ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

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アルビオン潜入編!?

 ところ変わってアルビオン、サウスゴータ。

 

 無数の街道や運河が交差する一大商業都市として、アルビオン首都にも匹敵するこの町にも、トリステイン軍による兵糧攻めの効果はじわじわとではあるが現れ始めていた。

 

 食料の物価は上がりつつあり、それ以外の生活用品の値段も徐々に上昇傾向にある。

 

 もとより、作物系の特産品が少ない国だ。諸外国からの輸入をカットされてしまえば、この事象は当然といえた。

 

 とはいえ、現状では多少食べ物の値段が高いというだけで、一般人たちの生活はちょっとだけ苦しくなったという程度。

 

 まだまだ、町の日常が崩れるのは先の話だろうと思われた……そんな、張り詰めた雰囲気といえなくもない、かりそめの平和が続く微妙な時期。

 

 そんな、時期のサウスゴータにあるとある喫茶店のテラスにて。

 

「zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz」

 

 もうとっくの昔に飲み干されて、入れられていたコーヒーが蒸発し、茶色いしみを作り出したカップを片手に爆睡する黒目黒髪の男がいた。

 

 むろん、ライナである。

 

 彼は、兵糧攻めにあったアルビオンが、降伏勧告するのにちょうどいい状態になる時期をバーシェンに知らせるために、こうしてアルビオンの大都市に潜入しているわけなのだが、

 

「むにゃむにゃ……なんだよ、シオン……まだまだ寝れるって」

 

 夢の中でも昼寝の夢を見ているらしいライナ。どこまで寝ることに貪欲なんだと、コーヒー一杯で居すわられてしまい非常に迷惑している喫茶店の店主は、そんなライナに眉をしかめた。

 

 ライナ・リュート……彼に仕事をする気は? と、尋ねるのは、むろん愚問であろう。

 

 そんな時、

 

「きゃっ!?」

 

「ぎゃぁあああああああああああああああ!? 折れたぁああああ!? これ絶対腕折れたぁああああああ!?」

 

「んぁ?」

 

 彼の安眠を妨害せんといわんばかりに、けたたましい怒声が一つ町の中で上がる。

 

――なんだよいったい? と、ライナがそんな怒声にたたき起こされて目を覚ますとそこには、男にぶつかって倒れたと思われる、しりもちをついた金髪の長い女性に向かって、腕を抑えながらガンを飛ばす、明らかに悪してますといわんばかりの巨漢が三人。

 

「あ゛!? どうしてくれるんじゃあ゛!? あにぃのうであ゛折れちまったあ゛じゃねぇかあ゛!?」

 

「どない落とし前つけてくれるぅんじゃおるぅぁ!? いしゃりぃよう三百万憶エキューはるぅわんかいこるぅあ!?」

 

 あ゛あ゛うるさいヤンキーと、巻き舌がひどくで逆に聞き取りにくいヤンキーが、腕を抑えたリーダー格と思われるヤンキーをかばいながら、そんな風に女性に向かってすごむ。

 

――なんというか、慰謝料頭が悪そうな金額あげてるな。と、ライナはそんな印象を受けた後、

 

「ふわぁ……ねむ。もっかいねよ」

 

「いや助けろよ!?」

 

 めんどくさくなってまた寝ようとしたところを喫茶店の店主に止められた。

 

「あんた一応傭兵だろ!? 強いんだろ!? 助けてあげなよ、かわいそうじゃないか!?」

 

「いや、だってめんどくさいじゃん。ああいったやつらってタマ~にシャレにならない組織がバックについていることもあるしさ、もうこういうのは穏便に行こうぜ。おれたちにとって」

 

「あ、悪魔だ!? 悪魔がここにいる!?」

 

 あんたは眠たいだけだろうが!! と、怒鳴り声をあげる店主の声を右から左に聞き流し、ライナは机に突っ伏しつつも横目で凄まれている女性のほうを観察する。

 

――それに、あいつに不用意にかかわるのはやめたほうがいいし。と、内心で彼が漏らした時だった、

 

「きゃぁああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 金髪の女性が突如悲鳴を上げ――腰に下げていた長大な剣を目にもとまらぬ速さで抜刀。剣の腹で凄んできた男たちの頭を根こそぎジャストミートし、まとめて彼らを天高く打ち上げる。

 

「え?」

 

 当然そんな光景に驚いたのはヤンキーのリーダー格だと思われる男のほうだった。

 

 鎧や剣を装備してはいたが、体つきは華奢で弱そうに見えたために、この女は傭兵になりたてのカモだ!! とおもい、当たり屋として襲いかかった男たち。あわよくばいろいろやろうと思っていたがこの反応は正直予想外。

 

 まさか成人二人の頭を薙ぎ払って吹き飛ばすような女に、彼女が見えるわけないのだから。

 

 だが、そんなヤンキーたちの反応などしらんといわんばかりにその女性は、

 

「お、男はいつもそうよ。私の体にいったい何をするつもりなのぉおおおおおお!?」

 

 とかなんとかわざとらしい女口調で、平坦な悲鳴を上げながら券を振りかぶり、

 

「よし、では貴様を拷問する大義名分もできたところで、やるか」

 

「ま、まって!? 今大義名分ってぐぶふぅあ!?」

 

 容赦なく、折れていたはずの腕を上げて降参ポーズをとるヤンキーの脳天に、剣の腹を叩き付ける。

 

 悲鳴を上げて倒れ伏す男だが、女はその程度では容赦はしない、

 

「この女の敵、女の敵、女のてきぃいいい! あなたみたいなのがいるから、世界は平和にならないのよ!!」

 

「ぐぼっ!? げふっ!? グワハッ!?」

 

 なんて、とんでもないことを言いながら男を殴打しまくる女剣士。その光景はむしろ彼女こそが暴力の権化といわんばかりのこうけいで、周りで女性が絡まれた時から見ていた人々ですらドン引きするほどの景色だった。

 

 そんな中、当然と言わんばかりに悲鳴を上げ、

 

「も、もうゆるしてぇええええええええ!? なんでも、なんでもするから!?」

 

 そういったが最後、

 

「ふむ。よかろう。ならば貴様は今日から私の奴隷だ。もしも私の命令に歯向かったら……わかっているな?」

 

「は、はい!! 私は一生姉さんに奴隷の忠誠を誓います」

 

「うむ。ならばゆるす」

 

 と女からの許可を得て、脱兎のごとく逃げ出す男。とはいえ、その男の身分証は女が殴打する際にしっかり掏り取っており、もう彼が彼女から逃げることは決してかなわないだろう。

 

 そんな凄惨な暴力シーンを作り出した女性は、カフェテラスで突っ伏すライナを発見した後、

 

「いや~ん♡。ライナくんったら~。またこんなところでさぼっちゃって、人がせっかく頑張って私の代わりにぼろ雑巾になるまで働いてくれる奴隷君たちをたくさん作ってるのに~」

 

「え、ちょ、ま、待てフェリス!? これは別にサボっているとかじゃぎゃぁあああああああああああああああああああああああ!?」

 

 女性――長い金髪をもち、女神のような造形をした顔を完全に無表情にした美少女剣士、フェリス・エリスは今日も今日とて平常運航。

 

 さぼりまくるライナに向かって、その大剣を叩き落とす!!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「はぁ、何やってんだいあいつら……」

 

 そんな光景をはたから見ていた、緑髪の眼鏡をかけた美女――マチルダ・ロングビルは、「てめぇ、今回ばかりはもうガマなんならねぇフェリス!!」「ん」といいながら、派手な戦闘をおっぱじめる仲間のスパイ二人にため息をつきながら、

 

「あ、おばちゃん。このおいしそうなリンゴ二つ。今日姪がアップルパイ作ってくれるらしくてね」

 

「あら、それはいいね」

 

 と、八百屋の女将と雑談を交わしながら今日の夕飯に必要な食材を買っていく。

 

 だんだんあの二人の空気に毒され始めたことを、彼女は気づいていない。

 

 そんな彼女が買い物を終えたとき、二人の大ゲンカの決着も付いたようで、

 

「ま、待ってフェリス!? おれが悪かった、おれが悪かったからぎゃぁあああああああああああああ!?」

 

「死ねっ、色情狂!!」

 

 先ほどのヤンキーたちと同じように天高く打ち上げられるライナを見て、彼女はため息を一つつく。

 

「まったく、だれがアレ回収すると思ってんだい……」

 

と。

 

 彼らのアルビオン潜入記は、まだまだ始まったばかり……。

 




アルビオン潜入編開幕!!

雰囲気的には「とり伝」テイストで行こうと思っています。

 始まりというわけでプロローグ的な意味があるので今週はここまで……。というか、現実が普通に忙しいので……えぇT-T

 ギャグ的な意味での使い捨て新キャラとかわりと出ると思うので、ご容赦ください^^;
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