ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

25 / 56
それぞれの戦場

 タルブ上空へ至ったライナ達は、戦場となっている平原や村の手前にある巨大な森で、大きな炎が放たれるのを目撃した。

 

「ん? なんだあれは?」

 

「魔法じゃない……竜のブレスか?」

 

 その炎がアルファスティグマに反応しない普通の炎だと悟ったライナは、その森で何らかの戦闘が行われていることを悟る。

 

 ……こんな時に戦場から離れた場所で戦闘? しかも反撃が見えないということは、

 

「追撃……もしくは、捕虜の確保か?」

 

「どうやらそのようだな」

 

 長年戦場に身を置いていた経験から、その場で起こっていることをなんとなく推察したライナに対し、フェリスはジッと森を見つめその考えの裏付けをとる。

 

 森の木々の隙間からは真紅の鱗を持つ火竜を率いた竜騎士が、数人の人々を追い回している光景を確認することができた。

 

「くそっ! フェリス!!」

 

「言われるまでもない」

 

 そいうと同時に彼女は何の躊躇いもなくライナが作り出した風の竜から飛び降りた。

 

 ……本当はもうちょっと下降してから降りてもらうつもりだったんだけど。と、ライナはちょっとだけ思ったが、どうやら無事に着地できたようなのでこの際気にしないことにする。

 

 そしてライナは指輪をふるい、

 

「降りろ」

 

 率直に告げて竜を静かに降下させた。狙いはフェリスに気を引きつけられた騎士たちを背後から急襲すること。

 

 できるだけ静かに降りろという内心の指示を竜は忠実に守る。

 

 ライナは最近になって気付いたのだがこの風で編まれた竜、その気になって操作すれば極端に羽ばたきの音を減らせる――というか消せる。風を打つ音である羽ばたきだが、もともと風で編まれたこの竜にはそんなものを消すことは簡単なことなのだろう。

 

 そしてすべるように空を降下した竜は、

 

「あ、やべっ」

 

「「!?」」

 

 まだ若干、ライナの操作が未熟だったせいで、フェリスと対峙していた竜騎士の背後にはおりることができたが、まだ残っていた三人の竜騎士の視界にはばっちり入ってしまう位置に降りてしまって、

 

「本気で魔法の研究いったん止めてこっちの練習するべきか? いや、でも魔法のほうが習熟速度早いんだよな、おれ」

 

 どっちのほうが便利か? と、割と今後の自分の時間の使い方について悩みながらライナはとりあえず自分に気づいていない騎士に向かい、

 

「求めるは雷鳴>>>稲光(いづち)

 

 魔法は狙いたがわず竜騎士を打ち抜き、その意識を刈り取った。それを確認したライナは再び指輪をふるい、竜を分解。それと同時にフェリスと合流しシエスタをかばうように竜騎士たちと対峙した。

 

「遅くなった。助けに来たぜ?」

 

「ふむ、優しい言葉に惑わされるなよメイド。こいつはこんなことを言って貴様を油断させた後、夜になると凶悪な野獣に変貌し、貴様を連れさり夜の荒野を駆け抜けるのだ!!」

 

「駆け抜けねぇよ!?」

 

 お前こんな時までこんなんばっかか!? とライナがちょっと怒ろうとして、

 

「あぁ……」

 

「うぉ……ちょ、泣くのは勘弁しろ!?」

 

 安堵したのかぽろぽろ涙をこぼし始めたシエスタ。そんな彼女にあわてた様子のライナ。

 

「あ~あ。な~かした~」

 

「だぁ、もううるさ……」

 

「ん?」

 

「くないですごめんなさい!!」

 

 当然のごとくいつも通りうっとうしいフェリスにライナは思わずキレるが、それよりも切れる(物理)剣を首筋に突きつけられ泣きながら謝った。

 

 そんなライナたちの様子に、

 

「お、おまえらぁああああああああああ!!」

 

 完全に無視されている形になっていた竜騎士団の隊長がキレた。それはそうだろう……いきなり敵が襲いかかってきたかと思うと、目の前で突然コントを繰り広げ始めたら誰だって怒る。

 

 だが、

 

「んじゃフェリス。ちょっと時間ないみたいだし、さっさと片付けるぞ」

 

「うむ。貴様が野獣に変身してしまう時間も近いしな。さっさとあの貴様のご同類たちを片づけて私たちも貴様から離れないと危険だ」

 

「あぁ……うん。もうそれでいいけどさ」

 

 ちょっとだけ心をへし折られそうになりながらライナは素早く魔方陣を形成。

 

「求めるは魔力>>>四力印」

 

 発動する魔方陣。それと同時にライナの中に膨大な量に魔力が宿る。

 

「――カッター・トルネード!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 そして何のためらいもなく放たれたスクウェアクラス魔法に竜騎士たちは度胆を抜かれ、竜に飛び乗る。

 

 それはそうだろう。どのような大魔法使いであっても、スクウェアクラス魔法はかなりの魔力を食う。確実に一撃必殺できる状況でもない限り、そうやすやすと打てるような魔法ではないはずなのだ。

 

 だがしかし、ライナ先ほどの魔方陣のおかげで無限の魔力を持つに等しい魔法使いだ。

 

「――ライトニング・クラウド」

 

 真空の刃をいくつも織り込んだ竜巻が森の木々を切り倒す。しかし、竜騎士たちが竜に騎乗しかろうじてその攻撃を逃れることに成功したのを確認したライナは、情け容赦なく再びスクウェアクラスの魔法を放った。

 

「なっ!?」

 

「冗談だろう!? どんな魔力量してるんだあいつ!」

 

 再び自分たちに襲いかかってくるスクウェアクラスの猛威に、竜騎士たちは思わず悲鳴を上げるが、

 

「もう遅い」

 

 ライナがそう告げると同時にライナの指輪から黒雲が湧き出し竜騎士たちに向かって飛来する。

 

 それと同時に雲からあふれ出す無数の雷光。いかに空を制する竜騎士であろうとも、雷光の速度に勝てるわけもなく、彼らはあえなくその雷に打たれる。

 

「ぐぁ!?」

 

 空へ舞い上がった竜騎士のうち、感電し気を失った二人が墜落し、

 

「ぐぅっ!」

 

 さすがは小隊長というべきか、豪華な鎧を着た男だけが何とか対抗の防御魔法を成功させ耐えきる。

 

 だが、

 

「ん」

 

「っ!?」

 

 カッタートルネードによって輪切りにされ、天高く吹き飛ばされた木々の破片たちを足場に、あっさりと天へと昇ってきたフェリスがその竜騎士が騎乗する竜の背中へと降り立ち、

 

「終わりだ」

 

 剣を一閃! 竜騎士の隊長は頭蓋骨がひしゃげかねない衝撃とともに意識を失い、騎乗していた竜からたたき落とされた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 アンリエッタは王軍を率いタルブ平原へと到着していた。

 

 ユニコーンにまたがり小高い丘に立った彼女は、王族の戦装束に身を包み眼下の平原を埋め尽くすアルビオン軍を見下ろす。

 

「……多い、ですね」

 

「わかりきっていたことではないかい?」

 

「……バーシェン卿が勝てないといわれる理由がよくわかりましたわ」

 

 ウェールズの苦笑を見てほんの少しだけ落ち着いたアンリエッタは、やはり私はまだまだ未熟な王なのですね。と、周囲の兵には聞こえないよう小さく漏らした。

 

 眼下に広がる兵の数はぱっと見ただけでもこちらの兵力の倍はいっているのではないだろうか? 正確な人数を誰かに調べさせてもいいが、そんなものを割り出してしまえば士気にかかわる。それほどに圧倒的な物量差だった。

 

「勝てる可能性はあると思われますか? ウェールズ様」

 

「普通の戦なら無理だ。平地での戦闘は数がものをいう。おまけに彼らは空を押さえる巨大艦隊の援護すら受けるんだ。元アルビオンの空軍将軍として言わせてもらうなら、勝てる可能性なんてゼロだよ」

 

 でも……と、ウェールズはそこで言葉を切りアンリエッタを振り向かせる。

 

 そこには一人の棋士がボロボロになった姿で膝をついていた。

 

 数少ないデュークー辺境騎士団の生き残り。

 

「先ほど敵の捕虜にされかけていた村民たちの奪取に成功しました。しかし、どうやら我々が思っている以上に捕虜の収容は進んでいるようで……」

 

 捕まった村人たちはおそらくあの軍の本陣奥地にとらえられているものかと……。そう報告してくれた騎士の手が怒りに震えているに気付いたアンリエッタは、静かに問いを投げかけた。

 

「……助けられた村人たちはどのような状態だったのですか?」

 

「っ……!」

 

 その問いに、騎士はしばらくの間ためらいを見せた後、

 

「姫様のお耳汚しになりますので……」

 

 最後に、言わないことを選択した。それはつまり、アンリエッタには到底教えられないような惨状だったということで……。

 

「わかりました……」

 

 アンリエッタはそれだけ返すと再び敵軍のほうを見下ろした。しかし、その視線には先ほどまでの弱気な色は感じられない。

 

「勝ちますよ……ウェールズ様」

 

「今は王族ではありませんよ女王陛下」

 

「わかりました……では、ウェールズ。力を貸してください」

 

 アンリエッタの力強い命令に、ウェールズは少しだけ笑って頭を下げる。

 

「すべては王の申されるがままに……」

 

「では、まずは……」

 

 アンリエッタは怒りに燃える瞳で忌々しげに空に浮かぶ巨大艦隊をにらみつけた。

 

「あの空にいる不届き者どもを駆逐します」

 

「できますか?」

 

「できます」

 

 そう言ってアンリエッタは杖を差し出す、ウェールズはそれで彼女が何をしようとしているのか気付き、彼も杖を取り出した。

 

「ヘクサゴン・スペルを使います」

 

 四王家にのみ許された対城魔法の使用を決断した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 その頃、タルブ上空の艦隊を守る竜騎士たちに異変が起きていた。

 

「なんだあれは?」

 

 それに気づいたのは哨戒にあたっていた一騎の竜騎士。彼はどこからともなく響いてくる爆音に驚きその音源を探していたのだが、

 

「あれは……竜、か?」

 

 爆音の音源はすぐにわかった。

 

 羽ばたかぬ翼をもち、頭にはわけのわからない回転する物体。まるでクリスタルのような透明な膜に覆われ騎乗者を守る異質な竜。

 

「どこの竜かは知らないが……」

 

 ハルケギニア最強の騎士団に単騎でいどむとはいい度胸だ。と、竜騎士は久々に骨がありそうな相手の出現に口角を釣り上げる。

 

 最近のアルビオン竜騎士団は先の革命において多くの騎士を失ったせいか、急遽騎士団に任命された(にわか)が激増してしまっていた。

 

 そいつらにいくら騎士団の誇りを説こうとも「おれたちは最強の竜騎士なんだからそんなもの気にせず好きにすればいい」と、ばかげた答えが返ってくる始末。

 

 これはもう性根をたたきなおしてやるしかないと思った彼は決闘を挑もうと杖を抜いたのだが、そいつらはそれを見た瞬間あわてて逃げだし上司に告げ口。彼はあっさりと隊長職を下され、こうして哨戒任務にあたっていた。

 

あまりの性質の悪さに憤激した彼は新たな彼の主となったクロムウェルに抗議へと向かったのだが、

 

『君の言いたいことはよくわかる。だがしかし、いま必要なのは誇りではなく確実に敵ののど元をかき切れる力なのだ』と、期待した答えとは随分と違う答えが返ってくるばかり。

 

 そんなわけでいろいろとストレスがたまっていた彼は、いらだち交じりに罰則としての哨戒任務にあたっていたのだが……。

 

 そんなときに降ってわいた自分の心を躍らせる勇猛な騎士の姿。彼が興奮しない理由がなかった。

 

「さぁ、こい!」

 

 長年連れ添った愛竜の腹をけり、彼はその竜に突撃を開始する。その時、

 

「っ!?」

 

 彼の背中に得体のしれない寒気が走り、彼は本能的に自分の竜に指示を出し急速下降をさせた。

 

 瞬間、彼が飛んでいた空間を見えないほどの速度で何かがかすめる。

 

「あれは……弾丸か!?」

 

 聞き覚えのある風切り音に、最近平民が使い始めた武器を思い出し度胆を抜かれる騎士。それはそうだろう。彼が今まで見てきた銃は先込め式の火縄銃に近いマスケット銃。ライフルリングの技術もなければ連射機構なんて夢のまた夢なこの世界の銃に対し、その銃撃は圧倒的な速度と連射速度をもってその空間を貫いていた。

 

 しかも風切り音が聞こえる距離すらその銃撃はマスケット銃よりもはるかに長い。それだけ射程が長いということだ。

 

 勝てるか? 歴戦の猛者である騎士は自分にそう問いかける。

 

 答えはノーだ。いくら魔法が使えるからといってあれほどの弾速、射程距離、連射速度を持つ相手に空の覇者とはいえ飛行技術においては風竜に劣る火竜に騎乗する自分では、いずれあの攻撃にとらえられる。

 

 しかし、撤退という選択肢も彼にはなかった。彼は騎士だ。騎士とは武器をふるう強きものを騎士と呼ぶのではない。

 

 敵に背中を向けず、君主を守るから騎士なのだ。

 

 だから彼は、

 

「悪いが付き合ってもらうぞ!」

 

 自分が取れる最善の策をとる。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「くそっ! 何なんだあいつちょこまかと!!」

 

『ありゃ対風メイジ用の高度な機動飛行だぜ相棒。どうやらやっこさんおれたちの攻撃の正体に気づきやがったらしい』

 

 なかなか頭のいい野郎だ。そういったで流布にサイトは思わず歯噛みした。

 

 数分前タルブ上空へと到着したサイトたちはすぐさまゼロ戦の機動力と、この世界ではオーバーテクノロジーである機銃を使い上空を制圧する竜騎士たちを一蹴した。

 

 しかし、最後に一基だけ残っていた哨戒騎士を倒そうと挑んだ瞬間その風向きが変わり始めた。

 

 初撃で数々の竜騎士を沈めてきた機銃による一撃を彼は初見でかわし、先ほどから攻撃をする様子も見せずただひたすら機銃の攻撃をよけることに専念している。

 

『やっこさん、おれたちの銃の弾切れを狙ってやがる! 相棒が使っている銃ならいずれ自分をとらえると分かっていながら、自分が囮になることでできるだけその弾丸を削って、味方の被害を抑えることに戦いの重点を置きかえたんだ! まったく、敵ながら見上げた忠義心だぜ!』

 

「感心している場合か!」

 

 サイトは舌打ちをもらしながら現在機銃に残っている弾数を確認。弾数約数発。連射などしてしまえばすぐに尽きてしまうほどの少なさだ。

 

「くそっ……どうしたらいい!」

 

「ちょ、ちょっと……何してんのよ! さっきみたいにパパーっとやっつけちゃいなさいよ!!」

 

「それができたら苦労は……って、え?」

 

 その時、唐突に聞こえてきた聞き覚えありまくりな声に驚いたサイトはあわてて首を後ろに回し声の主を確認する。

 

「る、ルイズ!?」

 

「な、なによ?」

 

「何でいるんだよ!」

 

「あ、あんただけ戦わせるわけにはいかないでしょうがぁああああああ!! 私はあんたのご主人さまなんだからね!!」

 

 突然始まったなれない空中戦に目を回してしまっていたのか、どことなく混乱した様子で現れた自分のご主人さまにサイトは思わず悲鳴を上げた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「なんだ?」

 

「きゅい?」

 

 突然軌道が気こちなくなった爆音を上げる竜に、騎士は思わず首をかしげた。

 

 先ほどまでの切れるような鮮やかな機動は鳴りをひそめガタガタブルブルと変な振動が走っている。

 

 まるでなかで誰かが暴れているかのように……。

 

「と、とにかくチャンス……なのか?」

 

 先ほどまでの軌道を見る限り油断はできない。だがしかし、明らかに機動がおかしくなっているのも事実で、

 

「仕方ない。勝負に行くぞ、エリアーナ」

 

「きゅぃ!!」

 

 長年連れ添った相棒に指示を出す騎士。それに答える火竜。一人と一頭のペアは息が合った動きで踊るように身をひねり、

 

「おぉっ!!」

 

 空に見事な円を描きながら、震える竜の後ろに回り込んだ。

 

 愛竜がブレスの用意をするのを感じ取り、彼も錬金を行う。

 

 土の三乗。空気中の水分をすべて油へと変換する油分練成。

 

「燃え散れ!」

 

 彼がそう指示を出し、愛竜がブレスを吐き出した瞬間だった!

 

 

 

ゴウッ!!

 

 

 

 と、濁流を伴った鋭い竜巻がまるでレーザーのように伸びてきて、騎士と愛竜を弾き飛ばし彼らの渾身の一撃をかき消した。

 

 なんだ!? と、驚く竜騎士の視界にはその竜巻によって貫かれる自軍の旗艦が映る。

 

 しまった! と、自分の職務が果たせなかったことを悔やむと同時に、一撃で旗艦を沈めたその魔法の威力に息をのむ。どうやら自分な旗艦を沈めるために放たれた魔法のとばっちりを受けてしまったらしい。

 

 使ったのは? と視線を走らせるとそこには杖を交差させる二人のメイジ。

 

 一人は豪奢な戦装束に身を包んだ、トリステインの《姫王》アンリエッタ。もう一人は、豪華さは欠けるが実直で堅実な鎧に身を包んだ貴公子、

 

「ウェールズ皇太子殿下!?」

 

 生きておられたのか!? と驚く騎士が首をめぐらせると、沈む旗艦以外の船へと向かう奇妙な竜の姿があった。

 

 させない。せめてほかの船は……と、彼は自分の愛竜に指示を出そうとするが、

 

「きゅいぃ~」

 

「くそっ!」

 

 先ほどの衝撃で脳を揺らされたのか、自分の愛竜が目を回して気絶しているのを確認し思わず自分を罵った。

 

 これでは戦闘はできない。自分の魔法で愛竜を安全に地面に下ろしてやらないといけないから自力での飛行も不可能だ。

 

「運が良かったな……あいつら」

 

 そして俺には運がなかった。やっぱり王族裏切った報いかね……。と、ちょっとだけレコンキスタに参加したことを後悔しながら彼は戦場から離脱した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「……やり……ましたか?」

 

「あぁ、旗艦は見事に沈んだよ」

 

 自分たちの魔法が直撃し粉砕された旗艦を、空軍で鍛えられた視力で確認したウェールズ。そんな彼の報告を聞き、アンリエッタはとりあえず安堵の息をもらす。

 

 これで相手の空中戦力の足並みはしばらくそろわない。あとは、

 

「地上の彼らを何とかしましょう」

 

「とはいえさっきの魔法で僕らの魔力は打ち止めに近い。もうヘクサゴン・スペルは撃てないよ?」

 

 どうする? 問いかけるウェールズに、アンリエッタは歯噛みする。

 

 ここに彼がいてくれたら……。と、アンリエッタは思わずある宰相の顔を思い出すが、

 

「来てくれは……しないでしょうね」

 

 自分と彼は敵対したのだ。まさか助けてくれる甘さが彼にあるなど到底考えられない。

 

 アンリエッタがそう考え、ほかの可能性を模索しようとしたときだった。

 

「さて、始めるとしよう……」

 

 戦場一帯に無数の符が舞い踊る。

 

「なっ!?」

 

 驚くアンリエッタに対し、ウェールズはどことなくげんなりした顔で後ろを振り返り、

 

「これが世にいうツンデレですか?」

 

「死にたいのか貴様」

 

 背後に立っていた男を見つめた。

 

 男はいつもの鉄面皮を動かすことなく、ゆっくりと歩みを進めアンリエッタの前に立つ。

 

「アンリエッタ女王殿下。おそばせながら、宰相バーシェン。只今参上つかまつりました」

 

 紅のローブを身にまとったトリステイン最強の一人とされる宰相は、いつものようにそっけない声音で自らが仕える女王に一礼した。

 




ようやく更新できた……。

 ただ……戦争するだけにタルブ編なげぇえええええええ!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。