ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

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ようやく三巻に本格的突入……。

 閑話長すぎるだろ……。


さぁ野郎ども、お宝探しの時間だ!!

「まっちゃく……ふじゃけんにゃよ~。おれはにゃ~おれはにゃ~、おまえのぺっとじゃにゃいんだにゅ~」

 

「ぼかぁねぇ……ぼかぁねぇ!!」

 

「何やってんの、おまえら……」

 

 バーシェンから地獄の5万枚書類処理を申しつけられ、三日間不眠不休で働かされたライナは、ようやく帰還許可をいただきこうして学園に帰ってきていた。

 

 学園にあるライナの私室はシルの襲来でもはや住むことは不可能な惨状になっていたはずだが、ようやく休憩を言い渡されて泣きながら帰るライナに向かってバーシェンが「ほら飴をくれてやるぞ駄犬が」と、冗談なのか本気なのかいまいちよくわからない無表情で、部屋は自分の部下が勝手に直しておいたと教えてくれた。

 

 なんとなくいろいろなことをそれでチャラにされてしまった気がしないでもないライナだったが、とりあえず高級羽毛布団もベッドも元のものに戻っているようなのでそれはありがたいとフライを使い一気に学園まで駆け抜けた。

 

 そして、学園上空へとやってきたライナは校庭に見慣れないテントが張ってあることに気づき、なんだなんだ? と、そこに降り立って中の様子をのぞいてみたのだが、

 

「うわっ……酒臭っ。お前ら酒飲んでんのかよ……」

 

 そこには顔を真っ赤にして酔っぱらっているサイトとギーシュの姿があった。その周囲には困ったような顔で、酔っぱらった彼らに絡まれている使い魔たちと、溜息まじりサイトの愚痴を聞いているデルフリンガーの姿があって、

 

「何でこんなことになってんだ? ルイズはどうした?」

 

 ライナはとりあえず、気になったことをまともに話ができそうなデルフに聞くが、その答えは彼の背後から帰ってきて。

 

「どうも怒らせちゃったみたいで追い出されたみたいですよ?」

 

「んぁ?」

 

 ライナが、答えが聞こえてきたほうへと振り向くと、そこにはバスケットの中にいくつかの食料を突っ込んで立っている一人のメイドがいた。

 

「あぁもう……飲みすぎはやめてくださいって言ったじゃないですか。昨日の悪酔いしたサイトさんのゲ○、誰が掃除したと思っているんですか?」

 

 若干舌打ちをもらしかねない勢いで怒った後、メイドの少女はライナを押しのけテントの中に入り、手に持ったフランスパンによってサイトとギーシュの頭をパンパンとたたく。

 

「ほらご飯持ってきましたよ。さっさと顔洗うなり水かぶるなりして酔いを醒ましてきてください。じゃないと夕食はあげませんからね?」

 

「「うぅ~。すいません……」」

 

 どうにも上下関係がはっきりしているらしく、悪酔いしていた二人はシュンとしながら近くに設置してある井戸のほうへととぼとぼ歩いて行った。

 

「……えーっと、だれ?」

 

 そんな二人の態度の唖然としながら、ライナはとりあえず少女の名前を聞いておく。

 

「あぁ、現実(こっち)では初めてでしたね? はじめまして、シエスタって言います」

 

 ライナの質問に、シエスタと自己紹介した少女はぺこりと頭を下げた後、

 

「どうも私がサイトさんとアリエール様のケンカの原因みたいですので、仕方なくケツ拭いているとことです」

 

 少女らしくない豪胆な言い草に、ライナは思わずほほをひきつらせた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 それからしばらくして、真紅の豊かな髪を揺らした褐色の肌を持つ美少女が、サイトたちが管を巻いていた小さなテントに訪れた。

 

 というか、キュルケだった。

 

「こんばんは~。サイト元気にって……あら? 先客?」

 

「おぉ、キュ……キュルケだっけ? とにかくこいつら何とかしてくれ」

 

「今晩は……えっと……えっと、フォン様!!」

 

 キュルケがテントを覗いて驚いた声を上げる。なぜならそこには彼女が予想していなかったメンバーが集っていたからだ。

 

 まず一人目はルイズに捨てられグッタリと泣きくれている使い魔のサイト。数日前ルイズと大喧嘩しているところを目撃し、いまだにルイズのもとに帰ってきてないのを見てほんの少し気になって探していた人物。まぁ、校庭見廻せば割とあっさり見つかってしまって拍子抜けしたが……。

 

 二人目はどういうわけか寮をおいだされたわけでもないのにテントに入り浸っているギーシュ。頭を痛そうに押さえているところを見ると、どうやら今まで酒を飲んでいたらしい。

 

 三人目は稀代の風魔法使いとオールドオスマンが絶賛しながら、なぜか男子寮の管理人なんて位置にいるわけのわからない魔法使いライナ。数日前に王宮に召し抱えられたと聞いたが、学園に帰ってきているところを見るとどうやらただのデマだったようだ。

 

 最後の一人は見たことあるようでよく覚えていない、食堂から持ってきたと思われるスープとパンを三人にふるまうメイド少女。おそらくかなり頻繁に会ってはいるのだろうが、あいにくとハルケギニアの貴族は下働きの少女の顔まで覚えていなかったりする。まぁ、あちらもキュルケの名前をうろ覚えだったようなので、これはおあいこだろう。

 

「なぁに? 落ち込んでいるかと思ったら案外賑やかじゃないのダーリン」

 

「賑やかなんかじゃねーよ、ちくしょう……いくとこねーし、かえれねーし、どこにもいけねーし。ねェライナさん……俺フェリスさんの団子屋で住み込みさせてもらえませんかねぇ?」

 

「サイト……血迷ったことを言うな。あいつは嬉々としてその提案を受け入れるだろうが、その代り過労死させかねない勢いで団子づくりを手伝わせるからな?」

 

 過労死しかねない労働をする《団子屋》ってどんな店よ……と、キュルケは思わずライナの忠告にツッコミを入れてしまいそうになるが、今日の彼女の用事はべつにこのメンバーとの雑談ではないのでぐっとこらえる。

 

「ライナさんに、サイト……まぁ、ギーシュでは心もとないけど、あとは私のあの子がそろえば戦力的には問題ないわね?」

 

「ん?」

 

 キュルケの不穏なつぶやきを耳ざとく聞きつけたのか、ライナはほんの少しだけめんどくさそうな顔で、酔いも覚めたはずなのにどんよりと落ち込み愚痴を吐き散らしてくるサイトを押しのけながらキュルケの方へと視線を移す。

 

「さぁ、あんた達、出かける用意をしなさい」

 

「出かけるって……」

 

「どこにだい?」

 

 まるで駄目な男たち……略してマダオことギーシュとサイトがぐったりとした様子でキュルケを見上げる。キュルケはそんな二人の視線に嫣然とした笑みを返しながら、

 

「当然決まっているでしょう。女に捨てられたアンタたちの信用を取り戻すために……」

 

「あの、僕は捨てられていないんだが」

 

「二股してフラれたところだろうが……」

 

「だまっていたまえ!」

 

 ギャーギャー言い争いを始めたマダオ二人に火球をとばすキュルケ。そして悲鳴を上げてテント中を転げまわり必死に消火活動をする二人と、それを見て顔を引きつらせるライナとシエスタの抗議の視線を無視しながら、彼女はさっくりと言い切った。

 

「一攫千金……宝探しよ!」

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「え……えっと、風が吹いたら桶屋が儲かる!」

 

「ん? なぜ桶屋が儲かるのだ?」

 

「え……えっと、な、なんで?」

 

 ところ変わって、ここはルイズの寝室。

 

 

 

 三日ほど前サイトと大喧嘩したあげく彼を追い出してしまったルイズは、何とも言えない寂しさにとらわれてしまい、ベッドの中でサイトへの不満を漏らす日々が続いていた。

 

 そんなときにひょっこり顔を出したのが、ライナに仕事をすべて押し付け逃げてきたフェリス。バーシェンとしてはノルマ分の仕事ができればよかったのか、特にとがめられることなく彼女は意気揚々と言った様子でここに帰ってきていた。もっとも、彼女が提示した参考書類《ライナをうまく転がす1000の方法》という書類が面白がられて見逃された可能性も否定できないが……。

 

 とにかくフェリスは二日ほど前にはもうこの学園に帰ってきていた。とはいえ、彼女の知り合いといってもまだ学園に来てから日が浅い彼女。ロングビルと日課の喧嘩をしたあと、割とすぐにやることがなくなってしまい、「ふむ。ライナの奴め、私の暇つぶしに付き合わないとは……あとで折檻なんだからねっ♡」ととんでもない八つ当たりをしつつ、仕方なくルイズのもとへ何か面白いことはないかと足を運んだのだ。

 

 そうしてひょっこり顔を出したフェリスに、ルイズは思わず抱き着き今までの事情を話した。

 

 サイトが自分をないがしろにして、ちょっと胸が大きいだけのメイドとイチャイチャしていたと。

 

 それを聞いたフェリスは怒った。そりゃぁもう、烈火のごとく怒った。

 

「そ、そんな……やはり男なんて(けだもの)なのね!? いつも泣くのは私たちか弱い女よ!?」

 

 と、普段は使わない女性言葉で絶句するほど怒った!!

 

 ……まぁ、明らかに悪ふざけがにじみ出ている気がしないわけでもなかったが、これでも彼女は怒っていた。

 

 というわけで二人は《サイト(あととばっちりでライナ)チョー許さないからマジで》同盟を結成し、二人が謝りに帰ってきたときいかにひどい目にあわせてやろうかと話し合うことで時間をつぶしていた。

 

 そんな賑やかな日々を過ごしていたある日、ルイズは突然何かを思い出したかのような顔をした後真っ青になり、フェリスに白紙の書物を見せてきた。

 

「なんだこれは?」

 

 と、首をかしげるフェリスにルイズは「こ、これとかいわない!!」と、ちょっとだけ怒った後、

 

「こ、これは始祖の祈祷書と言って姫様のウェールズ様の結婚式の時に、これを持って四つの属性の精霊に感謝の祈りを込めた詩を読むんだけど……」

 

「結婚? もうするのか?」

 

「遅くても早くてもどうせそんなに影響は変わらないってバーシェン卿が言っておられたらしいから、多分近日中には……」

 

 そう言われてみると、ライナが処理していた書類の中に何か結婚式関連の書類があったような気がしないでもないフェリス。なるほど、着々と外堀は埋まっていると……と、彼女が内心で空の大陸で出会ったあの皇太子の手腕に感心しているなか、ルイズは若干困った顔をしながらフェリスの服の袖を引っ張った。

 

「で、でも私詩なんて作ったことなくて……」

 

「ふむ! なら私に任せろ!」

 

「え、ふぇフェリス、詩なんて作れるの!」

 

「当たり前だ! わたしを誰だと思っている、美少女雪崩爆発清廉潔白美少女天使フェリスちゃんだぞ! 私に不可能はないっ!」

 

 美少女二回言ったとか、天使と詩作は関係ないんじゃとか、言いたいことは山ほどあるルイズだったが、とりあえず頼れるものが何もない彼女はひとまずフェリスの詩を聞いてみる。

 

「じゃ、じゃぁ火についての詩をお願い!」

 

「うむ! まかせろっ!!」

 

 ルイズに請われて、無表情のままフンスと鼻息を鳴らすという高等技能を披露したフェリスは、しばらくの間考え込んだ後、

 

「できたっ!」

 

「はやっ!?」

 

「火はメラメラあっついぞ~!!」

 

「………………………………………」

 

 ルイズはそれを聞いてしばらく無言になった後、

 

「ゴメンフェリス、やっぱり自分で考えるわ」

 

「なぜだ!?」

 

 

 

 そうして冒頭に戻るわけだが……。

 

「やっぱりプロでもないのに詩作なんて無理よ……」

 

 結局ルイズとフェリスに詩作活動はどん詰まりに行き当たっていた。もとより一つの才能が飛びぬけすぎたため、ほかの才能が根こそぎそれに吸われてしまった可能性すらある二人だ。頭をひねるだけ無駄な努力だったのだろう。

 

「もう……ご主人様が困ってるのに、なんで帰ってこないのよ、サイトっ……」

 

 そりゃ自分が追い出したからなんだけど……。と、一人落ち込みながらベッドへと身を投げ出すルイズ。そんな彼女の隣では、いい加減詩作に飽きてきたのか団子セットを広げ御月見を始めてしまっているフェリスの姿があって……。

 

「サイト……今ごろ何しているのかしら?」

 

 ほんの少しだけの寂しさを言葉ににじませ、窓から覗ける明かりがともったテントを見下ろした。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「宝探しってお前……当てがあるのかよ?」

 

 キュルケの突然の提案に、サイトはほんの少しだけ胡散臭そうな顔をしながら姿勢を正した。

 

 それにはギーシュも大いに同意したのか、こちらも胡散臭そうな視線をキュルケに向けていた。

 

 ライナにに至っては問題外。もとよりそういった任務についていた彼は、お宝は学生がちょっとした思い付きで探しに出て見つかるものではないと知っているため、はなから信じてはいないようだった。

 

「だからこうしてわざわざ首都まで行って宝の地図買って来たんじゃない」

 

「「宝の地図ぅ?」」

 

 今度こそ素っ頓狂な声を上げるサイトとギーシュに、ライナはほんの少しだけめんどくさそうな視線を、シエスタは少し驚いたかのような視線をキュルケに向け、

 

「ほらっ、これがそれよ」

 

 といってキュルケが床にぶちまけた羊皮紙たちに取りあえずといわんばかりに視線を通した。

 

 そして、それを一通り見たライナは一言、

 

「思いっきり胡散臭いぞこれ……。ここに書いてある物語に説明文も、ここトリステインに伝わる民話や神話には出てこない名前ばっかりだし……」

 

 十中八九地図製作者の創作だろう……。と、プロのライナはあたりをつけたが、

 

「でも可能性がゼロなわけじゃないわ!」

 

「……」

 

 とキュルケに言われて、思わず唸り声をあげ黙り込む。

 

 最近は魔法の研究ばかりで、勇者の遺物関連の情報収集をすっかり忘れていたライナ。おまけにシルの襲来も重なり、エルザが渡してくれた遺物らしき首飾りの研究も中途半端な感じで終わっている。はっきりいって、こっちの世界のお宝関連の知識はまだまだど素人といっていい領域だった。

 

 可能性はゼロじゃない。そういわれると否定はできない。そう、否定自体は……十中八九偽物だと彼の勘は告げているが。

 

「サイト、あんたはルイズを見返したくない?」

 

「見返すったって……」

 

「お金を手に入れれば、うちの国ならそれで爵位を買えるわ。そうして貴族になって、ルイズを見返すことができるわよ?」

 

「…………………」

 

 キュルケにそうまで言われると、普段ルイズに虐げられているサイトだからこそ、その誘いは甘いものに聞こえてくる。

 

 爵位が買えるほどとは言わなくても、これからルイズを当てにできないとなるとサイトには金が必要だった。だったら、多少体と時間をかける程度で、大したリスクも伴わないこのギャンブルは、むしろ乗った方がいいのではないかと、サイトの冒険心はむくむくと頭を上げていく。そして、

 

「よしわかった……のろう」

 

「俺はパス……。ちょっと前まで不眠不休で働いてて眠いんだよ」

 

 そんなサイトをしり目に、一人断りを入れてさっさとテントを出ようとするライナ。それはそうだ。何せ宝探しなんてめんどうなこと、ただでさえ数時間前まで仕事地獄に陥っていたライナがしたがるわけもなかった。

 

 だが、

 

「あ、ライナさん!! ちょうどいいところに、バーシェン宰相から次の仕事の日時についての通達が……」

 

 どうやらライナを探しに来ていたと思われるシルが、とんでもないことをのたまいながら校庭を横切るように走ってくるのを見て、ライナは思わずテントの中に逃げ込み、

 

「今から宝探しに行くぞっ!?」

 

「え、え? ちょ、さすがにそれは急なんじゃ……」

 

「それならせめて、ここから逃げるっ!! 宝探しには付き合うからちょっとこっちにも付き合ってくれっ!!」

 

 そう言いながらライナは指輪をふるい指示を出す。瞬間、指輪から湧き出た薄緑色の突風が竜を形作り、あっさりとテントごとライナ達を持ち上げてシルから逃げ去る。

 

 あ、ちょっとまってください!? らいなさぁあああああああああああああああああああん? という声が遠のくのを聞き、ひとまず安堵の息をつくライナ。そして、

 

「はぁ……結局付き合うことになっちゃったよめんどくせぇ」

 

 魔法の限界を軽々と超越した速度での突然の急上昇急加速についてこられなかったのか、目を回して気絶しているサイト、ギーシュ、キュルケ、シエスタの姿を見て小さくため息をつくのだった。

 

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