第二次スーパーロボッコ大戦   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 EP72

 

 

『皆さんお待たせしました! マイクロマシン襲撃によるシステム破損からなんとか復旧が終了! 再び戦いの火ぶたが切っておとされようとしています!』

 

 ようやく再開された学園の闘技場で満員の観客達の歓声が響き渡る。

 

『今回の交流試合はシステム確認及び新規参加の方々の実力確認も兼ねております! 実況はおなじみの東方帝都学園一年80組・報道部所属 銀乃つばさ。解説は光の戦士隊・サブリーダーのお嬢様仮面ポリリーナさんでお送りします』

『よろしく』

 

 解説席に座ったポリリーナが会釈しながら、前にも増して熱狂している闘技場に思わず苦笑する。

 

『前回、前々回、前前々回と試合の最中に敵襲、水入りが相次いでおりますが、今回はそうならない事を願うばかりです!』

『いや、本当にね………』

 

 ジョークにすらならないつばさの実況に、ポリリーナが思わず上空、念のため複数チームが警戒に当たっているのを確認してしまう。

 

『それでは本日の第一試合! 前回中断になった帝国華撃団花組所属、李 香蘭選手と光の戦士所属、神宮寺 詩織選手の対戦です』

『今言うのもアレだけれど、大丈夫かしら………』

 

 

「さあて、準備万端や!」

 

 選手用ブースで、光武二式の状態が万全の事を確認した紅蘭が試合開始を待つ。

 

「紅蘭頑張ってね!」

「やりすぎんなよ!」

「カンナはんみたいな事はせえへんから」

 

 セコンドに来たさくらとカンナが応援する中、試合開始を告げるカウントダウンが始まる。

 

「いよいよだね、詩織ちゃん!」

「そうですね~」

 

 セコンドとして来ていた、妙にテンションの高いユナの掛け声と裏腹に普段通りの口調の詩織が答える。

 

「ユナさんの方が試合出るみたいに張り切ってます~」

「詩織が気合抜けすぎのだけよ。これから模擬戦やるって分かってないんじゃない?」

「そんな事~無いですよ~」

 

 同じくセコンドとして来ていたユーリィとミサキも多少の呆れが入った声をかけるが、詩織当人のテンションは相変わらずのままだった。

 

「大丈夫? ルール分かってる?」

「ええ~多分~」

 

 ユナが念を入れて試合開始を待っている詩織に声を掛けるが、詩織は通り名の通りおっとりしたまま、戦意の欠片も感じられない。

 

「なんでよりにもよって彼女に…」

「くじ引きしたら当たっちゃって。でも大丈夫! きっと詩織ちゃんなら勝てるよ!」

「はあ~、頑張ります~」

「ユーリィも出たかったです~」

 

 ミサキが心配そうに見つめる中、ユナは思わず項垂れかけたのを無理やり切り返し、ユーリィが駄々をこねる中、試合開始を告げるカウントダウンが始まる。

 

『心配なのはユナ、貴女もよ。エリカが行方不明になって落ち込んでたのを無理して明るく振舞ってるの、気づく人は気づいてるわ』

 

ミサキの内心の心配とは関係なく、試合は始まろうとしていた。

 

『3、2、1、スタート!』

 

「行くで~!」

 

 カウントゼロと同時にシャッターが開き、紅蘭の駆る光武二式が飛び出す。

 そして、ある事に気付いた。

 

『おや? 神宮寺選手出てきません?』

『やっぱり………』

 

 

「詩織ちゃん、詩織ちゃん! 始まってる!」

「あ~、そうですね~」

 

 シャッターが開いたのに出ていかない詩織にユナが促し、ようやく詩織が散歩にでも出るようにブースから出ていく。

 

 

『あ、神宮寺選手出てきました! 何かトラブルでしょうか?』

『あれが彼女の普通よ』

『はあ、本当に試合になるんでしょうか?』

 

 

「あ~、ホンマに大丈夫かいな? やる気あるんか?」

「え~と………どうでしょう~?」

 

 念のため機体の拡声器で確認する紅蘭だったが、詩織は微笑んだまま小首を傾げる。

 

「なんややりにくいけど、試合は試合や! 行くで!」

 

 気を取り直した紅蘭が蒸気ランチャーを一斉発射、発射された地対地誘導弾「大連」が詩織へと迫る。

 だが詩織は一歩どころか身じろぎもしないと思った直後、バトルスーツの各所が展開、レーザーを次々発射して迫る誘導弾を全弾撃墜してしまう。

 

『なんと神宮寺選手、微動だにしないまま全弾を撃墜! 雰囲気とは裏腹に凄まじい戦力を見せつけています!』

『ああいうのは得意なのよね…』

 

「前言撤回や! なんやあのハリネズミみたいな武装は!」

 

 紅蘭は先程までの詩織のイメージを完全否定し、慌てて闘技場内の建物の影に退避する。

 

『李選手、回避行動に移っています! さすがにあの火力は侮れません』

『いえ、侮ってるわね』

 

「その~、レ~ザ~発射~!」

 

 気合の抜けきった声と共に詩織が両手を前へと出すと、バトルスーツの武装が前方に展開、先程のとは比べ物にならない強力なレーザーが発射される。

 

「!?」

 

 差し込む影にとっさに紅蘭が建物の影から飛び出すと、次の瞬間発射されたレーザーが建物を難なく貫通して先程まで紅蘭機のいた位置を撃ち抜く。

 

『なんという出力! 神宮寺選手、これはまるで人間砲台です!』

『あの火力はこちらでも有数ですから』

 

「試合用の火力なんかアレ! こっちの何倍や!」

 

 予想を更に覆され、紅蘭がなんとか詩織の狙いを反らすべく動きながら蒸気ランチャーを発射し続けるが、放たれた誘導弾は全て撃墜されていく。

 

「なかなか~、やりますね~~」

 

 シャッター前から一歩も動いていない、というか動く気があるかどうか分からないおっとりさのまま、自分への攻撃を防ぎ続ける詩織に観客達は戦慄を感じ始めていた。

 

『すさまじい攻防が繰り広げられておりますが、神宮寺選手は相変わらずの不動! 余裕の表れか!?』

『いや、ただ単に動く気が無いだけなのよ………相手が近接タイプだったらまずかったけど』

 

「つまり、近付けばいいんか!」

 

 ポリリーナの解説を聞いた紅蘭が、一転して詩織へと突撃を開始する。

 

「そ~こ~で~す~」

 

 詩織は迎撃しようとレーザーを発射するが、紅蘭機は両足のホバーを聞かせて左右に細かく動いてそれをかわしていく。

 

「そうか、防御は早いんやけど攻撃は大味、だったらもっと…」

 

 ようやく詩織の特性を掴み始めた紅蘭が、更に速度を上げようとした時、前半終了のアラームが鳴る。

 

『あっとここでブレイクタイムです! 前半戦は双方有効打無し、しかし双方火力重視のため、一発逆転も有り得ます!』

『どちらが先に決めるかね』

 

 

「紅蘭大丈夫!?」

「いやしんどいわ………あんなん初めてや」

「確かにな。織姫のが可愛く見えるぜ」

 

 ブースに戻って来た紅蘭にさくらとカンナが声を掛ける。

 

「建物撃ち抜けるだけの火力なんてデタラメですしね」

「つうかなんか殺気は全然感じないんだよな………ひょっとしてあの装備が勝手に戦ってね?」

「防御はそうかもしれへんな。けど攻撃は確かに向こうの意思でやっとるわ」

 

 少し無茶な機動をしたダメージを確認しつつ、消費した誘導弾を補給しながら紅蘭は対策を考える。

 

「後半、一気に行くで!」

 

 

「詩織ちゃん大丈夫!?」

「一応~当たっては~いないので~」

「ただ彼女の特性はほぼ向こうに見抜かれたと思うわ」

 

 ユナが戻って来た詩織に声を掛けるが、相変わらずおっとりした詩織にミサキが警告する。

 

「向こうもバンバン撃ってきますぅ!」

「手数だけじゃダメって気付いたろうしね。多分何か手を打ってくるわよ」

「そう~ですね~」

 

 そこで後半戦開始のカウントダウンが始まる。

 

「あ~、またですね~」

「今度は開いたらちゃんと出てね?」

「分かりました~」

 

 

「一気に行くで! チビロボ二式!」

 

 後半戦開始と共に、紅蘭機の蒸気ランチャーから誘導弾ではなく小型のマシンが次々発射されていく。

 

『おおっと李選手、今度はどんな手を使うのでしょうか!?』

『ひょっとして、オートビット?』

 

 つばさの実況とポリリーナの解説が示す通り、小型四機、中型一機で構成されたチビロボ達が詩織に接近、迎撃されるギリギリの距離で次々と爆発物を発射してくる。

 

「あら~、可愛らしいですね~」

 

 チビロボ達の攻撃を半ば、というかほぼ自動的に迎撃しながらある種場違いな感想を漏らす詩織だったが、その隙を狙って紅蘭機が一気に接近してくる。

 

『李選手、オートビットと本機による二面攻撃の模様! 神宮寺選手対応出来るのか!?』

『さあて、どうかしら?』

 

「行くで!」

 

 機動力全開で一気に間合いを詰めた紅蘭機が、蒸気ランチャーから誘導弾を一斉発射する。

 詩織の武装の残りがそちらを迎撃するが、それも紅蘭の想定内だった。

 

「今や!」

 

 詩織の武装が迎撃に取られている間、チビロボ二式と紅蘭機が同時に全速で更に急接近していく。

 

「この距離、もろた!」

 

 迎撃が間に合わないと思った距離で紅蘭機とチビロボ二式が同時に攻撃した時だった。

 

「スロ~ム~ブ~」

 

 詩織の間延びした声と共に、発射された誘導弾、更にはチビロボ二式と紅蘭機ですらまるでスロー再生のようにその動きが遅くなる。

 

『これは一体!?』

『詩織の特技、空間遅延よ。範囲は小さいけれど、あの範囲内では全ての物質が遅くなる。まあ詩織当人と同速度とも言えるのだけれど………』

 

「な~ん~や~て~!?」

 

 紅蘭自身も遅くなっているのを自覚する中、詩織の手、そこに装備されている武装が向けられる。

 

「あ~か~ん」

 

 遅延する空間内で放たれたレーザーが紅蘭機を直撃、一応威力は落としてあったがその場で撃墜判定がされ、勝敗が決まる。

 

『神宮寺選手、まさかの不動勝利! その実力はまさしく圧倒的…』

『あ、いけない!』

 

 つばさが詩織の勝利を告げる中、ポリリーナがある事に気付く。

 直後、遅延が解けた攻撃が迎撃しきれず一斉に詩織に直撃した。

 

「………へ?」

 

 まさかの事態に他でもない攻撃した紅蘭自身が驚く中、爆風が晴れると試合用の模造弾でダメージはほとんど無いが黒こげの詩織が姿を現す。

 

「当たってしまいました~」

「………避けるって手もあるんやで」

「でも~、いつも~、避けようとする前に~ぶつかってしまうので~」

「………強いけど、あんた絶対一人で戦わんほういいで」

「そうします~」

 

 観客達も予想外の結果に唖然とする中、取りあえず第一試合は終わる。

 

 

 

異なる世界 佐世保鎮守府

 

「なるほど、こういう人達もいるのね」

 

 NORNから持ち込まれた次元間通信装置から送られてくる交流戦の映像を、神崎提督と所属艦娘達が凝視していた。

 

「前回もかなり変わった戦い方をする者達がいたのは見ましたが、他にもかなりいるようですね」

 

 前回の横須賀鎮守府の襲撃の映像を大本営で見ていた秘書艦の扶桑が、端的に解析する。

 

「あの相手を遅くする能力、有ったら便利ですね」

「まあ、解除した後当たっちゃったのはどうかと思うけど」

 

 ショートカット姿の青い制服に同色の帽子をかぶった高尾級重巡一番艦・高雄に同色の制服で金髪ロングヘアの高尾級二番艦・愛宕が小首を傾げる。

 

「相手の方も誘導弾や支援機の攻撃、中々ね」

「歴戦のベテランもかなりいるとの話でしたし」

「問題は、それでも海戦の経験はほとんど無いという事だけれど………」

 

 神崎提督と扶桑の話を、他に見ていた艦娘達も真剣な顔で聞き、互いに話し合い始める。

 

「あ、次の試合始まります」

「次はどんな人達かしら?」

 

 高尾と愛宕が期待して第二試合の始まりを待った。

 

 

 

学園 闘技場

 

『それでは本日第二試合! 色々噂のヴィントブルーム王国マイスター乙HiME、〈蒼天の青玉〉アリカ・ユメミヤ選手! 対するは第31統合戦闘航空団所属、通称〈アフリカの星〉、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉! 試合ルールはヒット制、インターバル無しの五分制になります!』

『マルセイユ大尉はウィッチの中でもトップクラスのエースと聞いているわ。さてどんな戦いを見せてくれるのかしら』

 

「範囲確認、闘技場エリア内ならマイスターJEM認識内です。ただし高度を取り過ぎると範囲から外れる可能性が有ります」

「だそうだ。いいな、マイスター乙HiMEの実力を見せつけるのじゃ!」

 

 選手用ブースでジュピシーからの確認にマシロが念押しする。

 

「大丈夫、任せてマシロちゃん! 認証お願い!」

 

 元気に宣言するアリカがマテリアライズし、準備を整える。

 

「ウィッチの人達はNORNの中でも特に歴戦、ましてやそのエースとなったら実力は疑う余地は無いわ。決して油断しないで」

「私だって結構経験積んでるもん!」

 

 セコンドのニナが更に念押しするが、アリカは自信満々に答える。

 

 

「向こうはかなりの性能を持っているとの話です」

「らしいな。まあ未来のだけに性能は向こうが上なのは当たり前か」

 

 セコンドのライーサからの忠告に、マルセイユはむしろ不敵に笑う。

 

「何か随分変わった装備だそうだけど。耳飾りにキスしてもらって起動するって」

「はは、確かに変わってるな」

 

 同じくセコンドの古子が先程学園の生徒達から聞いた話をマルセイユは更に笑い飛ばす。

 

「さあて、肝心の腕の方はどうかな」

 

 試合開始のカウントダウンを聞きながら、マルセイユは開始を待ちわびた。

 カウントゼロと共に、両者は同時に飛び出す。

 マルセイユはストライカーユニットの魔導エンジンをフルに回し、加速状態から急上昇すると同時に手にしたMG34機関銃を連射する。

 

「それくらい!」

 

 アリカはウィッチとは比べ物にならない運動性で放たれたペイント弾をかわし、一気に間合いを詰める。

 

「それで、こう!」

 

 アリカはこちらに銃口を向けるマルセイユがトリガーを引くと同時に、急旋回で弾幕をかわし、取り回しが効かないであろう後方に回り込み、エレメントのダブルセイバーを振りかざす。

 

「ふっ」

 

 向こうから見えない位置でマルセイユは小さく笑みを浮かべ、片手にMG34を持ったままもう片手でベレッタM1934を抜くと、振り返りもせずに速射する。

 

「うわっ!?」

 

 振り向きもしないで反撃された事にアリカが慌てて銃弾をかわして一度距離を取った。

 

『これは開始早々、高レベルな展開です! マルセイユ選手、装備の性能差を物ともしていません!』

『さすがウィッチのトップエースね』

 

「だったらもっと!」

 

 アリカが更に加速し、マルセイユの周囲を旋回しながら攻撃を繰り出すが、マルセイユはシールドと最小限の回避でそれをかわし、即座に反撃してくる。

 

『両選手、すさまじい攻防です! 互いにヒット&アウェーの連続、一歩も引きません!』

 

「ええい、何をしている! もっと攻めんか! 遠慮しているのか!」

 

 選手用ブースで応援なのか叱咤なのか分からない声援を送るマシロだったが、ニナは両者の動きを冷静に見定め、やがてため息をつく。

 

「マシロ陛下」

「なんじゃニナ! お前も応援せい!」

「この舞闘、勝てません………」

「何を言うておる! 押してはおらんが、退いてもおらんぞ!」

「それです。明らかに性能差があるはずなのに、拮抗している。いえそう見えてますが、実際は実力差は明らかです」

「はあ!?」

「確かに、マイスターローブとストライカーユニットでは性能差は歴然です」

 

 ニナの断言にマシロが素っ頓狂な声を上げるが、ジュピシーは冷静に補足する。

 

「向こうは、最小限の動きと誘導により、アリカに目的通りの場所に攻撃させているんです。即座に反撃するために」

「なんじゃと!?」

「またあの子単純だから、それにあっさりと引っ掛かってます。性能差で回避できてますが、このままだと…」

 

 ニナの予想を言い終える前に、大きな歓声が起こって両者が試合を映す画面を見る。

 そこには足にペイント弾が被弾したアリカの姿が有った。

 

『ユメミヤ選手ヒット! 再度の被弾によっては勝敗は決します!』

『さて、どう出るかしら?』

 

「………実戦なら蒼天モードという手も有りますが、このままでは無理でしょう。向こうは恐らく性能差のある相手との戦い方を熟知してます」

「どんな経験積んできておるんじゃ………」

 

 

「まずい………」

 

 足に広がるペイント弾の弾痕にアリカは一度距離を取る。

 

「どうした? そんな物か?」

 

 対してマルセイユは完全に余裕の表情で空になったマガジンをイジェクトして交換していた。

 

「だったら!」

 

 アリカは正面戦闘は不利と見て、マルセイユの周囲を旋回し始める。

 その速度は一気に増していき、マルセイユの周囲を竜巻状に覆い始める。

 

『おおっとユメミヤ選手、これはスピード勝負でしょうか! すごい速度です!』

『ウィッチにあの速度は無理ね。問題はここからだけど………』

 

「ほう………なるほどな」

 

 最早目に捕らえるのも難しい速度で動くアリカに、マルセイユは感心しつつも半ば直感でその動きを感知する。

 

「いっけ~!」

 

 速度が完全に乗った所で、アリカはマルセイユの背後から一気にエレメントを振りかざして反応出来ないであろう速度で迫るが、マルセイユは僅かに体をよじり、挙句にそれに合わせてベレッタM1934をエレメントへと向けて速射。

 拳銃弾とは言え、魔法力が強めに込められた攻撃に、速度の乗ったままアリカの体勢が崩れる。

 

「うわっ!」

 

 そこを狙いすましたようにマルセイユのMG34の銃口が向けられ、トリガーが引かれる。

 防ぎきれずにアリカの顔面を含めた全身がペイント弾に染まっていき、直後試合終了のアラームが鳴る。

 

『マルセイユ選手、性能差を物ともしない圧倒的な実力で勝利です!』

『正確には、ああ戦うしかなかったのでしょうね。スピードとパワーは段違いだったろうし』

 

「あうう………」

「もう少し駆け引きを覚えた方がいいぞ。攻撃が丸わかりだったからな」

 

 しょげかえるアリカに、マルセイユは問題点を指摘しながら戻っていく。

 アリカも自らのブースに戻ると、マシロが仁王立ちしていた。

 

「なんじゃあの有様は! それでも妾のマイスター乙HiMEか!」

「ご、ごめん………」

「陛下それくらいで。恐らく相手は五柱クラスの実力者です。アリカでは荷が重かったかと………」

「五柱のデータが無いので判断出来ませんが、ウィッチトップクラスなのは確かです」

「ぬぬぬ………」

 

 怒鳴るマシロだったが、ニナとジュピシーにたしなめられ、思わず唸ってしまう。

 

「まあまあそれくらいで」

「次は私達の番!」

「ふう………そうじゃったな」

 

 そこで次の試合に出る響とセコンドのジェミニにもたしなめられ、マシロは項垂れつつもその場を譲る。

 

「頑張ってね、こうならないように………」

「うん頑張るから!」

 

 アリカも項垂れつつ、取りあえず備え付けのシャワー室へと向かっていく。

 

「そう言えば対戦相手のデータが来てませんが」

「なんか向こうの意向でギリギリまで秘密だって。知ってる人って言われたけど………」

 

 ニナがブースに表示されている対戦表を見て首を傾げるのを、響も同じように首を傾げる。

 

「今発表されるようです」

「さて誰かしら?」

 

 フブキと紗羅檀が指摘した通り、今まで空欄だった対戦相手が表示されていく。

 

『え?』

 

『さて本日最終試合、国連超常災害対策機動部タスクフォースS.O.N―G.所属ガングニール装者、立花 響選手! 対するは紐育華撃団所属、年齢不明・性別も不明のミステリアスエース、九条 昴選手! 使用機体はランダムスターです!』

『さて、どうなるかしら?』

 

「え、昴さんが相手なんですか?」

「ボクも今知った………」

「でも何故秘密にしてたのでしょうか?」

「秘密主義みたいだし、対戦すら秘密にしてたんじゃない?」

 

 

「ふむ、機体に問題無し。体調も問題無し。試合への問題点無し」

「準備はいいわね?」

 

 ランダムスターに乗り込んだ昴に、セコンドのラチェットが声を掛ける。

 

「問題無い」

「貴方にしては珍しく強行に主張してきたから何とか試合枠は組んだけど、響さんの重大な弱点って何の事?」

「ラチェットも前回の戦いを冷静に見れば分かるはずだ」

 

 それだけ言うと昴はハッチを閉め、試合開始のカウントダウンが始まる。

 カウントゼロと同時に、両者はブースを飛び出す。

 そのままの勢いで激突するかと思えば、突然ランダムスターは足を止め、武装の斬鉄扇を突き付ける。

 

「昴は言う。ハンデをやろう」

「え、ハンデ?」

 

 突然の宣言に、響も思わず足が止まる。

 

「このランダムスターに一回でも触れられたらそちらの勝ち。それがハンデ」

「触れたら? まあ確かにシンフォギアで思いっきり殴って壊れたらどうしようかと思ってたけど………」

 

『な、なんと九条選手、とんでもないハンデを宣言してきました!』

『こういう場合ってどうなるの?』

『え、え~とハンデ戦のルールは………あ、今瑠璃堂先生と織斑先生双方から許可が出ました! この試合、試合時間はそのままに九条選手の機体に触れた時点で立花選手の勝利というハンデ戦となります!』

 

 あまりに相手に有利過ぎるハンデに、観客達もどよめく。

 

「それじゃあ、行きます!」

「来い、と昴は言う」

 

 気を取り直して昴は拳を振りかざし、昴は斬鉄扇を己の前にかざす。

 繰り出された拳がかざされた斬鉄扇に直撃し、すさまじい音が周辺に鳴り響いた。

 

 

 

とある世界 ブルーアイランド

 

「すごい音~」

「あの人もすごいパワーみたい」

「歌を媒介にするって話だけど」

「つまり手合わせ程度がこれって事…」

 

 パレットチームとソニックダイバー隊が次元間通信で送られてくる試合映像を熱心に見ていた。

 

「先程のアリカさんもすごかったですけど、こちらの響さんもかなりのポテンシャルのようです」

「あれに触ったら負けって、相手はどんだけ余裕なのよ?」

 

 可憐の分析に、瑛花は試合の様子を見ながら呟く。

 

「相手の方も相当です。あの攻撃を見事にさばいてます」

「今そばの建物が流れ拳で半壊してたけど………」

 

 わかばも響の繰り出す拳足を次々とさばいていく昴の腕前に感心し、ひまわりは余波だけで崩壊していくステージに少し眉をひそめる。

 

「なんか闘牛って奴みたいだね~」

「あの、マント持ってウシと戦う奴?」

 

 相変わらず頭の上にいるヴァローナの指摘に、音羽はおぼろな知識を引っ張り出す。

 

「確か赤いのをヒラヒラさせて突っ込んでくるのをかわすんだっけ?」

「多分そうだと思うけど」

 

 あかねも何とか思い出そうとし、あおいが肯定する。

 

「つまりあの子、遊ばれてる?」

「どうかしら?」「今に分かるわ」

 

 エリーゼが核心を突いた所を、マテリア姉妹が意味ありげに笑った。

 

 

 

学園 闘技場

 

『なんという事でしょう! 立花選手の猛攻を九条選手、完全に防ぎ、かわしております。余波だけで周辺はすごい状態になっていますが! 結局立花選手、一発も有効打の無いまま前半終了です!』

『見事な物ね。霊子甲冑のあの重厚な巨体をあそこまで流麗に動かせるなんて』

 

「あ、あれ~?」

 

 自分のブース内で、体力には自信がある程鍛えていたはずの響が、あまりに一方的な展開に息を荒げていた。

 

「むむむ、さすが昴。やっぱ一筋ロープじゃいかないか………」

「と言うか………」

「完全に攻撃読まれてるわね」

 

 考え込むジェミニに、フブキと紗羅檀が断言する。

 

「そんなに私の攻撃って単調かな?」

「もしくは何かカラクリがあるのやも」

「カラクリ?」

「ひょっとして…」

 

 フブキの指摘に回答が出る前に、後半戦のカウントが始まる。

 

「何とか一発でも!」

「頑張って!」

 

 シャッターが開くと同時に意気込んで飛び出す響にジェミニが声援を送る。

 

「言いたくないけど、多分…」「恐らくは」

 

 だが武装神姫達は、密かに試合の結果を予感していた。

 

「たあああぁ!」

 

 気合と共に繰り出された響の拳を、ランダムスターが角度を持って繰り出された斬鉄扇の表面を滑り、流された拳が背後に有った建物を打ち抜く。

 

「また…!」

「ふむ」

 

 繰り出す攻撃全てが完全に受け流されるのを、響は警戒しながらそのまま体を回転させて後ろ回し蹴りを放つが、こちらも完全に見切られてかわされる。

 

「何で…」

「昴は言う。君の欠点を。そのシンフォギアは聖詠という歌で力を発揮する。そのため君の戦闘パターンはその聖詠のリズムほぼその物だ。聖詠は恐らく三種類はあるが、その三種を常時意識すれば、攻撃は全て予測出来る」

「………え?」

 

 昴に指摘された己の弱点に、響は思わず自分の両手を見る。

 

「意識してなかった………」

「昴は更に言う。相手が知性を持った相手の場合、それは致命的だ」

 

『九条選手によってシンフォギアの意外な弱点が露呈しました! って、三種類のリズム同時って………』

『そっちはそっちで難しいわね………』

 

 会場内に響くアナウンスを聞いた響は、両拳を握り締める。

 

「だったら、読まれてもいいくらい思いっきり行きます!」

「ふむ、受けて立つと昴は言う」

 

 構えた響の口から聖詠が紡がれ、それに応じるようにシンフォギアの腕部が肥大化していく。

 それに対し、昴はランダムスターを舞うように動かし、一対の斬鉄扇を盾のようにかざす。

 

『いよいよクライマックスの模様! 立花選手の攻撃は通じるのか!?』

『試合場のシールドマックスに! これはちょっと危ないわよ!』

 

 盛り上がる実況のつばさと観客達だったが、ポリリーナは急いで指示を出す。

 そして朗々たる聖詠のクライマックスと同時に、響の渾身の拳が放たれる。

 凄まじい衝撃波と共に放たれた拳はかざされた斬鉄扇に直撃、今までで最大の轟音と共に斬鉄扇が木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 だが、その向こうにいるはずのランダムスターの姿は何故かそこには無かった。

 

「え…」

 

 拳から放たれた衝撃波がそのまま試合場の外壁に直撃し轟音と振動が響き渡る中、響が呆気に取られている間に、首筋に冷たい感触が触れる。

 

「昴は言う。取った」

 

 拳を突き出した体勢のまま、響が顔を後ろに向けると、そこにはいつの間にか背後にいたランダムスターが、半壊した斬鉄扇の片方だけを響の首筋に当てていた。

 

「ま、参りました………」

『おおっと立花選手ギブアップ宣言! この時点で九条選手の勝利が決定です!』

 

 完全に敗北を悟った響の降参に、つばさが勝敗を宣言する。

 

『それでは先程のリプレイです! 立花選手の渾身の攻撃が直撃した瞬間、片方の武器を囮に、九条選手見事に視界の影に回り込んでいます!』

『武器を破壊される事も何も読んで、完璧なタイミングで死角に潜り込んでるわ。見事としか言いようが無いわ………』

 

 会場の大型ディスプレイに表示される先程の攻防のリプレイに、響は絶句していた。

 

「全然気付かなかった………」

「昴は言う。単純過ぎる事も君の弱点だ」

 

 うなだれる響に忠告しながら、双方ブースへと戻っていった。

 

「残念だったね。さすが昴」

「あんな戦い方、見た事無かったよ………完敗」

「だが改良点は見つかりました」

「改良出来るかしら?」

 

 ジェミニや武装神姫達が声を掛けてくるのを、響は肩を落としたまま聞いていた。

 

「翼さんやマリアさんだったらなんとかなったかな………」

 

 

「完勝ね」

「そう見えたか」

 

 出迎えるラチェットに、昴は言葉を濁す。

 そしてブースのシャッターが閉まった直後、ランダムスターの各所から蒸気が吹き出し、その場に擱座した。

 

「昴!?」

「大丈夫、と昴は言う」

 

 ラチェットが驚愕する中、何とかハッチを開けて昴が出てくる。

 

「直撃は一発も受けていない。だが余波だけでこれだ。特に最後の一撃は危険だった」

「これがシンフォギアの破壊力………直撃したらスターでも持たないわね………」

 

 噴出は止まったが、まだ蒸気を漏らしているランダムスターの姿に、ラチェットは思わず唾を飲み込む。

 

「これらを考慮して戦術を組み直す必要が有る」

「他のシンフォギアもこれくらいの破壊力かしら………」

「彼女ほど単純でない事を祈る」

 

 色々考える事が増える中、取りあえずラチェットは機体回収のための連絡を入れる事にした。

 

『さて初めて最後まで無事交流戦は終了しました!』

『いや、ホントにね………』

『ここでお知らせです! 現在情報部を中心にNORN実戦部隊の総合ランキングが制作中です! これまでの戦闘及び、この交流戦の結果が審査対象となります! 発表までしばらくお待ちください!』

 

 つばさからの発表に、会場が試合の時よりもざわめく。

 

『戦闘力じゃなくて戦闘時における指揮能力その他を含めたランキングなのね?』

『はい、乱戦なんかの緊急時に簡易的に指揮系統を構築する方法としても機能させるためとなります! つまり、上位ランカー程頼りになるという事です! ちなみに暫定ですがポリリーナさんも上位に入る予定です!』

『あらそれはありがとう』

 

「ほう、それは面白そうだな」

「大尉なら上位間違いなしです」

「私はランク外かな~?」

 

 選手更衣室のモニターで後の試合とランキングについて聞いたマルセイユがにやりと笑い、ライーサと古子は頷いたり首を傾げたりする。

 

「問題は指揮能力も問われるという事か。少なくても第一試合の勝者の彼女のようなのはどう扱われるのか?」

「あんな固定砲台みたいな戦い方する人はどうでしょうか………」

「まあ指揮取れるような人ではないわね」

「実際、いざ混戦ともなると色々問題は出るだろうからな。我々のような軍人なら階級で割り振れるが、民間人も多いからな」

「ここの二回目の襲撃の時は、501の坂本少佐が指揮取ってましたしね」

「つまりいざって時強くて指揮取れる人が上位か………」

「中々厳しいですね………」

「今後の事もあるでしょうからね」

 

 色々考えるウィッチ達に、ふらりと現れたラチェットが口を挟む。

 

「今後?」

「他の組織の合流時にね。響は今一応こちらの指揮下に入ってるけど、今後似たようなケースが無いとも限らないし、混戦や分断の可能性も有り得るわ。マイスター乙HiMEなんて各国の重鎮がマスターだそうだから、指揮権なんてどうなるか分かった物じゃないわ」

「全員に階級でも割り振るか?」

「軍人じゃない人達には難しいかと」

「統合戦闘航空団も出来たばかりの時は色々あったらしいですし」

「はっはっは、ウチは全部ケイが引き受けてくれたからな」

「あれはたまたまあちらの階級が上だったから押しつけただけじゃないですか。というか強引に統合戦闘航空団にしました………」

「そういやそんな話だっけ」

「当人から聞いてるわよ。まあ上官の仕事なんて半分は雑務だからね」

「そちらも苦労してるようで………」

 

 

 

とある世界 ブルーアイランド

 

「ランキングか~」

「面白そうだね」

「私達はまず向こうに参加できるかだけど」

「そこが問題ね」「力は有り余ってるのに」

「一応示現エンジンの転送実験は進んでるみたい」

「早く願いたい所」

「もしくはパレットスーツのストック分でなんとか」

「稼働時間を計算してみる」

「あ~、それは止めた方いいよ。時間切れはまずいから」

「オーニャーはそれで死にかけたしね」

 

 ランキング制度に盛り上がるパレットチームとFAGに、音羽とヴァローナが少しばかり苦言を入れる。

 

「ま、私達は階級そのままだろうからね。何位かは不明だけど」

「音羽は前にISの最新型に勝ちかけたから、それよりは上かもよ?」

「相性の問題も有りますし………」

「ただいま~」

 

 ソニックダイバー隊があれこれ話し込む中、定期巡回に出ていた亜乃亜が戻って来る。

 

「どうだった?」

「空振り~、転移者の反応も武装神姫の反応も確認できなかったよ。よっぽど隠れるのが上手いのかも」

「つまり探し出すのは不可能って事ね………」

 

 音羽の問いに亜乃亜が首を横に振り、瑛花は考え込む。

 

「やっぱり、あの作戦を実行するしかないわね」

「次のアローン出現時に探すってアレ?」

「アローンに干渉してるのは確か。それしかない」

 

 瑛花の一言に音羽が今進められている計画を思い出し、提案者でもあるひまわりが頷いた。

 

「うまく見つけ出せるでしょうか………」

「それについてるらしい武装神姫の問題も有るし」

「う~ん………」

 

 皆が考え込むが、最早それしかない事は間違いなかった。

 

 

 

同時刻 れいのマンション

 

「そろそろね」

 

 自室で次の準備を進めるれいだったが、ふとドアを開けて鳥かごの中でピースケとじゃれているミズキを見る。

 

「貴方、向こうに作戦バラしてないでしょうね?」

「安心せい、武装神姫はマスターの保護を最優先にされておる。こちらからは情報遮断しておるしな」

「それならいいけど」

 

 確認だけしてまた自室に戻るれいに、ミズキは首を傾げ、ピースケもそれを真似をする。

 

「相も変わらず頑固なオーナーじゃな。さて、どうやって安全に保護させるべきか………代弁者を出し抜いて」

 

 ミズキの呟きに、ピースケは更に首を傾げるだけだった。

 

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