ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

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踊るラヴァリエール領!! プロローグ

「ウォーターミスト!!」

 

「あ、ちょ!? きたねぇ!!」

 

 いつもの必殺技パターンに持ち込まれ悲鳴を上げるサイト。だが、そんな彼の抗議など知ったことではないといわんばかりに、敵は完全な隠遁を霧の中で行う。

 

 一寸先は霧。そう言って差し支えないほどたちこめる深い霧。視界が真っ白になり自分の手元さえ見えない状態になってしまった周囲の景色に、サイトは思わず舌打ちし、

 

 ……ザッ。

 

「そこかぁああああああああああああああああああ!!」

 

 地面を踏む人の足音。それを敏感に感じ取ったサイトは、即座に身をひるがえし手に持つデルフリンガーを一閃させる!

 

 が、

 

「相棒、まずい! フェイクだ!!」

 

「っ!?」

 

 デルフの声はすでに遅く、

 

「これで私の99連勝だな」

 

 サイトの首筋にピタリと当てられた鉄の軍杖の感触が、サイト自身に敗北の事実を突きつける。

 

「ち、ちくしょぉおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ラ・ヴァリエール領にやってきて一週間がたった。サイトは現在、ルイズの護衛として十分な力を得るために、公爵自らがかって出てくれた模擬戦をしていたのだが……結果はご覧のありさまである。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「あぁ、サイトまた負けちゃった……」

 

「あたりまえでしょ。お父様はトリステインにその人ありと言われた歴戦の勇士よ? この前みたいに得意魔法のほとんどを封じた状態でさえなければ、あの手程度の剣士くらい簡単にひねれるわ」

 

 そんな試合を観戦していた二人――普段着として貴族らしいドレスを着こんだルイズとエレオノールは、そんな雑談を交わしながら優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 ルイズがラ・ヴァリエール領に帰ってから1週間がたった。

 

 結局あの後タルブ戦での出来事を根掘り葉掘り聞かれてしまったルイズは、何とか自分の得意属性が虚無であることを隠し通そうと東奔西走してみたのだが、そこは自分よりも一枚も二枚も上手な父親と、もはやトラウマと言っていい恐怖を覚えさせられてしまっている母親が相手だ。ロクに抵抗もする暇もなく、すべて洗いざらい白状(ゲロ)してしまった。

 

 まぁ、唯一の救いはそんな彼女の話を聞いても父と母は、

 

「なんだそんなことだったのか……必死に隠すから何事かと思ったぞ?」

「とにかく、魔法が使えなかった理由がわかっただけでも大きな進歩です」

 

 と、特に目の色を変えてルイズを権力闘争の道具にしようとしたり、心配すぎるからいっそのこと幽閉しようなどといった極端な対応をとらなかったことだろう。

 

 だが、

 

「ですが、そのような重要な位置についていしまった以上、あなたにはかなりの脅威が降りかかってくることは間違いありません、ルイズ」

「というわけで、しばらくラ・ヴァリエール領(ウチ)にいなさい、ルイズ。そのあいだ、使い魔ともどもある程度の火の粉は払いのけられるように鍛えてあげよう」

 

 という、トンデモ提案(めいれい)を食らってしまったのは、どう考えても災難だが。

 

 というわけで、サイトの対メイジ用戦闘の訓練を公爵が。ルイズの魔法を使った戦闘の指導をカリーヌ夫人が行っており、二人はこの一週間地獄を見ることとなった。

 

 実際サイトの模擬戦が終われば次はルイズとカリーヌの試合があるため、ティーカップを持つルイズの手は某超振動(プログレッシブ)ナイフバリに震えており、数分後にやってくる恐怖と戦っていた……。

 

 無駄な努力ではあろうが……。

 

「カチャカチャうるさいわよルイズ?」

 

「ひぅ!? ご、ごめんなさい姉さま!?」

 

「まぁまぁ」

 

 エレオノールの忠告にすら小動物のようにガタガタ怯えるルイズの姿に、苦笑いを浮かべながら紅茶のお代わりをもってきたシエスタがそう声をかけた。

 

「なに、メイド? 私は今、貴族としての立ち居振る舞いをルイズに教えているところなのだけれど?」

 

 だが、当然純正な貴族として育て上げられたエレオノールがそんな彼女の介入を許すわけもなかった。

 

 口をはさむな。引っ込みなさい平民。と、高圧的な雰囲気で内心金切り声をあげているのがルイズにはなんとなくわかる。

 

 が、残念なことに相手は人間としての器が一枚も二枚も上手なシエスタだった。伊達に変な経験して人生経験は積んでいない彼女は、

 

「昨日夢見が悪かったからと言ってそんなに妹さんにあたることはないじゃないですか? バンカーD伯爵でしたっけ?」

 

「なっ!? なんであなたがそれをっ!? っていうか、バーガンディよ」

 

 と、羞恥と怒りでエレオノールが顔を真っ赤に染め立ち上がった瞬間、

 

「あらあら? 姉さま……後悔されいてるくらいだったらもうちょっとバーガンディ様にやさしくしてあげればよかったのに……」

 

「か、カトレア!?」

 

 まるではかったような(実際はかっていたのだろう……シエスタ。恐ろしい娘!?)タイミングで現れたラ・ヴァリエール家次女カトレアがその話を聞き、にっこりエレオノールに笑いかけてきた。

 

「そうとわかれば、さぁ! 一緒に伯爵に謝りに行きましょう? 私もついていきますから!!」

 

 カトレアはとても純真でまっすぐな優しい性格をしている女性だ。そのため、姉の離婚話を聞いたときは、「姉さまはとってもいい人なんだから、きちんと話し合えばバーガンディ伯爵さまも、きっと離婚はとりさげてくださいますわ!!」と、何の疑いもなくいってくるのだ。

 

 当然、伯爵がガチで怯えながら離婚話を斬りだしてきて、さらには土下座までされて離婚を迫られたエレオノールとしては、さすがに彼が心の底から本気で離婚話を切り出したことくらいわかっていたため、これ以上改善の見込みがないことも十二分に承知していた。

 

 だからこそ、この妹の純粋な信頼がつらい……ので、

 

「い、いいって言ってるじゃないのぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

 良心の呵責に耐えられなくなったエレオノールは、ちょっと泣きそうな顔になりながら逃げだした。

 

「あ、待って姉さま!」と言ってそのあとを追いかけるカトレア。「ルイズ! 今日の魔法の練習頑張ってね?」という、妹に対する気遣いも忘れないのはさすがだ。

 

 というわけで、まずは身近な重圧が消えたのに安堵の息をもらし、何とか手の震えが止まったルイズは、紅茶のお代わりを注いでくれるシエスタに感謝の言葉を送った。

 

「あ、ありがとうシエスタ……」

 

「いいえ。あ、でもルイズさん? この紅茶飲み終わったらちゃんとお着替えしてくださいね?」

 

「わかってるわよ。さすがにドレス姿で戦いの練習するわけにもいかないし」

 

 母様はそれでも十分戦えるんだけど……。と、不動の体勢からの杖の一振りで大地をめくり上げる爆風を放つ母親の姿を思い出し、大きなため息をつくルイズ。

 

 だが、

 

「いえ、違いますよ?」

 

「え?」

 

 シエスタがその忠告を告げたのはもっと別の理由らしかった。

 

「今日の訓練は中止です」

 

「ほんとっ!?」

 

 シエスタが突如告げた嬉しい知らせに飛び上がるように立ち上がるルイズ。そんな彼女の姿に「どんだけ訓練嫌だったんですか?」と、ちょっとだけ冷や汗を流しながらシエスタはさらに続ける。

 

「先ほど公爵夫人様より言伝を頂きまして……。本日昼ごろ、女王殿下が結婚報告がてらこちらにやってこられるそうです」

 

「まぁ! アンリエッタ様がこられるのね!?」

 

 ラ・ヴァリエールは仮にも王族の血に連なる公爵家だ。確かに結婚するともなればその報告に来るのもおかしくはない。

 

――あぁ、姫様もようやくウェールズ様と結ばれることになるのね! よかったわ! と、アルビオンから命がけで助けたイケメン王子の顔を思い出しながら、本当にうれしそうに笑うルイズ。

 

 しかし、残念なことにそんな彼女の笑顔は、

 

「それに同伴して憎き宰相もやってくるから、馬車ごと吹き飛ばすそうです。というわけで、日ごろの訓練を見せるときですよ? ルイズ。と、公爵夫人が」

 

「……………………………………………………」

 

 続けて告げられたその言葉によって、ルイズは口から血を吐き倒れ伏した。

 




 というわけでプロローグ!! え、短編じゃないのかって?

 はははは!! そんなもの、前ので諦めたよ?
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