第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP70

 

「次、向こうの人型!」

「はい!」

 

 ティーガー型ストライカーユニットの機上で、フレデリカの指示に従ってシャーロットが88mm砲で深海棲艦に次々止めを刺していく。

 

「これの火力でもギリギリとはね………動きを封じた程度ではまだダメのようね………」

「少佐!」

 

 フレデリカが氷床上の陸戦に持ち込んでも苦戦している状況に歯噛みするが、そこにシャーロットが叫びながら次弾を急いで装填する。

 だが、88mm魔導徹甲弾を撃ち込まれたはずの戦艦タ級が、大破状態ながらも艤装で撃ち返してくる。

 

「シールド最大出力!」

「はい!」

 

 攻撃よりも防御に専念させようとしたフレデリカだったが、そこで目の前に突き出された物、巨大スコップが放たれた砲弾を弾き返す。

 

「ふん、その程度か」

 

 ティーガー型を守ったアウロラが鼻を鳴らして威圧するが、NORN技術班に特注した巨大スコップはすでにかなり破損し、限界が近いのは目に見えていた。

 

「シャーロット!」

「Feuer(発射)!」

 

 放たれた魔導炸裂弾がタ級に命中し、今度こそ撃沈させていく。

 

「状況は!」

『雑魚は大体片付いた! 重巡以上がまだ少し!』

『こちらももう少し! ジェミニ達が敵のボスを抑えてる間に!』

 

 フレデリカの確認にマイルズと新次郎の返信が届く。

 

「シャーロット、残弾は?」

「徹甲弾5、炸裂弾6!」

「残り少ないわね………ボス相手に取っておきたい所なのだけど………」

『シャーロット! こっち来て!』

『戦艦級がまだ残ってる!』

「少佐…」

「掃討を優先! 緊急砲弾補給を申請するわ!」

「弾が切れたら氷でも武器にするか!」

 

 他の陸戦ウィッチ達からの救援要請にとにかくそちらを優先させるべく、シャーロット達はそちらへと向かっていった。

 

 

 

「ティーガー型から砲弾補給要請!」

「至急学園に連絡、あるといいけど」

「でもどうやって配達すれば…」

 

 エイハブの艦橋内で、下からの各種報告にサニーサイドは笑みを浮かべたまま指示を出す。

 

「うるさい小型は片付いたようだから、外のウィッチ達に頼むとしよう」

「学園から返信、88mm砲弾は1パックなら在庫有り、至急転送するそうです!」

「出来れば他の残弾も尽きる前に片付いてほしい所かな。転移装置とやらも限度が有るはずだし」

 

 杏里から報告を聞きながら、サニーサイドは事前に受けた説明を思い出す。

 

『サニーサイド、これ以上長引くようなら、私も出るわ』

「それは止めといた方がいいかもね」

 

 格納庫にいるラチェットからの通信に、サニーサイドが少しばかり表情を曇らせる。

 

『短時間なら、戦えるわ』

「そっちの問題よりも出力の問題があるね。深海棲艦の防御力は予想以上だ。スターでもかなりの出力と霊力が必要になってる」

『けれど…砲弾届いたわ』

「おっと、外のウィッチ達に連絡。デリバリーを頼むとしよう」

「はい、こちらエイハブ…」

 

 かなりの苦戦に、サニーサイドも内心焦りを感じずにはいられなかった。

 

 

 

「補給急げ! 中破以上の者は撤退!」

「今の内よ、急いで!」

 

 戦場の半分以上が氷床と化すという状況を利用し、艦娘達は戦闘を一時増援部隊に任せて立て直しを図っていた。

 長門と陸奥の指示が飛び交い、補給と撤退が迅速に行われていく。

 

「補給ドリンク持ってきたで!」

「こっちに!」

 

 エイハブからのぞみが運んできた補給ドリンクに吹雪が手を伸ばし、睦月や如月に渡していく。

 

「これでもう少しは…」

「戦闘はクライマックスになっている! ここが踏ん張りどころだオーナー!」

 

 息を荒げる吹雪に、ランサメントが喝を入れるように叫ぶ。

 

「撤退した敵は他の鎮守府からの増援部隊が追撃している! これ以上逃がすな!」

「凍って逃げられるのかしら?」

「戦艦クラスのパワーで抜け出した者や端で凍結が甘かった者が氷床を回避しようとしてるみたいです」

 

 長門の指示に陸奥が凍り付いている深海棲艦の方を見るが、如月が各所の武装神姫とのデータリンクから戦況を報告してくる。

 

「やはり、問題はあいつか………」

 

 長門の視線がスターや装者に囲まれても平然と戦っている戦艦仏棲姫の方に向く。

 

「あの剣を封じるために近接戦に持ち込んだはいいけど、決め手に欠けてるわ」

「そもそも根本的に戦い方が違う。そう簡単にはいかないか」

「待ってください、今作戦データが送られてきました」

 

 長門と陸奥がどう援護すべきかを悩む中、如月を通じてある作戦が送られてくる。

 

「なるほど、これは…」

 

 

 

「集中砲撃!」

 

 マイルズの号令と共に、陸戦ウィッチ達の砲撃が深海棲艦達へと撃ち込まれる。

 

「完全に止めを刺すまで、砲撃を切らさないで!」

「敵、崩壊沈没! 撃破しました!」

「残りは!」

 

 副隊長の報告を聞きながら、マイルズは周囲を見回す。

 

「氷床に捕らえた敵は今ので最後! 残るは大ボス!」

 

 肩にいたフォートブラッグが自らのセンサーとデータリンクからの報告に、マイルズは素早く残弾と部下の疲弊を確認する。

 

「シールドがまだ張れる者は敵のボスに向かうわ! 魔法力の残ってない者は撤退!」

「まだ回復ドリンクが…」

「魔法力以上に疲弊の問題が有るわ。ただでさえ氷上戦なんて初めてなんだから」

「それもそうですが…」

「うわぁっ!」

 

 響いて来た悲鳴に思わずウィッチ達がそちらを見ると、片足を攻撃で開いた穴に落としたシューティングスターを、他のスターが引っ張り上げているのに出くわす。

 

「この氷床もあまり持ちそうにないわね」

「あちらはかなりの重量が有るのを差し引いても、陸戦の限界が来てるかもしれません」

 

 マイルズが顔を曇らせるのを、氷床のダメージを計測しながらフォートブラッグが進言する。

 

「陸戦ストライカーも軽くは無いわ。氷床の限界前に決着をつけないと」

 

 同様の事を考えたのか、何機かのスターがフライトモードで離陸するのを見ながらマイルズは周囲を見回す。

 

「これ以上氷床にダメージが入るようなら撤退、もし海中に落ちたらストライカーは放棄して脱出を優先」

「氷の下に落ちるのは最悪ですね………」

 

 マイルズの指示に副隊長が顔色を悪くしつつ、残った陸戦ウィッチ達が戦艦仏棲姫へと向かっていった。

 

 

 

「何とか雑魚は片付いたか………」

「はい、そのようです」

 

 ガランドが上空から戦場を見回し、深海棲艦の姿がほとんどない事をウィトゥルースと共に確認する。

 

「海面を凍らせて相手の捕縛と近接戦の舞台を作るのはいいアイデアだったが、詰めが甘い所が有るな」

「まだ試作段階だったそうです。でも効果は十分かと………」

「ガランド少将、制空権は完全に確保。敵深海棲艦は戦場から離脱した少数を残して残一体、離脱した敵をイェーガー大尉とルッキーニ少尉、ユーティライネン中尉とリトヴャク中尉が増援艦隊と共に追撃しています」

「つまり、残ったのはあいつだけだが………」

 

 ミーナの報告を聞きながら、ガランドは下方の氷床、その中で陸戦ウィッチと紐育華撃団に囲まれながらもまだ暴れまくる戦艦仏棲姫へと視線を向ける。

 

「姫クラスと呼ばれる深海棲艦は別格と聞いていたが、予想以上だな」

「明らかにJAMによるものと思われる改造がされています。再生機能まで確認されたようで………」

「下手な大型ネウロイより厄介だな。しかも小さいだけに攻撃も当てにくい」

「ネウロイは烈風丸使ってきません」

「アレが一番厄介だね~」

 

 ガランドとウィトゥルースの解析に、ミーナとストラーフも必死に烈風丸を封じようとしている響とジェミニの様子にため息を漏らす。

 

「作戦を最終フェイズに」

「全観測データを各武装神姫及びFAGに送信、包囲陣形を策定します」

「タイミングが命だ。こちらも合わせるぞ」

「了解しました」

 

 

 

「このぉ!」

「ワズラワシイノヨ!」

 

 宙を舞いながらの響の回し蹴りが戦艦仏棲姫の腕を狙うが、シンフォギアの破壊力を持ってしても破壊するにまで至らず、明かにダメージを受けながらも力任せに振り払う。

 

「くっ!」

「大丈夫響!?」

「大丈夫!」

 

 人に似た外見とは裏腹の桁外れのパワーに文字通り振り回される響に、ジェミニも声を掛けながらガンバレルソードからの射撃で戦艦仏棲姫を牽制する。

 

「あの刀だけでもなんとかしないと…!」

「先程から何度も攻撃してるはずだけど、ほとんど損傷が無いわ。アレも改造されているのかも」

 

 一進一退の状況に響と紗羅檀がどうにか活路を見出そうとする。

 

「ならばこれで! ミフネ流、ランブリングホイール!!」

 

 ジェミニがミフネ流の奥義を繰り出し、戦艦仏棲姫がそれを烈風丸で受ける。

 渾身の霊力がこもった攻撃に、受け止めた烈風丸との間に凄まじいエネルギースパークが生じ、余波だけで周辺にダメージが及んでいく。

 

「いけない」

「離れろ!」

 

 氷床のダメージをシールドで補っていたメンタルモデル達が、余波で次々と破砕していくシールドに思わず後退する。

 

「姫! これ以上は…」

「うわっ!?」

 

 フブキの警告に、ロデオスターの足元も崩壊しかけている事にジェミニは慌てて機体をフライトモードにして離脱する。

 

「響! こっちに…」

 

 ジェミニが機体をひるがえして響を回収しようとするが、それを阻むように戦艦仏棲姫の砲撃が響とジェミニの間を貫く。

 

「こっちは大丈夫! いざって時は泳ぐ!」

「水中も向こうのテリトリーよ、お勧めしないわお姉様」

 

 砲撃を避け、弾きながら響は叫ぶが紗羅檀は顔をしかめる。

 

「早く足場出して! このままだと響が孤立する!」

『分かってる、けど…』

 

 ジェミニが焦って叫び、イオナを中心としたメンタルモデル達がシールドで足場を再構築しようとするが、戦艦仏棲姫は生成されたシールドを片っ端から壊していき、己のテリトリーを維持する。

 

「完全に読まれているな」

「数で補うしかない」

「手伝います!」

 

 コンゴウとハルナもシールドを張る端から壊されていく事に苦戦するが、そこに残敵を掃討したマイルズ達陸戦ウィッチ達が駆け付ける。

 

「移動方陣! 前衛は防御、後衛は下部にシールドを!」

「了解!」

 

 陸戦ウィッチ達が密集体勢を取り、戦艦仏棲姫に集中砲撃を開始する。

 

「コンナモノ!」

 

 次々炸裂する魔法力の籠った砲弾に対し、戦艦仏棲姫棲姫はかわしたり巨尾で弾き飛ばしすがダメージは確実に蓄積されていく。

 だが、負傷した部位に突如として肉が盛り上がって塞いでいくのを見たマイルズは、歯を食いしばる。

 

「ネウロイ並、いえそれ以上の再生力…!」

「本来の深海棲艦には無い能力のようです。一体どこから…」

 

 フォートブラッグも何とか解析しようとするが、そこに戦艦仏棲姫の放った砲弾が飛来する。

 

「最大防御!」

「とりゃああ!」

 

 陸戦ウィッチ達がシールドに魔法力を込める中、その頭上を飛び越えて響が迫る砲弾の幾つかを拳足で弾き返し、残った砲弾がシールドに直撃する。

 

「大型ネウロイのビーム並みに強烈!」

「助かった! ありがとう!」

 

 数人がかりのシールドでもきしむ威力の砲弾に、陸戦ウィッチ達が顔をしかめ、着弾数を減らしてくれた響に礼を言う。

 

「お姉様! 来る!」

「あ!?」

 

 そこへ戦艦仏棲姫が烈風丸を構えている事に響が気付いて防御しようとするが、そこに飛来した砲弾が構えていた腕に直撃する。

 

「させません!」

 

 その場に到着したティーガー型の機上で、シャーロットが次弾を装填して再度狙いをつける。

 

「その、早めに決着を…」

 

 氷床のダメージと88mm砲の砲撃で落水するのを防ぐべく、ティーガー型の背後で古子が必死になって下方にシールドを張っていたが、大型ストライカーを支えて古子の顔は青くなりかけていた。

 

「これで腕でも吹き飛ばせればと思ったのだけれど…」

 

 フレデリカが重傷を負いながらも烈風丸を握った手を離さない戦艦仏棲姫に、どこか寒気を覚えるが、重傷を負った腕を盛り上がった肉のような物が覆っていき、更に異形化していく。

 

「フ、ハアアァ………」

 

 腕の異形化と繋がるように戦艦仏棲姫の顔の一部も変貌し始め、硬質な輝きを持つ肌へと変じるのを見た者達が思わず寒気を覚える。

 

「何なの、あれ………」

「分かりません、だが更に怪物と化して」

『違います! やっと分かりました!』

 

 マイルズとフォートブラッグが思わず身震いしそうになる中、上空から索敵と援護に専念していたダイアナから通信が飛び込んでくる。

 

『これは降魔の反応です! 恐らく、体内に降魔の細胞が埋め込まれ、ダメージが加わるとそれが開放されて降魔細胞と入れ替わっているんです!』

「何ですって………」

「JAMはそこまで!?」

 

 ダイアナからの通信に誰もが驚く。

 

「シ、シシ、シニナサイ!」

 

 言語も怪しくなってきている戦艦仏棲姫が、艤装からデタラメに砲撃を始める。

 それをシールドで防ぎながら、ウィッチ達が何とかが反撃を試みるが、そこで再度烈風丸が振りかざされた。

 

「そう何度も!」

 

 再度88mm砲弾が烈風丸を狙って放たれるが、直撃する直前に戦艦仏棲姫は烈風丸を手放し、異形化した腕で多少ダメージを負いながらも砲撃を防ぎきる。

 

「な…」

「次弾!」

「ま、間に合いません!」

 

 無事だった方の腕で明らかにこちらに向けて烈風丸を構える戦艦仏棲姫に、シャーロット達三人が慌てる。

 だが烈風丸が振り下ろされる直前、上空からの砲撃が戦艦仏棲姫の肩に直撃、その衝撃に烈風丸を取り落としそうになる。

 

「陛下、まだだ!」

「けどあのダメージならすぐには使えないわね!」

「次弾を!」

「こちらに!」

 

 戦艦仏棲姫の直上、ティーガー型と同じ88mm砲を構えた真美を中心に、圭子とサイフォスが着弾を確認、予備弾を持っていた静夏が急いで次弾を装填する。

 

「これだけの攻撃を食らってまだ暴れられるなんて………」

「明らかに異常過ぎる。一体どれだけの改造を…」

 

 同じく直上で援護に入る隙を伺っていたペリーヌとヴェルヴィエッタが、大口径砲の直撃を食らってもまだ戦えている戦艦仏棲姫に戦慄していた。

 

「あと少し、もう少しだけ相手の注意を引ければ…」

「作戦は最終段階に入れます」

 

 ペリーヌが戦艦仏棲姫を睨む中、ヴェルヴィエッタが他の武装神姫達とリンクして状況を確認する。

 

「装填完了!」

「撃ちます!」

 

 垂直と水平、二門の88mm砲が戦艦仏棲姫へと放たれる。

 二発同時斉射はしのぎ切れず、一発が巨尾に直撃して艤装を一部破壊する。

 

「砲塔一部破損確認!」

「これで少しは…」

 

 ヴェルヴィエッタが戦果を確認し、ペリーヌが優位になるかと思った瞬間、艤装にも肉が盛り上がり、肉で出来た奇怪な砲塔を形成していく。

 

「武装まで再生できるっての!?」

「撃てるんですかあれ?」

 

 圭子が驚き、真美があまりに異形な砲塔に疑問を浮かべる中、肉の砲塔が異様な速さで旋回、こちらに向けて砲撃を放ってくる。

 

「危ない!」

 

 ペリーヌが前に出てその砲撃をシールドで受け止めるが、受け止めるのがかろうじての威力に思わず吹き飛ばされそうになるのをかろうじて堪える。

 

「性能が上がってる!? マスター、大丈夫!?」

「な、何とか…」

「旋回性能、仰角補正、それに砲撃速度。全部上昇しています陛下」

「下手に破壊したら強化されるって事………」

 

 武装神姫達が再生した肉の砲塔の性能を報告する中、圭子は思案する。

 

「本体だけ狙う、ってのも難しいわね。けれど下手な所に当たれば逆に強化される。相手の再生可能速度を上回る速度で飽和攻撃をかけるしか…」

『ウィッチ総員に通達、一斉砲撃の後に後方に撤退』

 

 その時、ガランドからの通信が飛び込んできて、圭子とペリーヌは視線を交わす。

 

「準備完了のようですわね」

「真美!」

「はい!」

 

 真美が半ば狙いをつけず88mm砲を発射、更に圭子とペリーヌもありったけの銃弾をばらまくと、その場から一気に飛び去る。

 同様に下でも陸戦ウィッチ達が半ばデタラメに砲撃、それに紐育華撃団の攻撃も加わり、砲火と爆炎で戦艦仏棲姫の周辺が覆いつくされる中、全員が一斉に撤退を開始する。

 

「アア、アナタタチ………」

 

 周辺を覆いつくした炎と煙が腫れていく中、戦艦仏棲姫が撤退していく者達を睨みつけ、烈風丸を構えた時だった。

 彼女達が撤退していく向こう、戦艦仏棲姫を囲むように陣形を組んだ艦娘達の姿が飛び込んでくる。

 射程距離や弾道距離を計算し、その全てが戦艦仏棲姫に到達するように緻密に組まれた半円陣が、ウィッチや華撃団との戦闘を隠れ蓑に形成された物だと戦艦仏棲姫が気付いた時には、すでに遅かった。

 

「撃てぇ!」

 

 長門の号令と共に、艦娘達が順次砲撃。

 僅かなタイムラグをつけて放たれた各種砲弾が、次々と戦艦仏棲姫に命中していく。

 今までの戦闘の砲撃データを武装神姫やFAGが解析、微調整をつけて伝達されて放たれた砲撃は、かなりの精度で戦艦仏棲姫にダメージを連続して与えていく。

 

「オノ…レ…!」

「敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」

 

 砲声に怨嗟もかき消される中、トドメとばかりに放たれた最大口径の大和の46cm91式徹甲弾が直撃、最大の爆炎が上がる。

 

「直撃したよ!」

「撃ち方やめ~!」

 

 スティレットの報告に長門が号令を出し、砲撃が止む。

 周囲に漂う砲声の木霊と硝煙が晴れていく中、砲撃でほぼ崩壊した氷床の中、影が見え始める。

 

「まだ残っているのか?」

「でもあれは………」

 

 長門が驚く中、陸奥はその影が巨尾諸共艤装を失い、胴体には大穴の開いた戦艦仏棲姫の変わり果てた姿だと気付く。

 

「グ…ガ………ァァァァアアア!」

 

 そのまま朽ち果てるかと思った戦艦仏棲姫の口から、咆哮が放たれると同時にその体から肉が噴出す。

 

「まだ再生できるのか!?」

「でもあれは!」

「任せてください! サポートお願い!」

 

 長門と陸奥の驚愕の声が響く中、如月が前へと出るとスナイプモードのレールガンを構える。

 

「支えて!」

「任せて!」

「いっちゃえ!」

 

 如月のレールガンがフルパワーの燐光を帯び始め、その両脇を吹雪と睦月が支える。

 

「発射!」

 

 如月のレールガンから、音すら置き去りにした超高速弾が発射。

 試作品の切り札として、一発だけ作られた高密度魔法力内臓プラズマ弾頭が最早形すら成していない戦艦仏棲姫だった物に直撃、盛大なスパークと共にその肉塊を木端微塵に吹き飛ばした。

 

「や、やった………」

「敵旗艦、消滅確認!!」

 

 睦月が喝采を上げ、吹雪が戦果を叫ぶ。

 程なくして、艦娘達全員が喝采を叫んでいく。

 

「勝ったぞ!」

「ひゃっほ~!」

「よかった~」

 

 歓喜にあふれる者、胸を撫でおろす者、それぞれだったが、最悪の事態を免れた事に長門も大きく息を吐いた。

 

「私達だけじゃ勝てなかったわね」

「ああ」

 

 陸奥がこちらに向かってくるウィッチや華撃団の方を見ながら呟き、長門も頷く。

 

『周辺に敵影確認出来ず、全艦帰投せよ』

「…了解。全艦帰投命令が出た! 損傷の激しい者から優先的に帰投せよ!」

『こちら呉鎮守府、龍驤や。こっちのメンツはダメージが少ないんで、念のため周辺捜索に回るで』

『申し訳ないが頼めるだろうか』

『お安い御用や、冬后提督』

 

 冬后提督からの指示と増援艦隊からの報告が届き、長門はもう一度大きく息を吐いて声を張り上げる。

 

「さて、問題はこれからね」

「大本営でも戦況は確認していたはずだ。今頃どうなっているのやら………」

 

 

 

「何とか、こちらの人的被害は抑えられたか………」

「各種設備の被害状況を確認してきます」

「入渠準備しないと!」

 

 冬后提督も胸を撫でおろす中、夕張と明石が慌てて作戦室を出ていく。

 

「協力感謝します」

『いえ、そちらだけの問題でもないので』

『その証拠まで出てきちゃったし』

 

 礼を述べる冬后提督に群像とサニーサイドはそれを誇示し、そして少し表情を曇らせる。

 

「降魔兵器、華撃団の世界で確認されていた物をJAMが運用しているのは前回のオペレーション・ラプンツェルで確認されていたが、それを他の世界にまで応用できる所まで来ていたとは………」

「つまり、あれは違う世界の兵器を深海棲艦に応用したという事か?」

 

 美緒が戦艦仏棲姫の最後の方の姿を思い出し考え込むのを、ほぼ無言で戦闘の様子を凝視していた更識少佐がやっと口を開く。

 

「姫クラスというだけでも難敵だが、あれはそんな物ではなかった。今後、あのような敵が更に現れると?」

「………それではすまないかもしれない」

『………確かに』

『おいおい、せっかくの勝利だ。あまり盛り下げないでほしいね』

 

 冬后提督の確認に、美緒と群像が深刻な顔をするが、サニーサイドは思わずたしなめる。

 

『戦況は随時大本営にも送信していました。まだ反応は有りませんが』

「反応している余裕すらないのかもな」

「有り得るな。いきなりあんな物を見せられれば」

「それに関しては肯定する」

『ちょっと刺激的過ぎたかもしれないね』

『こちらガランド。ウィッチ達も一度そちらの鎮守府に帰投させる。今後の指示を』

 

 考え込む五人の元にガランドからの通信が届く。

 

「まずは後処理だな。宮藤はまだ使えそうか? 怪我人が大多数だ」

『我先に戻って治療準備を始めています。それとすでに白香が治療を開始しています、マスター』

 

 美緒の確認にアーンヴァルからの返信が届き、美緒も後処理のために席を離れる。

 続いて更識少佐もその場を離れようとする。

 

「私は大本営に戻る。今後の方針を決めなくてはならない」

「そちらの様子もこちらで見ていたが、あの面子では何も決まらないだろうな」

「神崎提督がいる。あの方なら間違えた判断はしないだろう」

 

 通路へと出ようとしていた美緒が、背後に振り向き話しかけてくるのを、更識少佐は正面から断言する。

 

「そうか………ああ、それと今の内に聞いておこう。貴方の名は更識 楯無で間違いないのか?」

「そうだが?」

「同じ名前の人物がNORNにいる。顔も似ているし、恐らく何らかの関係がある人物だろう」

「待て」

 

 そこまで聞いた所で、更識少佐の手が美緒の肩を掴む。

 

「間違いないのか? 本当に更識 楯無がそちらにいるのか?」

「そうだ。パラレル存在とかいう奴で恐らく近似存在かその血縁があちこちにいるらしい。冬后提督もそうだからな」

「………ここから過去か未来か」

「未来、だろうな。それが何か?」

「………楯無は更識家の長子に代々継がれる名だ。つまりそちらの楯無は…」

「ああ、子孫か。501のペリーヌの子孫もいるからな」

「………」

 

 何故か無言で動かなくなった更識少佐を取りあえずそのままにし、美緒は部屋を出ていく。

 

「さて、あれで理解出来ない程の無能な上層部でないといいが………」

 

 思わず漏れた美緒の呟きに、冬后提督は黙って頷くしかなかった。

 

 

 

同時刻 大本営会議室

 

「どうやら、片付いたようですわ」

 

 ヒュウガの声に、答える者はいない。

 誰もが見せられていた横須賀鎮守府防衛戦に、絶句していた。

 

「一体、あれはなんだ?」

 

 その場にいた将校の一人が、ようやく絞り出すように呟く。

 

「敵と味方、それだけ。貴方達にとってもだけれど」

 

 ヒュウガはそれに極めて簡潔に答える。

 それを気に、皆が一斉に検討を始める。

 

「未確認の能力を持つ深海棲艦が多数いたぞ」

「それにあの増援は何だ? 変形までしていたぞ」

「本当にあんな者達と組めというのか?」

「だがあれほどの能力を持つ深海棲艦相手では…」

 

 懐疑が深まる討論を、大きな音が響いて中断させる。

 

「つまらない議論なぞしている暇は有りません」

 

 神崎提督が手にした仕込み長刀の柄尻で床を叩き、皆を黙らせる。

 

「し、しかし…」

「使える物は何でも使い、深海棲艦に対抗する。それがそもそも艦娘と鎮守府の役割だったはず。たとえそれが違う世界の物だとしても」

 

 年齢を一切感じさせない鋭い瞳で居並ぶ将校達を見据え、神崎提督が断言する。

 それを見てヒュウガは思わずほくそ笑む。

 

「随分と割り切っているのね」

「深海棲艦が現れ始めた頃に比べれば、随分とマシよ。貴方達の増援も有りましたから。たとえ人間でなくても」

「あら気付いていたの?」

「ミサイルに入ってくる者が人間だとしたら、非常識ですらないでしょう」

「ウチの艦長は私達メンタルモデルは平気だからってちょくちょく撃ちだすのだけれど」

「なかなか素敵な艦長さんね」

 

 互いに笑みを交わすヒュウガと神崎提督に、周囲の将校はむしろ薄ら寒い物を感じずに入られなかった。

 

「さて、では参りましょう」

「ど、どちらに?」

「ガランド少将と会談の約束が有ります。横須賀鎮守府に」

「今からか!?」

「貴方方は何を見ていたのです。彼女達との共闘に、最早一刻の猶予も有りません。全責任は私が負いましょう」

 

 慌てる将校達を再度一瞥して、神崎提督は席を立つ。

 

「即断即決、感謝しますわ。迎えでも呼びます?」

「生憎とミサイルに乗れるような歳でもないのでして。車を用意させます」

「はい、すぐに」

 

 控えていた扶桑が一礼して車を取りに向かう。

 

「ともあれ、この世界との同盟は何とかなりそうね………」

 

 ヒュウガが思わず呟き、神崎提督の来訪を401へと通信する事にした。

 

 

 

「何とか片付いたでち………」

「やばかった………」

 

 水中にも敵影が無い事を確認した第二潜水艦隊がやっと胸を撫でおろす。

 

「あんたもご苦労でち」

「いえ任務ですので、リーダー………おや?」

 

 ゴーヤがヴァッフェドルフィンをねぎらう中、ヴァッフェドルフィンのセンサーが何かを捕らえる。

 

「どうかした?」

「何か反応が…」

「まさかまだ敵が!?」

「いえ、これは………」

 

 皆が慌てる中、反応の有った方向に向かい、ヴァッフェドルフィンが水中用ライトをつける。

 

「うげ」

「これって………」

「ウソでしょ………」

 

 潜水艦娘達がそれを見て絶句する。

 そこには、ほぼ破損していない烈風丸が海底へと突き刺さり、その場に鎮座していた………

 

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