第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP68

 

AD2301 香坂財団 超銀河研究所

 

「起動確認は!?」

「まだ実験段階でしか…」

「構わないわ、搬送準備を!」

「大丈夫なの!? まだ試作段階でしょう!?」

 

 ミドリが研究員にある装置の搬送を指示するのを、ミキが思わず問う。

 

「対深海棲艦用の秘密兵器、今使わなくていつ使うの?」

「けど、制御に失敗したら!」

「手は考えてるわ、ミキも協力して!」

「! 分かったわ!」

 

 エリカ失踪後、並列で進めていた色々なプロジェクトが遅れを生じ始めている中、エリカ7はその遅れをなんとか挽回しようと四苦八苦する中、研究が進められていたある装置が転移装置へと運び込まれていく。

 

「間に合えばいいけど………」

 

 ミドリの呟きが、その装置へと向けられていた。

 

 

 

異なる世界 イー401 ブリッジ

 

「状況は!」

「深海棲艦、更に前進! 弾幕でこちらの防御を突破する作戦の模様!」

「改造砲以外も届くようになってきましたね。このままではウィッチ達のシールドが破られるのも時間の問題かと」

 

 群像の確認に静と僧がそれぞれ答える。

 

「当艦の残弾数は!」

「通常弾ならまだ有るが、やっぱり効いてねえ! くそ、せめて浸食弾頭が有れば!」

 

 杏平が断続的に発射されるイー401の火器とその戦果確認に思わず悪態をつく。

 

「タカオ、超重力砲は使えるか」

『無理よ! 撃ったら一発で行動不能になるわ!』

「タカオの言う通り。今の船体状況では超重力砲の使用は困難」

 

 群像の問いにタカオとイオナが双方不可の判断を下す。

 

「エリカ嬢の失踪でナノマテリアル生成ラインにも遅れが生じてますからね。これがJAMの狙いなら大した物ですが………」

「この際、それは後回しだ。今はこの状況を乗り切らなければ………」

「増援部隊の到着まであと20分程との連絡が!」

「20分か………本艦がビーコンも兼ねている以上、退避も出来ないな」

「あの子達が戦ってるのに、オレらだけ逃げるわけねえだろ!」

 

 静が告げる時間に、群像が思わず呟いたのを杏平が怒鳴り返す。

 

「だが敵の数は学園襲撃とは比べ物にならない。兵装も不十分の401では………」

「私の船体もまだ修理が完全ではない。最悪、それでもこちらに呼ぶか?」

 

 ハルナとコンゴウの提案に群像は首を横に振る。

 

「それはダメだ、学園がパラレルワールド転移の中継点となる以上、その防護を外すわけにはいかない」

「前回妙な虫に大分やられたらしいけどな」

「あの手この手とJAMというのはバリエーション豊富ですね」

「相手する方は溜まった物じゃないがな…」

 

 会話の途中で、ブリッジ内に衝撃が生じる。

 

「被弾したのか!」

『ウィッチのシールドの隙間を抜けた一発が有ったみたい! 偶然かどうかは不明、外装少しやられたけど、まだ大丈夫!』

 

 群像の確認にタカオが素早く答える。

 

「やべえぞ、ただでさえあいつらの攻撃はクラインフィールド突き破るってのに!」

「増援到着まで何としても持たせろ! この艦を沈められる訳にはいかない!」

「霧の船が盾にすらならないとは情けない状況ですがね………」

 

 杏平と群像が慌てる中、僧は思わずボヤく。

 

『文字通り化け物相手なんだから仕方ないでしょ!? 私達はあんなのの相手なんて全く想定してないんだから!』

「確かに想定した武装は一切無い」

「何か作っておくべきか………」

「何を?」

 

 タカオが思わず怒鳴り返すのを、他のメンタルモデル達も頷く。

 

「それは後だ! 今は少しでも出来る事をするだけだ!」

「もうこうなったら弾薬庫空になるまで撃ちまくるぞ!」

 

 群像の活に、杏平もやけくそで次々と相手にロックオンしていく。

 

「ウィッチ隊、艦娘隊の現状は!」

「それは…」

 

 

 

「うおおおぉぉ!」

 

 咆哮と共に、バルクホルンがMe262V1カスタム型、ジェットストライカーユニットで加速していく。

 手には空戦ウィッチが持つにはあまりに巨大なレヌスメタル BK5カノン砲を持ち、深海棲艦の戦列に穴を開けようと狙いを定める。

 

「食らえ!」

 

 放たれた50mm砲弾が深海棲艦へと突き刺さり、駆逐クラスなら一撃で轟沈させていく。

 

「よし、これなら!」

『突出は危険です大尉! カスタムしたとはいえ、まだ完成品ではありません!』

『狙われてるよトゥルーデ!』

 

 確実な戦果にバルクホルンが思わず拳を握り締めるが、401格納庫からのウルスラからの警告にエーリカも姉妹二人で注意を促す。

 

「分かっている!」

 

 通常のストライカーユニットよりもはるかに高速のジェットストライカーを制御し、自分を狙ってくる対空砲撃をかわしながらバルクホルンは弧を描きながら一度後方に下がる。

 

「この口径なら効果有り! 続けての突撃許可を!」

『ダメだ、こちらの戦列が乱れる。やはりまだジェットストライカーの運用には問題が多いか…』

『前みたいに途中で失神するなよ!?』

 

 バルクホルンの突撃申請をガランドが制止し、シャーリーが警告してくる。

 

「く、了解! 一度戦列に戻ります!」

 

 バルクホルン自身、暴れ馬もいいところのジェットストライカーの危険度を分かっているだけに一度素直に戻っていく。

 

 

「向こうもあんなのを隠してたの………」

「私も初めて見ました………」

 

 上空での単騎突撃の様を見ていた陸奥と吹雪が、その性能に唖然とする。

 

「こちらの戦艦砲並みの威力を、空中で使えるなんて」

「多分、使えるのバルクホルン大尉だけかと」

「31にも大砲抱えて飛べるウィッチがいるようだ」

 

 陸奥が思わず考え込むが、吹雪とランサメントが訂正する。

 

「これなら、突出してきた連中を任せられそうね」

「あのジェットストライカー、魔法力消費が激しくて一度お蔵入りしたのを改造したようだ。だがまだ完成品とは言えない代物らしい」

「そんな物使ってるんですか!?」

「この状況では使える物は何でも使わないと」

 

 ランサメントからの情報に吹雪が驚くが、陸奥は頷きながらも次弾を撃とうとする。

 だがそこで艤装から妖精が出てきて何かを耳打ちした。

 

「! 総員残弾を確認! 特に戦艦級!」

「残弾三割切ってる!」

「こちらはまだ大丈夫デ~ス!」

「すいません、二割行きそうです!」

 

 連続した砲撃の結果、弾数が少ない戦艦級の者達の残弾の不安が出始めた事に陸奥は思わず歯噛みする。

 

「大和は一度帰投して弾薬の補給を! 他の者も二割を切る時点で同様に! 燃料も同様! 中破以上の者も!」

 

 指示を出しながら、陸奥がフォーメーションを組みながらシールドで必死に深海棲艦の攻撃を防いでいるウィッチ達を見ると、視線を深海棲艦へと向ける。

 

「全然減ったように見えないわね………」

「それなりに撃沈させたはずだが、やはり重巡以上の厄介な連中は残っている。何より…」

「戦艦仏棲姫、再突撃!」

「最大防御!」

 

 如月からの報告に、陸奥は即座に防御を指示。

 

「させるか!」

 

 上空からバルクホルンが突撃を阻止すべく急降下攻撃を敢行しようとするが、戦艦仏棲姫の艤装が有り得ない速度で旋回、照準して砲撃してくる。

 

「く!」

 

 とっさにシールドで砲撃を防ぎながら、バルクホルンは離脱を余儀なくされる。

 

「来るぞ! こちらも最大防御!」

「龍田!」「行くわよ天龍ちゃん!」

 

 ガランドの指示でウィッチ達がシールドを重ね、天龍と龍田が竜鱗剣をかざした所へ、再度戦艦仏棲姫の手にした烈風丸から大斬撃波が飛ぶ。

 

「させません!」

「堪えろ!」

 

 もっともシールドの大きい芳佳が前へと出、天龍と龍田も何とか竜鱗剣でそれを受け止め、すさまじい激突が衝撃と火花を散らし、やがて消える。

 

「も、持ったか………」

「どうかしらね………」

 

 荒い息をする天龍に、龍田が手にした竜鱗剣の刃は、二度の防御ですでに刃こぼれが生じ始めているのを見つけ、険しい顔をする。

 

「芳佳ちゃん!」

「大丈夫リーネちゃん………」

「またあなたは無茶を!」

 

 一方自ら前へと出る形で他のウィッチの負荷を減らした芳佳だったが、こちらも荒い呼吸を響かせリーネとペリーヌが慌てて近寄る。

 

「宮藤さんがたった二発でこれとは………」

「前の奴より、明かに威力が上がっています………」

 

 ペリーヌが愕然とする中、なんとか息を整えようとする芳佳が報告する。

 

「なるほど、使い手によって威力が違う訳か」

「美緒だったらこんな荒い使い方絶対しませんでしたけどね」

 

 それを聞いて、ガランドとミーナが一撃放ってまた後退していく戦艦仏棲姫を見据える。

 

「戦列を押し込む切込み用として使うなら、最適の武器という訳か。場合によっては他の奴に使わせればいい。リレー的に連撃で来られないだけマシか」

「あの威力では、下手したら友軍に被害が出ます。向こうもそれを理解しているのでしょう」

「かなり高度な知性を持ってるんですね………」

「見た目魚なのはどうか不明だけどね」

 

 冷静に相手の戦術を解析するガランドとミーナに、ウィトゥルースとストラーフも首を傾げて唸る。

 だがそこで戦艦仏棲姫が再度烈風丸を下段に振るい、先程よりはかなり弱い斬撃波が海面下へと放たれ、海中から迫ってきていた魚雷を一撃で全て撃破する。

 

「しかも用心深いと来たか」

「水中班!」

『失敗した。同じ手は使えないと判断する』

 

 ガランドが舌打ちした所でミーナの確認に、水中のヴァッフェドルフィンから報告が来る。

 

「攻めも守りも固いか、さてどうさばくか………」

「先程のを何度も放たれては、こちらも持ちません」

「だろうな、私なら一撃で真っ二つだ」

「あのご主人様、ならもうちょっと下がった方が………」

 

 ジリ貧状態にむしろほくそ笑むガランドに、ウィトゥルースが後退を促すが、当人にその気はまるでない。

 

「増援到着まで、持ちこたえるしかないかと」

「結局それか。あとどれ位だ?」

「現在大規模転移用のチャージ中らしいよ。あと最低15分くらいかな?」

「長い15分になりそうだな………」

 

 攻め手に欠ける事にミーナとガランドが戦力の増強しかないと判断するが、ストラーフからの報告にガランドは再度舌打ちする。

 

「とにかく撃ちまくるしかないな。残弾の少ない奴は401に交代で戻らせろ! バルクホルンは特にな!」

「はい!」

 

 ガランドの指示に従い、ウィッチは残弾を全て深海棲艦へと向けた。

 

 

 

「今のでダメでちか………」

「あの刀使った隙ならと思ったんだけど………」

 

 海面下でゴーヤが遠距離雷撃が失敗した事に顔をしかめ、はっちゃんも思わず唸る。

 

「感知系もいじられているのかもしれない。データバンクにある深海棲艦の物とあまりに違い過ぎる」

「いやそれはそうなんだけど………」

 

 ヴァッフェドルフィンがデータ修正するのを、しおいが思わず苦笑いする。

 

「もう有るだけ魚雷撃ちまくるしかないでち。届けば当たるでち」

「また撃破されるんじゃ…」

「! こちらに急接近する反応有り! かなりの高速!」

 

 飽和雷撃を提案するゴーヤにしおいが難色を示した時、ヴァッフェドルフィンが警告を発する。

 

「他にも敵潜水艦が!」

「これだけの軍勢、潜水艦もそれなりにいると思う」

 

 イムヤが警戒する中、ユーが頷きながら魚雷の発射準備をする。

 

「接近中の敵、魚雷発射! かなりの高速!」

「散開するでち!」

 

 ヴァッフェドルフィンの再度の警告にゴーヤが散開を指示、潜水艦娘達が散開する中、ヴァッフェドルフィンがむしろ前に出て自らの武装で迎撃を試みる。

 超小型魚雷と水中弾が魚雷を撃墜するが、一本がヴァッフェドルフィンの脇を通り抜けていく。

 

「一本抜けました!」

「危な…」

 

 ヴァッフェドルフィンとしおいの警告が響く中、敵魚雷が爆発。

 衝撃が水中に響き渡り、爆炎が沸き上がる。

 それらが消えると、そこにかろうじて迎撃したゴーヤの姿が有った。

 

「な、何とか出来たでち………」

 

 出発直前に数発だけ渡された、敵魚雷迎撃用のクラスター魚雷(※試作品)を寸前で放ってなんとか防いだゴーヤだったが、水中でも冷や汗を感じていた。

 

「敵確認、大型艤装装備型!」

「まさかあれは!」

 

 爆炎が晴れた後、魚雷を放ってきた相手を確認して潜水艦娘達は驚愕する。

 そこには、鯨のような巨大な艤装にまたがった長い長髪の深海棲艦がいた。

 

「潜水棲姫! 姫クラスが他にも来てたでちか!」

 

 潜水型深海棲艦としては屈指の強敵にゴーヤが驚愕する。

 潜水棲姫は長髪を水中に漂わせながら、その顔に深い笑みを浮かべ、再度魚雷を一斉発射してきた。

 

「水上に連絡! 水中にも強敵ありでち!」

「海上支援要請、は出来るかしら………」

 

 再度魚雷回避を試みながら、潜水艦娘達は己達だけで相手出来るかどうか分からない強敵へと対峙した。

 

 

 

「水中にも姫クラス出現! 支援要請が出ていますが、艦娘隊は海上だけで手一杯の模様!」

「キャニスターを有るだけ出せ! 水中の武装神姫とリンク、コントロールをそちらに回せ!」

「サポートに回る! 多分あの姫クラスも改造型か!」

 

 静の報告に群像が矢継ぎ早に指示を出し、キリシマが水中サポートに専属する。

 

「一体何体改造型が投入されている? 前回は通常の深海棲艦相手にあれほど苦労したというのに………」

「幸運なのは今回は専門家の艦娘の本拠地だという事、不運なのは深海棲艦側もそれを熟知してか大多数で来た事でしょうか」

「くそ、向こうのボスっぽいのには401の装備じゃ直撃しても効いてねえ!」

 

 群像が思案するのを僧が解析する中、杏平が戦果確認で絶叫する。

 

「この調子だと、マジで弾薬庫が空になるぜ! しかも戦果0でな!」

「抑制にはなる! 途切れさせるな!」

「ボスにミサイル当てても平然としてんだけど!」

「増援到着まで持てばいい!」

 

 徐々に劣勢になるのを感じつつ、群像はなんとか戦列を維持しようと頭を巡らせていった。

 

 

 

「あ~、弾切れ!」

「こっちもだ! 補給に戻るけど大丈夫か!?」

「何とか持たせル! 急ゲ!」

「エイラ、こちらもあまり余裕は無い」

 

 ハルトマンとシャーリーが残弾が尽きたのに気付き、エイラとサーニャが前に出ている間に補給へと急行する。

 

「敵が多過ぎる上に固すぎる。ジリ貧という奴か」

「確かに」

 

 ガランドとミーナが不利を感じつつ、互いに魔力補給用ドリンクを一気飲みする。

 

「さて魔法力はこれで持つが、我々の残弾も少ないな」

「突撃役の人達よりは消費は少ないですけれど………」

「一斉砲撃来るゾ!」

 

 エイラの一言にガランドは後ろに下がり、ミーナはシールドに全力を込めるが、そこに一斉砲撃の砲弾が次々と炸裂していく。

 

「きゃあっ!」

「ミーナ!」

「くう!」

「ペリーヌさん下がって!」

 

 数名のウィッチが疲労と魔法力の限界でシールドが消失しかけるが、他の者が何とか補って直撃だけは防ぐ。

 

「疲弊の激しい者は後退しろ! 的になるだけだ!」

「し、しかし…」

「お前もだミーナ! それに…」

 

 ガランドの後退指示にミーナは反論しようとするが、ガランドの視線は彼女達の上空に出現した渦へと向けられていた。

 

「来たか」

 

 

 

「あれは!」

「NORNの増援部隊! やっと来た!」

 

 陸奥も上空の渦に気付き、バーゼラルトがそれが友軍だと感知する。

 渦の中から出てきた大型武装飛行船、紐育華撃団母船エイハブの姿に艦娘達は驚くが、そこから次々と何かが飛び出していく。

 

「紐育華撃団、レディゴー!」

 

 新次郎の号令と共に、フライトモードのスターが順次出撃していき、ウィッチの前へと出て深海棲艦達に攻撃を開始する。

 

「増援は彼女達か」

「だけではなさそうです」

 

 スターの雄姿にガランドが胸を撫でおろす中、ミーナが少し後退したエイハブから小型の影が次々パラシュート降下していくのに気付いた。

 

「パラシュート脱着! 着水!」

 

 パラシュート降下してきた陸戦ウィッチ達が、まだ試作品の陸戦改造型水上用ストライカーユニットで次々着水していく。

 

「目標敵軍勢! 攻撃開始!」

 

 全員の着水を確認したマイルズの号令と同時に、ウィッチ達が一斉に砲撃を開始するが、何人かが反動でバランスを崩しかける。

 

「わっと!」

「何じゃ下手糞な砲撃じゃな」

「私達は陸戦ウィッチ隊よ! 海戦なんて初めて!」

「反動は体で受け流して! 転覆に注意!」

「り、了解!」

 

 そばにいた利根が思わずボヤいた所で、ウィッチ達から反論が飛んでくるが、マイルズが一括してなんとか砲撃が再開される。

 

「なんじゃ、不安な援軍じゃのう」

「大丈夫、本命はあっち!」

「あっち?」

 

 とねの再度のボヤキに、陸戦ウィッチが視線を上に向ける。

 そこには、501に合流するある空戦ウィッチの姿が有った。

 

 

「苦戦しているようだな」

「マルセイユか!」

「マルセイユ大尉! 来てくれたのね」

 

 501の前に現れた、空戦ウィッチトップクラスのハンナ・マルセイユの姿に501の空戦ウィッチ達は喜色を浮かべる。

 

「バルクホルン、そんな立派なストライカー装備してる割に情けない限りだな」

「敵が多過ぎる。特にボスがやばい」

「ふん、手本を見せてやろう」

「マルセイユ、単騎突撃は許可しない。バルクホルンと同時突撃、僚機も一緒にな」

「…了解」

 

 先陣を切ろうとするマルセイユをガランドが制止、同時突撃の指示に若干不服ながら頷く。

 

「そういう訳でいいなライーサ」

「はい大尉!」

「致し方ない、行くぞハルトマン!」

「了~解」

 

 マルセイユとバルクホルンがそれぞれ自分の相棒を促すと、四人が一斉に突撃を開始する。

 

「攪乱は紐育華撃団に任せる! こちらの攻撃はマルセイユ達に一任! 残りは防衛線を張れ!」

『了解!』

 

 ガランドの指示の元、ウィッチ達のフォーメーションが再構築されていった。

 

 

 

横須賀鎮守府近郊 移動車内

 

「あれは!」

 

 突然出現した武装飛行船に、自らハンドルを握っていた更識少佐が驚愕する。

 

「あれは紐育華撃団母艦エイハブ、NORNの増援部隊だよ!」

「武装飛行船か、だが相手の射程に入れば危険だぞ」

 

 スティレットの説明に、冬后提督が懸念を示すが、エイハブは増援を降ろすと深海棲艦の射程外へと上昇していく。

 

「向こうも熟知しているようです」

「そのようだな」

「玄関前につけるぞ!」

 

 凄まじいドリフトをしながら、車が鎮守府前につけられる。

 

「私も出ます!」

「頼むぞ、指揮はこちらに」

「エイハブとの回線は繋がってるみたい!」

「私も同席する」

 

 出撃すべく格納庫に向かう長門と別れ、冬后提督達は作戦会議室に飛び込む。

 

「遅くなった」

「提督!」

「戦況は聞いているな」

 

 帰還した冬后提督に室内にいた明石と夕張は笑みを浮かべ、美緒が確認してくる。

 

「大体だが」

「取りあえず上と連携を」

 

 美緒が通信機へと冬后提督を促し、そこに表示されている人物と対峙する。

 

『初めまして、紐育華撃団司令のサニーサイドだ』

「横須賀鎮守府の冬后提督だ。増援感謝する」

『そういう事は勝った後にしよう。今出せる部隊をかき集めたって所でね』

「水上降下した部隊はほとんど陸戦ウィッチに試作の海上用ストライカーを装備した者達で、火力以外はあまり期待しないでほしい」

 

 互いのあいさつに、美緒が注釈を入れる。

 

「やはり、深海棲艦の相手は難しいか」

『NORNも試行錯誤中でね。幸か不幸か、技術的頭脳には事欠かないのがラッキーだけど』

「それが間に合うかは別問題だ。こちらの被害状況は?」

「はい、ウィッチの人達のお陰で大破艦は出ていません! ただ相手が多過ぎて弾薬関係の問題が…」

「増援部隊に一時任せ、順次補給を。ウィッチならシールドで防げるはず」

「そちらは大丈夫だ。全員サハラで鍛えたベテランぞろいだ」

「サハラってサハラ砂漠!?」

「またすごい所から連れてきたな………」

 

 冬后提督の指示に美緒が補足するが、どこから来たのかを来た夕張と更識少佐が仰天する。

 

『それと対深海棲艦用の切り札が今艦内で調整中だ。済み次第、投下する』

「それは一体?」

『それは…』

 

 

 

「狙いよりも弾幕を重視! 敵の接近阻止が第一よ!」

「分かってますけど…」

「反動を上半身で流すのじゃ!」

 

 マイルズの指示で砲撃をするパットンガールズに、利根が海上砲撃のノウハウを即興で教える。

 

「今の内に後退が必要な人は後退を!」

「すでに始めておる! だが不慣れな者達だけでは…」

 

 利根が不安を感じる中、上空から影が降りる。

 

「ん?」

 

 上を見た利根が他のストライカーユニットより大きな影が二つ、パラシュート降下してくるのに気付く。

 着水寸前にパラシュートを切り離した小型漁船位は有りそうな水上ストライカーユニットが、大きな波紋を噴き上げながら着水する。

 

「すいません、調整に手間取りました!」

「またデカい艤装じゃの………」

 

 陸戦ストライカーの中でも超大型のティーガー型ストライカーユニットを水上仕様にした物を駆るシャーロットの姿に利根が思わず目を丸くする。

 

「やっぱりこいつで水上は難しいわ! 浮き砲台だと思って!」

「了解! その火力が欲しいの!」

 

 同乗していたフレデリカからの報告にマイルズが頷く。

 

「安心しろ、露払いはしてやる」

「あの、大丈夫ですか?」

 

 一緒に降下してきた何故か不釣り合いな程の大型の水上ストライカーユニットを装備したアウロラの姿に、マイルズは渋い顔をする。

 

「あっちのは?」

「陸戦最強のウィッチです。元ですが………」

 

 それとなく聞いてきた利根に、パットンガールズの一人が答える。

 

「では行くぞ!」

 

 腕組みしたまま、アウロラがいきなり水上ストライカーユニットを発進させる。

 

「ユーティライネン大尉!」

「突出はいかん!」

 

 マイルズと利根の制止も聞かず、アウロラは突出していく。

 そこを狙ったかのように深海棲艦の砲撃が向かってくると、アウロラは積載していた物を掴み上げる。

 それを見た者達はしばしそれが何かを理解出来なかった。

 アウロラの背丈を超える長さの柄と、体がそのまま隠れそうな程巨大な先端部を持つスコップだという事に。

 

「そおれ!」

 

 気合と共に振るわれたスコップが、飛来した砲弾をまとめて弾き飛ばす。

 

『………え?』

 

 その非常識な光景に見ていた艦娘達が一斉に呆気に取られる。

 

「どうした、こんな物か!」

 

 哄笑するアウロラに再度の砲撃が襲い掛かるが、それすらなんなく弾き飛ばしていく。

 さらには、そこへ魚雷攻撃が向かってくる。

 

「回避を…」

「はっはっは!」

 

 フレデリカも思わず警告するが、アウロラは笑いながらスコップを海面へと突き刺し、海水ごと魚雷を高々と弾き上げる。

 

『………は?』

 

 見た事も無い、というかそもそも出来そうもない魚雷対処方に艦娘達が唖然とする中、弾き上げられた魚雷が空中で爆発、爆風とまき散らされた海水を浴びながら、アウロラの笑みが更に深くなる。

 

『何やってんダ姉ちゃん!』

「おおイッルか。見ての通りだ」

 

 そこで上空から事を見ていたエイラからの怒声交じりの通信が飛んでくる。

 

『姉ちゃんサポート班だって聞いたぞ!』

「だからちゃんとサポートしているだろう」

『どういうサポートダ!』

「こういうサポートだ」

 

 エイラの怒声が響く中、アウロラの背後から一際大きな砲声と共に、ティーガー型ストライカーユニットの88mm砲が発射される。

 

「アレの露払いが今日の私のサポートだ」

『だったらなおさら前に出るナ!』

「そういう訳には行かなくてな」

「うわぁ!」

「落ち着いて制御を!」

 

 海上で88mm砲なぞ撃った反動で、バランスを崩しそうになるのをシャーロットとフレデリカがなんとか制御しようとする。

 

「やっぱりあれの水上運用は無理があったようね」

「そのようです隊長、やはり投錨して固定するしか」

 

 一発撃つだけで問題が起きる状況にマイルズと彼女の肩にいたフォートブラッグが同じ結論に達する。

 

「シャーロット、やはりそれは固定して! パットンガールズ、ティーガー型周辺に展開!」

『了解!』

 

 マイルズの指示にパットンガールズがいささか不慣れな動きでフォーメーションを組んでいく。

 

「ルコはティーガーの後ろについて! 何かあったら支えて!」

「はい、ってええ!?」

 

 唯一の扶桑陸軍ウィッチの古子が、マイルズから半ば無茶な指示に悲鳴を上げる。

 

「この中だとシャーロットの次にパワーあるの貴方なんだから!」

「無茶ですよ~!」

「錨着底! 次弾発射します!」

 

 古子が反論する中、再びティーガー型ストライカーの88mm砲が発射され、投錨してても大きく揺れる。

 

「でえい!」

 

 とっさに古子は足元にシールドを張り、そこを足場代わりにティーガー型ストライカーを支える。

 

「やっぱりこれ無理あるって!」

「仕方ないわ! 少しの間お願い!」

 

 古子が悲鳴を上げる中、フレデリカも無理を承知で頼み込む。

 

「準備が整うまで、何とか持たせないと………」

 

 フレデリカが上空のエイハブを見ながら小さく呟いた。

 

 

 

「すげえ、スコップで砲弾弾いてるぞ………」

「戦艦型でもあそこまで出来る人いないわね」

 

 天龍と龍田がアウロラの無茶苦茶さに唖然とする中、ふと歌声が聞こえてくる。

 

「誰だこの状況で歌ってんの?」

「あそこね」

 

 龍田が指さした先、ウィッチに代わって制空権を確保しようとしている紐育華撃団のスターの一機の上に、仁王立ちしている人影が有った。

 

「………は?」

 

 その非常識な光景に天龍は思わず目が丸くなっていた。

 

 

「行くよ響!」

「行ってジェミニ!」

 

 ジェミニの駆るロデオスター・フライトモードの上に、シンフォギアをまとった響が立っていた。

 当人達の要望により騎乗用のロックフックが付けられているとはいえ、本来想定してない運用に初めて見た艦娘達は誰もが唖然としていた。

 

「来るわよ、お姉様」

「よおし!」

 

 響の肩にいる紗羅檀の警告に逆に気合を入れた響の口から聖詠が紡がれ、同時に振るった拳がこちらに飛んできた砲弾を文字通り叩き返す。

 同じ要領で片足だけ固定したまま、響の拳足が次々砲弾を弾き返し、そこへジェミニがお返しとばかりにミサイルを次々発射していく。

 

『突出は厳禁! 距離を保って!』

「「了解!」」

 

 そこへ新次郎の指示が飛び、二人そろって返礼するとロデオスターが機体を返し、響がダメ押しの蹴りで砲弾を叩き返す。

 

 

「歌いながら砲弾殴り返してるぞ………」

「NORNってすごい人色々いるのね」

「また来るわ! 総員防御!」

 

 あまりに非常識な光景に天龍と龍田は絶句するが、そこで陸奥の号令に即座に構える。

 

「またか!」

「みんな下がって!」

「手伝います!」

 

 そこへ陸戦ウィッチ達も並び、一斉にシールドを張って防御壁とする。

 その直後、戦艦仏棲姫が振るった烈風丸から、再度大斬撃波が飛んでくる。

 

「くうぅ!」

「堪えて!」

「総員、シールド全開!」

 

 艦娘とウィッチ双方係の防御壁に大斬撃波がぶつかり、壮絶なエネルギースパークが起こる中、両者の声が飛び交う。

 やがてそれが晴れると、その場に荒い呼吸音が響くだけだった。

 

「何とか持った、が………」

「そうね………」

 

 天龍と龍田は、手にした龍鱗剣が双方大きく破損している事に気付くと、それを投げ捨てて予備を抜く。

 ただそれが先程までの完成品の前に作られた試作品で、強度が劣る事を言われていたのを思い出していた。

 

「こっちで何回持つと思う?」

「二回。多分それが限度」

「あっちは………」

 

 一発受けただけで大分疲弊している陸戦ウィッチ達に、同じ手はそう何度も使えない事を天龍は確信さざるをえなかった。

 

「こ、こんなの501は何発も?」

「ほとんど宮藤少尉がね」

「どんなシールド持ってるの………」

 

 部隊全員掛かりでもやっとの強烈な攻撃に、芳佳の防御力の桁外れさを陸戦ウィッチ達は感じる。

 

「は、早くアイツを何とかしないと、持たないわね………」

「そればかりは間違いないな」

 

 マイルズが呼吸を整えながら再度52口径2ポンド砲を深海棲艦へと向けるのを、天龍も頷きながら同じように14cm単装砲を構える。

 

「攻撃再開!」

 

 陸奥の声と共に、一斉砲撃が再開された。

 

 

 

「ストームウィッチーズ及び紐育華撃団、攻撃を開始! 同時に治療及び補給が必要な方々が一時後退を開始!」

『エイハブは更に上昇! 深海棲艦の対空攻撃範囲から離脱したようね。逆に攻撃も難しいようだけど………』

「何とか間に合ったか………」

 

 静とタカオからの報告に群像は少しだけ胸を撫でおろす。

 

「ウィッチが順次補給に来るはずだ! そちらの援護を!」

『受け入れ態勢は出来てます』

 

 群像の指示に、格納庫で待機しているウルスラが返答してくるが、そこでエイハブからの通信が入る。

 

『蒔絵ちゃんいる!?』

「いるよ!」

『今から送るプログラムの確認と修正お願い! あなたの専門のはず!』

 

 エイハブの格納庫らしき所から何かを準備しているエリカ7の姿が見える中、ミドリからの通信に蒔絵が送られてきたプログラムを受け取る。

 

「指向性による分子停止? そうかこれって!」

『こっちで作ってた、対深海棲艦の切り札なの! 今最終調整中!』

「任せて! すぐに調整するから!」

 

 言うや否や、蒔絵は開いていたコンソールで早速送られてきたプログラムの修正に入る。

 

「あの化け物用の切り札? そんなモンいつの間に…」

「技術班が各自の技術を持ち寄って色々作ってますからね。その一つでしょう」

「蒔絵、どれくらいかかる?」

「待って、今全体見直して、そこから修正箇所探して…」

「なるべく早めに頼む! 弾薬庫空になりそう!」

 

 ブリッジ内が更に騒がしくなる中、エイハブと横須賀鎮守府から双極通信が入る。

 

『やあ千早艦長』

『よく持ち堪えたな』

「いえ、持ち堪えたのは前線にいる彼女達です」

 

 サニーサイドと冬后提督に、群像は正直に答える。

 

『もう少し戦力を集めたかったが、これが限度だ。前回の学園襲撃が予想以上に響いていてね』

『戦局はなんとか互角といった所か。問題は…』

「烈風丸装備の敵のボスと思われる個体です。一体だけ明らかに戦闘力が段違いの上、一撃放った後はすぐに後退して他に任せる」

『慎重な事だね。生憎エイハブの砲撃力じゃこの高度からの精密狙撃は難しい』

『このまま削り合いになったら、かなりまずい。どうにか戦局を打開しないと』

「分かってはいますが、難しいかと」

『何せ、陸戦ウィッチの子達に無理に海戦させてるからね………ボク自身あれは無理が過ぎると思うよ』

『動きがぎこちないのはそのせいか………機動力は期待できないか』

『今こちらの格納庫内で対深海棲艦兵器の試作機が最終調整中だそうだ。それが使えるまでなんとか持ちこたえられれば………』

「結局持久戦になるわけか………今一番の問題は…」

 

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