣に置き、神崎提督へと勧めて座らせる。

 

「なるほど、見事に艦娘規制派ばかりが集まった物ね。艦娘に変わる新たな戦力の入手と独占が狙い、と言った所かしら」

「い、いやそんな事は………」

 

 将校の一人、顔色どころから顔面中から脂汗を流しながら何かを言おうとするが、そこで神崎提督が手にした杖で床を突く音がやたらと重々しく響く。

 

「私達がまずやらなければならないのは新しい敵への対処方の確立。それ以外の事は捨ておきなさい」

 

 神崎提督の年齢に伴わぬ、凛とした声に居並ぶ将校達が完全に沈黙する。

 

「だ、だがそいつらが未知の技術を持っている事は確かだ! その敵もそいつらが持ち込んだ可能性も…」

 

 将校の一人が、堰を切るようにガランドを指さしてわめくが、そこで神崎提督の手に有る杖が一閃、瞬時にして全長が倍に伸びたかと思うと、その先から湾曲した刃が飛び出す。

 

「それ以外の事は捨ておきなさい、と私は言いましたよ」

「ひ、あ………」

 

 自分の眼前に突きつけられた、仕込み長刀の穂先にわめいた将校は完全に絶句する。

 

「彼女達がこちらを利用しようとするならば、こちらもそれを利用するまでの事。それも分からないようならば、その階級章を置いてこの場から去りなさい」

「あ、ああ………」

 

 穂先と視線、双方から放たれる殺気に、将校は最早言葉を紡ぐ事すら出来ない。

 

「ふ、ふふふ………」

 

 そこで聞こえてきた笑い声に、皆の視線がその笑い声の元、ガランドへと集中する。

 

「いる物だな。私以上の現場主義者が」

「これでも艦娘開発初期には前線に立っていた事もあるのでね」

「貴方になら話が通じそうだ。改めて会談を持ちたい」

「そちらがお望みならば」

 

 神崎提督は手にした仕込み長刀を手元に戻すと、改めてガランドと握手する。

 

「では、先ずは…」

 

 

 

同時刻 401ブリッジ

 

「驚いたな、まさか神崎女史の子孫とは」

「知り合い?」

「NORNの協力者となっている方の子孫、正確にはパラレル存在のだけれど」

 

 美緒が驚く中、陸奥の問いにミーナが答える。

 

「どうやら、来る人選を間違えていたようだな。最初から冬后大佐と神崎女史を連れてくればよかったか?」

「混乱されるだけでは?」

「探したら他にもいそうですね………」

 

 美緒の提案に群像と静が思わず突っ込む。

 

「神崎 ヴィオラ提督、艦娘開発初期からの関係者で、艦娘の艤装の大本は彼女が会長を務める神崎重工で作られているわ。彼女自身、艦娘として実戦に出、今の鎮守府システムを構築した人物。今なお対深海棲艦戦の全実権を握っていると言われてるわ」

「ひょっとして、その前に舞台女優とかやってませんでした?」

「あらなぜ知ってるの?」

「帝都の神崎女史も将来そうなるのかもしれんな」

 

 陸奥の説明に、静が思わず聞いた所で美緒が頷く。

 

「あ~、つまりカチコミの必要は無くなったのか?」

「彼女が出てきたなら、多分ね」

「最初からあの人の所に話を持って行った方がよかったのでは?」

「見てた通り、偏屈さでは杉山提督以上なの………」

 

 杏平が準備していた弾道ミサイルのロックを取り消す中、ミーナの問いに陸奥は首を横に振る。

 

「そんな人物が直接動いた、という事は事態はそこまで切迫しているという事か?」

「恐らくはね。あの方は独自の情報網を持っていて、各鎮守府で起きている事は即座に伝わってるという噂よ」

「艤装に盗聴器とかついてんじゃねえよな?」

「そんなレベルじゃない情報の正確さなの………」

 

 群像の指摘に陸奥は頷くが、杏平は思わずある可能性を指摘するが、そちらは否定される。

 

「このままうまく行けば、ガランド少将が話をまとめてくれるだろう。そちらのNORN参加が取り付けられればいいが」

「今までは羅針盤に頼って深海棲艦の元にたどり着くしかなかったけど、深海棲艦のテリトリー内で運用可能なこの潜水艦みたいな母艦が増えるなら、参加もやぶさかではないと思うけれど」

「あ~、あとこれクラスはコンゴウの船体しかねえな………」

「香坂財団でのナノマテリアル量産に目途が付けば、他のメンタルモデルの船体も作れるのですが、それもどうなっている事か………」

 

 群像が今なお続いている会議の内容を聞きながら、陸奥が可能性を示唆するが、それ聞いた杏平と静がこそこそと不安要素を話し合う。

 

「現状でも問題は、烈風丸を所持した深海棲艦がどこにいるかが不明という事だ」

「それをどうにかしない限り、参加も何もあった物じゃないしね………」

 

 そこにもう一つの不安要素を話す美緒とミーナを見て、陸奥が顔をしかめる。

 

「それはそうなのだけど、前回の探索でも見つからなかったのでしょう?」

「前回遭遇した海域周辺を探索して幾つかの深海棲艦の艦隊を撃破したが、見当たらなかったそうだ」

「どこまで持っていかれたのやら………」

 

 

 

同時刻 横須賀近海

 

 

「見ツケタゾ………」

 

 海面下から、横須賀鎮守府とそこに停泊している401を見つめる、無数の深海棲艦の瞳が有った。

 

「忌々シイ………皆底ニ沈メ………」

「沈メ………」「沈メ………!」

 

 怨嗟の声が海面下に響く。

 

「行クゾ………」

 

 その先頭、髪も肌も衣服すら白い、だがその身長を上回る巨大な尾に無数の異形艤装を付けた深海棲艦、戦艦仏棲姫がその手に漆黒と化している烈風丸を手に、海面状へと浮上し、それに応じて続々と深海棲艦達が海面へと浮上していく。

 横須賀鎮守府が再度敵襲を受ける時が、刻一刻と迫っていた………

 

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