ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

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雪風到来

「ああ……吸血鬼なんてマジで信じられねぇ。どうしてこんな時に来るのかね?」

 

「でも、姐さんなら余裕でぶっ飛ばしそうだよな」

 

「馬鹿。相手は最強の妖魔だぞ。いくら姐さんでも分がワリイよ」

 

 元山賊の二人はそんなことを言いながら畑を耕しに外に出た。今まではフェリスがやっていたのだが、この前のように吸血鬼の襲撃があってはいけないので、現在は盗賊たちによってローテーションが組まれ、順番に畑を耕すことになっている。

 

「でも、苗の状態は芳しくないんだろ?」

 

「ああ。どんな肥料を使っても枯れちまうしな……。先住魔法でも使えたら話は別なんだろうが……」

 

「吸血鬼にでもなってみるか? 先住魔法使えるみたいだし」

 

「冗談。そんなことしたら姐さんに真っ二つにされちまうよ」

 

「ちげーねー」

 

 談笑をしながら歩いていた二人はようやく畑の端に辿り着いた。今日はここからである。

 

 畑の面積もずいぶんと広がり、今日ですべての土地を耕し終える予定になっている。

 

「さっさと終らせて家に帰ろうぜ。姐さんにお茶頼んでさ」

 

「ああ、姐さんのお茶はうめーからな!」

 

 そんなときだ。

 

 ドサリ……。

 

 何かが倒れる音が二人の耳に入った。

 

「ん?」

 

「なんだ!?」

 

 二人が慌てて音のしたほうに駆け寄るとそこには、傷だらけになった少女が倒れこんでいた。

 

「た、たいへんだ!」

 

「オレ、姐さんをよんでくる!」

 

 山賊の一人は少女に駆け寄り、もう一人は家へと走る。

 

「おい! 嬢ちゃん!! 大丈夫か!? しっかりしろ!!」

 

 駆け寄った山賊はそう言いながら少女の頬をペチペチ叩き意識の覚醒を促した。

 

「うう……」

 

「だめだ。完全に意識を失ってやがる。とりあえず、家に運ぶか」

 

 山賊はそう言いながら少女を担ぎ家へと運び込んだのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 それから3日後。とある美女と少女が村を訪れた。

 

「今度派遣されてきた騎士様は大丈夫かしら?」

 

「若い女の人みたいだね?」

 

 長く青い髪を持った女の騎士。その傍らには荷物もちの少女が待機していた。

 

「呆れた。女の子を連れていらっしゃるよ」

 

「こないだ来られた騎士様のほうが何ぼかお強そうだ」

 

 他の村人達が落胆する中、それを見に来ていた金髪の美女とやたらと目つきが凶悪な男はヒソヒソと意見を交換し合っていた。

 

『どう思う?』

 

『騎士と名乗っているほうはたいしたことありやせんね。メイジ専門で仕事してきやしたが、貴族特有の教育の跡が感じられやせん。多分偽物でしょう……問題はガキのほうで……』

 

『私もそう思う。あれは相当な修羅場をくぐってきているな』

 

 自分と同じように表情を欠落させた少女を見て、フェリスは特に何の感慨もなさそうに淡々とした口調で今回の騎士にたいする評価を下す。

 

 仮にもローランド最強の名を冠する剣の一族。眼鏡を掛けた少女とでは年季が違いすぎた。どうやら少女の計画はこの二人には通じなかったらしい。だが、

 

「この前のよりかは期待できるな。」

 

「そうですね。この前来た奴は貴族ってだけで負けるわけがないとか考えていた勘違いヤローでしたし」

 

「とにかく、我々は計画に専念するぞ。養わなければならない人間も増えたしな」

 

「そうですね。食料かってさっさと帰りましょう」

 

 ある程度の騎士の観察を済ませた二人は、もう用はないとばかりにタバサから視線をはずしこの村で唯一商売を続けている商店へと急いだ。

 

 そのとき二人は気づいていなかった。眼鏡をかけた少女が二人のことを視線で追っていたということ。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 眼鏡をかけた少女――タバサは人ごみの中に消えた二人を視線で追っていた。

 

 あの二人……男は大したことないけど、女のほうはかなりの使い手。要注意。

 

 今回の敵、吸血鬼は巷で噂されているような、強力な妖魔などではない。むしろ単体での戦闘能力は決して高くないというのが専門家同士の共通の見解である。

 

 先住魔法はエルフに劣り、筋力という面では人間と同じ。吸血による強化が個体によってまばらな為、いまだにそのあたりは謎のままだが、だがそれにしたって一度の吸血で向上する能力はたかが知れている。

 

 正面きって戦えばメイジにとっては決して恐い相手ではないのだ。

 

 だが、吸血鬼の恐ろしさはそこにはない。彼らが真に恐れられる理由はその狡猾さにある。

 

 人とまったく見分けがつかない容姿を武器に、町や村に潜り込み、幾重もの罠を張り巡らし獲物を狩る。

 

 ……人狩りの怪物。

 

 油断するわけには行かない。

 

「シルフィード」

 

「はいなのお姉様」

 

「あの二人。しっかり覚えて。要注意」

 

「わかったのね!!」

 

 まともな頼みごとをされたのがよほど嬉しかったのか、人に化けた風韻竜・シルフィードは喜々として二人をガン見しだした。

 

 流石にこの露骨な視線には気づいたのか、金髪の美女――――フェリス・エリスが振り返ってきたので、タバサは慌ててローブで隠れているシルフィードの足を踏みつけ視線を無理やりそらさせた。

 

「いたい!! 痛いのね、お姉様!!」

 

「……」

 

 悲鳴を上げる自分の使い魔に嘆息しつつ、タバサは村長の家へと歩き出すのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「ようこそいらっしゃいました。騎士様」

 

 この村の村長をしている老人はぺこりと礼儀正しく頭を下げたあと、シルフィードの顔をじっと見つめだした。

 

「ん? なんかついてる?」

 

 人に化けたことなど数えるほどしかない青い髪を持つ美女――シルフィードは自分が何かとんでもない失態をしているのではないかと、慌てて自分の顔に触りまくった。

 

 そんな使い魔の様子を見て、タバサは再び嘆息しながらシルフィードに耳打ちをする。

 

「名前……」

 

 そう言われ、シルフィードはようやく自分がしなければならないことに気づき慌てて姿勢を正す。

 

「ガリア花壇騎士。シルフィード! 風の使い手なのね」

 

 しかし、頑張ったシルフィードに待っていたのはポカンとした村長の顔だった。

 

 な、なにかまずったのね!? 再び慌てふためくシルフィードは隣にいるご主人に救援を求めるが、主人も困ったような顔をして手助けをしてくれる様子はない。

 

 絶体絶命?!

 

 シルフィードの脳裏に作戦を失敗させてしまったお仕置きに、肉の代わりにハシバミサラダを口に突っ込まれる自分の姿が掠める。

 

 いくら使い魔になったからと言って、彼女はドラゴン。肉食動物だ。あんなクソ苦いサラダ食べれるわけがない!!

 

 シルフィードがそう考えながらがたがたと震え始めたときだ。

 

 助け舟はやってきた。

 

「村長、花壇騎士ともなれば平民に名乗る名前などないのでしょう。先ほどのお名前は世を忍ぶ仮のお名前に決まっているじゃないですか」

 

「む!おお、そうでしたなキリスどの!! 私としたことがとんだご無礼な態度を!! シルフィード……風の精霊の名前とは、なかなかご趣味のいい渾名ですな」

 

 村長がそう言ってこちらが恐縮するほど頭を下げてきたので、シルフィードは慌てて頷いた。

 

「そ、そうなのね! そうに決まっているのね! アナタは気が利くのね。ありがとう!」

 

 そして、先ほど助け舟を出してくれた旅人のような格好をした、村長の後ろに立つ青年に頭を下げた。

 

「いえいえ。私も貴族崩れにございますので騎士様のご苦労は重々承知していますから」

 

「貴族崩れ?」

 

 次に口を開いたのはタバサだった。

 

 そんなタバサの疑問に、青年は嫌な顔一つせずに笑顔で答えてくれた。

 

「いえ。元々は辺境伯をしていたのですが、先のガリアでの動乱で家名を没収されてしまいましてね。今は風の向くまま気の向くまま、旅を続けているしだいで。ああ、失礼。まだ名乗っていませんでしたね。私の名前はキリス・ローデンスと申します」

 

 先のガリアでの動乱………。その言葉にタバサは少しだけ表情を動かしたがそれ以上の変化は見せずに説明をしてくれた青年に頭を下げた。

 

 ローデンス家といえば魔法具の開発と研究で、父親のオルレアン公に取り立ててもらった辺境伯家だ。彼の言葉に嘘はないのだろう。

 

 暗い表情で黙り込むタバサによって、場の空気が一気に重くなる。

 

「さて、事件の話をしてほしいのね村長さん!」

 

「ああ、そうでしたな!!」

 

 その空気を払拭するために、わざと明るい声を出したシルフィードに便乗して、村長は事件について詳しい説明を始めるのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 村長から話を聞き終えたタバサは早速村の調査に乗り出した。と言っても昼の間にできる吸血鬼調査には限りがある。

 

 基本的に奴らは夜行性だ。そのため事を起こすのは昼間ではなく夜だ。おまけに、日光をひどく嫌うという特徴があるとはいえ、別に耐えられないほどの苦痛を受けるわけではないのでそこそこ根性がある吸血鬼なら昼間でも平然の外出をする。

 

 そんな中で吸血鬼を探し出すのは至難の技だ。よって、現在タバサに調べることができるのは吸血鬼にかまれた跡があるはずのグールの捜査。および、きちんと戸締りがされた家屋に吸血鬼がどうやって侵入したかだ。

 

 とりあえず、タバサは手始めに被害にあった家に出向きそこの調査をはじめた。

 

 タバサが辿り着いた家はで入り口の扉以外はすべて釘付けがされており蟻の子一匹は入れないほどの厳戒な戸締りがされていた。

 

 しかし、吸血鬼はその防衛線を一つも壊すことなく家に入り込み、そこの住人の血をすすったのだという。

 

「眠りの先住魔法が使われていたみたいなのね。あれは空気さえあればどこでも使えるから……」

 

 住人の話を聞き、そうあたりをつけながら、シルフィードはなおうなり続けた。

 

 吸血鬼が侵入した方法がわからないのだ。

 

 窓は完璧に釘付けされており出入りする扉には頑丈な鍵。もしそれが破られたとしても、その扉の前にはタンスや本棚といった重量のある家具が配置されており、それらに痕跡一つ残さずに扉を開けることは不可能だろう。

 

「あの……騎士様」

 

 そのとき、村の案内役として着いてきていたキリスがそう尋ねてきた。

 

「? なんなのね。」

 

「吸血鬼は蝙蝠に変身して家の隙間から入ってくるといわれていますが、本当なのでしょうか?」

 

「ああ、それは迷信なのね。あいつらに何かに化けるなんて高度な魔法を使えないわ。あいつらの恐ろしいところはその狡猾さなの!」

 

「そうですか」

 

 キリスが痛ましい顔をして、娘の死を嘆き悲しんでいる夫婦を見つめた。

 

「くそ……。なんてひどいことをしやがるんだ」

 

「……………」

 

 シルフィードもかける言葉が見つからず、つらそうな顔をして目をそらした。

 

 そのとき、暖炉のほうから何かごそごそとする音が聞こえて来るのとともに、タバサが上から落ちてきた。

 

「おねえ……もとい、タバサや。何かわかったかい。キュイ!」

 

 今までの空気を忘れるためにか、精一杯ご主人ぶるシルフィード。

 

 タバサは、暖炉なんかにもぐっていたせいか、白い肌や高価な服はススで汚れてしまい真っ黒になっていた。

 

「煙突なんて調べてどうするんだい! こんな細いところくぐれるわけないじゃないの!キュイ! ちゃんと調べなさい!」

 

「ごめんなさい」

 

「まったく使えない子ね。たまには気の利いたこともお言いなのよ」

 

 ノリノリで、タバサのことを杖で突っつくシルフィードを見て、キリスは憐れむような目をタバサへと向けた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 続いてタバサがやってきたのは、とあるおおきな農家だった。

 

 昔は先代の村長一家が住んでいたらしいのだが、先代が死去するとともに一家は別の領地へ引越し、空き家となっていた。そこに、最近引っ越してきた首都からきた旅人達が土地ごと買い取り住んでいるらしい。

 

「お、おほん。あけるのねー! 首都から吸血鬼退治にやってきた騎士様が直々に調査に来たのねー!」

 

 そんな大きな家の前でシルフィードは力いっぱい怒鳴っていた。なぜなら、家の中に人の気配はあるのに誰一人として外に出てこようとはしなかったからである。

 

 ちなみに、キリスはこの家に行くと聞いた瞬間に、真っ青になって逃げ出してしまっていた。

 

 一体なにがあったのか非常に気になりはするが、今は関係ないことなのでタバサは理由を聞こうとはしなかった。

 

「な、なんなのね! 仮にも貴族に居留守を使うなんていい度胸なのね! キュイキュイ!!お姉様! 杖をかしてなのね!!」

 

「貴方にはつかえない」

 

「脅しぐらいにはなるのね!! キュイキュイ!!」

 

 シルフィードはどうやら相当ご立腹らしい。

 

 悔しそうに地団駄をふむ自分の使い魔に嘆息しつつタバサは無造作に杖を振るいかけた。

 

 そのとき、

 

「私の家に何か用か?」

 

「!?」

 

 突如としてタバサの背後から声が掛けられた。

 

 それは両手いっぱいに食料を抱えたフェリスだった。

 

 話しかけてきたのが自分を見ていた手練の美女だということに気づいたタバサは、慌てて杖を放し魔法の行使を止めようとする。しかし、詠唱は既に完了しており後は魔法を放つだけとなってしまっていた。

 

 結果、魔法の発動は止めることはできず、なかなか出てこない不届きな住人に協力的になってもらうための脅しを含んだ《エアハンマー》は家の扉を粉砕するために発射された。

 

 今回ばかりは自分のミスだ。

 

 タバサは反省した。誰もいないから、平民だからと油断してしまった。

 

 これで自分が魔法使いであるということがバレ、シルフィードを囮とする作戦は完璧に水泡に帰してしまった。

 

 おまけにタバサが手練と睨んだ美女の目には、わけもわからず自分が住んでいた家の扉が粉砕されたかのように見えただろう。

 

 これでは好意的な調査協力などしてもらえるはずがなかった。

 

 タバサがそんな風に猛省をしていた時だった。

 

 フェリスがまるで瞬間移動のように扉の前に現れ、少し寝かせた剣を軽く振るった。

 

 瞬間。金属を殴りつけたような音ともにエアハンマーが天高く打ち上げられたのだ。

 

「は…………?」

 

「え…………!?」

 

 タバサとシルフィードの二人は何が起こったのか一瞬わからずに呆然としてしまった。

 

 風が空気を切り裂く音は聞こえるかもしれないが、基本的に風の魔法は見ることができないものだ。

 

 それを平然と受け止めただけではなく、打ち上げることなど本来できるはずがない!

 

 フェリスの人間離れした剣技に呆然としていた二人が現世に戻れたのは、フェリスと食料を買いにでていた男に肩をポンと叩かれてからだった。

 

「姐さんの剣技にいちいち驚いていたらキリがありやせんぜ騎士様。あと居留守については申し訳ありやせん。近頃この村は物騒でして姐さんが帰るまで絶対にドアを開けるなと中の奴らには言っておいたんでさ」

 

 苦笑交じりに謝罪をする男を見て、フェリスはフンと鼻を鳴らし、男に預けていた荷物をひったくると家のほうへ歩いていく。

 

「さっさと入れ。話を聞きのきたのだろう」

 

 自分と同じ無表情なフェリスにタバサは自分と同じ臭いを感じた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 …………………………………………のだが、勘違いだったようだ。

 

「つまり、団子とは全世界の人間を幸せにする究極の食べ物なのだ!!」

 

「凄いのね!」

 

「さあ、貴様も団子神様に全てをささげるのだ! いまなら入信料はお得な金貨十枚!」

 

「お姉様! 早く払うのね!!」

 

「…………少し黙ってて」

 

 頭痛でもするのか無表情のまま額に手を置いたタバサは二つ名の通り、極寒の寒さを感じる声音を使い魔に叩きつける。

 

 シルフィードはその声音にようやく主が怒っていることに気づきガタガタと震え始めた。

 

「あははははは。すいませんね。姐さん団子のこととなると見境なくて…………。でも普段はいい人なんですよ」

 

 苦笑交じりにお茶を出してくれたのは先ほどフェリスと一緒にいた盗賊の頭目。名前はエヴァンソンというらしい。最近はフェリスの味に近づけるように日夜、お茶汲みの特訓をしているようで、お茶は普通のものに比べるとかなり美味しい。

 

「要するにあなた達は、東方の食べ物の《団子》という食べ物を再現するためにここで研究をしているの?」

 

「まあ、ザックバランに言っちまえばそういうことで。あんまり上手くはいってねーんですがね」

 

「吸血鬼事件は知っている?」

 

「知っているから戸締りを厳重にしていたんですよ、騎士様」

 

「ふむ。一度襲われたしな」

 

 エヴァンソンに出されたお茶を批評した後、フェリスがそんな爆弾発言をした。

 

 かなり美味しいお茶を出されて少しだけ機嫌が直っていたタバサと、恐怖が和らいでいたシルフィードはその言葉を聞いて氷結した。

 

「ちょ、襲われたって……何で村長さんに言わないのね!」

 

「一応言ったんだがな。認めたくなかったのか、キリスとか言う色情狂に追い返された」

 

「し、しきじょう……」

 

「き、キリスさんってそんな変態だったのね!?」

 

「ああ、なんかそんな顔しているだろう」

 

「していませんよ姐さん……」

 

 フェリスワールドの被害にあっていたライナを知っているため、これでも被害はましなほうだと割り切りながらもエヴァンソンは一応ツッコミを入れるがフェリスは華麗にスルー。タバサやシルフィードにキリスの無いこと無いこと(・・・・・・・・)を吹き込み始めた。

 

 そんな様子にエヴァンソンが溜息をついたとき、部屋の扉から金髪の美少女がトコトコとエヴァンソンに近付いてきた。

 

 人形のように可愛い子どもだ。

 

「エルザ? どうした。」

 

「ミロウお兄ちゃんが新しい肥料ができたからエヴァンソンさんを呼んできてって」

 

「ありがとうな。いま、騎士様と大事な話しをしているから後で行くと……」

 

「まぁ、かわいい!」

 

 エヴァンソンの言葉をさえぎり可愛いもの好きのシルフィードは、愛らしいエルザを見て立ち上がった。

 

 しかし、エルザはなぜかビクンと震え物腰柔らかいシルフィードより、無骨な剣を下げた(それでも美しさだけ(・・)はシルフィードの何倍も上だが)フェリスの後ろに隠れた。

 

「ありゃん。そんなに私が恐いの? 綺麗なはずじゃないの、キュイキュイ」

 

「キュイ?」

 

「すんませんねシルフィードさん。こいつ両親をメイジに殺されてて……。うちの近くまで逃げてきたのを俺達が保護したんですよ」

 

「そうだったの。ゴメンネ、キュイキュイ」

 

「だから、キュイとはなんなのだ?」

 

 不思議そうに尋ねたフェリスの疑問は黙殺された。

 

「エルザ。上に上がっていろ」

 

「……うん」

 

 びくびくと震えながら、部屋を出て行こうとするエルザ。しかし、

 

「まって」

 

 それにはタバサがストップを掛けた。

 

「グールじゃないか調査する」

 

「こんなガキもですかい!?」

 

「例外は認めない」

 

 エヴァンソンは、おびえるエルザを、疑いを晴らすためにしばらくここに置くか、疑われるのを覚悟でここから出させるかしばらく葛藤していたが、結局前者が勝ったのかエルザを自分の隣に座らせた。

 

「それで、俺達は何をすればいいので?」

 

「服を脱いで」

 

「「「「…………………………………………。」」」」

 

 部屋に居た面子はしばらく無言になった。

 

 流石に言葉が足りなかったかとタバサが追加の説明をしようとしたとき、

 

「その年で幼女趣味の同性愛者か。ライナなみに救いがたいな」

 

「…………………………………………」

 

「あ、お、お姉様! 杖をとって何をする気なのね!」

 

「お、お姉ちゃんがメイジだったの!?」

 

「き、騎士様!落ち着いて……ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 その後、その家の中からは剣と氷が激突することによって発生した轟音が、しばらくの間響き渡り続けることになるのだが、それはまた別のお話。

 

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